インフルエンザA型とは?
インフルエンザA型はインフルエンザウイルスによって引き起こされる気道感染症です。
B型やC型に比べ感染力が強く、毎年流行を繰り返します。
初期症状は高熱や全身の倦怠感、筋肉痛・関節痛などで、急激に強くあらわれるのが特徴です。そのあと、咳や鼻水などの症状がみられます。
一般的な風邪より症状は強く、インフルエンザ脳症や肺炎などの合併症や重症化のリスクがあります。そのため、一般的な風邪とは区別することが重要です。
インフルエンザA型は毎年11月頃から感染者が増え始め、1~2月に流行のピークを迎え、4~5月にかけて減少していきます。
インフルエンザA型ウイルスはB型やC型と違い、亜型(サブタイプ)が多く存在します。亜型は少しずつ変異し続けているため、同シーズン中でも繰り返し感染してしまうことが特徴です。[1]
症状 |
ウイルスの特徴 | |
A型 |
発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、関節痛、咳、鼻汁など |
亜型(サブタイプ)が多くウイルスの変異が激しいため、免疫を持つ人が少ない。流行を繰り返す。感染力が非常に強い。 |
B型 |
発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、関節痛、咳、鼻汁など |
ウイルスの変異が少なく免疫を持っている人が多い。ヒトにのみ感染。感染力が強い。 |
C型 |
38℃以上の発熱、咳、鼻水、喘鳴、嗄声など |
ウイルスの変異はほとんどない。主に上気道で増殖。 |
A型インフルエンザの初期症状
A型インフルエンザの初期症状は急な発熱と全身倦怠感、関節痛や筋肉痛などです。発熱は38度以上の高熱になり、全身症状は激しく急速にあらわれます。
一般的な風邪にみられる喉の痛みや咳、鼻水などは、発症後しばらく経ってからあらわれます。[2][3]
初期症状
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急な発熱(38℃以上の高熱)
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頭痛
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全身倦怠感
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関節痛、筋肉痛
など
インフルエンザA型が治るまでどれくらいかかる?
インフルエンザA型に感染したら、どのくらいで治るか気になりますよね。
回復の目安は7~10日とされています。しかし症状が重い場合や持病のある人、高齢者または子どもでは回復まで長引く傾向があります。
症状の経過を知っておくと、学校や仕事を休む目安がわかり、家族や身近な人に感染を広げない配慮もでき安心です。
症状の具体的な経過を詳しく解説していきます。
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症状が治まるまでの目安
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ウイルスが排出されなくなるまでの目安
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学校や仕事を休む日数
症状が治まるまでの目安
発熱や咳などの症状は1週間程度で軽快することがほとんどです。通常、発熱は約2日、咳は約4日で治まります。抗インフルエンザ薬で治療をおこなうと症状が治まるまでの期間を約1.5~2.5日短縮できます。
ただし、高齢者や妊娠中、糖尿病、心疾患などの持病がある人、症状が重い人は回復までに時間がかかることがあり、注意が必要です。[4]
ウイルスが排出されなくなるまでの目安
A型インフルエンザウイルスの排出は発症1~2日でピークを迎え、1週間程度でほとんど排出されなくなるとされています。
小児で初めてインフルエンザにかかった時は免疫を持っていないため、ウイルスの排出期間は長引く傾向にあります。
またインフルエンザA型は、B型よりもウイルスの排出期間が短いことが特徴です。[5][6]
インフルエンザA型に感染したら学校や仕事は何日休む?
