セディール(タンドスピロン)とSSRIの違いは?効果や作用の仕方などを詳しく解説
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セディール(タンドスピロン)とSSRIの違い
セディールとSSRIは、どちらも気分の安定にかかわる「セロトニン」という神経伝達物質に作用する薬です。ただし、セロトニンへの働きかけ方は異なるため、得られる効果や向いている症状にも違いがあります。
次の表では、セディールとSSRIの違いを整理しました。とくに効果や適応、作用機序の違いに注目してみてください。
項目 |
セディール[1][2] (アザピロン系抗不安薬) |
(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) |
一般名 |
タンドスピロン |
パロキセチン、セルトラリン エスシタロプラム、フルボキサミン など |
おもな作用 |
抗不安作用が中心 |
抗うつ作用と抗不安作用の両方をもつ |
効能・効果 |
|
※適用範囲は各成分によって異なる |
作用機序 |
脳内のセロトニン1A受容体に作用し、セロトニンの働きを調整する |
セロトニンが神経細胞に再び取り込まれるのを防ぎ、脳内のセロトニン濃度を高める |
飲み方 |
1日3回の服用 |
1日1回または1日2回服用 |
薬が効き始めるタイミング |
2週間〜数週間かかる[7] |
最低でも2週間かかる[8] (効果が安定するまでには4週間かかる) |
副作用 |
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注意点 |
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セディールとSSRIの違いについて理解を深めるために、各項目についてひとつずつ比較しましょう。
効果
セディールは、不安や緊張をやわらげるために用いられます。うつ病と診断されていなくても、症状が日常生活に支障をきたしている場合は処方されることがあります。
一方SSRIは、うつ病や不安障害と診断された場合に治療の中心となる薬です。セディールは「抗不安薬」に分類され、軽度から中等度の不安に対して効果を示します。自律神経の乱れによる心身の不調のほか、不安障害にともなう心の症状緩和に使用されます。補助的に用いられ、根本的な治療の中心となる薬ではありません。
一方SSRIは、うつ病や不安障害を治療する「抗うつ薬」に分類される薬です。精神科のガイドラインでは、うつ病の第一選択薬として位置づけられています。
作用機序(薬が効く仕組み)
セディールは、セロトニンが働きやすくなるように神経の活動を調整します。脳内でセロトニンを受けとる部分を刺激し、セロトニンが伝わりやすい環境を整えることで、不安や緊張をやわらげます。効き方は穏やかであり副作用が強くあらわれにくいのがメリットです。一方で、強い不安に対しては十分な効果が期待できません。
SSRIは脳内でセロトニンが神経細胞の間に長くとどまるように作用し、セロトニン濃度を増やします。セロトニンの作用をより強く引き出せる薬として用いられます。
投与方法
セディールは1日3回の定期服用が基本となる薬です。体内から早く消失するため、効果を維持するには分けて飲む必要があります。
SSRIは半減期が比較的長く、1日1回または1日2回の服用で効果を維持できます。
セディール |
SSRI | ||||
服用回数 |
1日3回 |
パロキセチン |
セルトラリン |
エスシタロプラム |
フルボキサミン |
1日1回 |
1日2回 | ||||
半減期※ |
1.2〜1.4時間[2] |
約12〜14時間[3] |
約23時間[4] |
約24〜27時間[5] |
約9時間[6] (25mgの場合) |
※半減期:体内の薬物濃度が半分になるまでの時間。効果の持続時間の目安になる。
セディールは長期間服用しても、効果の持続時間が延びるわけではありません。安定した効果を得るには、毎日欠かさず続けることが重要です。
また、効果があらわれるまでは数週間かかります。はじめは1日3回飲んでいても効果を感じず不安になるかもしれませんが、焦らず治療を続けましょう。
副作用
セディールの副作用として、眠気や頭痛などが報告されています。抗不安薬のなかでは副作用が少なく、比較的安全性が高いとされる薬です。
SSRIは、服用開始初期に消化器症状(吐き気、むかつき)や眠気が生じることがあります。多くは体が慣れるにつれて軽減していきます。
セディール |
SSRI | |
おもな副作用 |
|
|
重大な副作用 |
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|
セロトニン症候群(興奮、発汗、震えなど) |
