りんご病とは?症状や似た病気との見分け方を解説

公開日: 2024/03/01 更新日: 2024/09/29
りんご病はヒトパルボウイルスに感染することによって、軽い風邪の症状や頬に真っ赤な発疹が現れる病気です。 大人にもうつることがあり、りんご病にかかった子どもの看病を行っている両親は感染リスクに気を付ける必要があります。 りんご病にかかってもほとんどが自然に治癒しますが、免疫力が低下している人や貧血がある人は重症化してしまうこともある怖い病気です。 この記事ではりんご病の症状と、「顔が赤いけどどの病気だろう?」といった方のために、りんご病と間違いやすい病気を紹介しています。 治療法や生活上の注意点についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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りんご病((伝染性紅斑(でんせんせいこうはん))とは?

りんご病(伝染性紅斑)は、子どもによくみられるウイルス性の感染症です。頬に現れる赤い発疹が特徴で、両頬がりんごのように赤くなることから「りんご病」と呼ばれます。

ここでは、りんご病の症状や経過、原因、治療法などについて解説します。

りんご病のような症状が出ている方、りんご病かどうか確かめたいと思っている方は、りんご病チェックシートを活用してみてください。

りんご病の初期症状~完治までの経過例

りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19に感染すると、10~20日の潜伏期間ののち、咳や発熱、鼻汁、筋肉痛などの風邪の症状が現れます。[1]

症状はほとんどの場合軽く、無症状の人もいます。その後、1週間くらい経過してから頬に赤い発疹が現れるのが特徴です。

赤い発疹は「平手打ち様紅斑」「りんご様紅斑」「蝶形紅斑(蝶が羽を広げたような形の紅い発疹)」と表現されます。

この特徴的な皮膚の発疹が出て初めてりんご病と診断されることが多いです。 

その後、1~4日経過すると手足や体幹にも発疹が現れ、2日程度経過すると退色してレース様、まだら模様に変化してきます。[2]

発疹はかゆみや熱感を伴うこともありますが、ほとんどの場合1~3週間程度で消失します。

ただし、なかなか消失しないことや、消失した発疹が再び出現することもあるため注意が必要です。

りんご病の原因、ヒトパルボウイルスB19とは?

りんご病は「ヒトパルボウイルスB19」というウイルスに感染することで発症します。

ヒトパルボウイルスB19は、りんご病の原因となるウイルスとして1983年に明らかにされました。

近年の研究により、流産や死産、急性糸球体腎炎など、さまざまな病気の原因となることがわかってきました。[3]

りんご病のおもな感染経路は、咳やくしゃみなどのしぶき(飛沫)に含まれるウイルスを吸い込むことによる「飛沫感染」です。[1]

りんご病には予防接種がないため、手洗いやマスクの着用など一般的な感染予防対策を行うことが重要です。

流行状況と流行時期

りんご病は、例年1~7月にかけて患者数が増加し、9月頃に最も少なくなります。しかし、流行が小さい年には、はっきりとした季節性がみられないこともあります。

過去の流行状況は、1991~1992年、1996~1997年、2001~2002年 、2006~2007年、2010~2011年、2015~2016年と、それぞれ2年にわたる流行が約5~6年間隔で起こっています。

患者の年齢は5~9歳が最も多く、ついで0~4歳に多いとされています。[1]

りんご病チェックシート

以下の症状がある場合、りんご病にかかっている可能性があります。[1]

  • 頬が赤くなっている
  • 手足、お腹、お尻にレース様または網目状の赤い斑点ができた
  • 発疹が出る前に以下の風邪症状があった
    (咳/鼻水/関節痛/頭痛/腹痛/発熱/リンパ節の腫れ/筋肉痛/だるさ/くしゃみ/頭痛)