子どもの出席停止期間は学校安全保健法により「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」と定められています。
発症した日を含めて6日間は必ず欠席し、その後は解熱した日により期間が延長されていきます。
大人の出勤停止に関する法律上の規定はありませんが、発症後1週間程度が仕事を休む目安となるでしょう。
なぜなら、インフルエンザウイルスは発症前日から発症後3~7日間程度は喉や鼻から排出され、周囲の人へうつしてしまう可能性があるからです。
勤務先によっては出勤停止期間が決められていることがあります。確認してみると良いでしょう。[7][8]
インフルエンザA型の治療方法
インフルエンザA型の治療方法は「対症療法」と抗インフルエンザ薬を服用する「原因療法」の2つです。
インフルエンザA型、B型に治療法の違いはありません。それぞれの治療法について詳しく解説していきます。
対症療法をおこなう
対症療法は今あらわれている症状を和らげる治療法です。たとえば、発熱があれば解熱鎮痛剤を、咳が出ていれば咳止めを飲んで安静にします。
ただし、一部の解熱鎮痛剤をインフルエンザの疑いがあるときに服用すると、インフルエンザ脳症のリスクを高める可能性があります。
ロキソプロフェンナトリウムやイブプロフェン、ジクロフェナクナトリウムなどは注意が必要です。わからない場合は医療機関で処方してもらうか、薬剤師に相談してみましょう。[9]
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インフルエンザA型の対症療法で用いる薬剤
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発熱・頭痛:解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)
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咳:咳止め
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鼻水:抗アレルギー剤など
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喉の痛み:抗プラスミン剤など
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抗インフルエンザ薬を服用する
原因療法は病気の根本的な原因を取り除く治療法です。インフルエンザでは抗インフルエンザ薬を服用して、ウイルスの増殖を抑えます。抗インフルエンザ薬を服用すると、症状の軽減までの期間を1.5~2.5日程度、短縮できます。
薬品名 |
種類 |
特徴 | |
A型に有効な薬 |
シンメトレル |
飲み薬 |
インフルエンザ治療薬として日本で初めて承認された薬。現在はほとんど使われていない。 |
A型B型どちらにも有効な薬 |
タミフル |
飲み薬 |
治療だけでなく予防にも使用できる抗インフルエンザ薬。粉薬とカプセルがあり、吸入が難しい人でも服用できる。1日2回、5日間の服用が必要。 |
ゾフルーザ |
飲み薬 |
従来のタミフルやイナビルより早い効果を期待できるインフルエンザ薬。1回の投与で治療が可能。 | |
リレンザ |
吸引薬 |
インフルエンザウイルスが増殖する気道に直接作用するため、全身の副作用が少ない。1日2回、5日間の吸入が必要。 | |
イナビル |
吸引薬 |
インフルエンザウイルスが増殖する呼吸器に長時間とどまって作用。1回の投与で治療ができるため、服薬忘れや服薬中止の心配がない。 | |
ラピアクタ |
注射薬 |
飲み薬や吸入薬が使用できない場合に使われる。点滴投与のため医療機関で治療をおこなう必要がある。 |
インフルエンザA型の感染力
インフルエンザB型やC型に比べ非常に強い感染力を持つのがインフルエンザA型です。そのため毎年流行を繰り返します。なぜインフルエンザA型は強い感染力を持つのでしょうか。
インフルエンザA型ウイルスは非常に速い速度で増殖する特徴があります。
宿主(ヒトや動物の細胞)で増殖すると、増殖したウイルスは再び別の宿主に感染して、さらに増殖と感染を繰り返していきます。
インフルエンザA型ウイルスの増殖スピードは驚異的で、このスピードの速さが流行を繰り返す原因となるのです。
とくに家族や職場など人が集まる場所では短期間で感染が広がる危険があり、徹底した感染対策が求められます。[10]
必ず家族にうつるのか
インフルエンザA型は家族にうつる可能性がある感染症です。家族感染率は21.6%という報告があり、とくに最初の感染者が0歳~6歳の場合は、感染率が上がる傾向にあります。
ただし、感染対策をきちんとおこなえば家族内感染を防ぐことができます。[11]
インフルエンザA型の予防方法
インフルエンザA型は感染対策をおこなえば予防できる感染症です。
まず、インフルエンザの感染経路を理解しておきましょう。感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」の2つです。
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飛沫感染:感染者の咳やくしゃみのしぶきを吸い込むことで感染
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接触感染:ウイルスが付着したドアノブやタオルなどにふれた手で目や鼻、口をさわり感染
飛沫感染は人混みや学校など人が多く集まる場所で起こり、接触感染は物を共有することで起こります。
