マイコプラズマ肺炎は一度かかると再感染しない?繰り返す可能性について解説

公開日: 2024/12/04
「つらかったマイコプラズマ肺炎。もう二度と感染することはないよね?」 「マイコプラズマに再感染しても症状は軽い?」 一度マイコプラズマ肺炎にかかったら、感染リスクは低くなるだろうと思っていませんか? 流行の兆しがあると、再び感染するのではないかと不安になる人もいるでしょう。 マイコプラズマ肺炎は何度でも感染する可能性があります。免疫は長く続かないため、一度感染したとしても油断できません。 本記事ではマイコプラズマ肺炎の原因となる菌の特徴を踏まえ、うつる確率や免疫が持続する期間について詳しく解説します。 再感染であっても症状が軽くなるとは限らず、しつこい咳のような後遺症に悩まされることもあります。 「一度感染して治ったから大丈夫」と安心せず、継続して感染対策をおこないましょう。
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マイコプラズマ肺炎は一度かかるともう感染しない?

マイコプラズマ肺炎は一度かかったとしても、再び感染する可能性があります。

マイコプラズマに感染すると体内で抗体がつくられますが、生涯続く免疫を獲得できるわけではありません。

同じシーズンに何度もかかる可能性は低いものの、抗体は時間とともに衰えていくため再び感染するリスクは十分にあります。[1]

とくに子どもや20歳未満の人は獲得した免疫が未熟であることも多く、感染のリスクが高いとされています。[6]

ただし大人も安心できません。家庭内で感染する可能性は高く、子どもが学校で感染したのち親へとうつるケースは非常に多いのです。 [8]

感染した多くの人は軽症で済むものの、なかには重症化し入院治療が必要になることもあります。まれに中耳炎や心筋炎といった肺以外の部位に合併症を生じるケースも報告されており、油断は禁物です。

マイコプラズマ肺炎の原因とは?

マイコプラズマ肺炎の原因は、マイコプラズマ・ニューモニエ(別名:肺炎マイコプラズマ)という細菌です。[2]

この菌が肺や気管支に感染することでマイコプラズマ肺炎を引き起こします。

マイコプラズマ・ニューモニエは、以下の4つの特徴を持っています。

  • 飛沫(ひまつ)感染と接触感染で拡がる

  • 5~14歳の子どもに多く発症する

  • 潜伏期間が2〜3週間と長い

  • 細胞壁(外部の攻撃から身を守る、細胞外側の壁)を持たない

マイコプラズマ・ニューモニエの感染経路はおもに飛沫(ひまつ)感染と接触感染です。感染者のくしゃみや咳を吸い込んだり、細菌が付着した手で口をさわったりすることで、マイコプラズマ・ニューモニエの感染は拡がります。

感染している人と密接した空間に長時間いると感染リスクはさらに高まるため、周囲との接触が多い家庭や学校では、自分の鼻や口といった粘膜部分になるべくさわらないなどの注意が必要です。

子どもが発症しやすく、感染者の約80%が14歳以下とされています。6〜12歳の子どもで発症しやすい感染症のひとつです。[7]

さらに潜伏期間が2〜3週間と長いため、自覚症状がない間に菌を拡散してしまう可能性があります。[1]

マイコプラズマ・ニューモニエには細胞壁がありません。細胞壁を持つ一般的な細菌とは異なるメカニズムで感染を拡げます。体内では免疫応答が十分に得られず、結果として再感染のリスクが高まると考えられます。

多くの細菌感染では、ペニシリンやセフェム系といった細胞壁に作用する抗菌薬が有効です。しかしマイコプラズマ・ニューモニエは細胞壁がないため、ペニシリンやセフェム系抗菌薬では効果を発揮しません。

「壁のない家に、壁をこわす薬を使っても意味がない」というたとえで理解しやすいでしょう。適切な治療でなければ、症状は長引いてしまいます。

マイコプラズマ肺炎の治療にはマクロライド系やニューキノロン系の抗菌薬が有効ですが、近年ではマクロライド系抗菌薬が効かない耐性菌も出現しています。治療の見極めが難しく、回復が遅れるケースも少なくありません。[9]

「細胞壁を持たない」というマイコプラズマ・ニューモニエの特殊な構造は、治療を難しくし再感染のリスクを高めています。

マイコプラズマ肺炎は一度かかると症状は軽くなる?

