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インフルエンザ薬ゾフルーザとは
ゾフルーザは、2018年に導入されたインフルエンザを治療するための新しい薬です。
ほかにもインフルエンザの治療に使われる薬は以下の4つがあります。
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タミフル
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リレンザ
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イナビル
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ラピアクタ
ゾフルーザはイナビルと同様に1回の服用で治療が完了するため、飲み忘れるといったことがありません。
また吸入薬と違い内服薬であることから、吸入が得意ではない方にも向いています。
効果
ゾフルーザは従来のタミフルやイナビルより早い効果を期待できるインフルエンザ薬です。他の抗インフルエンザ薬と同様にA型、B型いずれのインフルエンザウイルスにも作用します。
薬を飲んだ翌日には、タミフルに比べウイルス量が1/100に低下するという報告もあります。
ゾフルーザは、インフルエンザウイルスに含まれるタンパク質が活性化するのを抑え、体のなかのウイルスが増えるのを防げる薬です。
インフルエンザウイルスは、体の細胞のなかで数を増やし、他の細胞へ移っていくことで感染を広げます。
ゾフルーザとタミフル・イナビルの違いは薬の作用方法です。
タミフルやイナビルは「ノイラミニダーゼ阻害剤」という種類で、細胞から細胞へウイルスが移ることを防ぎます。
一方、ゾフルーザは「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤」という種類で、細胞のなかでウイルスそのものが増えないように働きます。
インフルエンザに感染すると、副鼻腔炎など鼻に関する病気や気管支の炎症を起こす可能性が否定できません。
ゾフルーザを服用すれば、鼻や気管支に関する合併症を抑えることが可能です。
ゾフルーザはウイルスの数を抑え、症状も改善し、周りへの感染も防げるため、医師の指示通りに服用することが重要となります。
飲み方
ゾフルーザの服用は1回のみです。ゾフルーザは、インフルエンザによる症状があらわれてから「48時間以内」に服用することで効果を発揮します。
症状があらわれてから48時間以上経ってから服用しても、まったく効果が得られないというわけではありません。
しかし効果を最大限に発揮させるなら必ず48時間以内に服用しましょう。
ゾフルーザには10mgと20mgの規格があり、どの規格を何錠服用するかは、年齢や体重により異なります。
年齢 |
体重 |
ゾフルーザ錠10mg |
ゾフルーザ錠20mg |
成人および12歳以上の小児 |
80Kg以上 |
- |
4錠 |
80Kg未満 |
- |
2錠 | |
12歳未満の小児 |
40Kg以上 |
- | |
20Kg以上40Kg未満 |
- |
1錠 | |
10Kg以上20Kg未満 |
1錠 |
- |
処方された際には、医師の指示に従って、決められた量を服用しましょう。
コップ1杯程度の水か、ぬるま湯で服用します。
以下の飲み物と一緒に服用すると、お腹がゆるくなることがあるため注意が必要です。
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牛乳や豆乳、ジュース
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乳製品
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便をやわらかくする薬や胃薬
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サプリメント
日頃から飲んでいる薬やサプリメントがある場合は、医師に伝え、飲み続けてもよいか指示を受けましょう。また錠剤を砕いたり、服用後に嘔吐した際は追加で服用したりしないようにしましょう。
値段
ゾフルーザは保険が適応されるため、人によって負担額は異なります。保険が3割負担の場合の金額を以下に示しました。
体重40Kgの方が服用する場合、タミフルは3割負担で約600円(1日2回5日分)に対し、ゾフルーザは約1,500円(1回分)になります。
【薬の種類・用法・値段表】
製品名 |
剤型 |
用法 |
1治療当たりの値段(3割負担の場合) |
タミフル |
内服 |
1日2回5日間 |
約600円 |
リレンザ |
吸入 |
1日2回5日間 |
約800円 |
イナビル |
吸入 |
1回 |
約1,300円 |
ラピアクタ |
静脈注射 |
1回 |
約1,900円 |
ゾフルーザ |
内服 |
1回 |
約1,500円 |
新しい薬は一般的に発売当初は価格が少し高いことも多く、現状他のインフルエンザ薬に比べゾフルーザの値段は割高です。
費用対効果という点も考慮したうえで、医療機関と相談してみてください。
調剤薬局では薬の指導料などさまざまな点数が加算されるため、処方してもらう薬局により実際の負担額が異なる場合があることを理解しておきましょう。
インフルエンザ薬ゾフルーザの小児の服用について
日本小児科学会では、子どものゾフルーザ服用についての考え方や、注意点を示しています。[1]
ゾフルーザは12歳以上の子どもに服用が推奨されていますが、その理由は薬剤耐性ウイルス出現の可能性があるためです。
薬剤耐性ウイルスとは、通常の治療法が効かなくなるウイルスのことです。
つまりゾフルーザを飲むことで、インフルエンザ薬が効かないウイルスが生み出される可能性があります。
