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傷病手当金をもらえないケースはあるのか?
傷病手当金はすべてのケースで支給されるわけではありません。
病気やケガで仕事を休んだときに、一定の条件を満たせば受給できる制度ですが、誰でももらえるわけではなく、ルールがあります。
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給与の支払いがある
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障害厚生年金もしくは障害手当金を受けている
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老齢退職年金を受けている
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労災保険から休業補償給付を受けている
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出産手当金を受けている
上記の項目にあてはまる場合は、支給が停止されたり、申請しても認められなかったりするケースがあります。
給与の支払いがあるということは、傷病手当金をもらう状態ではないと判断されるため、受給できません。
その他の手当金を受け取っていたり、労災保険から給付を受けている場合も二重に受け取ることになってしまいます。
特定の条件下で支給されるケースもありますが、基本的には支給対象に当てはまらないと認識しましょう。
上記に当てはまるのに傷病手当金を受け取っていた場合、返金を要求されてしまう可能性も否定できないのです。
給与の支払いがある場合
仕事を休んでいても給与の支払いがあるときは受給できません。傷病手当金は「仕事ができず、給与が支払われないこと」を条件としているためです。[1]
以下のような場合は傷病手当金の対象外となります。
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会社から通常どおり給与が支払われている
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有給休暇を利用して休んでいる
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退職日に出勤して給与が支払われた場合
会社の決まりによって、病気やケガで休んでいてもしばらくの間は給料が支払われる場合があります。たとえば、会社独自の制度で特別に給料を支払ってくれるケースです。
「給料が出ていないこと」という傷病手当金の条件に当てはまらないため、もらうことはできません。
また有給休暇を利用して休むと、その間は給与が支払われます。そのため有給休暇を使っている間はもらえません。
会社を辞めたあとに傷病手当金をもらいたい場合は、退職日に出勤しないことが大切です。
退職日に出勤すると、退職後の継続給付を受ける資格を満たさないため、退職日の翌日以降は傷病手当金を受け取れません。
また給与をもらっている場合でももらえる金額が傷病手当金より少なければ、その差額分が支給されます。
障害厚生年金もしくは障害手当金を受けている場合
障害厚生年金や障害手当金を受けている場合、傷病手当金と同時に受け取ることはできません。
傷病手当金は生活の保障を目的とした制度であり、重複受給を防ぐための規定があります。
「障害厚生年金」は、厚生年金の加入者が病気やケガが原因で仕事ができない場合、または仕事をするのに支障がある場合に受け取れる年金です。
一方「障害手当金」は、障害厚生年金の支給要件を満たしていない場合に受け取れる一時金です。
ただし、障害厚生年金を受給している場合でも、一部のケースでは傷病手当金を受け取ることができます。
障害厚生年金と障害基礎年金の合計額を360で割った金額が、傷病手当金の日額より低い場合、その差額が傷病手当金として支給されます。
障害手当金の額に傷病手当金の合計額が達した場合、傷病手当金を受給可能です。
障害厚生年金を受けている傷病とは別の病気やケガで仕事ができなくなった場合は、傷病手当金を受け取ることができます。
支給条件を満たしていることが前提のため、健康保険組合などに確認をしましょう。
さかのぼって年金の受給が決まった場合、支給が重複した部分の傷病手当金を返さなければなりません。[2]
老齢退職年金を受けている場合
老齢退職年金を受給している場合、基本的には継続給付による傷病手当金は支給されません。
受給が可能な場合、1日あたりの傷病手当金の額と老齢退職年金を360日で割った額を比べて、以下のように扱われます。
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老齢退職年金が傷病手当金より多い:傷病手当金はもらえない
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老齢退職年金が傷病手当金より少ない:差額が支給される
傷病手当金が過払いされている場合、返納する必要があります。老齢退職年金と傷病手当金を同時にもらう場合は注意しましょう。[2]
労災保険から休業補償給付を受けている場合
仕事中や通勤中のケガで休業補償給付を受けている場合、同じ病気やケガに基づく、傷病手当金は受け取れません。
休業補償給付は労災保険から支給されるもので、仕事中や通勤中の病気やケガが対象です。一方、傷病手当金は健康保険から支給され仕事以外の理由で病気やケガをした場合に適用されます。
たとえば通勤中の事故で労災認定を受け休業補償給付を受けている場合は、原因となるけがや病気が同一となる傷病手当金は受給できないのです。
仕事以外の理由で働けなくなった場合でも、別の理由で労災保険の休業補償給付を受けている期間中は、傷病手当金を受け取ることはできません。