両者とも重篤な副作用の例もあります。とくにセロトニン症候群は、共通して注意すべき副作用です。
もし興奮や震えがとまらないなどの体調変化がみられた場合は、すぐに医師に相談してください。
関連記事:セディール(タンドスピロン)の副作用とは?ほかの薬との違いや不安点について解説
注意点
セディール・SSRIのどちらも、服用中は以下の点を守って過ごしてください。
- 自己判断で増量・減量・中止はしない
- 車の運転や危険をともなう作業は控える
- アルコールは控える
注意点 |
理由 | |
自己判断で増量・減量・中止はしない |
セディール |
急な中止・減量: 悪性症候群が起こることがある[2] |
SSRI |
急な増量: アクティベーションシンドローム(焦り・イライラ・衝動性など)が生じることがある。[9] | |
急な中止・減量: 離脱症状(不安・めまい・しびれなど)が起こることがある | ||
車の運転や危険をともなう作業は控える |
集中力・判断力の低下により事故のリスクがある | |
アルコールは控える |
薬の作用が強まり、眠気やふらつきが生じる可能性がある |
予期せぬ副作用を避けるために、どの薬でも自己判断で服用量の調整や中止はしないでください。
また、体調の変化に注意し、副作用を予防するために日常生活にも配慮しましょう。眠気やめまいなど気になる症状があればこまめにメモし、診察時に医師に伝えてください。薬の効果を評価するためにも、日々の調子を把握することが大切です。
セディール(タンドスピロン)とSSRIは併用できる?
セディールとSSRIとの併用は可能です。実際に組み合わせて処方されることもあります。
海外の研究では、不安が強いうつ病の場合にSSRIとセディールを併用すると、治療を補強できるケースがあると示されていました。[10]
またエスシタロプラム(SSRIのひとつ)にセディールを併用すると、治療開始後の1〜2週目で症状が大きく改善されたとの報告もあります。[11]
ただし治療方針は医師の見解によって異なります。併用治療が全ての人に効果的ともいえません。
医師は一人ひとりの症状や程度をふまえ、処方薬を慎重に判断します。併用するよう処方された場合でも、かならず主治医の指示どおりに服用してください。
セディールの離脱症状
個人差はありますが、セディールは一般的な離脱症状があらわれにくいとされています。
離脱症状とは、薬を中止する際にあらわれる、めまいや不眠、イライラ感といった症状です。依存性がある薬では、離脱症状が生じやすくなります。
抗不安薬のなかでも「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」は、脳への作用が強く依存性が心配されます。一方セディールは、依存性のリスクがほとんどありません。長期間服用しても、中止時に離脱症状を生じる可能性は低いとされています。
セロトニン作動性抗不安薬 |
ベンゾジアゼピン系抗不安薬 | |
薬の名前 |
セディール (タンドスピロン) |
デパス(エチゾラム) セルシン(ジアゼパム)など |
離脱症状 |
ほとんどない |
可能性がある |
依存性 |
ほとんどない |
可能性がある |
耐性 |
ほとんどない |
可能性がある(最短4週間で形成[12]) |
セディールは離脱症状の心配は少ないものの、急に減量したり中止したりすると体調不良を引き起こすことがあります。とくに服用をやめてから1週間以内は、悪性症候群のリスクもあります。[13]気になる症状がみられた場合、すみやかに医師に連絡してください。
セディールが効かない原因
セディールの効果が感じられないときには、おもに以下のような原因が考えられます。
-
強い不安症状であり、セディールではおさえられない
-
服用開始して間もないため、十分な効果を発揮できていない
-
決められた回数を服用していない
セディールは比較的軽度の不安に対して有効であり、強い不安への対応は難しいとされています。[1]即効性や持続的な作用はないため、飲んだり飲まなかったりすると安定した効果を得られません。
たとえば「飲みはじめて1週間だけどまだ不安が強い」と感じる場合、効果が出るまでの時間が足りていない可能性があります。「2週間以上飲み続けているのに、不安が強くて夜も眠れない」といった場合は、セディールだけでは対応しきれないケースもあります。
効かないと感じる背景はいくつかあります。指示どおり継続しても不安が落ち着かない場合は、医師に相談し治療方針を見直してもらいましょう。
セディールを頓服で飲む方法について
セディールは即効性がないため、頓服での使用には適していません。「今すぐ不安をおさえたい」という突発的な不安に対しては効果が期待できないのです。
