【2023年最新】インフルエンザとは?今年の発生状況や予防接種、コロナや風邪との違いを解説
この記事では、インフルエンザの発生状況や予防接種の目的、症状と風邪やコロナとの違いなど、インフルエンザについての概要をわかりやすく解説します。
コロナウィルスの感染対策により激減しているインフルエンザですが、今シーズン(2022年-2023年)は同時感染や、マスクの規制緩和による影響が予想されます。
ワクチンには発症を抑えるだけでなく重症化を抑える効果もあるので、ピークを迎える前までの予防接種を推奨します。

名倉 義人 医師
○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院
○資格
救急科専門医
○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会
今年(2022-2023)のインフルエンザの発生状況
今のところ(2022年10月13日時点)では、まだ感染者数は多くありませんが、毎年11月下旬〜12月上旬頃に流行が始まります。
ただし、昨年に引き続きコロナウィルスによって予防意識が高まっていますので、インフルエンザの発生も例年より大幅に抑えられる可能性があります。
最新のインフルエンザ感染者数
全国の最新のインフルエンザ感染者数は、こちらのサイトから確認できます。
インフルエンザに関する報道発表資料 2022/2023シーズン|厚生労働省
また、東京都の場合は、東京都感染症情報センターが随時発表しています。
インフルエンザの流行状況(東京都 2022-2023年シーズン)|東京都感染症情報センター
今のところ(2022年10月13日時点)では、まだ感染者数は多くありません。
インフルエンザの流行はいつから開始する?
インフルエンザは毎年11月下旬〜12月上旬頃に流行が始まります。
翌年の1~3月頃に患者数がピークに達し、4~5月にかけて減少していく傾向があります。
コロナによってインフルエンザ患者数は激減
コロナウィルスの発生によって感染予防意識が高まった結果、インフルエンザ患者の報告数は激減しています。
コロナ前の2019年とwithコロナ時代だった2021年を比較すると、年間のインフルエンザの報告者数は1750分の1まで減少しています。

あまりに報告数が少ないので、2021年2022年データがほぼ0になってしまっています。
ピーク時付近のインフルエンザ報告数は、2019年04週の284,036件でしたが、2021年04週は58件です。
インフルエンザの報告数が、コロナ後は桁違いに激減していることがわかります。
日本だけでなく、多くの国や地域でインフルエンザの発生が予想よりも抑えられています。
徐々にマスク解禁の声が大きくなっていますが、インフルエンザ予防の観点から見れば、流行を迎える12月〜3月の期間に関しては引き続きマスクを着用したいものです。
※報告数:全国約5,000か所の定点医療機関においてインフルエンザと診断された患者数
インフルエンザ予防接種やワクチンについて
推奨時期 | 11月上旬まで |
対象者と回数 | 13歳未満は2回 13歳以上は1回 |
効果や目的 | インフルエンザの 発症と重症化を抑える |
費用相場 | ¥3,500前後 (場所によって異なる) |
接種場所 | 全国の医療機関 |
接種推奨者 | ・インフルエンザの発症や 症状を抑えたい方 ・65歳以上の方 ・重症化しやすい持病をお持ちの方 |
予防接種は受けるべき?ワクチンの目的や効果について
インフルエンザワクチンには
- 発症を抑える
- 重症化を抑える
という2つの効果があります。
インフルエンザの発症を抑える
まず、インフルエンザの予防接種を受けたら、絶対にインフルエンザにかからないというわけではありません。
ウイルスが体内で増えて、発熱やのどの痛み等の症状が出る状態を「発病」といいます。
インフルエンザワクチンの有効率については、統計方法や調査データのばらつき、毎年ごとの流行株の変化などで正確な数字がありませんが、大体50%前後と言われています。
予防接種をしてもかかる可能性があるなら「予防接種をする意味がないのでは?」と感じる方もいるかもしれませんが、検討していただきたいのは重症化を抑える効果です。
インフルエンザの重症化を抑える
インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、重症化を予防することです。
インフルエンザ発病後、肺炎や脳症などの重い合併症が現れることを「重症化」といいます。
中には、入院が必要になる方や死亡される方もいます。
特に、基礎疾患のある方や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。