休業補償給付も傷病手当金も「生活保障」のための制度です。同時に受給すると給与の額を超えてしまいます。
そのため、併給はできないことをきちんと理解しておきましょう。
出産手当金を受けた場合
出産手当金を受けている場合、基本的に傷病手当金は受け取れません。
出産手当金は出産のために仕事を休んだ女性に支給される手当で、産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日の期間が対象です。
この期間中に給与が支払われない場合、健康保険から出産手当金が支給されます。
傷病手当金と出産手当金の支給期間が重なる場合は、出産手当金が優先されるため、基本的に傷病手当金を受け取れません。[3]
ただし、平成28年4月からは傷病手当金の金額が出産手当金よりも多い場合、その差額分が傷病手当金として支給されるようになりました。[4]
健康保険や国民健康保険の被保険者等が出産したときに受け取れる出産育児一時金の場合は、傷病手当金を受けていても受け取ることが可能です。
傷病手当金の支給条件や期間について
傷病手当金は誰でも受け取れるわけではなく、条件を満たす必要があります。
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仕事以外での病気やケガ
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医師に仕事ができないと判断された
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4日以上連続で仕事を休んでいる
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会社から給料をもらっていない
支給される期間は最長1年6か月です。
※大企業の健保組合など、1年6か月を超えて延長給付を行う場合があります。
傷病手当金を受け取るには、健康保険の「傷病手当金支給申請書」を提出する必要があります。
本人の記入だけでなく、会社や医師の証明が必要となるため、早めに準備しておきましょう。
傷病手当金をもらうためには?
傷病手当金は誰でもすぐに受け取れるわけではありません。傷病手当金をもらうためには、おもに4つの条件をすべて満たす必要があります。[1]
支給条件 |
説明 |
仕事以外で病気やケガをした |
仕事中や通勤中の病気やケガは労災保険の対象のため、傷病手当金はもらえません。 |
医師に仕事ができないと判断されている |
ただ通院するだけでは傷病手当金を受け取れません。 医師の判断や業務内容、その他の条件などを考慮して総合的に判断されます。 |
4日以上連続で仕事を休んでいる |
最初の3日間は待期期間となり、4日目からが対象です。待期期間には有給休暇や土日も含まれます。 |
会社から給与が出ていない |
休んでいても給与が支払われている場合は傷病手当金は受け取れません。 (支払われる給与の額が傷病手当金より少ない場合には差額が支給されます) |
傷病手当金をもらうためには毎月申請が必要です。最低でも月に1回は医療機関を受診し、医師に「傷病手当金支給申請書」の証明欄を記入してもらいましょう。
実際に仕事ができなかった期間を記載してもらう必要があります。
傷病手当金が支給される期間は?
傷病手当金は、最長1年6か月受け取れます。
※大企業の健保組合など、1年6か月を超えて延長給付を行う場合があります。
令和4年1月1日から傷病手当金の支給期間が通算化されました。そのため、もらえる日数の合計が1年6か月分となります。
たとえば、傷病手当金を受給中に少し復職したのち、また休んだ場合でも合計1年6か分までは受け取ることができます。[3]
傷病手当金の手続き方法について
傷病手当金の受け取りをスムーズに進めるために、手続き方法を確認しておきましょう。
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会社に休む必要があると報告する
病気やケガで働けない場合は、まず会社に報告しましょう。
傷病手当金を受け取らなければならないほどのまとまった期間を休む場合には、休職の手続き(休職願や診断書の提出)が求められるのが一般的です。
就業規則に手続きが定められている場合が多いので、一度確認しておきましょう。
傷病手当金の申請に必要な「傷病手当金支給申請書」の手配についても会社の担当者に確認しておくとスムーズです。
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申請書類を準備
「傷病手当金支給申請書」を用意し、必要事項を記入します。
申請書の様式は各健康保険の運営主体(全国健康保険協会や健康保険組合)によって異なり、ホームページからダウンロード可能です。
医師および会社の両方に記入してもらう必要があるため、早めに進めましょう。
傷病手当金支給申請書 |
記入者 |
内容 |
被保険者記入欄 |
本人が記入 |
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など | ||
事業主証明欄 |
会社が記入 |
など |
療養担当医師証明欄 |
医師など療養担当者が記入 |
など |
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医師と会社から証明を受ける
申請書を医師と会社へ提出し、それぞれ証明を受けます。会社か医師のどちらが先に記載しても問題ありません。
会社が提出してくれる場合は、先に医師の記入を済ませておいた方がスムーズに手続きできるでしょう。
医師の診断を受け、仕事ができないことの証明が必要ですので、傷病手当金支給申請書の医師が記入する欄に記載してもらいます。
