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高血圧には運動が重要!予防効果と注意点について細かく解説!

健康診断で少し血圧が高めといわれた、運動した方がいいといわれたけど、何をやればいいんだろう……といった悩みでお困りではないでしょうか。高血圧と診断される人は、男性で29.9%、女性で24.9%、全国で約3450万人と言われています。
血圧が高く運動不足な状態が続くと心臓病や動脈硬化などの病気のリスクが高まります。この記事では高血圧における運動の重要性について説明します。この記事を読めば高血圧の予防・改善に効果的な運動の方法と注意点について知ることができます。運動で血圧を下げたい方はぜひ最後までお読みください。

記事監修

名倉 義人 医師

○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院

○資格
救急科専門医

○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会

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運動が高血圧を改善する!運動がもたらす5つの効果!

継続した運動習慣は収縮期血圧(上の血圧)を2〜5mmHg拡張期血圧(下の血圧)を1〜4mmHg低下させるといわれています。高血圧患者では、収縮期血圧を平均8.3mmHg、拡張期血圧を平均2.5mmHgも低下させるでしょう。高血圧において運動はどうして良いのでしょうか。運動が血圧に与える効果を5つ説明します。

参考文献:厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧症を改善するための運動

血管が柔らかくなる

運動すると、血管内皮細胞(血管の内側の細胞)を刺激して、血管が柔らかくなります。その理由は、運動して筋肉を動かすと、筋肉が酸素をたくさん必要とするからです。筋肉に酸素を届けるために血管が伸び縮みするため、血管がやわらかくなります。運動により柔らかくなった血管のおかげで血流がやわらぎ、血圧が下がります。

脳に影響を与えてホルモンを整えてくれる

運動をすると、脳内に刺激が伝わりホルモンに影響を与えます。それにより血圧が下がります。血圧を上げようと働く交感神経の緊張を抑えられるためです。血圧を上げるタンパク質(アンジオテンシン受容体)の働きが抑えられることも、影響しています。

体の塩分を排出してくれる

運動で汗をかくと、体の外に塩分を少しずつ排出していきます。そもそも、塩分摂取量が多いと、血液などの体液濃度が増し、血圧が高くなるでしょう。そのため、体内の塩分が減ると血圧は下がります。体液の濃度が下がり、ホースの役割をもつ血管への負担が減るためです。血液中の塩分も減らすことができるので、血液をサラサラにしてくれます。適切な運動は腎機能の改善にも繋がり、さらに不要な塩分を排出しやすくなります。

糖尿病や脂質異常症にも効果あり

運動は高血圧だけでなく、糖尿病や脂質異常症にも効果があります。運動の継続により血糖値を下げるインスリンというホルモンが効きやすい体になるといわれています。具体例は、普段運動していなかった人が運動することで、空腹時血糖を20〜40mg/dl低下させました。
また、筋肉を動かすことでLDL(悪玉コレステロール)の分解を促進し、HDL(善玉コレステロール)を上昇させることができます。LDLのうち、動脈硬化に強い影響をあたえるMDA-LDL(酸化LDL)は3か月の運動教室にて平均8.7%低下しました。

参考文献:糖尿病教育入院患者の運動習慣と運動前後の血糖値変化についての検討
虚弱高齢者に対する3ヶ月間の運動トレーニングが動脈スティフネス、血清脂質プロフィールと酸化LDL濃度に及ぼす影響

高血圧の予防にも役立つ

血圧を下げる効果がある運動を継続すると、高血圧の予防につながります。また、運動によってインスリンが効きやすくなるため、血中の血糖が減少します。加えてLDLの分解を促進し、血中の脂質も少なくるため、血管の負担を減らしてくれるでしょう。血管の負担の軽減により、血圧が上昇しにくいという効果が得られます。運動は生活習慣病全般の予防に繋がるといってもよいでしょう。

高血圧の運動に適している人は?禁忌になる場合は?