ゾフルーザには顆粒タイプの規格も存在しますが、2024年10月時点では20 kg未満の小児に対する顆粒製剤の使用は承認されていません。
5歳未満においては錠剤の服薬が困難と考えるため、積極的に推奨していないのです。
他のインフルエンザの薬に比べ、ゾフルーザはインフルエンザの際に引き起こされる合併症(肺炎、気管支炎、中耳炎、その他)や嘔気・嘔吐の発生率が最も低いのも特徴のひとつです。
インフルエンザ薬の服用の有無にかかわらず、就学期以降の子どもには異常行動がみられる可能性があります。異常行動は発熱して2日以内に多くみられます。
保護者は、とくに発熱や症状が出始めて2日間は、側に付き添うなどして注意深く観察しましょう。
インフルエンザ薬ゾフルーザの副作用について
ゾフルーザでは以下の副作用が生じる可能性があります。
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吐き気、嘔吐
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下痢
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アナフィラキシーショック(顔面蒼白、呼吸困難、かゆみ)
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異常行動(急に走り出す、ウロウロする)
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虚血性大腸炎(腹痛、下痢、血便)
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頭痛
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鼻血
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血尿
下痢や吐き気は100人に1人と比較的頻度の高い副作用です。
異常行動や虚血性大腸炎が起こる頻度は不明であるため、下痢や吐き気などの症状がひどいと判断したときは、かかりつけの医療機関へ早めに相談しましょう。
死亡例はあるのか
ゾフルーザを服用し、亡くなってしまったケースを3件紹介します。
60代女性の場合 |
ゾフルーザを服用後に入浴し、溺水による死亡を確認。 |
10歳未満の場合 |
ゾフルーザを内服後就寝、午前10時になっても起きてこず家族が寝室をみにいくとうつ伏せの状態で心肺停止で発見され死亡を確認。 |
80代男性の場合 |
施設入所していたが、ゾフルーザを服用するも高熱の対応ができず入院。治療おこなうも翌日呼吸状態が悪化し死亡を確認。 |
ゾフルーザを服用し亡くなった人は、高齢者に多くみられますが、直接の要因がインフルエンザウイルスなのか薬による死亡なのかは不明です。[2]
しかしタミフルや他のインフルエンザと比較すると死亡件数は少ないです。
異常行動との関連性
因果関係ははっきりしていませんが、インフルエンザ感染時に異常行動があらわれたという報告があります。[3]
タミフルの服用後に飛び降りたという事例がありましたが、ゾフルーザや他のインフルエンザ薬の服用との関係ははっきりしていません。
異常行動は、熱が出始めてから2日以内に起こりやすいです。とくに、就学〜未成年の男性に多いと言われています。具体的な異常行動は以下のとおりです。
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突然立ち上がって部屋から出ようとする
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興奮している
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外に飛び出す
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走り出す
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突然笑いだす
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変なことを言い出し泣きながら動き回る
異常行動が起こる前に、以下の対策をするとよいでしょう。
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玄関や窓の鍵をかける(玄関はチェーンや全ての鍵をかける)
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戸建ての場合は1階で寝かせる
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寝室に大きな窓がついている場合は、休む場所を変える
保護者は子どもが一人にならないよう十分な配慮が必要です。周りの人もできる限り協力して異常行動による事故が起きないようにしましょう。
ゾフルーザを服用後のウイルス排出期間はどれくらい?
ゾフルーザを服用すると、ウイルスの排出期間がほかの抗インフルエンザ薬と比べて短縮されることが分かっています。[4]
製薬会社のおこなった試験では、プラセボ(有効成分が入っていない薬)とタミフル、ゾフルーザを服用後のウイルス排出時間を調べました。
その際、プラセボ群は96.0時間、オセルタミビル(タミフル)群96.0時間に対し、ゾフルーザ群では48.0時間だったと報告されています。
ゾフルーザはタミフルと比べても半分以上の時間を短縮するため、周囲への感染を防ぐことが可能となります。
だからこそインフルエンザと診断され、ゾフルーザが処方された際には少しでも早く服用をすることが重要です。
ゾフルーザを予防のために飲むことは可能?
