腹痛が鈍痛として続くのはどうして?原因と受診目安を知ろう

公開日: 2025/02/18
腹痛はよくあることですが、鈍い痛みが続くと不安になりますよね。 「腹痛がいつまで続くのか」「腹痛が続いているけど、受診するべきかわからない」など悩む方も多いでしょう。 鈍痛の原因が分からないと、大きな病気が隠れているのではないかと心配になります。 そもそも鈍痛とは、軽くて鈍い痛みが継続することを指し、痛む箇所がはっきりとわからないのが特徴です。 腹部の鈍痛の原因はさまざまで、痛む場所や痛みの程度、痛み以外の症状などによって考えられる病気は異なります。 この記事では腹痛が続く原因や受診目安、男女による違いなどを含めて解説します。 腹部の鈍痛が続くときのセルフケアについても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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腹痛の鈍痛が続く原因は「内臓の炎症」

内臓が炎症などによって急な収縮・拡張を起こすと、臓器全体が重くズーンとした鈍痛を引き起こします。この場合、痛みの場所がはっきりしないことも特徴です。

痛みは上記の「内臓痛」を含めて大きく 3つに分けられます。痛みの種類や特徴、代表的な病気については以下の表を参照ください。[1][2]

 

痛みが発生するメカニズム

痛みの特徴

代表的な病気

内臓痛

臓器の炎症などにより収縮・拡張・痙攣(けいれん)することで痛みが起こる。

  • 痛む場所が曖昧ではっきりせず、波がある
  • 内臓全体がズーンと重く、痛みは一時的なことが多い。
  • 自律神経症状として、発汗や顔面蒼白、悪心・嘔吐を伴うことがある。

     

  • イレウス(腸閉塞)
  • 胆石症
  • 尿路結石
  • 虫垂炎
  • 急性胃腸炎
  • 月経困難症

     

体性痛

臓器を包んでいる腹膜が熱や圧力などの刺激を受けて痛みが起こる。

  • 痛む場所がはっきり分かり、ズキズキと突き刺すように鋭く痛む。
  • 痛みは持続するが、体を動かすときや、咳き込むと痛みが増強する。
  • 腹膜炎
  • 胸膜炎

     

関連痛

脳が痛みを感じる部分を勘違いし、原因部位から離れた皮膚や筋肉などに痛みが生じる。

  • 原因となる部位とは離れた皮膚や筋肉の一部分が痛む。
  • 冷たいものを食べた後に頭やこめかみがキーンと痛むのも関連痛のひとつ。

     

  • 尿路結石
  • 胆石症
  • 虫垂炎
  • 肝炎
  • 腎結石
  • 膵炎・膵がん
  • 狭心症や心筋梗塞

痛みの種類のほかにも、痛みの程度や部位、ほかの症状などの情報も大切です。自分で痛みから病気を予想するのは難しいため、自己判断せず医師の診察を受けましょう。

鈍痛がする場所で考えられる腹痛の原因

上腹部に鈍痛がある場合は、胃炎や胃・十二指腸潰瘍などの可能性が考えられます。

下腹部に鈍痛がある場合は憩室(けいしつ)炎や虚血性腸炎など腸の病気のほかに、前立腺炎や膀胱炎、婦人科の病気である可能性も考えられます。

腹痛の原因はさまざまあるため自分で判断するのは難しいでしょう。適切な治療で早めに改善させたい場合には医療機関の受診が必要です。

上腹部の鈍痛の場合

上腹部とは「みぞおち〜へそ」までを指します。上腹部にある臓器は、胃や十二指腸、大腸の一部、肝臓、膵臓、腎臓などです。これらで内臓痛が生じると上腹部の鈍痛を引き起こします。

上腹部の内臓痛を招く病気は、以下のとおりです。

  • 胃・十二指腸潰瘍
  • 急性・慢性胃炎
  • 急性膵炎
  • 悪性腫瘍(胃がん・肝臓がん・膵臓がん)

