今日から試せる!!子どもも大人も注射が痛くなくなる4つの方法
注射の瞬間、多くの人が「痛くない?」と不安に思うことでしょう。程度の差こそあれ、誰にとっても注射は痛いものです。しかし、現代の医療技術は日々進歩しており、注射を受ける際の痛みを和らげるために様々な方法や工夫があります。
まずは、そもそも注射が痛い原因を解説したいと思います。さらに、文献をもとに”注射が痛くない方法”を解説し、実践しやすい4つの方法を紹介します。注射が少しでも楽になるテクニックや、医療者が行う工夫について深掘りしていきましょう。
名倉 義人 医師
○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院
○資格
救急科専門医
○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会
そもそもどのような注射が痛いのか?
注射をされる時に痛い時と痛くないときがあると感じたことはありませんか?1990年から現在までに発行された注射の痛みに関係した188件の論文をまとめた研究によると、注射が痛い痛くなる要因は次の8つと推察されています。
- 針の太さや長さ
- 注射部位
- 注射量
- 注射速度
- 製剤の浸透圧
- 製剤の粘度
- 製剤のpH
- 緩衝剤など使用される賦形剤の種類
参考:Usach I, Martinez R, Festini T, Peris JE. Subcutaneous Injection of Drugs: Literature Review of Factors Influencing Pain Sensation at the Injection Site. Adv Ther. 2019 Nov;36(11):2986-2996. doi: 10.1007/s12325-019-01101-6. Epub 2019 Oct 5. PMID: 31587143; PMCID: PMC6822791.
単純に針を刺す行為だけにも思える注射ですが、実はさまざまな要因が関連し、「痛い注射」を作り出していたのです。
注射の方法によって痛みは違う?痛みの少ない方法を紹介
では、それぞれの原因は、どのような理由で痛みを引き起こすのでしょうか。また、どのように解決することができるのでしょうか?
それぞれを表にまとめてみました。
原因 | 理由 | 解決策 |
---|---|---|
針の太さや長さ | 人の皮膚には1㎝×1㎝の大きさの範囲に、130個程度の痛点がある。太くて長い針ほど痛点を刺激しやすい | 細い針を使う |
注射部位 | 筋肉や皮下脂肪が少ない部位の方が痛い | 腹部や腕の筋肉や皮下脂肪の多い場所に投与する |
注射量 | 投与する薬剤の量が多いほど痛くなる | 量が多い場合は、複数回に分けて投与する |
注射速度 | 急速に投与すると痛い薬剤がある | 薬を入れる時はなるべくゆっくり投与する |
製剤の浸透圧 | 血液や細胞との浸透圧差で刺激や痛みを生じる | 浸透圧差の少ない薬剤を選択する |
製剤の粘度 | 粘度が高いほど注入した時に刺激や痛みが生じる | 粘度の低い薬剤を選択する |
製剤のPH | 血液や細胞のPH7.4(中性)と差がある薬剤ほど刺激や痛みが生じる | PHが中性に近い薬剤を選択する |
賦形剤の種類 | クレゾールなど一部の防腐剤はベンジンアルコールやフェノールよりも痛みを生じやすい | 痛みを生じやすい賦形剤を配合した薬剤の使用を避ける |
人の皮膚には1㎝×1㎝の大きさの範囲に、130個程度の痛点があります。そのため、できるだけ細い針で刺激の少ない少量の薬剤をゆっくり注射をしたときの方が、痛点を刺激しにくくなります。その結果、刺激や違和感、痛みを感じにくくなったり、緩和されたりする可能性が高くなるのです。
参考文献
Usach I, Martinez R, Festini T, Peris JE. Subcutaneous Injection of Drugs: Literature Review of Factors Influencing Pain Sensation at the Injection Site. Adv Ther. 2019 Nov;36(11):2986-2996. doi: 10.1007/s12325-019-01101-6. Epub 2019 Oct 5. PMID: 31587143; PMCID: PMC6822791.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31587143/
Zijlstra E, Jahnke J, Fischer A, Kapitza C, Forst T. Impact of Injection Speed, Volume, and Site on Pain Sensation. Journal of Diabetes Science and Technology. 2018;12(1):163-168. doi:10.1177/1932296817735121