高血圧でも運動をしていいかの判断はどうなっているのか確認していきましょう。

高血圧分類のⅡ度以下

高血圧は血圧の値によって6段階に分類されています。
血圧は精神的ストレスや時間帯によっても差がでるため、測定する環境により区分されています。病院で測った「診察室血圧」、家や職場で測った「家庭血圧」の2種類です。そのうちどちらの血圧でもⅡ度以下は運動療法の適応です。

分類診察室血圧(mmHg)家庭血圧(mmHg)
収縮期血圧拡張期血圧収縮期血圧拡張期血圧
正常血圧<120かつ<80<115かつ<75
正常高値血圧120~129かつ<80115~124かつ<75
高値血圧130~139かつ/または80~90125~134かつ/または75~84
Ⅰ度高血圧140~159かつ/または90~99135~144かつ/または85~89
Ⅱ度高血圧160~179かつ/または100~109145~159かつ/または90~99
Ⅲ度高血圧≧180かつ/または≧110≧160かつ/または≧100
(孤立性)収縮期高血圧≧140かつ<90≧135かつ<85

参考文献:高血圧治療ガイドライン2019

高血圧分類のⅢ度以上は薬物療法

Ⅲ度以上の場合は緊急に命の危険が伴うため、薬物療法が優先となります。血圧を下げる薬を飲んでコントロールがついていれば運動可能です。服薬している方は定期的に受診し、運動が行える状態なのか医師に確認しましょう。

脳や心臓の病気がある場合は禁忌かも?

高血圧の合併症として、脳卒中などの脳血管疾患や心筋梗塞などの心疾患があります。高血圧により血管が傷つくことで発症する可能性があり、運動療法の際は注意が必要です。

血圧を下げる!高血圧の方におすすめの運動3選!

運動といっても様々な種類があり、何をやればいいのか迷う方も多いでしょう。高血圧の改善におすすめの運動方法を3つ紹介します。

ウォーキングなどの有酸素運動

血圧をさげるためには、歩いたり、走ったりする有酸素運動が良いでしょう。体の負担も少なく、継続しやすいという利点があります。運動する時間が取れない場合も日常生活に取り入れやすいのではないのでしょうか。ウォーキングの場合、一日8,000歩以上、慣れたら10,000歩以上を目指しましょう。
歩き方のコツは4つあります。

以上のことを意識して歩いてみましょう。
ウォーキング時の靴は、運動すると浮腫んでしまう可能性があるため、余裕を持ったサイズにすると安心です。

慣れてきたら軽いジョギングやステップ運動がおすすめです。負荷を増やして効果的に運動がおこなえます。

軽いジョギングは、歩くときの速度と変えなくても大丈夫です。人と話ができるくらいの負荷にしましょう。なるべく小さな歩幅でつま先から軽く着地するように、リズミカルにゆっくり走ります。

ステップ運動は段差の上り下りの運動です。自然に階段の上り下りをするように、一足一段ずつおこないます。腕をしっかり振ると、より効果的です。

スクワットなどのレジスタンス運動

運動に慣れてきたら筋力トレーニングとして、スクワットなどのレジスタンス運動もやってみましょう。筋力を鍛えると、筋への酸素の供給のために血管が広がりやすくなります。筋力トレーニングのみでは、血圧を下げる効果が有酸素運動より低いと言われています。しかし、サルコペニア(筋量が低下していく老化現象のこと)を予防することで、運動しやすい体づくりができるでしょう。急激に行うと筋肉を損傷したり、血圧を上げる危険性があるので注意が必要です。

運動はスクワットがおすすめです。10回を1セットとして一日2〜3セット行うようにしましょう。素早くやるのではなく、ゆっくり4秒かけて降りる、4秒かけて戻るようにすることで筋肉を鍛えます。
スクワットで中腰の状態を10秒間キープする、等尺レジスタンス運動(筋肉の長さが変わらない抵抗運動)も良いでしょう。

マシントレーニングなどに興味がある方は、一番軽い負荷でおこなうようにしてください。物足りないと感じたら、重さではなく回数や時間を増やして調整しましょう。

室内でできる手足のストレッチ

室内で簡単にできる手足のストレッチもおすすめです。筋と一緒に血管も伸ばされるので血圧が下がりやすいといわれています。
簡単なストレッチを2つ紹介します。

一つ目は腕と肩のストレッチです。右手を上に上げて、肘を曲げながら背中に回します。左手で右側の肘を下に押し込み10秒間キープ。ゆっくりと戻してもう10秒ゆっくり押し込みます。左右逆にして同様に繰り返しましょう。腕や肩回りがほぐれやすいので、リラックスして血圧が下がる効果もあるのでおすすめです。

二つ目は脚のストレッチです。座ってあぐらをかき、片方の膝を伸ばします。つま先をしっかりと上にあげた状態で、両手でつま先をつかもうとしてください。できるところまで伸ばしたら10秒キープ。ゆっくりと戻してもう10秒ゆっくり押し込みます。反対側も同じようにやってみましょう。寝る前に行うと寝つきが良くなり、精神的なストレスを軽減し、高血圧の予防につながります。

どれぐらい運動すれば高血圧に効果があるの?