研究の結果によれば、65歳以上の特別養護老人ホーム等へ入所している高齢者がワクチン接種したところ
- 34~55%の発病を阻止
- 82%の死亡を阻止
する効果があったとされています。
参考:インフルエンザワクチンに関する効果等の評価|厚生労働省
昨年接種した人でも受けた方が良い
インフルエンザにはいくつもの型があり、インフルエンザワクチンはそのシーズンに流行すると予測されるウイルスを用いて製造されています。
昨年ワクチンの接種を受けた方であっても、今年流行が予想される型には免疫がないこともあるので、ワクチンの接種を検討した方が良いでしょう。
インフルエンザの効果や接種間隔、有効率についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
インフルエンザワクチンの2つの効果、接種回数や間隔について解説
副作用・副反応の可能性について
ワクチンを接種したとき、免疫がつく以外の反応がみられることを「副反応」といいます。
軽い発熱や頭痛などの他に、極めて稀ですが、重い副反応や死亡例も確認されています。
副反応の主な症状と発生確率
インフルエンザワクチンの副反応は、接種(注射)をした場所の周辺に出る反応と、体の全身に出る反応があります。
反応する場所 | 接種した場所 | 全身性の反応 |
---|---|---|
症状 | 赤み(発赤) はれ(腫脹) 痛み(疼痛) | 発熱 頭痛 寒気(悪寒) だるさ(倦怠感) |
確率 | 10~20% | 5~10% |
期間 | 通常2~3日 | 通常2~3日 |
いずれも数日以内に治りますが、1割程度の確率で全身に症状が出る方もいます。
非常に稀な副反応の症状
非常にまれな確率ではありますが、インフルエンザの予防接種によって重い副反応が出ることが報告されています。
症状と発生までの時間については、以下のようになっています。
病名 | 症状発生までの期間 |
---|---|
アナフィラキシー | 4時間 |
喘息発作 | 24時間 |
けいれん | 7日 |
急性散在性脳脊髄炎(ADEM) 脳炎・脳症 脊髄炎 ギラン・バレ症候群 視神経炎 血小板減少性紫斑病 血管炎 肝機能障害 ネフローゼ症候群 間質性肺炎 皮膚粘膜眼症候群 急性汎発性発疹性膿疱症 | 28日 |
※報告された副反応の原因がワクチン接種によるものかどうかは、必ずしも明らかではありません。
中でも、アナフィラキシーショック症状はワクチン接種後すぐに起こることが多いことから、接種後30分間は医療機関内で安静にしてください。
また、帰宅後に異常を感じた場合には、速やかに医師に連絡してください。
接種後の死亡例
インフルエンザワクチン接種後に死亡するケースは毎年0〜4件報告されています。
しかし年間数2000万件近い接種者がいる中、死亡例が数件というのは極めて低い確率です。
なおこれらの報告例については、ほとんどが基礎疾患等がある高齢者だったことから、ワクチン接種が直接死亡の原因であるとは認められていません。
年齢別の接種対象者や接種回数
年齢 | 接種回数 | 1回の注射量 |
---|---|---|
生後6ヶ月以内 | ワクチン接種不可 | – |
6ヶ月以上3歳未満 | 2回接種 ※1回目から2回目の接種は 2~4週間の間隔をあける | 0.25mL |
3歳以上13歳未満 | 2回接種 ※1回目から2回目の接種は 2~4週間の間隔をあける | 0.5mL |
13歳以上 | 原則は1回接種 | 0.5mL |
ワクチンの添付文書には「13歳以上のものは1回または2回注射」と記載されていますが、13歳以上の方はインフルエンザワクチン0.5mLの1回接種で、2回接種と同等の抗体価の上昇が得られるとの報告があります。
6ヶ月以上13歳未満の子どもは、ワクチンを2回接種する必要があります。
これは、13歳未満の子どもの場合は1回接種後だけでは高い抗体価の上昇が得られないからです。
乳幼児についても発病防止、重症化予防に関する有効性を示唆する報告がされています。[1]
生後6ヶ月を越えれば予防接種が受けられるようになりますので、外出の機会が増える1歳頃になったら予防接種を受けましょう。
予防接種の費用の相場は¥3,500前後
ワクチン接種は、病気に対する治療ではないため、健康保険が適用されません。
原則的に全額自己負担となり、費用は医療機関によって異なります。
ワクチン接種費用ですが、¥3,500前後が一般的な相場です。
筆者の住む地域では、安くて¥3,000、高くても¥5,000の費用に設定されていました。
なお、費用負担については予防接種法に基づく定期接種の対象者※の場合は、接種費用が公費負担されているところもあります。
詳細についてはお住まいの市区町村の保健所や保健センター、医療機関に問い合わせください。