胃・十二指腸潰瘍、胃炎はみぞおちあたりに鈍痛があらわれます。胃潰瘍は食後に、十二指腸潰瘍は空腹のときに痛みが悪化する特徴があります。[3]

膵炎の痛みは、軽い鈍痛から我慢できないほどの激痛までさまざまです。

みぞおちや上腹部、背中にまで痛みが広がることがあります。ほかにも、吐き気や嘔吐、発熱、腹部膨満感、食欲低下などの症状が出現します。[4]

悪性腫瘍ではさまざまな痛みが起きますが、とくに末期がんでは腫瘍による圧迫などにより、痛む場所がよくわからない鈍痛が生じることも多いです。[5]

虫垂炎は右下腹部の激しい痛みのイメージがありますが、初期症状では上腹部に鈍痛があらわれることがあります。痛みの部位や程度を注意深く観察することが大切です。

下腹部の鈍痛の場合

下腹部とは「へそから下」を指します。下腹部にある臓器は、大腸・小腸・直腸の消化管のほかに子宮・卵巣・前立腺・膀胱です。

これらの部位に炎症が生じると下腹部の鈍痛を引き起こします。

下腹部の内臓痛を招く病気は、以下のとおりです。

  • 虫垂炎(盲腸)
  • 腸閉塞
  • 憩室(けいしつ)炎
  • 虚血性腸炎
  • ノロウイルスなどの感染症による急性腸炎
  • 膀胱炎
  • 前立腺炎
  • 子宮内膜症
  • 卵巣のう腫茎捻転(けいねんてん)
  • 悪性腫瘍(大腸がん・前立腺がん)

虫垂炎(別名:盲腸)は、右下腹部に痛みがあらわれます。[6]

歩いたり痛む場所を押したりすると、響くような痛みがするのも特徴です。

腸閉塞では持続的な強い痛みがあらわれる場合があり、お腹のはりや食欲不振、嘔吐や便秘などの症状も出ることがあります。[7]

虚血性腸炎や大腸憩室炎は、左の脇腹から下腹部に痛みがあらわれるのが特徴です。下痢や血便を伴うことがあります。

膀胱炎は、下腹部の鈍痛と排尿時にしみるような尿道の痛みが特徴的です。

病気ではないですが、便秘のときは大腸にたまった便やガスが腸管を圧迫することで下腹部の痛みや張りを感じることがあります。

生理痛や婦人科系の病気でも下腹部に鈍痛が生じます。

関連記事:腹痛の原因は何?考えられる病気と受診目安について解説

【腹痛の鈍痛】原因は男女で異なる?

男性には前立腺があり、女性には子宮や卵巣があるように、解剖学的に身体の構造は男女で異なります。そのため腹痛の原因も性別によって異なる場合があります。

男性に多い腹痛の原因や女性特有の病気について理解しておきましょう。

男性に多い原因

男性の腹痛の原因には、尿路結石や前立腺炎があります。

尿路結石の痛みの特徴は、脇腹から下腹部における激しい腹痛です。痛みが強すぎると吐き気を伴うこともあります。

結石が膀胱内や腎臓内にあるときは無症状または軽い痛みの場合もありますが、結石が下降して尿管にたどり着くと下腹部に強い痛みを引き起こします。[8]

前立腺炎は下腹部の鈍痛や陰部の鋭い痛みや不快感が特徴的です。ほかにも排尿痛や残尿感、頻尿などの排尿トラブルを引き起こすことがあります。[9]

女性に多い原因

女性の原因には婦人科疾患や膀胱炎などが考えられます。女性が膀胱炎になる確率は、男性の5倍とも言われています。[10]

婦人科疾患の代表例は子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣のう腫などがあげられます。

また月経痛では下腹部から腰にかけて締め付けられるような重い痛みが特徴的です。

月経痛が日常生活に支障をきたすほど強い場合は月経困難症と病名がつき、低用量ピルなどで治療します。[11]

膀胱炎は下腹部の鈍痛や排尿時のチクチクとした痛み、むずがゆい不快感が特徴的で、残尿感や頻尿、血尿などの症状もあります。

とくに女性は尿道が短く細菌が膀胱に侵入しやすいため、細菌を外に出せない状態(トイレの我慢)や疲れにより免疫力が下がると膀胱炎を発症しやすくなると言われています。

婦人科疾患は不妊症の原因となる可能性があります。気になる症状がある場合は、我慢せず受診しましょう。

関連記事:子宮内膜炎の症状について|原因から治療法まで解説!