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1932296817735121
文献を元に解説“注射が痛くなくなる4つの方法”
注射が痛くなる原因は、薬剤の種類や量・注射方法などに関連したものが少なくありません。そのため、多くの原因は自分では回避することが難しくなっています。でも、注射はできるだけ痛くなくしたいですよね。
ここからは、世界中の論文から探し出した注射が痛くなくなる4つの方法を紹介します。今回紹介する方法は、いますぐ試せるものばかりです。注射の痛みに悩んでいる方、不安を抱えている方は、ぜひお試しください
1)注射前に針を刺す場所を叩いたり、押したりする
一番簡単な方法は注射の針を刺す場所を軽くたたいたり、指圧のように押す方法です。この方法は、とくに新型コロナウイルスの予防接種に代表されるような、筋肉注射の際に効果が確認されています。
注射をする直前に、医療者に注射部位を確認したうえで、その部位を軽く叩いたり親指で数十秒圧迫してください。注射の前に皮膚を叩いたり圧迫したりすることで刺激が脊髄に伝わり、注射の痛みが脊髄でブロックされ脳に伝わりにくくなります。
その結果、注射の痛みを感じにくくなるのです。筋肉注射を控えている方は、ぜひ一度試してみてくださいね。
参考文献
Negin Masoudi Alavi,Effectiveness of acupressure to reduce pain in intramuscular injections,
Acute Pain,Volume 9, Issue 4,2007,Pages 201-205,ISSN 1366-0071
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1366007107001684
Ayinde O, Hayward RS, Ross JDC. The effect of intramuscular injection technique on injection associated pain; a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2021 May 3;16(5):e0250883. doi: 10.1371/journal.pone.0250883. PMID: 33939726; PMCID: PMC8092782.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33939726/
2)呼吸法をマスターする
次に簡単な方法は、痛みを緩和する呼吸法をマスターすることです。針を刺す瞬間や注射をしている最中に、思わず息を止めていませんか?実は、息を吐くことで、副交感神経が優位になり痛みを緩和できます。
注射の針を刺す直前から、針を刺し終わるまでもしくは、薬剤の注入が終わるまで意識して息をはくようにしましょう。「フー」っと、音がするくらい意識的に息を吐いた方が痛みが和らぐのでおすすめです。
3)注射部位を冷やす
3つ目に簡単な方法は、注射する部位を冷やす方法です。注射部位を冷やすことで、痛みを感じにくくなるのです。
この方法は、筋肉注射に限らず皮下注射・血管内注射(採血・点滴)などさまざまな方法に効果が期待できます。注射部位を冷やすのは保冷材に限らず、よく冷えた缶やペットボトル入り飲料でもOKです。注射する直前まで約1分くらい、冷やしていると効果が期待できますので、ぜひ試してみてくださいね。
4)痛み止めを使用する
4つ目に紹介する方法は、痛み止めを使用する方法です。解熱鎮痛剤で有名な、アセトアミノフェンやロキソプロフェンナトリウムは、注射の痛みを和らげる明らかな効果は確認されていません。
注射の痛みを和らげるためにおすすめの痛み止めは、皮膚麻酔薬と呼ばれる薬です。代表的なものにリドカインテープ、ペンレステープ、エムラクリーム、エムラパッチがあります。
これらの皮膚麻酔薬はドラッグストアやインターネットなどでは購入できません。医師の処方が必要ですし、注射の痛みを和らげるために使用する場合は健康保険が適応されないため薬代は自己負担になります。
当院で注射の痛み止めに使用している皮膚麻酔薬『エムラパッチ』を例にあげると、1枚当たり約477円∔診察∔処方料がかります。
皮膚麻酔薬は小さなお子さんも使用できますし、1~3の方法では効果を実感できない方、1~3の方法に加えて注射の痛みを和らげたい方にはおすすめの方法です。
皮膚麻酔薬の処方を希望される方は、ぜひ一度当院へご相談ください。
まとめ
注射が痛い理由は、薬剤の種類や量・中に含まれる薬剤、注射方法など、さまざまな原因が複雑に関連しています。医学的な理由でどうしても注射の痛みを軽減できないケースも少なくありません。
本記事では、注射をできるだけ痛くないようにできる4つの方法を紹介しました。
いますぐ試せるものから、医師に皮膚麻酔薬を処方してもらうものまでさまざまです。
ご自身の状況に合わせた方法を選択することで、できるだけ注射の痛みを感じず、ストレスのない生活を送ることができます。