(※結核や日本脳炎などの重篤な症状のある伝染病をお持ちの方)
インフルエンザワクチンの料金や、各自治体の補助金制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
インフルエンザワクチンの料金の違いや自治体ごとの補助制度について解説
コロナワクチンと同時接種はできる
新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種は可能です。
インフルエンザワクチンにはウイルスとしての働きはないので、コロナワクチンと同時に接種することができます。
ただし、インフルエンザワクチン以外のワクチンは、新型コロナワクチンと同時に接種できませんので注意してください。
いつ受ける?流行前のタイミングとワクチンの供給量
インフルエンザワクチンは、遅くとも11月下旬までに接種することが望ましいでしょう。
理由は、例年12月頃からインフルエンザが流行し、1月~3月上旬に流行のピークを迎えるからです。
また、供給量については、今年度は過去最多のインフルエンザワクチンの供給がされる見込みです。
新型コロナワクチンと同時接種をする方が増えるとの見込みで、生産ラインの増強がされています。
とはいえ、供給量が不足する可能性もありますので、流行が始まるまでに接種したい方は早めに申し込みを行ってください。
インフルエンザとは?特徴や種類を簡単に解説
インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスを病原とする感染症です。
口や鼻から入ったインフルエンザウィルスが、喉の粘膜などで増えて起こります。
インフルエンザの歴史と名前の由来
インフルエンザは、16世紀のイタリアの占星家たちによって名付けられたと言われています。
占星家たちは、病の流行が周期的に起こることから、これを星や寒気の影響によるものと考えていました。
この周期的に流行する病の名前を、「影響」を意味するイタリア語のinfluenzaから名付けました。
世界で最初に大流行したインフルエンザは「スペイン風邪」と言われています。
スペイン風の感染者数は約5億人とも言われ、これは当時の世界の人口(18~20億人)の3割ほどが感染したと推定される数です
インフルエンザウイルスの種類
インフルエンザには、大きく分けてA型、B型、C型、D型の4つの種類があります。
このうち、ヒトに感染するのはA型、B型、C型3種類のみで、A型のウィルスには表面の構造の違いによってさらに細かい種類に分かれます。
4種類(A型、B型、C型、D型)のインフルエンザ
型名 | 性質 | 症状 | 流行の仕方 |
---|---|---|---|
A型 | ヒトに感染する 非常に変異しやすい | インフルエンザの典型的な症状 | 大きな流行を起こす |
B型 | ヒトに感染する 変異しにくい | インフルエンザの典型的な症状 | あまり流行しない |
C型 | ヒトに感染する 変異しにくい | 軽い風邪の症状のみ | あまり流行しない |
D型 | 家畜にしか感染しない | – | – |
インフルエンザの典型的な症状とは、接種した場所の赤み・はれ・痛み・発熱、全身の頭痛・寒気・だるさなどです。
この中で、流行的な広がりを見せるのはA型のインフルエンザです。
D型は家畜にしか感染しないため、「インフルエンザの種類は3種類」と表記されることもあります。
インフルエンザウィルスの構造による種類分け
インフルエンザウイルスは80~120nmほどの大きさです。
A型とB型は、表面に
- ヘマグルチニン(HA)
- ノイラミニダーゼ(NA)
という名前のスパイク状のタンパク質がついています。
HAは16種類(H1~H16)、NAは9種類(N1~N9)それぞれ種類があり、この組み合わせによりA型インフルエンザウイルスにはH1N1~H16N9の144種類の”亜型”が存在します。
ニュースなどでインフルエンザ「H1N1型」のように型の名前が読まれることがありますが、これは「HAがH1、NAがN1」のA型インフルエンザウィルスということを表しています。
なお、B型ウイルスにもHAとNAがありますが、それぞれ1種類しかありません。
C型ウイルスにはそもそもHAとNAがないため変異しにくく、一度感染すると免疫を獲得するので流行しにくくなっています。
1シーズンで何度もインフルエンザにかかる理由
インフルエンザは、「1シーズンに1度感染すれば、そのシーズンはもう感染しない」というものではありません。
先述したように、ヒトが感染するインフルエンザウィルスには大きく分け3種類あり、さらにA型ウィルスは構造によってさらに多くの種類があります。
それらのウィルスはさらに小さな変異を繰り返すので、まったく同じウィルスにしかかからない保証はありません。
