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その爪の異常は糖尿病の初期症状かも?糖尿病と爪の関係 フットケアの必要性についても解説!

糖尿病の合併症である「足病変(糖尿病性足病変)」についてご存知ですか?

糖尿病では、高血糖の影響で血管が狭くなり、身体の末端まで栄養がいきわたらなくなります。更に、血糖値の高い状態が続くと末梢神経障害や易感染性などの様々な弊害が出てきます。それに加え傷が治りにくくなるなど、様々な要因が重なることで、足のちょっとした傷や爪の些細な変化から、気が付かないうちに重症化し、潰瘍や壊疽を引き起こすことがあるのです。

このような、足の爪や皮膚に起こる様々なトラブルを総称して足病変と呼びます。

足の爪の変化は糖尿病の初期症状としてみられる重要なサインです。既に糖尿病の方はもちろんのこと、それ以外の方も健康状態のチェックとして足の爪を観察する習慣を身につけると良いでしょう。フットケアについて知り、これからの生活に活かしてください。爪の変化にいち早く気が付くことで、糖尿病の早期発見・早期治療に繋げることができます。

今回の記事でわかること

記事監修

名倉 義人 医師

○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院

○資格
救急科専門医

○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会

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糖尿病のサインかも!糖尿病で爪が変化するのはなぜ?

糖尿病では、高血糖により血管が細くなることで、身体の末端部分(末梢)まで血液が行き渡らなくなります。すると、足の爪のように身体の末端にある部位に変化が現れるのです。

糖尿病患者の中でも、神経障害のある方は足の爪の異常や傷、痛みなどに気が付きにくく重症化するリスクが高くなります。

爪は健康のバロメーターです。日頃からよく観察し、自分の足の爪の正常と異常を見分けられるようになれば、糖尿病のみならず様々な身体の不調に気が付くことができます。

糖尿病で爪が壊疽するって本当?

糖尿病の人は、血流が悪いため傷の治りが悪く小さな傷や感染症から、潰瘍を形成しやすいです。糖尿病の人が足にできる潰瘍を「糖尿病性足潰瘍」といい、この潰瘍が重症化すると、壊疽を起こし下肢切断を余儀なくされることもあります。

最悪の状況を回避するためには、糖尿病を早期発見し、適切な治療を受けることが大切です。

糖尿病の前兆かもしれない爪の変化と特徴

糖尿病で起こり得る爪の変化は様々です。今回は以下の変化についてお話しします。

それぞれの特徴や注意しなければならないポイントについても解説します。

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巻き爪・陥入爪(かんにゅうそう)

巻き爪は爪が曲がって丸くなる状態のことを指します。

巻き爪になる主な要因は以下の通りです。

いずれにしても、爪に加わる力が正常でない場合に起こると言えます。

予防のためには爪切りや靴選びが重要です。

陥入爪は爪が周囲の皮膚に食い込み炎症を起こしてしまった状態です。巻き爪から陥入爪に発展することもあります。放っておくと炎症を起こした部分が感染を起こすため注意が必要です。

糖尿病の方は一度感染を起こすと治りにくくなるため、早期に治療する必要があります。巻き爪や陥入爪の治療は主に以下の方法が挙げられます。

<巻き爪>

<陥入爪>

[1]

巻き爪は歩くと治るともいわれています。

爪は本来巻こうとする力があります。しかし、歩くことで爪を広げる力がはたらきバランスをとっているのです。そのため、足の指に正しく力が加わるように正しい姿勢で歩くことで、巻き爪の予防と改善に繋がります。

爪白癬(水虫)

白癬とは、白癬菌というカビにより起こる感染症のことです。一般的には水虫と呼ばれています。糖尿病で白癬になるメカニズムは、以下の通りです。

これらが要因となり白癬菌に感染しやすくなります。

糖尿病の人は、高血糖の影響で血流が悪いため傷の治りが悪いという特徴があります。更に、易感染状態でもあるため、健康な人に比べて水虫になりやすいのです。

足白癬はその他の細菌の侵入経路となるため、足潰瘍になるリスクが高まります。糖尿病の人は一度水虫になると、悪化しやすく最悪の場合には壊疽を起こすこともあるので早期に治療してください。

爪白癬を防ぐために必要なことは、足を清潔に保つことや、蒸れに注意し通気性の良い靴・靴下を履くことなどが挙げられます。

日頃から、足を観察し適切なフットケアを行うことが重要です。

胼胝(たこ)