具体的な予防方法を解説していきます。
基本的な感染対策
①こまめに手を洗う
せっけんを使った手洗いは、手に付着したウイルスを洗い落とすことができます。外から帰ってきた時、調理をする時、食事の前後は必ず手を洗うようにしましょう。
【正しい手洗いの方法】
(1)流水で手をぬらし、せっけんをつける。手のひらをこすり合わせてしっかりと泡立てる。
(2)片方の手のひらでもう片方の手の甲を伸ばすように洗う。
(3)指先と爪の間を洗う。
(4)指の間を洗う。
(5)片方の手でもう片方の親指をつかみ、ねじり洗いをする。
(6)手首を洗う。
(7)流水でよく洗い流す。
②マスクを着用する
マスクの着用は咳やくしゃみが飛び散るのを防ぎ、周囲へ感染が広がるのを防げます。また、マスクをしていると無意識に口や鼻をさわることが避けられ、接触感染の予防にも効果的です。
ただし、マスクの付け方や素材によって効果は変わります。
もっとも予防効果に優れているのは不織布マスクです。マスクは鼻からあごを隙間なく覆うことで十分に効果を発揮します。
鼻やあごが出ないように注意しましょう。マスクを外す時は表面にはさわらず、すぐにゴミ箱へ捨てるようにしてください。[12]
家庭内での感染対策
①同じ部屋で過ごさない
感染している人とはできるだけ別の部屋で過ごしましょう。
咳やくしゃみのしぶきは1~2メートル程度飛ぶとされています。どうしても同じ部屋で過ごす時は他の感染対策をおこないながら、感染者とは十分な距離をとるようにしましょう。[13]
②換気をおこなう
換気をおこなうと空気中のウイルスの量を減らすことができ、感染予防に効果的です。感染者と部屋を分けられないときは、必ず換気をおこなうようにしましょう。
換気のコツは風の通り道を作ることです。対角線上にある窓を2箇所開けて換気をおこないます。窓の外に向かって扇風機やサーキュレーターで送風するとより効果滴に換気ができます。
冬場は室温が下がるため窓を十分に開けられないこともあるでしょう。その場合は空気清浄機を併用するのも有効です。
③感染者は最後に入浴する
感染者が最後に入浴をすることで感染を防げます。感染者の入浴が終わったらシャワーで浴室を洗い流し、換気も忘れずにおこないましょう。
④手がふれるところ(ドアノブや水栓レバー)を消毒する
手指がよくふれるドアノブや水栓レバーなどはこまめに消毒をおこないましょう。アルコールシートを使うと簡単に消毒できます。
⑤タオルを共有しない
物の共有は接触感染の原因になります。とくに洗面やトイレで使う手拭きタオルは個人のものを使うか、使い捨てのペーパータオルなどを利用するようにしましょう。
⑥感染者と洗濯物を分けて洗う
感染者の洗濯物にはウイルスを含む唾液や鼻水が付いている可能性があります。洗濯は感染者とは別にするようにしましょう。
よくある質問
インフルエンザA型についてよくある質問にお答えします。
インフルエンザA型とB型どちらの方がつらい?
症状が強く出るのはインフルエンザA型です。
インフルエンザA型では小児の約60%に39度以上の高熱がみられます。一方インフルエンザB型では、成人は比較的軽症な場合が多く、高齢者は発熱しないこともあります。
しかし、小児ではB型でも50%以上の確率で39℃以上の高熱になるため、症状のつらさはA型とあまり変わらないと言えるでしょう。[14]
何日後に家族にうつる?
家族にうつるのは2~3日後です。これはインフルエンザウイルスの潜伏期間は2~3日であるためです。
インフルエンザA型は症状が治まるまで7~10日程度かかりますが、抗インフルエンザ薬を服用すると約1.5~2.5日短縮できます。解熱するとインフルエンザウイルスの排出量が減り、家族に感染させてしまうリスクも減ります。
家族への感染を防ぎたいときは抗インフルエンザ薬の服用がおすすめです。
まとめ
インフルエンザA型について、ウイルスの特徴や症状、治療法、予防方法についてご紹介しました。
インフルエンザA型は38℃以上の高熱や倦怠感、関節痛などが急激に強くあらわれたあと、咳や鼻水などの症状が続きます。合併症を引き起こすほか重症化のリスクがあるため、一般の風邪とは区別することが大切です。
感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」の2つで、基本的な感染の予防方法は手洗いとマスクの着用です。
家庭内での感染予防法は、感染者と別の部屋で過ごすほか、物の共有をしない、よくさわる箇所の消毒をすることなどが挙げられます。
インフルエンザA型に感染して症状が治まるまでの期間は、7~10日程度です。抗インフルエンザ薬で治療をすれば1.5~2.5日短縮でき、体内のウイルスも速く消失します。
ただし抗インフルエンザウイルス薬は、インフルエンザ発症後12~48時間以内に服用しないと効果が期待できません。適切なタイミングで医療機関を受診しましょう。
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参考文献
[1]C型インフルエンザの流行の現状と臨床的特徴|日本小児感染症学会
[4]インフルエンザ症状の軽減に要した日数(中央)|厚生労働省
[6]新型インフルエンザ対策に関するエビデンスのまとめ インフルエンザの伝播経路
[7]学校保健安全法施行規則(第十九条) | e-Gov 法令検索
[9]インフルエンザによる発熱に対して使用する解熱剤について(医薬品等安全対策部会における合意事項)|厚生労働省
[12]国立大学法人豊橋技術科学大学 Press Release
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。