同じインフルエンザでも、種類が違えば別のウィルスなので、免疫ができていても感染してしまうのです。
4価ワクチンとはどのようなワクチンか
現在国内で広く用いられているインフルエンザワクチンは、
- A型株(H1N1株とH3N2株の2種類)
- B型株(山形系統株とビクトリア系統株の2種類)
のそれぞれをブレンドして作られています。
合計で4種類の弱体化したウィルスが入っており、4種類の免疫が得られることから、4価ワクチンと呼ばれています。
新型インフルエンザは季節性インフルエンザになる
インフルエンザには、新型インフルエンザと季節性インフルエンザがあります。
新型インフルエンザとは
A型インフルエンザが変化し、インフルエンザを新型インフルエンザと呼びます。
新型インフルエンザは世界的な大流行(パンデミック)を引き起こし、多くの感染者・死者を出します。
過去には、以下のような例があります。
年代 | 呼称 | ウィルスの型 |
---|---|---|
1918~1919年 | スペイン風邪 | A(H1N1)亜型 |
1957~1958年 | アジアインフルエンザ | A(H2N2)亜型 |
1968~1969年 | 香港インフルエンザ | A(H3N2)亜型 |
2009~2010年 | pdm2009 | A(H1N1) |
2013〜 | 鳥インフルエンザ | A(H7N9) |
季節性インフルエンザ
季節性インフルエンザは、季節的な流行を繰り返すインフルエンザです。
まず新型インフルエンザ世界的な流行した後、多くの人々が免疫を獲得すると、新型インフルエンザは季節性のインフルエンザへと落ち着いていきます。
新型インフルエンザ「pdm2009」A(H1N1)についても、平成23(2011)年4月からは、季節性インフルエンザとして取り扱われることになりました。
インフルエンザ・風邪・コロナの症状や原因の違い
インフルエンザ | 風邪 | コロナ | |
---|---|---|---|
症状 | 発熱(通常38℃以上の高熱) 喉の痛み 頭痛、倦怠感、筋肉痛など | 発熱(通常37℃〜38℃程度) 喉の痛み、鼻汁、咳等 全身症状はあまり見られない | 発熱(通常37℃以上) せき、頭痛、倦怠感、 味覚障害、食欲不振 |
発症 | 突然現われる | ゆるやか | ゆるやかだが、 急変化する場合もある |
治療方法 | 対症療法 抗インフルエンザ薬 | 対症療法が中心 | 対症療法 コロナワクチン |
原因 | インフルエンザウィルス | 様々なウイルス | コロナウィルス |
潜伏期間 | 1~3日間 | 1~3日間 | 7〜12日間 |
インフルエンザには抗ウィルス薬がありますが、症状が出てから処方までの時間が重要です。
後述しますが、疑わしい症状が出たらすぐに病院に行って薬を処方してもらうと、症状が軽くなり完治までが早くなります。
インフルエンザの見分け方
インフルエンザが風邪やコロナウィルスと大きく違う点は、「症状が急激に現れる」ことです。
- 38℃以上の急激な発熱
- 全身の筋肉痛、関節痛
これらの症状が急激に現れた場合は、インフルエンザの可能性があります。
逆に言えば、咳、鼻水、喉の痛みなどは、風邪でもインフルエンザでも現れる症状です。
潜伏期間も違う点ですが、症状が出るまで気がつきにくいため、見分けがつきません。
特にかぜとコロナは見分けがつきにくく、正確な判断をするためにはPCR検査などを行う必要があります。
重症化・死亡するケース(ハイリスク群)
ハイリスク群とは、インフルエンザにかかると重症化しやすい、リスク(危険性)の高い人のことです。
ご本人様、もしくはご家庭内の方で
- 重症化しやすい持病を持っている
- 65歳以上のご高齢
- 5歳未満の(特に2歳未満)幼児や乳幼児
このような方がいらっしゃれば、予防に努めてください。
重症化しやすい持病をお持ちの方
以下のような持病をお持ちの方は、インフルエンザにかかると重症化しやすくなります。
- 呼吸器系(喘息・慢性肺疾患)
- 循環器系(心不全)
- 血液疾患
- 肝臓・腎臓病
- 代謝障害
- 糖尿病
- 神経学的疾患、神経発達障害
- ステロイド内服などによる免疫機能不全
定期的に予防接種を受けるなどして、感染を予防しましょう。
65歳以上の高齢者
御高齢の方や免疫力の低下している方は、インフルエンザ後に肺炎を伴う等、重症になることがあります。
流行の大きい年には、インフルエンザ死亡者数および肺炎死亡者数が明らかに増加します。
これは、インフルエンザの感染によって循環器系や呼吸器系の持病の悪化を招くからです。
5歳未満の(特に2歳未満)幼児や乳幼児
5歳未満の(特に2歳未満)幼児や乳幼児のお子様は、インフルエンザによってまれに急性脳症を伴う等、重症になることがあります。