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健康保険の運営主体(全国健康保険協会または健康保険組合)へ申請
会社の証明を受けた申請書を健康保険組合に提出します。
郵送での申請が一般的ですが、提出方法については加入している健康保険組合の案内を確認しましょう。
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健康保険の運営主体(全国健康保険協会または健康保険組合)による審査
審査がおこなわれ問題がなければ支給が決定し、通常1か月程度で振り込まれます。
不足書類や確認事項があると、追加で書類提出を求められる場合もあるため、支給までより時間がかかるケースがあります。
傷病手当金は退職後にもらえないのか
退職後であっても条件を満たせば、傷病手当金を受け取れます。[3]
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退職前に継続して1年以上の被保険者期間がある
(健康保険の任意継続の被保険者期間は含まれません。) -
退職日の前日まで継続して3日以上休業し、退職日も療養のために仕事に就けずに休業している
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失業給付(基本手当)を受けていない
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在職時と同じ病気やケガにより、退職後も引き続き療養のために働けない
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退職時点で傷病手当金を受給しているまたは受給条件を満たしている
退職日に出勤してしまうと、退職日翌日以降の傷病手当金が受けられなくなるため注意が必要です。
退職後に傷病手当金を受け取っている人が老齢厚生年金などの年金を受給し始めると、基本的に傷病手当金の支給は止まります。
ただし年金の1日あたりの金額が傷病手当金より少ない場合は、その差額が支給されます。退職後も支給開始日から通算1年6か月受給可能です。
よくある質問
傷病手当金について、自分のケースにどう対応すればよいか不安に感じる方もいるでしょう。傷病手当金を受給する際によくある質問をまとめました。
うつ病で仕事を休んでいると傷病手当金はもらえませんか?
うつ病で仕事を休んでいる場合でも、支給条件を満たせば傷病手当金を受け取れます。
「病気やケガの療養」は、医師の指示のもと病気やケガの治療のために仕事を休むことで、うつ病などの精神疾患も対象です。
ただし、仕事以外でうつ病を発症した場合に限られます。仕事が原因でうつ病を発症した場合は労災保険の対象となる可能性があります。
労災認定を受けると労災保険の休業補償給付を申請可能です。
医療機関を受診し、診断書をもらったうえで会社や健康保険組合に相談しましょう。
傷病手当金を返戻しなければならないケースはありますか?
傷病手当金を受け取ったのち、返戻しなければならないケースがあります。
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本来の支給条件を満たしていなかったことが判明した
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休業中に給料が支払われていたことが後からわかった
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申請内容に不備があった
適正に受給するためにも、申請時には条件をよく確認し、正しい情報を提出することが大切です。
出勤できる日に出勤したら傷病手当金はもらえませんか?
一度出勤したからといって、必ずしも傷病手当金が受け取れなくなくなるわけではありません。
まずは3日連続して休む待期期間の条件を満たしていることが重要です。
傷病手当金は、病気やケガで3日連続して休んだあと、4日目以降の休みに対して支給されます。
待期期間を満たせば、その後出勤しても休んだ日については支給対象になります。
待期期間には土日や祝日、有給休暇も含めることができるため、必ずしも3日間すべてを欠勤する必要はありません。
出勤するケースに応じて健康保険組合や会社に相談し、詳細を確認しましょう。
まとめ|傷病手当金がもらえないケースを理解してきちんと受給しよう
傷病手当金はすべてのケースでもらえるわけではありません。給与が支払われている場合や、ほかの給付を受けている場合など、支給されないケースがあります。
傷病手当金をもらうためには以下の条件を条件を満たす必要があります。
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仕事以外での病気やケガ
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医師に仕事ができないと判断された
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4日以上連続で仕事を休んでいる
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会社から給料をもらっていない
申請前に傷病手当金がもらえるかを確認しておきましょう。
退職後でも一定の条件を満たせば受給できる場合もあります。健康保険組合や会社、医療機関に相談をしながら正しく申請しましょう。
オンライン診療は、ビデオ通話で自宅から診察が可能。ファストドクター(心療内科・精神科)は予約制で、毎日9時から23時まで診察を受け付けています。受診を迷っている方も、まずは相談してみませんか?
参考文献
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。