一度マイコプラズマ肺炎にかかったからといって、二度目の症状が軽くなるとは限りません。

マイコプラズマ肺炎にかかると体内で抗体がつくられます。しかし抗体は数か月から数年で薄れてしまい、免疫は長続きしません。したがって過去の感染経験が症状の強さに影響を及ぼすことは低いと考えられます。

最近では「マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎」が増加しています。 [9]

この耐性菌によるマイコプラズマ肺炎は、通常のマイコプラズマ肺炎治療で使用されるマクロライド系抗菌薬が効きません。

2024年10月時点では、マクロライド耐性率が60%を超えている地域もあり注意が必要です。[8]

過去のデータによると、耐性菌に感染した場合マクロライド系抗菌薬で治療しても、2日以内に解熱する割合はわずか28%です。

効果的な治療が遅れてしまうと回復までに時間がかかり、重症化するリスクが高まる可能性もあります。

マイコプラズマ肺炎にかかった経験があっても、初めての感染時と同じように早期治療が大切です。

発熱や全身のだるさ、頭痛といった初期症状を見逃さず、感染が疑われたら早めに医療機関を受診しましょう。[1]

適切に治療を受ければ重症化を防ぎ、早い回復も期待できます。

マイコプラズマ肺炎に一度かかるとうつる確率は下がるのか

マイコプラズマ肺炎に一度かかると、免疫ができるためしばらくは感染しにくくなります。

ただし免疫は時間の経過とともに低下するため、生涯にわたって感染を完全に防ぐことはできません。感染する可能性は何度でもあります。

うつる確率

マイコプラズマがうつる確率は、一般的な感染症と比べて大きな差はありません。

マイコプラズマ肺炎の年間感染者は全体の5〜10%と報告されており、感染力の強いインフルエンザの感染率(約10%)と同水準といえます。[1][5]

さらに一部の研究では、マイコプラズマ・ニューモニエ感染者のうちマイコプラズマ肺炎を発症する割合は3〜13%と報告されています。感染しても肺炎にまで発展するケースは少ないのです。 [4]

またマイコプラズマ・ニューモニエの感染力はインフルエンザほどの強さはなく、一般的な風邪のウイルスと同程度です。感染者と短時間近くにいる程度では、感染するリスクは高くありません。

ただし密集した空間で長時間過ごす場合、感染する可能性が急激に高まるため注意が必要です。

とくに家庭内では感染リスクが高く、学校で感染した子どもを介して親も感染する例が非常に多くみられます。十分な対策を講じなければ、家庭内で感染を防ぐことは難しいでしょう。

マイコプラズマ肺炎の初期症状は風邪とよく似ているため、単なる風邪だろうと誤解しがちです。知らないうちに周囲に感染を拡げたり逆に感染したりすることで、流行が拡大していくと考えられます。

マイコプラズマ・ニューモニエの感染力そのものは比較的弱いため、飛沫や接触感染への対策を徹底すれば感染リスクをおさえられます。人が集まる場所では、マスク着用やこまめな換気を心がけましょう。

うつる確率が下がる期間

マイコプラズマ肺炎にかかったあと、数年間は再感染する確率が低下します。感染後体内でマイコプラズマに対する抗体がつくられるためです。

一部の研究結果によると、獲得した免疫は約4年間続くと報告されています。[4]

同じシーズン内では免疫がつくられたばかりであるため、感染するリスクは低いでしょう。

しかしマイコプラズマに対する免疫はしだいに弱まっていくため、安心はできません。

免疫を持たない人に比べると感染確率は低いものの、抗体が十分につくられない場合早ければ1年後に再感染する可能性もあります。[3]

再感染のリスクがあることを理解し、とくに流行しているシーズンは感染症対策を徹底しましょう。

マイコプラズマは石鹸やアルコールに弱い菌であるため、外出後はこまめな手洗いを意識してください。[8]

マイコプラズマ肺炎は後遺症があるのか

マイコプラズマ肺炎の症状がおおむね落ち着いたとしても、以下のような症状が続くこともあります。

  • しつこい咳

  • 疲労感や倦怠感

  • 熱のぶり返し

  • 吐き気や食欲不振

もっとも多くみられるのはしつこい咳です。マイコプラズマ肺炎の厄介な特徴のひとつといえるでしょう。

抗生剤で治療すると通常2〜3日で解熱し、症状全般も1週間ほどで改善しますが、気道の敏感な状態はしばらく続きます。このため咳は3〜4週間、長い場合は数か月間残ることもあるのです。

さらに気道に炎症が起こることで、乾いた咳からしだいに痰のからむ咳へと変化していきます。喘息のようなゼーゼーとした苦しさを感じるケースも報告されています。

しつこい咳が残ると、生活に支障をきたすことがあるかもしれません。ひどい咳に悩み十分な睡眠をとれない人もいるでしょう。

熱がぶり返すことも少なくありません。マイコプラズマの体内に残り、免疫反応が過剰にはたらき続けることが原因と考えられます。

「一度解熱したはずが再び上がってきた」「朝は解熱しているのに夜になると発熱する」「微熱が続く」といったさまざまなケースが報告されています。何日も熱が続くと、体力も奪われてしまいつらいですよね。