中耳炎、熱性痙攣や気管支喘息を誘発することもあるので、小さいお子さんがいる家庭は特に予防接種を推奨します。
インフルエンザにかかったときは
もしインフルエンザにかかったときは、すぐに病院に行って治療薬をもらうと症状が和らぎます。
病院に行かないと治りが遅くなるだけでなく、症状も重いままです。
インフルエンザの治療方法
インフルエンザの治療方法には、一般療法と薬物療法があります。
自宅で免疫力を高める「一般療法」
一般療法は、自然治癒力によってインフルエンザを治す方法です。
まずは休養(特に睡眠)や、水分や栄養を十分にとります。
加えて、室内の保温・保湿、暖かくして過ごすなど、免疫力を高めましょう。
特に水分補給については疎かになりがちなので、十分な水分を補給してください。
どんなものを飲めばいいかはあまり気にせず、とにかくたくさん飲んでおくことが重要です。
具合が悪ければ早めに医療機関を受診し、治療を受けましょう。
病院で処方してもらう「薬物療法」
薬物療法は、インフルエンザ治療薬を使ってインフルエンザを治療する方法です。
症状を和らげるための薬剤を使う「対症療法」と、原因となるウイルスの増殖を抑えて感染の拡大を防ぐ「原因療法」があります。
対症療法では、熱を下げるお薬である解熱鎮痛薬や、黄色痰(たん)などの細菌を殺す抗菌薬を使います。
原因療法では、次で解説するインフルエンザの治療薬を使います。
最速で治すならインフルエンザ治療薬
インフルエンザは対症療法でも治りますが、最速で治すならインフルエンザワクチン治療薬を飲みましょう。
ただし、発症から48時間以内の飲むことで、効果が現れやすくなります。
ウイルスの増殖を抑える効果は48時間以内に
インフルエンザ治療薬は、ウイルスの増殖を抑えて感染の拡大を防ぐ役割があります。
熱が出る期間は約1~2日間ほど短くなり、鼻やのどからのウイルス排出量も減少するでしょう。
重要なのは、発症後できるだけ早く服用を開始することです。
インフルエンザウイルスは増殖のスピードが速いため、症状が出現して48時間以内にウイルスの増殖のピークがきます。
発症してから48時間以内であれば、抗インフルエンザ薬のウイルスの増殖を抑える効果が期待できます。
しかし、48時間以上経過してしまうと、すでにウィルス増殖はピークを過ぎているため、お薬の効果が現れにくくなります。
一般的な4種類の抗インフルエンザ薬
一般的には、抗インフルエンザ薬は以下の4種類がよく使われています。
成分名 | 商品名 |
---|---|
オセルタミビルリン酸塩 | タミフル等 |
ザナミビル水和物 | リレンザ |
ペラミビル水和物 | ラピアクタ |
ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 | イナビル |
他にも、アマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレル等)やバロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)などがありますが、有効性の観点からあまり使用されていません。
副作用や異常行動に注意が必要
抗インフルエンザウイルス薬は、服用後の異常行動が報告されています。
異常行動とは、突然走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロするなどの行動です。
極めてまれですが、転落等による死亡事例も報告されています。
なぜ、このような異常行動が起きるのか不明ですが、これまでの調査結果では
- インフルエンザにかかった時には、抗インフルエンザウイルス薬を服用していない場合でも、同様の異常行動が現れる
- 異常行動は、服用した抗インフルエンザウイルス薬の種類に関係なく現れる
ことが報告されているため、抗インフルエンザウイルス薬が直接の原因とは言えません。
インフルエンザにかかった際は、薬を飲んでいてもいなくても、異常行動に対して注意が必要です。
特に、12歳未満の小児に薬を投与する際は、もし異常行動が起きた時に対応できる人が近くにいるかどうか、慎重に検討してください。
薬剤耐性インフルエンザウイルスとは
薬剤耐性インフルエンザウイルスとは、本来有効である抗インフルエンザウイルス薬が効かない、あるいは効きにくくなったウイルスのことです。
このウイルスは、ウイルスが増殖する過程で、特定の遺伝子に変異が起こることによって生じると考えられています。
ただし、これらのウイルスが検出される割合は、1~10%程度とわずかなものです。
一部で薬剤耐性インフルエンザウイルスが生まれたとしても、全てのウイルスに薬剤耐性がつくわけではありません。
引き続きインフルエンザ治療薬は有効ですので、症状が現れたら可能であれば病院に行って薬を処方してもらいましょう。
インフルエンザの検査方法
