Language
  • TOP
  • 医療コラム
  • 【2023年最新版】学童期/思春期予防接種スケジュール【徹底解説】

【2023年最新版】学童期/思春期予防接種スケジュール【徹底解説】

日本の子どもたちを予防接種(ワクチン)で予防できる病気から守り、後遺症を残すことがないように、必要なワクチンを適切な時期に適切な回数接種することはとても重要です。

小さいころよりも、体調不良を起こしにくくなる学童期/思春期。

「病気になりにくくなったのに、まだ予防接種をしなければいけないの?」
「注射をすることでデメリットはないの?」

さまざま疑問や不安を抱え、予防接種スケジュールをどのように組んでいけばよいのか、悩んでいる親御さんがほとんどです。
今回は学童期/思春期に接種すべき予防接種のスケジュールだけでなく、目的・注意点も合わせて解説します。

エムラパッチ

詳しくはこちら

1歳までのお子さんの予防接種スケジュールはこちら

1歳~6歳になったお子さんの予防接種スケジュールはこちら

すべての年齢のお子さんの予防接種スケジュール、同時接種、ワクチンの重要性についてはこちら

記事監修

名倉 義人 医師

○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院

○資格
救急科専門医

○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会

学童期/思春期の予防接種スケジュール

学童期/思春期とは、6歳~18歳までの時期です。
この時期には、次の予防接種が推奨されています。

  • 2種混合(DT)
  • 日本脳炎
  • PV

それぞれの予防接種のスケジュールや接種推奨年齢について解説します。

ワクチン名接種回数接種推奨年齢
二種混合(DT)1回11〜12歳
日本脳炎1回(4回目)9~12歳
PV1回小学6年生以上の女子

PVワクチンのスケジュールを立てるポイント

PVワクチンは、接種する薬の種類によって接種間隔・回数・注意点が異なります。
PVワクチンには、2価、4価、9価の3種類がありますが、定期接種には9価ワクチンが推奨されています。

PVワクチンの接種推奨年齢は中学1年生、12歳です。12歳を目安に9価ワクチンを受けるようにしましょう。
またHPVワクチンの9価を接種する場合、15歳未満は2回接種、15歳以上は3回接種が必要です。

薬剤の種類スケジュール
9価(シルガード9)15歳未満の女子:初回接種後、5か月以上あけて2回目を接種。 15歳以上の女子:初回接種の2か月後に2回目、初回接種の6か月後に3回目を接種。
4価(ガーダシル)初回接種の2か月後に2回目、初回接種の6か月後に3回目を接種。
2価(サーバリックス)初回接種の1か月後に2回目、初回接種の6か月後に3回目を接種。

学童期/思春期の予防接種の目的

幼児期と比べ感染症にかかりにくくなったとはいえ、大人と比べるとまだまだ免疫力の弱い学童期。

この時期には、幼少期に接種した予防接種の追加接種をすることで十分な免疫力をつける目的のものと、大人になってからの病気の発症を抑えるものの2種類があります。

十分な免疫力をつけるためにおこなう予防接種を“追加接種”といい、二種混合や日本脳炎はこれにあたります。

参考:予防接種のお話 公益社団法人 東京都医師会

大人になってからの病気の発症を減らすためにおこなう予防接種には、HPVワクチンがあります。

PV=ヒトパピローマウイルスは、性交渉によって感染するウイルスで、生涯1度でも性交渉をしたら誰でも感染する可能性があるウイルスです。
ヒトパピローマウイルスは、約150もの種類があり、たとえ感染していてもほとんどの人が治ります。
ある報告では、女性の80%が知らない間にヒトパピローマウイルスに感染し、治癒しているといわれているのです。

しかし、多くの人がヒトパピローマウイルスに感染して治るといっても、一部の人は感染が持続し、がんになることがわかっています。
なかでも16、18、31、33、45、52、58型などの種類のヒトパピローマウイルスは、がんを発症しやすく、毎年0.1〜0.15%の女性(毎年1~1.5万人)が子宮頸がんを発症しています。

ヒトパピローマウイルスに感染したとしてもがんになる確率は、ごくわずか。
しかし、子宮頸は20歳台の若い女性でも発症しますし、30~40歳代の女性の発症も多い病気です。

さらに子宮頸がん以外にも、中咽頭がん、肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がんなどの原因にもなることが報告されており、将来、がんを発症するリスクを下げるためにも、ヒトパピローマウイルスの感染はできるだけ予防しておきたいのです。

実は“HPVワクチン”には、3つの種類があり予防できるヒトパピローマウイルス感染症の種類が異なります。

9価:シルガード990%の子宮頸がん(16、18、31、33、45、52、58型) 尖圭コンジローマ(6型、11型) などのヒトパピローマウイルス感染症
4価:ガーダシル70%の子宮頸がん・肛門がん (16、18型) 尖圭コンジローマ(6、11型)などのヒトパピローマウイルス感染症
2価:サーバリックス70%の子宮頸がん(16、18型)などのヒトパピローマウイルス感染症

現在、定期接種が推奨されている9価ワクチンは、より多種類のヒトパピローマウイルス感染症の予防が期待できます。

どの種類のHPVワクチンを接種したらよいかわからないという方は、接種が推奨されている9価ワクチンを選ぶとよいでしょう。

学童期/思春期の予防接種の注意点

学童/思春期の予防接種の注意点は次の2点です。

  • 血管迷走神経反射(失神)や予防接種ストレス関連反応(Immunization Stress-Related Responses:ISRR)をおこすことがある
  • 留学など、渡航の際に必要な予防接種がある