胼胝は、圧迫や摩擦などが原因で形成されます。

胼胝を放置し、更に圧迫したり摩擦をかけるような状況が続くと、潰瘍となってしまいます。そのため、胼胝が形成されたら、定期的に削ったり切除しなくてはなりません。

しかし、胼胝を削る際には皮膚を傷付けないように十分に注意して行う必要があります。糖尿病の人は、少しの傷でも治癒することが難しく、悪化しやすいため、胼胝ができてしまったときは主治医に相談し医療機関で処置してもらうようにしましょう。

また、足の形に合った靴を履くなど日々の生活を見直すことも大切です。

爪肥厚(そうひこう)

爪肥厚とは爪が厚くなった状態のことを指します。

糖尿病で爪肥厚になるのはなぜかというと、末梢血流障害により爪に栄養が行きわたらず爪が正しく伸びなくなってしまうからです。爪肥厚になると、爪が割れやすくなったり剥がれてしまうこともあります。するとそこから雑菌が入り、化膿してしまうこともあるのです。

爪肥厚は、長時間にわたる爪の圧迫や、白癬菌の感染によって起こります。

爪肥厚によって爪切りが難しい場合は、無理をせず医療機関を頼りましょう。

糖尿病の初期症状かもしれない爪の色の変化と変形

爪の色や変形にも注意が必要です。

爪の色の変化は、糖尿病の初期症状としてしばしばみられます。また、爪の変形は放っておくと靴が合わなくなり、靴擦れや爪が剥がれる原因にもなります。

糖尿病による爪の変色:白く濁ったり線が入る

糖尿病によって爪に栄養が行きわたらないと、爪が均一に成長できず濁ったり白い線が出ることがあります。その他に、爪が白くなる原因として多いのが爪白癬です。爪白癬の場合は薬での治療が必要です。

白い線の場合は、糖尿病ではなく加齢や爪の乾燥が原因のこともあります。

糖尿病の初期症状で爪が変色することもありますが、爪が黒い場合にはその他の疾患が考えられるため注意が必要です。爪が黒い場合に考えられる疾患は、爪下血腫や悪性黒色腫、爪甲帯状色素沈着などが挙げられます。悪性黒色腫は悪性度の高いがんの一種です。

糖尿病による爪の変形:へこみや段差ができる

糖尿病によって爪に栄養が行きわたらないことで、へこみや段差ができることもあります。

また、爪の変形に加え、足指の変形も靴擦れに繋がるので注意が必要です。

糖尿病の初期症状を見逃さないために

糖尿病の人は、神経障害によって足の感覚が鈍くなっています。そのため、傷ができても気が付きにくく、気が付いた時には既に潰瘍を形成している場合もあるので注意が必要です。

そのような事態を避けるためにも、1 日に1 回以上は足に異変が起きていないかを観察する習慣を身に付けることがポイントとなります。

糖尿病による爪の変化は手指の爪より足の爪に現れる!観察ポイントとフットケアの方法

フットケアは、足潰瘍の予防と治療が目的です。下肢切断という最悪な状況を避けるためにも、日々のフットケアを適切に行い、QOL向上と生命予後の改善に努めましょう。

フットケアの方法①観察ポイントを知る

観察のポイントは以下の通りです。

爪の異変に気が付くためには、正常時の自分の爪がどのような状態かを知っておく必要があります。そのため、普段から自分の爪の色や厚さなどを気をつけて観察しておくと良いでしょう。

フットケアの方法②足を清潔に保つ

足の潰瘍や壊疽の原因のひとつに、外部からの細菌の侵入があります。爪のひび割れなどの些細な変化から小さな傷ができ、そこから細菌が侵入してしまうこともあるのです。

細菌の侵入を防ぐためには、足を常に清潔に保つことが重要です。

足を洗う時には、よく泡立てたスポンジなどのやわらかい素材のもので優しく洗うようにしましょう。足の指の間や爪も良く洗うようにしてください。

フットケアの方法②保湿ケアで乾燥から守る

爪だけでなく、皮膚のひび割れや乾燥による痒みは傷ができる原因になります。

保湿を行って皮膚の乾燥対策をしましょう。

ただし、常に湿った状態にしておくと、爪白癬(水虫)の原因となるため注意が必要です。

フットケアの方法③靴下を履く

足を清潔に保つために、靴下を着用することもおすすめです。靴下を履くことで蒸れを防ぎます。更に、外部の刺激から保護する役割も果たすため、怪我を防ぐこともできます。

フットケアの方法④余裕を持った靴を使用する

靴のサイズも爪や足のケアにとっては重要です。小さすぎる靴は足を圧迫し、爪や指の変形に繋がります。更に、爪が変形することでひび割れや食い込みなどを招き、傷ができてしまうのです。

