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新型コロナウイルス9波の兆しは?予想されるオミクロン株「XBB系統」について解説

新型コロナウイルスは、2023年5月8日に感染症法上、「2類相当」からインフルエンザ相当の「5類」へと危険レベルが引き下げられました。

最近では、第8波が収束を迎えつつあり、外出自粛要請もなくなっています。
しかし、現在はオミクロン株の亜系統であるXBB系統が主流になりつつある状況で、「5類」への移行がどう影響するか懸念されます。

この記事では、コロナ第9波で予想されることや、変異ウイルス「XBB系統」について詳しく解説していきます。

ニュース速報国内の新型コロナウイルス感染者は17日午前10時現在、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」乗船者を含めた累計で3359万9438人となった。 1週間の新規感染者は5万6516人で、前週と比べ約1800人増加した。 都道府県別の1週間の新規感染者は、東京が7766人で最多。大阪3990人、神奈川3944人、北海道3237人、埼玉2793人と続いた。 死者は1週間で134人増え、累計で7万4264人となった。

参考:時事通信社

記事監修

名倉 義人 医師

○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院

○資格
救急科専門医

○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会

最新の新型コロナウイルス感染状況と9波の可能性

2023年3月末時点で、「第8波」はほぼ収束しています。
世界的にワクチン接種率が増加したこともあり、世界全体での新規感染者は徐々に減少傾向にあります。

しかし、4月19日現在では直近1週間の全国の感染者数が前の週と比べて1.06倍増加。
沖縄や石川など、33の都道府県で前の週より増加したと、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで報告がありました。

出席した専門家からは、全国的に感染者の数が増加傾向である状況を踏まえると“第9波”が起きる可能性が高い」との見解が示されています。5月8日から「5類」への引き下げるが決まっている今、リスクが高い高齢者や、基礎疾患を持つ人などへの対策は続ける必要があると強調されていました。

参考:第121回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和5年4月19日)|資料2-1

2023年5月から新型コロナウィルスは5類感染症に移行

政府は新型コロナウイルスの感染法上の分類を、5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げことを決めました。

参考:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る新型インフルエンザ等感染症から5類感染症への移行について|厚生労働省

感染法は、感染力と罹患した場合の重篤性や、危険性の程度に応じて分類されます。
分類引き下げ以前の2類では、新型コロナウィルスは

  • ジフテリア
  • 鳥インフルエンザ(H5N1)
  • 鳥インフルエンザ(H7N9)
  • 中東呼吸器症候群(MERS)

などの感染症と並んでいましたが、引き下げ後の5類は

  • 季節性インフルエンザ
  • 麻疹
  • 風疹
  • 感染性胃腸炎
  • RSウイルス感染症

などの、一般的な感染症として分類されることになりました。
分類の変更により、感染者の外出自粛や医療費の負担、マスク着用など、これまでと対策が大きく変わるようになります。

第8波では「オミクロン株」による死亡者数が増加

第8波では、第7波よりもピーク時のが感染者数少なくなっているにもかかわらず、2023年に入ってから過去最多の死亡者数を更新しました。
この要因について、アドバイザリーレポートで専門家による分析と考察が行われました。
提出されたレポートによると、死亡者数が増えた要因は以下のように分析されています。

  • ピーク時の感染者数は減少したが、合計の感染者数は、第7波よりも増えている
  • 重篤化しやすい高齢者の感染割合が特に増えた(第7波の約1.3倍)
  • その原因は、若年層の報告の減少、正月休み等による帰省、医療機関でのクラスター発生などがある
  • 高齢者の感染が増えたことで、死亡者数も増えた

第8波では、上記の通り高齢者の死亡者数が増加していました。
この原因としては、クラスター発生以外にも、新型コロナ感染による併発疾患や合併症による死亡者の増加があるそうです。
また、他にも時間経過よるワクチンや、感染による獲得免疫の低下も一因として考えられるそうです。

参考:厚生労働省−オミクロン株による第8波における死亡者数の増加に関する考察
参考:厚生労働省-データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-

新型コロナウイルス9波が起きた場合に予想されること

全国の感染者は増加傾向にあり、専門家の会合では、「“第9波”が起きる可能性が高い」との見解が示されています。
また、国内でこれまでに感染した人の割合が海外と比べて低いことなどから「第8波より大きな規模になる可能性がある」との意見も。
こうした背景の上で、今後国内で「第9波」が発生した場合の考察がされています。