急な不安や緊張をやわらげたい場合、一般的には「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」が処方されます。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、セディールよりも不安をおさえる効果が強いタイプの薬です。ただし頻繁に頓服を使用する状態が続いたり、何となく使い続けたりすると依存につながることもあります。[7]
抗不安薬を服用する頻度が多ければ、一時的に症状をしずめる治療だけでは不十分な可能性があります。SSRIなど抗うつ剤への切り替えが望ましいケースもあるため[7]、不安に感じる頻度や程度は受診の際に正確に伝えましょう。自分に必要な治療を医師とともに考えることが大切です。
よくある質問
セディールがどのような仕組みで働くのか、どのような場面で使われるのかを理解すると、納得して治療に向き合えるでしょう。
ここではセディールに関してよくある質問にお答えします。
セディールは何系に属する薬か
セディールはアザピロン系に属する抗不安薬です。
セロトニン受容体に作用することから、セロトニン作動性抗不安薬に分類されます。
ゆるやかな作用をもつため、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬とは異なり依存性や離脱症状が起こりにくいのが特徴です。
セディールはセロトニンの働きを助けて増やす作用があるのか
セディールはセロトニンの働きを助けますが、直接セロトニンを増やす薬ではありません。
脳のセロトニン1A受容体を刺激し、神経の過剰な興奮を落ち着かせることで不安や緊張をやわらげます。
セロトニンの量を増やすのではなく、セロトニンが働きやすい環境を整える薬であると理解しましょう。
セディールはどんなときに使うのか
セディールは、軽度から中等度の不安症状に対して使用されます。うつ病にいたっていなくても、不安や緊張によって日常生活に支障があれば処方されることがあります。
セディールの効能・効果 |
具体的な症状 |
不安障害(神経症)にともなう抑うつや恐怖の改善 |
|
心身症(自律神経失調症など)にともなう心身の不調の改善 |
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本態性高血圧症や消化性潰瘍などによる体の症状の緩和 |
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セディールは依存性が少ないため、長期的に使用しても比較的安全性が高いとされています。ただし効果を十分に感じないまま、漫然と使い続けるのは望ましくありません。
不安程度によって適切な薬は異なります。セディールを服用しても不安が落ち着かない場合は医師と相談し、自分に合う治療を受けましょう。
セディールはパニック障害や自律神経失調症に効くのか
セディールはパニック障害自体の治療薬ではありません。
軽度の不安をやわらげるために補助的に用いることも考えられますが、即効性がないため突然起こるパニック発作には対応できません。なお、パニック障害を治療するための薬はSSRIなどの抗うつ薬です。
自律神経失調症にともなう症状に対しては、セディールの効果が期待できます。心の不調だけでなく、動悸やめまいなど体の不調を緩和するために用いられることもあります。
まとめ:セディールとSSRIそれぞれの違いを知っておこう
セディールは比較的軽めの不安に用いられる薬であり、作用がゆるやかで依存性が少ない点が特徴です。ただし、強い不安やうつ病の根本的な治療に対する効果は期待できません。
SSRIは抗不安作用と抗うつ作用をあわせもち、うつ病や不安障害の第一選択薬として用いられます。
どちらの薬も効果が得られるまでには数週間以上必要です。効果が得られないからと自己判断で増減・中止をすると、思わぬ体調変化を招くことがあります。今の治療で不安があるときは、ひとりで抱えずまずは医師に相談してください。
適する薬は病状の程度によって一人ひとり異なります。主治医と相談しながら自分に合う治療法をみつけていきましょう。
ファストドクターのオンライン診療(心療内科・精神科)なら、処方薬の配送や診断書のオンライン発行に対応しています。診察は健康保険適用。お支払いはクレジットカードもしくはコンビニ後払いです。※診断書の内容は医師の判断によります。
参考文献
[7]今日の治療薬2025丨南江堂.p904
[8]日本うつ病学会治療ガイドライン丨うつ病(DSMー5)丨 大うつ病性障害2016
[9]抗うつ薬によるActivation syndromeとはどういうものか?丨京都府薬剤師会
[12]今日の治療薬2025丨南江堂.p905
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。
症状に対する診断やお薬の処方、診断書や傷病手当金申請書の記載内容は医師の判断によります。