インフルエンザの検査方法には、病院で行う粘膜から抗原を採取する方法と、抗原検出キットを使う方法があります。
最も確実な診断方法では時間がかかる
最も確実なインフルエンザの診断方法は、病院を受診することです。
喉をぬぐった液、もしくはうがい液からウイルス採取して検査します。
しかし、これらの検査は結果がでるまでに時間(数日)がかかるため、後述する診断キットを使用している医師も多くなっています。
インフルエンザ抗原検出キット
インフルエンザ抗原検出キットは、20~30分で簡易的な病原診断をすることできます。
コロナウィルスの発生を受けて一般向けにコロナ検査キットが流通していますが、まだインフルエンザの検査キットは市販されていません。
医療機関に対しては既にインフルとコロナの「同時抗原検査キット」が流通しており、もしこれが市販されれば、医療機関の業務負担は軽減されると思われます。
ただ、コロナ検査キットの販売も政府としては「あくまで特例措置」と認識しているようなので、実現される見込みは高くないでしょう。
登校や出勤を再開するまで
インフルエンザにかかると、発症後3~7日間はウイルスを排出していると言われています。
(※個人差はあります)
一般的な風邪と違い、インフルエンザは咳等で空気中に飛び散ったウイルスからも感染します。
感染力が強いので、感染したまま学校に行ったり出社したりすると、感染を拡大させるになります。
学校への登校は発症後5日&解熱後2日は禁止
学校への登校禁止については、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)で明確に記載があります。
イ インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあつては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで。
学校保健安全法 第十九条 (出席停止の期間の基準)
インフルエンザを発症したら、
- 5日を経過していること
- 解熱から2日経過していること
このどちらも満たした場合のみ、通学を復帰しましょう。
詳細はこちら
インフルエンザの出席停止期間の早見表|幼児と大人の違いについて
会社への通勤も発症後5日&解熱後2日は禁止とすべき
学校の場合は学校保健安全法にルールが書かれていますが、企業には法的な基準がありません。
しかし、多くの企業では学校保健安全法の出席停止の期間の基準に則って、
- 発症から5日を経過していること
- 解熱から2日経過していること
のような就業規則を定めています。
職場に復帰する際の治癒証明書や陰性証明書については、一般的には提出する必要はありません。
インフルエンザの陰性を証明することがそもそも困難ですし、医療機関に過剰な負担をかける可能性もあります。
職場が従業員に対して、治癒証明書や陰性証明書の提出を求めることは望ましくないでしょう。
インフルエンザの予防方法
インフルエンザの予防するために、最も効果的なのは予防接種をすることです。
その上で、免疫力を高めて感染経路を経つことで、感染を防ぐことができます。
予防接種を受ける
インフルエンザが流行する12月より前に、ワクチン接種を済ませましょう。
感染を完全に防ぐことはできませんが、重症化を防ぐことができます。
免疫力を高める
十分な休養と、バランスのとれた栄養摂取によって、体の抵抗力を高めましょう。
また、空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。
乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。
飛沫感染接を防ぐ
咳やくしゃみをすると、前方2mまでウィルスが飛散します。
このような飛沫感染は、咳エチケットを守ることや、マスクの着用によって防ぐことができます。
また、通勤時間をずらすなどして人混みを避けたり、そもそも外出を控えることで感染リスクを減らすことができます。
止むを得ず外出する場合は、マスクを必ず着用しましょう。
なお、風邪予防の方法として一般的な「うがい」ですが、実は”インフルエンザの予防効果に関する科学的根拠は未だ確立されていない。”
として厚生労働省や首相官邸のホームページでは強く推奨していません。
接触感染を防ぐ
電車のつり革、ドアノブなど他の人が触れた所を触ることによる接触感染にも注意です。
その手で目や鼻を触ってしまうと、粘膜から感染してしまいます。
接触感染を防ぐためには、せっけんで入念に手を洗うことが効果的です、
帰宅後や料理の前など、石鹸による手洗いで手についたインフルエンザウイルスを除去しましょう。
インフルエンザウイルスには、アルコールによる手指消毒も効果がありますので、コロナ対策と併せて行ってください。