風邪症状だけではりんご病の診断はつきませんが、特に発疹が出てくる前に上記の風邪症状があった場合はりんご病の可能性が高いと考えられます。

ただし、似たような症状が現れる病気もあるため自己判断は禁物です。早めに医療機関を受診して医師の診察を受けましょう。

りんご病を疑う場合の受診科目、治療法

子どもにりんご病を疑う症状が現れた場合は小児科を受診しましょう。成人の場合は内科を受診するとよいです。

妊娠している場合は胎児に影響が出る可能性があるため、りんご病と診断されたらすぐに産婦人科を受診してください。

りんご病は症状や経過、流行状況をみて診断することが多いですが、特徴的な発疹が現れる前は通常の風邪などの体調不良と見分けるのは困難です。

確定診断は、血液検査でヒトパルボウイルスB19に対する抗体を検出する方法が用いられます。

りんご病には特別な治療法はないため、症状を和らげる対症療法が治療のメインです。

喉の痛みや発熱には抗炎症薬や解熱鎮痛剤を使用し、かゆみがある場合は抗ヒスタミン薬を使用します。

子どもの場合はりんご病にかかっても症状は軽く、治療を行わなくても自然に回復することがほとんどです。

ただし、免疫不全がある場合は治療を行わないと感染が持続することがあります。

また、溶結性貧血という病気がある場合、重度の貧血を引き起こす可能性があるため注意が必要です。[4]

また、りんご病のように頬が赤くなる病気はいくつかあり、なかには重い合併症を引き起こすものもあります。

適切な治療を受けるために、りんご病を疑う症状があるときは必ず医療機関を受診しましょう。

発疹が出た後も熱が続いていて不安ではないですか?

通常、熱が下がってから発疹が出るりんご病ですが、 中には発疹が出てもなかなか熱が下がらない...といった方もいると思います。

症状に不安がある方は24時間スマホで診察ができるファストドクターにご相談下さい。

かゆみ止めや解熱剤など、お子様の症状に合わせたお薬をお届けします。

りんご病は後遺症が残る?

りんご病は後遺症なく自然に回復することがほとんどです。ヒトパルボウイルスB19に一度感染すると、その後生涯にわたり感染することがない「終生免疫」を得られます。

つまり、りんご病は一度かかると再びかかることはありません。ただし、発疹が消失したあと数週間は再発する可能性があります。

運動や日光、暑さ、発熱、精神的ストレスなどによる刺激で発疹が再び現れ、悪化することがあるため注意が必要です。[4]

りんご病はうつる?

りんご病はうつる病気です。周囲の人に感染させるおそれがあるため、子どもが発症してしまった場合は幼稚園や保育園に行かせていいのか迷う方もいるでしょう。

また、りんご病は子どもに多くみられる病気ですが、大人にもうつります。大人は子どもより症状が重くなることもあります。

ここでは、りんご病に感染したときの幼稚園や保育園への登園の判断や、大人が感染した場合の症状について解説します。

幼稚園や保育園にいってもいいの?

りんご病にかかっても、発熱がなく本人が元気であれば登園しても大丈夫です。

りんご病は風邪の症状が出ている間には感染力がありますが、発疹が現れる頃には感染力は消失しています。[1]

発熱や喉の痛み、頭痛、身体のだるさなどのつらい症状が改善すれば、他の子にうつす心配もないため登園は可能です。

登園の判断に迷うときは、通っている園に確認してみるとよいでしょう。

大人にはうつるの?

りんご病は子どもへの感染が多い病気ですが、大人にもうつります。

ヒトパルボウイルスB19に感染した経験がない大人は、ウイルスへの免疫がないため感染する可能性があります。

大人がかかった場合、子どもよりも重症化しやすいため注意が必要です。りんご病の特徴的な発疹が現れるほか、関節に腫れや痛みが出る場合があります。[5]