逆に大きすぎる靴は、靴擦れを起こす原因となります。

靴を選ぶときは、自分の足にフィットした靴を選ぶようにしましょう。

フットケアの方法⑤血糖をコントロールする

糖尿病は自覚症状が少なく、発見がどうしても遅くなりがちな病気です。そのため、爪のように見た目の変化がわかりやすい部位から異常を発見し、早期治療を開始できれば病状の悪化を食い止めることができます。

もし今回紹介したような爪の異常に気が付いたら、できるだけ早く糖尿病の検査を受けてみてください。

糖尿病の検査は、一般的な内科で血液検査をするだけで簡単にわかります。

フットケアの方法⑥糖尿病の人の正しい爪の切り方

爪の切り方の基本は、まず爪を四角に切り、角をヤスリなどで丸く整える「スクエアオフ」が基本となります。爪の長さは指と同じ長さに切りそろえましょう。

糖尿病の人は特に深爪に注意しなければいけません。糖尿病の人に深爪がダメな理由はいくつかありますが、一番は巻き爪になりやすいためです。巻き爪になると爪が皮膚に食い込み傷ができやすくなります。先述した通り、糖尿病の人は傷の治りが悪いため、小さな傷がすぐに悪化し、感染を引き起こしてしまいます。そうなると、治療に時間を要すだけでなく、最悪の場合壊疽してしまい、下肢切断という状況にもなりかねません。

爪肥厚や巻き爪により自分で切りにくいときには、無理をしてはいけません。無理に切ると爪がひび割れたり、爪と皮膚の間に傷ができてしまう可能性があります。

しかし、切らないまま放置してしまうと、割れてしまったり、巻き爪を助長させてしまいます。自分で切るのが難しいと感じた時はかかりつけ医やフットケアを専門に行っている医療機関で相談しましょう。糖尿病の人や巻き爪・陥入爪、爪肥厚になっている人の爪切りは医療行為にあたるため、医師や看護師に切ってもらうことができます。

Q&A

糖尿病の爪に現れる病気のサインは?

色や形の変化、感染など様々なサインが現れます。

特に多いものは以下の通りです。

糖尿病の人は爪を切ってもいいですか?

爪切りは必要です。ただし爪切りは正しい方法で行うようにしましょう。

爪が伸びすぎてしまったり、逆に深爪になってしまうことは、足に傷ができてしまう原因になります。糖尿病の人は、小さな傷から潰瘍や壊疽に発展しやすいです。

正しい爪切り方法とフットケアの知識を身につけましょう。

正しい爪の切り方

  1. まず爪を四角に切り、角をヤスリなどで丸く整える
  2. 爪の長さは指と同じ長さに切りそろえる

糖尿病になると爪が反るのはなぜですか?

高血糖の影響で血管が狭くなることが影響しています。血管が狭くなることで身体の末端にある爪まで栄養が行きわたらない状態になるため、爪が反る・へこむなどの変形が起きるのです。また、サイズの合わない靴を履いていたり、普段の姿勢なども原因となる場合があります。

糖尿病はどうやって気づくのですか?

糖尿病の初期は、自覚症状が現れにくいため発見が遅れることがしばしばあります。

しかし、爪の変化は糖尿病の初期症状として現れやすい症状のひとつです。

爪の変化によって糖尿病かもしれないと思ったら、すぐに内科クリニックに受診し必要な検査をうけましょう。糖尿病は、内科医による診療と血液検査で診断が可能です。

爪は栄養状態によって色や形が容易に変化するため、糖尿病以外の病気の発見にも繋がる可能性があります。

そのため現時点での病気の有無にかかわらず、日頃からよく観察しておくことをおすすめします。

糖尿病の初期症状として、爪以外に現れる変化は以下の通りです。

しかし、これらの症状が出る時にはすでに血糖値がかなり高い状態が続いていることが考えられます。

糖尿病で爪肥厚はなぜ起きるの?糖尿病との関係は?

爪肥厚の原因は、爪に栄養が行きわたらずに正常に伸びなくなってしまうことです。糖尿病では、高血糖により血管が狭くなることで、身体の末端にある爪まで栄養が行きわたらなくなります。

糖尿病で爪白癬になるメカニズムと治療法は?