あまり運動をしすぎてしまうと血圧を上げる原因になってしまう可能性があります。運動の強さや時間について確認をしていきましょう。

運動強度

運動の強さは以下の表、Borgスケール(自覚的運動強度)で『ややきつい』程度を目安にします。目標の心拍数は220‐年齢の値の40〜60%です。40代であれば100回/分程度になります。

Borgスケール

指数自覚的運動強度運動強度(%)
20100
19非常にきつい95
18
17かなりきつい85
16
15きつい70
14
13ややきつい50
12
11楽である40
10
9かなり楽である20
8
7非常に楽である5
6

運動時間

運動時間は一回30分程度が良いとされています。一度に行うのではなく一回10分を3セットおこなってもよいでしょう。

運動頻度

毎日行うのが理想ですが、週2回の有酸素運動でも血圧を下げる効果があります。一週間のトータルで180分くらい運動できると良いです。一回の時間を増やして頻度を減らしたり、一回の時間を減らして頻度を増やしたり、自分にあった運動頻度を選びます。

時間が取れない場合は、通勤前の一駅前で降りて歩きましょう。オフィス内でも、階段をつかったり、遠いトイレを使ったりすることで運動の効果が得られます。

ためしてガッテンでも紹介された3つの簡単な運動

NHKで放映されていた【ためしてガッテン!】(ガッテン!と番組名変更後2022年に放映終了)では高血圧の運動療法として3つの運動が紹介されていました。一つずつ詳しくみていきましょう。

タオルを握るだけでOKのハンドグリップ法

ハンドグリップ法とは、最大筋力の30%の力で2分間握って休憩する運動を定期的に実施すると収縮期血圧を最大14mmHg下げる効果がある方法です。握る力を入れると、腕の筋肉に血流が流れて一度止まります。休憩後、解放されたときに血管から生成されるのが一酸化窒素です。一酸化窒素には血管を広げたり柔らかくする働きがあるため、血圧が下がります。

最大筋力30%の力で行うのはが難しいため、タオルを握って代用する方法をお伝えします。

  1. タオルを丸めて親指と人差し指が少し離れる程度の厚さに調整
  2. タオルを落とさない程度に軽く握りしめ、2分間握る
  3. 1分間休憩
  4. 反対側の手で2分間握る
  5. 1分間休憩

これを一日2セット実施します。全部合わせても11分で終わり、テレビを観ながらできます。足腰が弱い方でもできるので高齢者にもおすすめです。

呼吸に合わせて肺ストレッチ

血圧は呼吸の影響を受けやすく、深呼吸によって血圧は下がります。深呼吸の練習をすることによって、高血圧患者の血圧を下げることができたという研究もあります。深呼吸をしやすい体に整えてくれるのが肺ストレッチです。息を吸うときと吐くときでは、ストレッチ方法が異なるでため、順番に確認していきましょう。

・息を吸うとき
 方法① 手を胸の前で組む
 方法② 息を吸うのに合わせて手を前に伸ばし、肘を伸ばす
 方法③ 息を吐きながら肘を曲げてゆっくり元の姿勢に戻る

・息を吐くとき
 方法① 腕を腰に回して手を組む、肘は軽く曲げておく
 方法② 息を吐きながら肘を伸ばして腕を後ろにもっていく、顎もかるく上げる
 方法③ 息を吸いながらゆっくりともとの姿勢に戻る

一日に2〜3セットおこない、呼吸しやすい体づくりをしていきましょう。

ゆっくり歩きを組み合わせるインターバル速歩

インターバル速歩はゆっくり歩きと早歩きを組み合わせた方法です。早歩きを3分、ゆっくり歩きを3分を1セットとして5セット、計30分すると血圧を下げる効果があります。
インターバル速歩は、普通のウォーキングよりも血圧を下げる効果が出ている研究もあります。