また、妊娠中の女性が感染すると流産や死産、胎児の重い病気の原因になことがあるため注意が必要です。

胎児へ感染してしまった場合、胎児に貧血が起こり皮膚やお腹・胸などに水がたまる胎児水腫(たいじすいしゅ)という病気になってしまう場合があります。

妊娠している方は、地域の感染症流行マップをチェックして、りんご病の流行時期に風邪の症状がある人に近づくのは避けましょう。

りんご病には今のところワクチンがなく、感染したことがない人にはうつる可能性があります。

周囲にりんご病にかかっている人がいたら手洗いうがいをしっかりと行い、マスクを着用して感染を予防しましょう。

関連記事:「大人のりんご病(伝染性紅斑)に注意」

りんご病にかかったときの生活上での注意点

りんご病の発疹は刺激が加わると症状が悪化することがあります。

ここでは、りんご病にかかったときに避けたほうがいい行動4つと、りんご病を早く治すためにできることをご紹介します。

絶対NG行動

りんご病にかかったときに避けたほうがいい行動は以下の4つです。

  1. 強い日光にあたる
  2. 熱いお風呂に長くつかる
  3. 激しい運動をする
  4. かきむしる

屋外で強い日光に当たる、熱いお風呂に長時間入る、激しい運動をするといった行動をとると発疹が悪化し長引くことがあります。

また、一度消えた発疹が刺激によって再び現れることもあります。

発疹があるときは外出はなるべく短めに済ませるか日傘をさすなどの対策をし、日差しが強いときはできるだけ屋内で過ごすようにしましょう。

入浴はぬるま湯くらい(37~38℃)のシャワーのみで済ませ、運動も控えたほうがよいです。

また、皮膚をかきむしると発疹が広がる可能性があります。かゆみが強い場合は、皮膚科を受診してかゆみ止めを処方してもらうと症状がやわらぎます。

症状を悪化させないために、紫外線や熱いお湯、運動など刺激になるものは避け、かきむしらないようにしましょう。

りんご病を早く治すためにすること 

りんご病は特別な治療を行わなくても自然に回復することが多い病気ですが、頬が真っ赤になると見た目も気になるため、早く治したいと思う方も多いでしょう。

しかし、りんご病には発疹を早く引かせる薬などはありあません。

上記で紹介したNG行動をさけ、焦らず自然治癒するのを待ちましょう。

症状がひどい場合は病院で薬を処方してもらい、発熱があれば水分をしっかりとって安静にすることが大切です。

りんご病に似た病気

ここまで読んでみて「頬が赤いけど、りんご病ではなさそう…」という方もいるかもしれません。

ここでは、りんご病以外の頬が赤くなる病気を紹介します。

子どもの病気(溶連菌、風疹など)

溶連菌や風疹でも頬に発疹が出る場合があります。

溶連菌はA群レンサ球菌による上気道の感染症です。発熱や咳、喉の痛みから発症することが多く、頭痛や倦怠感、食欲不振、腹痛などの症状を伴うこともあります。

乳幼児では咽頭炎、年長児や成人では扁桃炎を起こすのが特徴です。[6]

溶連菌は肺炎や髄膜炎、敗血症などの重い合併症を引き起こすこともあります。[7]

風疹は風疹ウイルスによる感染症です。1人の風疹患者から5~7人にうつすほどの強い感染力をもちます。発熱や発疹、リンパ節腫脹を特徴とします。

子どもの場合、症状は比較的軽いことが多いですが、まれに脳炎や血小板減少性紫斑病などの重い合併症を引き起こすことがあります。[8]

また、妊娠している女性が風疹に感染すると、生まれてくる子どもが眼や耳、心臓などに障害をもつ「先天性風疹症候群」になる可能性が高くなるため注意が必要です。

りんご病と溶連菌、風疹の違いは以下の通りです。

りんご病

溶連菌

風疹

・レースカーテンのような発疹

・風邪の症状から1週間くらい経過して発疹が出る

・発疹は1~3週間で消失する

・細かな赤い発疹が出る

・発疹は数日で消失する

・水ぶくれができることがある

・日焼けした皮膚のようになることがある

・咽頭炎、扁桃炎によるのどの痛み

・のどの痛み以外に風邪の症状がない

・口の中に点状の出血がみられることがある

・舌の表面がいちごのようになることがある

・皮膚の皮がむける

・バラ色のやや盛り上がった発疹が全身に出る

・発疹は数日で消失する

・熱と発疹が出るタイミングがほぼ同時

・目の充血

溶連菌や風疹は重い合併症を引き起こす可能性があるため、自己判断せずに小児科を受診して医師の診察を受けましょう。

大人の病気(クッシング症候群や酒さなど)