糖尿病の人は、高血糖が続くことで易感染状態に陥ります。そのため、白癬菌にも感染しやすいのです。足白癬があるとそこから爪に感染し、爪白癬になります。爪白癬は一度なってしまうと完治するのに時間がかかります。

白癬には、抗真菌薬を使用した治療を行うのが一般的です。抗真菌薬には飲み薬または塗り薬を使用します。

糖尿病の人の爪切り方法は?看護師に頼んでも良い?

正しい爪切りの方法は、まず爪を四角に切り、角をヤスリなどで丸く整える「スクエアオフ」が基本となります。爪の長さは指と同じ長さに切りそろえ、深爪には十分に注意しましょう。

爪肥厚や巻き爪により切るのが難しい場合には、医療機関で医師や看護師に切ってもらってください。爪切りのためだけに受診するのは気が引ける方もいるかもしれません。しかし、糖尿病の人や爪肥厚、巻き爪がある人の爪切りは医療行為にあたるため、遠慮なく医療機関に頼りましょう。

無理に自分で切ろうとすると、爪が割れたり皮膚に傷ができてしまう可能性があります。

糖尿病の初期症状として爪に横線や縦線は現れる?爪に白い線がでることはある?

糖尿病の初期症状として、爪に白い線が現れることもあります。

糖尿病以外の疾患でも線が現れることがあります。

例えば、「ボー線条」です。これは、すべての爪に横線が1本出ることをといいます。ボー線条は、糖尿病だけでなく、発熱性疾患や感染症、亜鉛欠乏症、薬剤の影響や出産などが原因となります。

糖尿病で爪が壊疽するって本当?

糖尿病になると傷が治りにくくなるため、少しの傷で潰瘍になってしまいます。また、糖尿病の人は末梢神経障害を起こしやすいため、傷や痛みに気が付かないこともしばしばあります。すると潰瘍ややけど、怪我などに気が付かず、気が付いた時には壊疽まで進行してしまったという状況に陥るのです。壊疽してしまった場合、最悪の場合には足を切断しなくてはなりません。このような事態を防ぐためにも、日々のフットケアが大切になります。

爪の黄ばみは糖尿病と関係がある?

爪の黄ばみは、爪白癬が原因の場合があります。また、乾燥による変色や、その他の爪そのものの疾患の可能性もあります。

しかし、爪の変色や爪白癬は糖尿病の初期症状としてよく現れる足病変です。爪に何かしらの異常を感じた場合には、医療機関を受診することをおすすめします。

まとめ

糖尿病になると、末梢血管の血流障害や神経障害、易感染状態などによって全身に様々な影響を与えます。身体の末端にある足の爪は、特にこれらの影響を受けやすいのです。

糖尿病による足病変は、放置すると容易に重症化し、潰瘍を形成します。最悪の場合は壊疽を起こし、下肢を切断しなくてはいけません。下肢の切断は糖尿病の重大な合併症の内のひとつです。下肢切断を避けるためにも、足病変を早期発見・早期治療することは重要となります。

糖尿病は初期の段階では症状が現れにくく、発見が遅れてしまいがちです。しかし、足の爪は糖尿病の初期症状として症状が現れやすく、更に目に見てわかりやすく変化が現れやすい部位です。

糖尿病の方はもちろんのこと、糖尿病が疑われる方やそれ以外の方も日頃から、足をよく観察しフットケアを行うことで爪に現れる病気のサインを見逃さないようにしましょう。

そして、最も大切なことは糖尿病にならないことです。

1型糖尿病は、遺伝や臓器の器質的な問題などが要因として考えられているため予防は難しいです。しかし、糖尿病患者の9割を占めるといわれている「2型糖尿病」は、食生活や運動習慣などの生活習慣と遺伝的な要素が絡み合って関係しています。糖尿病に限らず、生活習慣病は様々な疾患を合併し、最終的には主要な臓器(心臓、腎臓など)に影響を及ぼしてしまいます。まずは生活習慣を見直して、生活習慣病の予防に努めましょう。

参考文献

[1]その他の専門外来【巻き爪治療】かがやき糖尿病内分泌漢方クリニック 新神戸院 かがやき糖尿病内分泌クリニック新神戸

[2]山田, 悟. ウルトラ図解 糖尿病. 東島俊一, 2022.[3]新井, 晋, editor. 血糖値の高い人がまず最初に読む本. 伊藤仁, 2010.