順に解説します。

失神やISRRをおこすことがある

「HPVワクチンを打つと具合が悪くなる」

このような報道やSNSを目にしたことがある方も多いかもしれません。

一般的に予防接種を打った後は、接種部位の局所の痛みや軽度な発熱などの副反応がおこります。
しかし、ある程度の年齢に達すると痛みへの不安や恐怖、さらに、その緊張がとけたとき神経反射の影響で、気を失ったりするケースがあります。

これは、HPVワクチンに限ったことではなく、採血や注射・点滴などでも失神をおこす人がいることは以前から知られていて、緊張しやすい人は横になったまま処置を受けるなどして対処していました。

2020年1月、WHOは「予防接種ストレス関連反応(Immunization Stress-Related Responses:ISRR)」という考え方を発表しました。
ISRRは年齢(10歳代)、以前の注射後の失神などのいやな経験、血液や注射やけがに対する恐怖などの予防接種に関連する「不安」によるストレスが原因で、全身にさまざまな反応が現れるもので、以下に分類されます。

接種前~接種後5分以内急性ストレス反応 血管迷走神経反射
接種後数日(7日以内)解離性神経症状反応(Dissociative Neurological Symptom Reactions:DNSR)

数年前に積極的な摂取推奨中止につながった、HPVワクチン接種後の多様な症状は、これらが原因であったと考えられて、お子さんがHPVワクチンを接種した場合にこのような症状が現れる可能性はゼロではありません。

もしも、予防接種に不安を抱えている、痛みに弱いなど心当たりがある方は、かかりつけ医とよく相談したうえで、安心できる環境で予防接種を受けるようにしたいですね。

痛みが我慢できない時は、痛くない麻酔シールをご利用ください。

エムラパッチ

留学など、渡航の際に必要な予防接種がある

海外の一部の国と地域では、入国の際に予防接種証明書の提示を求められることがあります。留学や入学・就業の際も同様です。

海外で感染症にかからない、さらに、国内では流行していない病気を海外から持ち込まないために渡航に際して予防接種が求められるのです。

求められる予防接種の種類は、乳幼児期に定期接種をおこなった麻疹・風疹・ポリオだけでなく、黄熱やA型肝炎、狂犬病など国内では流行していない病気もあり多岐にわたります。
以下は、推奨される予防接種の種類と対象者の一覧です。

予防接種対象
黄熱感染リスクのある地域に渡航する人 入国に際して証明書の提示を求める国へ渡航する人
A型肝炎途上国に長期(1か月以上)滞在する人、特に70歳以下
B型肝炎血液や体液に接触する可能性のある人
破傷風冒険旅行などでけがをする可能性の高い人
狂犬病イヌやキツネ、コウモリなどの哺乳動物が多い地域へ行く人で、特に近くに医療機関がない地域へ行く人 動物研究者など、動物と直接接触する人
ポリオ流行地域に渡航する人
日本脳炎流行地域に長期滞在する人(主に東南アジアでブタを飼っている農村部)
麻疹・風疹海外へ渡航しない人も含めて、すべての人
インフルエンザ海外へ渡航しない人も含めて、すべての人
新型コロナ海外へ渡航しない人も含めて、すべての人 入国に際して証明書の提示を求める国へ渡航する人
髄膜炎菌流行地域に渡航する人、定期接種実施国へ留学する人

引用:海外渡航のためのワクチン(予防接種) 厚生労働省

予防接種の種類によっては、複数回接種する必要があるものもあり、接種完了までに半年程度の時間を要するケースも。
海外に渡航する可能性がある人は、できるだけ早くかかりつけ医に相談し、予防接種を受けるようにしましょう。

わからないことはかかりつけ医に相談しよう

乳幼児期と比べて予防接種を受ける機会が減ったとはいえ、将来に備えて予防接種を受ける必要がある学童/思春期。

お子さんの将来設計や人生経験によって、接種すべき予防接種が増える時期でもあります。

「どのような順で打ったらいいの?」
「打ち忘れている予防接種はない?」
「すべての予防接種を打ち終わるためには、いつからスタートすればいい?」

大きくなったとはいえ、予防接種のスケジュールを親御さんお一人で立てるのはとても大変。

そんなときに、心強い味方になってくれるのは「かかりつけ小児科」です。
お子さん一人ひとりのアレルギーや持病、家族構成、地域の感染症の流行状況などさまざまな情報から、お子さんに合ったスケジュールを立ててくれるでしょう。

当院でも、お子さんお一人おひとりに合わせた予防接種スケジュールをご提案しています。
さまざまな不安やお悩みにもお答えします。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

本記事では、学童/思春期の予防接種のスケジュールについて解説しました。

学童/思春期の予防接種は、小さなころに接種した予防接種の免疫を強化するだけでなく、将来の病気発症予防にも効果が期待できます。
さらに留学や就学、就業などで予防接種が必要な場面も増えてくるため、現在までの予防接種の接種状況を把握しておくようにしたいですね。

「今までに、打ち忘れている予防接種がないか心配」
「留学するけど、いつから予防接種をはじめたらいいの?」
「痛いのが怖い。予防接種を打つのが不安」

不安や恐怖、疑問を抱えている親御さん・お子さんは少なくありません。些細なことでもかまいませんので、お気軽に当院にお問い合わせください。

お子さんお一人おひとりにあった予防接種スケジュールで、予防できる病気にかからない・重症化しない・後遺症を残さないようにしていきましょう。

エムラパッチ

詳しくはこちら

1歳までのお子さんの予防接種スケジュールはこちら

1歳~6歳になったお子さんの予防接種スケジュールはこちら

すべての年齢のお子さんの予防接種スケジュール、同時接種、ワクチンの重要性についてはこちら