腹痛が鈍痛だったとき受診するタイミング

多くの腹痛はしばらくすると治ることが多く、医療機関を受診する必要がないものも多いです。

しかし腹痛のなかには、すぐに治療が必要になる緊急性の高いものもあります。

「早めに受診した方が良い場合」と「緊急性が高くただちに受診が必要な場合」について解説します。

腹痛が1週間以上続くなら受診

感染性胃腸炎やウイルス性腸炎などの急性腹痛は、おおむね1週間程度で改善することが多く、病院に行かなくても自然に回復することがあります。

ですが以下の場合には鈍痛でも受診した方がよいでしょう。

  • 腹部の鈍痛が1週間以上続く
  • 腹部の鈍痛が、どんどん強くなっている
  • 嘔吐や下痢を繰り返している
  • 発熱や倦怠感がある

我慢できる程度の鈍痛でも1週間以上続く場合は、何か病気が隠れている可能性があるため早めに受診しましょう。また痛みがどんどん強くなっている場合にも注意が必要です。

腹部の鈍痛以外に、嘔吐や下痢、発熱や倦怠感などの症状が出たら受診してください。嘔吐や下痢を繰り返すときは、脱水や低栄養を招く恐れがあります。

また発熱や倦怠感を伴う場合は、抗菌薬で治療が必要になるケースがあります。

症状が軽い腹部の鈍痛であれば、ほかの症状の出現に注意深く観察しながら自宅で様子を見ても良いでしょう。

しかし何かおかしいと思うときは、自分の健康状態の把握のためにも受診することが大切です。

関連記事:胃腸炎の症状は?原因となる細菌やウイルスも紹介

ただちに受診が必要な鈍痛

鈍痛のほかに血便や黒い色の便、吐血がある場合、消化管からの出血が考えられるため、ただちに受診してください。

消化管からの出血が続くと、貧血になり全身にまで影響がおよびます。すぐに、かかりつけ医に相談しましょう。

救急車を呼んででも速やかに受診した方が良い場合は以下のとおりです。[12]

  • 血を吐く
  • 真っ黒または血が混じる便が出る
  • 今まで経験したことのない激痛がある
  • 顔色が悪く、冷や汗や脂汗をかいている
  • 声をかけても反応がない、意識が遠のいている
  • 症状が強く、歩くことができない

腹部の激痛で冷や汗をかいたり顔面蒼白になったりするときは、緊急性の高い病気の可能性があります。ただちに夜間休日問わず受診するか救急車を呼びましょう。

高齢者や子ども、妊娠中、持病がある人は、上記の症状がなくても受診してください。とくに高齢者は、自覚症状が乏しいまま病気が進行する可能性があり注意が必要です。

受診した際に行う検査

腹部の鈍痛で受診すると、問診や診察のほかに検査を行うことがあります。検査は確定診断をする上で重要な判断材料になります。

検査方法

調べられること

血液検査

炎症状態や感染の有無、肝臓や腎臓の状態、貧血などの血液状態が分かります。

尿検査

腎臓や膀胱などの炎症状態などが分かります。

レントゲン検査

内臓の異常を確認できます。

腸に溜まった便・ガスの量や腸管の狭窄・ねじれなども確認できます。

内視鏡検査

(胃カメラ・大腸カメラ)