疲労感やだるさ、食欲不振が続く人もいます。

マイコプラズマと戦うために、体が予想以上にエネルギーを消耗しているためと考えられます。完全に回復するまで1か月程度は、無理せず十分な休養をとるよう心がけましょう。

ただし咳や発熱が長引いたり、倦怠感が悪化したりする場合は、合併症を引き起こしている可能性もあります。我慢せず医療機関へ相談してください。

よくある質問

マイコプラズマ肺炎の症状が落ち着くと、もうかかりたくないと思いますよね。

まだ本調子とはいえず、いつになったら完全回復するのかと心配な方もいるでしょう。周囲の人にうつしてしまう恐れがあるのかも気になりますよね。

以下ではマイコプラズマ感染を経験した方からよくある質問に、理由とともにお答えします。

マイコプラズマ肺炎は治ったあとどうなりますか?

マイコプラズマ肺炎の症状が軽快したあとも、咳だけは3〜4週間程度にわたり長引くことがあります。

マイコプラズマによって引き起こされた炎症により、気道は敏感な状態が続いているためです。

乾いた咳からしだいに痰のからむ咳へと変化し、中には数か月にわたりしつこい咳に悩まされる人も少なくありません。

発熱を繰り返したり、倦怠感が長く続くこともあります。 体内に残存するマイコプラズマに対して、免疫反応が続いているためと考えられます。

完全に回復するまでは1か月程度かかるため、その間は無理せず十分な休息をとることが大切です。気道に刺激を与えないように、部屋の加湿や水分補給などの乾燥対策も心がけましょう。

ただし咳や発熱が悪化する場合は、合併症が引き起こされている可能性もあるため、なるべく早く医療機関を受診してください。

マイコプラズマ感染症は再発しますか?

マイコプラズマ感染症は再発することはありませんが、免疫が弱まると再感染する可能性があります。

感染によってつくられる抗体が時間の経過とともに弱まるためです。免疫の働きで一時的に感染リスクが低下することはあっても、再感染を完全に防ぐことはできません。

とくに子どもは免疫反応が弱く、再感染の可能性が高いと考えられます。子どもから親に感染する確率は高いため、大人も安心できません。

マイコプラズマ感染症は秋から冬にかけて流行が拡大しやすい傾向があります。過去に感染経験があった場合でも油断せず、流行シーズンは感染症対策を徹底しておこないましょう。

マイコプラズマ肺炎の感染力はいつまでありますか?

マイコプラズマの感染力は、発症後4〜6週間以上続くとされています。[6]

もっとも感染力があるのは発症してから1週間程度(症状が強く出ている期間)です。

ただし発症してから4〜6週間以上経過しても、マイコプラズマは体内に残っています。体内に残存している間は、菌を周囲に拡散させる可能性が十分あるのです。

体調が回復したあとも咳エチケットは欠かせません。周囲にうつさないようにマスクを着用しましょう。また家族間でタオルの使い回しや箸の共用は避けてください。[7]

まとめ|マイコプラズマ肺炎に一度かかっても再発の可能性があるため注意

マイコプラズマは一度かかっても再感染する可能性があります。

免疫は時間とともに衰えていくため油断は禁物です。とくに家庭内で子どもから親への感染確率は高く、引き続き感染対策を継続することが重要です。

治癒後も後遺症として長引く咳や倦怠感、発熱がみられることがあります。完全に回復するまでには1か月程度かかる場合もあるため、無理せず十分な休養をとってください。

発熱や咳が悪化したり長引いたりする場合は、合併症が引き起こされている可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。

マイコプラズマの感染力は発症後4〜6週間以上続くことがあります。体調が良くなったあとも周囲にうつさないために、手洗いやマスクの着用、家族間での感染予防を徹底することが大切です。ましょう。

マイコプラズマ肺炎は「一度治ったから大丈夫」とは考えず、感染症が流行する季節には手洗いやマスクの着用を怠らないようにしましょうね。

症状がこれ以上悪化しないか不安ではないですか?

症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。

夜間や休日でもすぐに医師に相談ができるように、ファストドクターのアプリをダウンロードしておきませんか?

参考文献

[1]マイコプラズマ肺炎とは

[2]マイコプラズマ肺炎|厚生労働省

[3]マイコプラズマ感染症について - 一般社団法人兵庫県医師会

[4]Mycoplasma pneumoniae infection: Basics - PMC

[5]インフルエンザ(季節性)対策 | 首相官邸ホームページ

[6]マイコプラズマ肺炎の発生状況について

[7]マイコプラズマ肺炎|厚生労働省

[8]マイコプラズマ肺炎増加に関する学会からの提言について(周知)

[9]診療ガイドライン等に基づくマイコプラズマ肺炎治療の現況

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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