5類移行後は「全体把握」から「定点把握」に

2類である現在は、新規陽性者数は発生届をもとにした「全数把握」により日毎に把握されています。
全体把握では、感染者の地域ごとの数だけでなく、患者の症状や基礎疾患の有無なども記録され、入院の必要性の判断にも活用されています。
>>厚生労働省-データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-

今後は5類感染症へ引き下げられることにより、新規陽性者数は「定点把握」となります。
定点把握とは、あらかじめ指定した全国の医療機関から定期的に患者数を集計することによって、地域ごとの流行具合を推定する方法です。

全数把握定点把握
特徴詳細に報告
医療機関の負担が大きい
簡潔に報告
医療機関の負担が小さい
報告対象すべての医療機関指定された医療機関
報告内容症状や感染経路、診断方法など

例:重症急性呼吸器症候群(SARS)発生届出票

年齢や人数など

例:感染症発生動向調査(インフルエンザ/COVID-19定点)

5類に分類されている季節性インフルエンザの場合、全国の小児科約3000か所・内科約2000か所の医療機関が指定されています。
週ごとに患者数を集計することにより、定点当たりの患者数の変動を見て、流行の動向を予想しています。

定点把握に切り替えた場合、医療機関や保健所側の情報入力等の作業負担は軽減されるでしょう。
しかし、データの量や質が変わることで、分析が困難になる可能性も考えられます。

参考:感染症発生動向調査について|厚生労働省
参考:NHK首都圏ナビ コロナ 全数把握と定点把握とは 何が違う?感染者把握の仕組み

新型コロナウイルス9波が発生した場合の医療現場の状況

世界一の病床大国である日本では、医療現場が逼迫が問題となっています。
感染症法5類への引き下げで一般の医療機関でも診察ができるようになり、医療のひっ迫が軽減されることが期待されています。

その一方で、現場の医師からは懸念する声もあります。
基礎疾患を持った高齢者が多い病院では、新規のコロナ患者の受け入れは行ってこなかった病院も多くあります。

「5類に変わり一般患者も受け入れてほしいという要望があれば、対応していかないといけない」
「新型コロナウイルスは5類とはいえ、インフルエンザとは同等に扱えない。患者数が増えたときの対応が難しい」
という懸念の声も挙げられました。

参考:関西テレビNEWS 新型コロナが『5類』へ 医療現場の“受け止め”は?

以前にも、病院内でのコロナウイルスのクラスター発生は度々問題となっています。
特に感染力の強い「オミクロンXBB.1.5株」が流行すれば、基礎疾患のある方や高齢者の方は特に注意が必要です。

そんな中、3月1日付けの日本医師会定例記者会見では、以下のようなコメントがありました。

「高齢者人口の多いわが国においては、エンデミックによる感染リスクのレベルは、可能な限り感染リスクのレベルが低い状態でとどまる状況を目指すべき」
「その実現のためにも類型変更後の医療提供体制、特に外来の体制確保への支援が引き続き必要になる」

※引用:新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更後の医療提供体制について|日医on-line

医療体制の逼迫しないよう、逼迫度合いを引き続きモニターし、今後も継続した支援が重要だとしています。

新たな変異株「XBB.1.5」とは?

2022年末のアメリカにおいて、XBB.1株の子孫株であるXBB1.5株の感染が急激に増加しています。
東京大学医科学研究所システムウイルス学分野の佐藤佳教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」では、オミクロンXBB.1.5株のウイルス学的特徴を以下のように分析しています。

  • XBB.1.5株はXBB.1株より実効再生産数が1.2倍高い
  • XBB.1株より感染力が3倍高い
  • 高い免疫逃避能を保持している

XBB.1.5株はXBB.1株より実効再生産数が1.2倍高い

実効再生産数とは、「ある時点において1人の感染者が全感染期間に感染させる人数の平均値」を表す指標です。
(「1」を上回ると感染が拡大に向かう一方、「1」を下回ると収束に向かうとされています。)

米国内のウイルスゲノム取得情報をもとに、ヒト集団内におけるオミクロン株の実効再生産数を推定しました。
その結果、オミクロンXBB.1.5株の実効再生産数は、オミクロンXBB.1株に比べて1.2倍高いことがわかりました。