消化管のポリープや出血部位などを観察したり、粘膜やポリープの一部を切り取って別の検査に回したりできます。

超音波検査

肝臓、胆のう、膵臓、脾(ひ)臓、腎臓などの異常や病気の程度を調べられます。

腹痛の鈍痛が続くときのセルフケア

腹部の鈍痛が続くときには安静に過ごしましょう。腹痛のときに無理をすると、回復が遅れてしまうでしょう。

腹部の鈍痛が続くときの、代表的な対処法を紹介します。

まずは「お腹を温める」ことを意識してみましょう。お腹を温める方法として、腹巻きをする、使い捨てカイロを使う、入浴する、温かい飲み物を飲むなどがおすすめです。

冷えは刺激となって腹痛を悪化させることがあるため気をつけましょう。

「楽な姿勢で十分に休息を取る」ことも重要です。前傾姿勢やお腹を少し丸めて横になる姿勢を取ると、お腹の緊張が取れて痛みが和らぐことがあります。

また休息を取る際は、締め付けの少ない服を選ぶこともポイントです。

腹部を圧迫することで吐き気を誘発したり、腹痛を悪化させたりする恐れがあるため、ゆったりとした服を着るようにしましょう。

症状が落ち着くまでは「消化に良い食事をとる」ようにしましょう。

うどんやおかゆは消化吸収が早く、胃腸に負担がかかりにくい主食です。

うす味でよく煮込まれたやわらかい具材がおすすめです。冷たいものや香辛料を含む刺激物などは控えましょう。

ストレスは腹痛を悪化させます。リフレッシュしてストレスを解消することで腹痛が改善する場合もあります。

自宅で様子をみていても、症状が改善しない場合や悪化するときは医療機関を受診しましょう。

関連記事:下痢の治し方って何が正解?自宅での対処法と受診目安を解説

まとめ|鈍痛でも腹痛が続くのは危険。早めに受診して原因を探ろう

腹痛の鈍痛が続くおもな原因は「内臓の炎症」です。炎症を引き金に臓器が伸縮すると鈍い痛みが発生します。

腹痛の部位によって予想される病気はさまざまで、痛みの程度やほかの症状にも注意して観察することが重要です。

また男性と女性では身体の構造が違うため、かかりやすい病気も異なります。

男性特有の病気は尿路結石や前立腺炎です。女性特有の病気は婦人科疾患や膀胱炎などがあげられます。

腹部の鈍痛は1週間程度で自然に治ることがほとんどです。そのため1週間以上腹痛が続く場合や痛みがどんどん強くなる場合には、早めに受診しましょう。

腹痛のほかに、下血や吐血などの症状があるときはすぐに受診する必要があります。

救急車を呼んででも速やかに受診した方が良い場合は以下のとおりです。

  • 今まで経験したことのない激痛がある
  • 顔色が悪く、冷や汗や脂汗をかいている
  • 声をかけても反応がない、意識が遠のいている
  • 症状が強く、歩くことができない

腹部の鈍痛があるときは「お腹を温める」「楽な姿勢で十分に休息を取る」「消化に良い食事をとる」ことを意識してみてください。

自宅で様子をみていても、症状が改善しない場合や悪化するときは医療機関を受診しましょう。

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参考文献

[1]身体的アプローチ 体性痛と内臓痛

[2]各種疼痛についての総論

[3]重篤副作用疾患別対応マニュアル

[4]アルコールとすい臓病|e-ヘルスネット

[5]中野 治郎|痛みの基礎とがん性疼痛の特徴

[6]平島 相治ほか|急性虫垂炎に対する保存的治療奏効の予測

[7]イレウスの診断と治療―総論および診断―

[8]田口 裕功|尿路結石症の研究第19報 腎・尿管痛の研究

[9]男性下部尿路症状・ 前立腺肥大症 診療ガイドライン

[10]間質性膀胱炎・ 膀胱痛症候群 診療ガイドライン

[11]月経について | 女性特有の健康課題

[12]こんな時は迷わず119へ

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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