りんご病に似た症状が現れる大人の病気には、クッシング症候群や酒さがあります。

クッシング症候群は、副腎皮質ステロイドホルモンの1つである「コルチゾール」が過剰に分泌され、以下の特徴的な症状が現れる病気です。[9]

多くの例で高血圧や糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症などの合併症を引き起こします。また、うつ病や幻覚などの精神障害が起こることもあります。

病気が進行すると感染症に対する抵抗力が弱くなり、 敗血症を起こすこともあるため注意が必要です。

酒さは顔の中央部に発赤と小さな吹き出物が現れ、皮膚の下の血管がはっきりと見えるようになる皮膚の病気です。[10]

酒さは皮膚が赤く腫れたように見えるため、りんご病と見分けが難しいことがあります。

りんご病とクッシング症候群、酒さの違いは以下の通りです。

りんご病

クッシング症候群

酒さ

・レースカーテンのような発疹

・風邪の症状から1週間くらい経過して発疹が出る

・発疹は1~3週間で消失する

・皮膚が薄くなり毛細血管が透けて見える

・皮下出血がられることがある

・顔に脂肪が沈着して丸くなる

・肩に脂肪が蓄積する

・皮膚に赤い色の筋が現れる

・体幹に近い部分の筋力が低下する

・顔の中心に吹き出物が出る

・皮膚の下に細い血管が見える

・鼻の周囲の皮膚が厚くなり、赤くなって団子鼻のようになることがある

これらの病気を見分けるには医師による正確な診断が必要です。

自己判断で市販の治療薬を使用すると症状が悪化するおそれもあるため、内科や皮膚科を受診して医師の診察をうけましょう。

まとめ

りんご病(伝染性紅斑)は、ヒトパルボウイルスB19に感染することで発症する子どもによくみられる病気です。

咳や鼻汁、発熱、筋肉痛などの風邪の症状が現れ、その後1週間ほど経過して頬に赤い発疹が現れます。

初期症状は風邪やインフルエンザとよく似ているためりんご病と診断するのは難しく、赤い発疹が出て初めて診断されるケースが多いです。

りんご病には特別な治療法がないため、症状を緩和するための対症療法を行います。

子どもの場合は治療を行わなくても自然に回復することがほとんどですが、免疫不全や溶結性貧血がある場合は重症化するおそれがあります。

また、大人は子どもより症状が重くなりやすく、妊婦が感染した場合は胎児に影響が出ることがあるため注意が必要です。

風疹や溶連菌など、りんご病のように頬が赤くなる病気はいくつかあります。

なかには重い合併症を引き起こす病気もあるため、りんご病が疑われる症状が現れたときは自己判断せず、医療機関を受診して医師の診察を受けましょう。

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参考文献

[1]NID国立感染症研究所|伝染性紅斑とは

[2]東京都こども医療ガイド|りんご病(伝染性紅斑)-解説-

[3]JSTAGE|ヒトパルボウイルスB19感染症の様々な病態

[4]MSDマニュアルプロフェッショナル版|19. 小児科|乳児および小児における様々なウイルス感染症| 伝染性紅斑

[5]大阪府|伝染性紅斑(リンゴ病)について 

[6]厚生労働省|A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

[7]NID国立感染症研究所|A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは

[8]厚生労働省|風しんについて

[9]厚生労働省|クッシング病

[10]MSDマニュアル家庭版|17. 皮膚の病気|にきびと関連疾患|酒さ

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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