以下に該当する場合、インフルエンザ薬の予防投与が推奨されています。
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糖尿病などの代謝性疾患がある人
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肺や心臓などの病気がある人
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65歳以上の高齢者
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医療機関内や高齢者施設で感染者がいる場合
もちろん高齢者や基礎疾患を有している人だけでなく、家族が発症した際は家庭内感染を防ぐために自費で購入することも可能です。
ゾフルーザは臨床試験の結果により、インフルエンザの予防効果もあることが分かっています。
インフルエンザワクチンを接種することは感染を防ぐための手段として重要ではありますが、感染や発症、重症化を完全に抑えることは困難です。[5]
ある研究では、インフルエンザ初感染者がいる家族や同居者を対象にゾフルーザを予防投与し、10日間で予防効果がどれくらいなのかを観察しました。
予防投与後10日間でインフルエンザに感染し発症した人の割合は、プラセボ群が13.6%であるのに対しゾフルーザ群では1.9%と低く、ゾフルーザの予防効果があると示されました。[6]
ゾフルーザの服用は、感染予防として早期より積極的におこなうとよいと推奨されています。
よくある質問
ゾフルーザに関するよくある質問をまとめました。
ゾフルーザはどのくらいで熱が下がる?
発熱症状の改善は人によりますが、ゾフルーザを服用して24時間ほどで解熱するケースが多いです。
ゾフルーザを服用してから約54時間ほどで全ての症状の改善が認められたというデータもあります。
全ての症状とは頭痛や咳、発熱、のどの痛み、鼻詰まり、悪寒、筋肉・関節の痛み、疲労感のことを指します。
ゾフルーザを服用しなかった人と比べると、回復時間が大幅に短縮され、優れた効果を発揮していると報告されました。
なお、回復を要する時間はタミフルとさほど変わりません。[7]
検査をしてインフルエンザに感染していると分かったのなら、早めに薬を服用した方がよいでしょう。
ゾフルーザとタミフルのどちらがよいですか?
ゾフルーザとタミフルでは、推奨年齢や症状改善などが異なります。以下の表に違いをまとめました。
ゾフルーザ |
タミフル | |
推奨年齢 |
12歳以上 |
生後2週間〜 |
服用回数または期間 |
1回 |
1日2回5日間 |
予防投与に必要な回数または期間 |
1回 |
7〜10日間(体重37.5kg以上の子どもは10日間) |
価格(保険適応前) |
1,535.4円(10mg)2,438.8円(20mg) |
205.8円(先発品)111.6円(後発品) |
ゾフルーザは比較的新しい薬であるため、薬の値段は高いです。
しかし1回服用すれば治療は完了となるため、12歳以上で薬を5日間飲み続けるのがつらい方は選択することが可能です。
ゾフルーザの問題点は?
国立感染症研究所の調査において、ゾフルーザが効きにくい耐性ウイルスの検出が報告されました。
そのほかの問題点として挙げられるのは以下についてです。
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消化器系の副作用がある
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ほかのインフルエンザ薬より服用に関するデータが少ない
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12歳以下には服用の推奨ができない
耐性ウイルスがあらわれることで、インフルエンザ薬が効果を示さなくなる可能性も否定できないため、服用には十分に注意が必要であると言えます。
まとめ|インフルエンザ薬ゾフルーザについて理解して安心して服用しよう
ゾフルーザはたった1回飲むだけで、ウイルスの数を抑え、周りへの感染を防ぐことができるインフルエンザ薬です。
とくに、発症後48時間以内に服用することで高い効果を期待できます。そのため、できる限り早めに服用することが重要です。
副作用に注意しながら、正しく服用するようにしましょう。
インフルエンザは合併症が引き起こされやすい感染症です。
高齢者などのハイリスクの方だけでなく、ふだん健康状態に問題がない方でも重症化することが考えられます。
そのため、症状が出た場合は早めに医療機関を受診し、治療を開始することが大切です。
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
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参考文献
[1]日本小児科学会 2024/25 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針
[2]厚生労働省 バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ)の国内副作用報告状況
[3]厚生労働省「平成28年度 インフルエンザQ&A」より抜粋
[5]抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®の日本におけるインフルエンザウイルス感染症予防に関する効能・効果追加承認について
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。