参考文献:NHKガッテン! 血圧をラク〜に下げる! 最強ワザ 主婦と生活社 2019/10/28 p68-69 

高血圧症の方の運動におけるポイント3つ

高血圧症の患者が運動をする際のポイントを3つ紹介します。

準備運動をしっかりする

高血圧の方が運動を始めるときは、準備運動をしっかり行いましょう。

急に激しい運動を行うと、血圧が急激にあがってしまう危険性があるためです。ストレッチや軽い運動から始め、体を慣らしていきましょう。

水分をこまめに摂取する

脱水症状は血液がドロドロになり血圧を上げる原因となります。一度に水分を大量にとっても、血管の負担となるので、こまめな水分補給が必要です。途中でのどが乾いたら我慢しないようにしましょう。スポーツ飲料は糖分が多く含まれているため、ミネラルウォーターがよいでしょう。

息をこらえないようにする

レジスタンストレーニング、筋力トレーニングでは、ついつい息をこらえて力をいれてしまうかもしれません。息をこらえると急激に血圧があがってしまうため、呼吸を止めないように運動をしましょう。息をこらえてしまうような運動は避けるのも得策です。

高血圧症の方はこれさえ守れば大丈夫!運動時の注意点

高血圧だと運動するのが不安になるかもしれません。しかし、押さえておきたい注意点をまとめました。運動前後と運動中に注意する点をチェックしましょう。

運動を行う前

運動を行う前は、血圧を測り、血圧が高すぎないことを確認します。いつもと違う症状はないかのチェックも必要です。病院を受診して脳や心臓に新しい病気がないことも確認しましょう。一年以内に転倒したり、歩行やバランスに不安があったりする方はケガの危険性が高いです。専門家に確認してから運動しましょう。

運動中止基準

高血圧症の運動の中止基準は一般的な運動中止基準と同じです。血圧の目安は収縮期血圧が200mmHg、拡張期血圧が120mmHgを超えた場合です。頭痛や耳鳴り、動機といった症状は血圧が高すぎると出てきます。症状が出た場合はすぐに運動を中止してください。

運動を行った後、運動後の血圧変動

運動を行った後も血圧を測ります。運動後の血圧は一時的に高くなることはありますが、その後低下してくるので何度か測ります。。中止基準である、200mmHgを超えていなければ様子をみましょう。運動を始めてからしばらくは、運動する前と運動した後の血圧の差は大きいでしょう。運動を継続することで血圧の差は小さくなり、相対的な血圧も下がってきます。

Q &A

高血圧の運動について多く寄せられる質問への回答です。

高血圧なので、血圧を下げるにはどんな運動がいいですか?

高血圧には有酸素運動が効果的です。一日30分を目安にウォーキングやジョギングをしてみましょう。運動する時間がなかなか取れないときは職場の最寄り駅の一つ前で降りて歩くのが良いです。エレベーターではなく階段を使うのも血圧を下げる効果があります。

高血圧に運動が良いのはなぜですか?

運動すると、筋肉に酸素を届ける必要があり、手足の血流が改善します。その結果、血管が柔らかくなり、血管抵抗が減ることで血圧が下がります。運動によって脳にある血圧を調整するホルモンを刺激するため、高血圧の改善に効果的です。汗をかくと塩分を体外に排出するため、血圧低下につながります。

高血圧の禁忌運動は?

高血圧の方は、脳の疾患や心臓の疾患がある場合、必要に応じて運動は禁忌となります。

また、高血圧では激しい運動や息をこらえる運動も禁忌です。激しい運動や息をこらえる運動は急激な血圧上昇を伴い、脳出血などの危険性が高まります。例えば、ジャンプが連続するスポーツであったり、バーベル上げ等の『いきむ』トレーニングは実施しないでください。

まとめ

高血圧に対する運動の効果と方法について紹介しました。運動は、血管を柔らかくする効果や血圧を下げるホルモンを促すことで、予防にも効果がある魅力的なものです。収縮期血圧が180mmHg以上や脳、心臓に疾患がある場合はまず受診をしましょう。血圧を下げる運動で一番効果的なものはウォーキングなどの有酸素運動です。一日30分以上おこなうのが効果的ですが、10分×3セットでも良いでしょう。ストレッチやタオルグリップなども血圧を改善する効果があるため、自分のやりやすい方法から始めてみてください。適度な運動で血圧の低下が期待できます。この記事を参考に、血圧の高い方は運動に取り組んでみてくださいね。