XBB.1株より感染力が3倍高い

ウイルスの感染性を評価したところ、オミクロンXBB.1.5株はオミクロンXBB.1株と比べ、3倍高い感染力を示しました。
その要因として考えられているが、オミクロンXBB.1.5株が新たに獲得したとされるS486P変異というスパイクタンパク質です。

人間がウィルスに感染する入り口となるのが、「感染受容体ACE2」という細胞の表面にあるタンパク質です。
S486P変異によって従来のオミクロンXBB.1株よりも強く感染受容体ACE2と結合できるようになり、感染性が高まったと考えられています。

高い免疫逃避能を保持している

これまで流行しているオミクロン株(BA.2株、BA.5株など)の多くは、免疫逃避能があります。
検証の結果、オミクロンXBB.1.5株も免疫逃避能があることがわかり、その高さは祖先株であるオミクロンXBB.1株と同程度とされています。

※参考:東京大学医科学研究所 プレスリリース

大型連休中にも要注意。コロナウイルス感染対策をおさらい

昨年、2022年のゴールデンウィークは「第7波」への警戒が続く中で迎えました。
3年ぶりに行動制限がなかった2022年のゴールデンウィークは、都道府県をまたぐ人の移動は2021年のゴールデンウィークより3割増加。
コロナ前の82%にまで戻ったことがわかりました。

新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されていましたが、5月15日の時点で全国の1週間平均の感染者数はおよそ3万9000人と、連休直前の4月28日とほぼ同じ水準でした。

5類感染症の引き下げは大型連休後になっていますが、XBB.1.5株の感染拡大や9波の発生が懸念される中、今一度感染対策をおさらいしてみましょう。

医療機関ではマスク着用が推奨

令和5年3月13日以降、マスクの着用は個人の判断に委ねることになっています。
その一方で、高齢者など感染リスクが高い方と接触する場面ではマスクの着用が推奨されています。

具体的には、下記の場面ではマスクの着用を推奨されています。

  1. 医療機関を受診する時
  2. 高齢者など重症化リスクの高い方が多く入院・生活する医療機関や高齢者施設などへ訪問する時
  3. 通勤ラッシュ時など、混雑した電車やバス※に乗車する時(当面の取扱)
    ※概ね全員の着席が可能であるもの(新幹線、通勤ライナー、高速バス、貸切バス等)を除く。
  4. 症状がある方、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性となった方、同居する家族に陽性となった方がいる場合

マスク着用の主な目的

マスク着用の主な目的は、会話や咳による飛沫の飛散や吸い込みを防ぐことです。
飛沫を出す側と吸い込む側、両者の距離感や、マスクの素材(性能)によっても、防御効果に大きな違いがあります。

たとえば、マスクの捕集効率は、布製やウレタン製よりも不織布素材の方が高いことが示されています。
また、鼻の部分に金具がある場合は、折り曲げてすき間のないよう顔にフィットさせた方が効果が高いことが示されています。
参考:内閣官房長官 新型コロナウイルス感染症対策 感染拡大防止に向けた取組

こまめな手洗い・手指消毒

共用物に触った後、食事の前後、公共交通機関の利用後などは必ず手洗い・手指消毒をするようにしましょう。

3密(密接・密集・密閉)の回避

  • 換気が悪い空間(密閉空間)
  • 人が密集している(密集場所)
  • 近距離で会話や発声が行われる(密接場所)

マスクを外すときは、特にこの条件の場所を避けることで感染のリスクを減らすことができます。
※参考:首相官邸 3つの密を避けましょう

まとめ

マスク着用の緩和に引き続き、5類へと感染症法へ引き下げになる新型コロナウイルス。
5類感染症となる5月8日以降では、今までと比べて詳細の変異株の動向や陽性者数・分析を追うことが難しくなるかもしれません。

また、新型コロナウイルスの流行は変異株の発生続いている為、今後も数年は続くと考えておいた方がようでしょう。
変異型「オミクロンXBB.1.5株」が注目されており、9波への影響のリスクが懸念されています。

しかし、新型コロナウイルスの流行にも1波、2波…と波があるように、収束している時期においては、今回のように感染対策を大幅に緩和した生活を送ることができます。
その一方で、感染が拡大してしまった場合には再度マスク着用などの感染対策が強化される可能性もあります。

政府は、5類への引き下げ後も再度感染状況を見て2類への引き上げも視野に入れていると発言されています。
感染対策の緩和が進む一方で、新たな感染者数数の増加へつながらない為にも、個人の感染対策への意識が求められています。

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