インフルエンザじゃないのにタミフルを飲んで大丈夫なのか
基本的に、インフルエンザじゃなくてもタミフルを飲んでも問題ありません。
そもそも、タミフルは治療としてだけでなく、予防にも使われるためです。
タミフルの予防投与については、次のように決められています。
“原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族または共同生活者である下記の者を対象とする。”[1]
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高齢者(65歳以上)
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慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者
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代謝性疾患患者(糖尿病等)
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腎機能障害患者
上記のような、とくに高齢者など重症化リスクが高い人へ、予防的にタミフルの処方が行われます。
もちろん、タミフルにも副作用が出る可能性はありますが、治療で使用する場合、大きな健康リスクは少ないと製薬会社によって確認されています。
予防目的で服用する際も、とくに最初の2日間は副作用の兆候に注意し、医師の指示通りに服用しましょう。
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インフルエンザじゃないのにタミフルが処方されるのはなぜ?
インフルエンザの検査を行わない場合や検査で陰性の場合でもタミフルが処方されることがあり、疑問を感じる方もいるでしょう。
ではなぜ、そのような場合でもタミフルが処方されるのでしょうか。理由について詳しく解説します。
検査せずに処方される場合
医師は、流行状況や典型的なインフルエンザ症状が見られた場合、検査をしていなくても陽性とみなして(みなし陽性)タミフルを処方することがあります。
これは、インフルエンザの検査にかかる時間を減らし、迅速に治療を始めるためです。インフルエンザが流行している時期には、さらなるインフルエンザの拡散予防につながります。
このように、医師の判断で検査をせずにタミフルが処方される可能性があります。
検査で「陰性」なのに処方される場合
インフルエンザの検査で陰性なのにタミフルを処方される場合は、「偽陰性(ぎいんせい)」の可能性が考えられます。
インフルエンザウイルスは、潜伏期間から発症後7〜24時間では量が少ないとされています。
そのため、国立感染症研究所は、インフルエンザ抗原検出キット(迅速タイプ)で検査をしてもウイルスを検出できず、偽陰性の可能性が比較的高いと発表しました。[2]
そして、早い時期に検査した陰性結果を陰性の証明に用いることはできません。
そのため、発症から翌日以降に再検査行う場合や、24時間以内であれば検査を行わずに医師の判断でタミフルを処方することが一般的です。
検査が陰性でもインフルエンザを否定するものではないと注意しましょう。検査する時期が早すぎると、陰性でもタミフルを処方される場合があります。
予防として処方される場合
インフルエンザじゃないのにタミフルを処方される理由の一つに、予防を目的としている可能性があります。
予防投与の対象者は、インフルエンザ患者の同居家族または、共同生活者である以下の方々となります。
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高齢者(65歳以上)
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呼吸器や心臓の持病がある方
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糖尿病の方
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腎機能障害のある方[1]
また、タミフルの予防投与は自費診療のため注意しましょう。
タミフルの保険適応は、発症して治療をする場合のみです。
また、健康観察が必要な濃厚接触者への予防投与については、自治体の判断で一部もしくは全額を公費負担とすることがあります。
タミフルの効果や副作用について
タミフルはインフルエンザの治療や予防として広く用いられている薬です。
タミフルの効果と副作用について知っておくと、副作用かな、と思ったときに、どうしたら良いかがわかり、安心です。
タミフルの効果や副作用、異常行動とタミフルの因果関係についても詳しく解説します。
タミフルの効果
タミフルはインフルエンザウイルスの増殖を抑え、鼻やのどからのウイルス排出量を減少させます。
これにより、インフルエンザを発症しても発熱の期間が通常1〜2日短縮する効果があります。
このため、ウイルスが体内で大量に増殖したあとにタミフルを服用しても十分な効果は期待できません。
そのため、症状が出てから48時間以内の服用が勧められています。
インフルエンザを疑ったら早めに受診しましょう。
タミフルの副作用
インフルエンザによく使われるタミフルですが、もちろん副作用もあります。
重要なのは、タミフルを含むすべての薬が臨床試験で安全性を確認されているが、どの薬にも副作用の可能性があることです。
薬を服用する際には、副作用のリスクも踏まえ、体調に注意しながら適切に使用することが大切です。
次のような症状がでたら早めに医師へ相談しましょう。
腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、血を吐く、お腹がはる、口内炎、 唇がはれたり赤くなる、食欲不振、胸やけ、頭痛、眠気または眠れない、 めまい、ふるえ、しびれ、じんましん、かゆみ、あざができやすくなる、尿に血が混じる 息苦しい、脈が速くなる、胸に圧迫感がある、胸が痛い、背中が痛い 疲れやすい、耳が痛い |
一般的な副作用は吐き気、下痢、頭痛、めまいなどがありこれらは通常軽い症状です。
次のような症状がでたら服用を中止してすぐに医師へ相談しましょう。
血圧低下、息苦しい、動悸、じんましん、全身の皮膚が赤くなる、水ぶくれ、ただれ 口内炎、結膜炎、むくみ、尿が少なくなる、白目が黄色くなる、血便、出血しやすい 意識がぼんやりする、意識を失う、うわごとを言う、興奮する、幻覚が見える 普段と違うとっぴな行動をする |
ごくまれに、重大な副作用が報告されることもあるため、服用中は体調の変化に注意しましょう。
また、タミフルの飲む量や期間は使用目的によって異なります。
症状が軽快してもウイルスは体に残っていることが多いため、医師が処方した量を最後まで飲みきることが重要です。
自己判断で薬を途中でやめると、症状がまた出てきたりウイルスに耐性ができたりするため注意しましょう。
医師の指示に従い、処方された量と期間は、指示通りしっかり飲みきることが大切です。
異常行動とタミフルの因果関係
現段階では、タミフルと異常行動の因果関係は証明されていません。
2007年にタミフルを服用した10代の若者たちが、異常行動を起こして窓から飛び降りる事故が複数発生しました。
この痛ましい出来事が記憶に残り、不安に思う方も多いでしょう。
しかし、タミフルや他の抗インフルエンザ薬服用の有無や種類にかかわらず、異常行動が見られています。
タミフルを服用する前から、異常行動をとる例も見られるため、ウイルスそのものの影響も考えられます。
そのため、インフルエンザにかかったときは、発症からとくに2日間は異常行動に気をつけましょう。
インフルエンザ感染時の異常行動対策については、厚生労働省からも公表されています。例えば、ベランダに面している部屋に寝かさないことや玄関や窓の施錠です。[3]
まとめ
タミフルは、インフルエンザではない場合でも基本的には安全に服用できます。
早い時期の検査では、偽陰性になることもあるため、医師は検査結果だけで判断することはありません。
また、検査をしていなくても、インフルエンザ特有の症状が見られた場合は、「みなし陽性」としてタミフルが処方される場合もあります。
タミフルはウイルスの量を減らし、発熱期間の短縮や重症化を防ぐ効果があります。
とくに、合併症にかかりやすい人などはタミフルの予防投与を考慮されることが多いでしょう。
そして、タミフルは比較的重大な副作用が起こりにくい薬ですが、副作用に注意しながら用法用量をきちんと守って服用することが重要です。
タミフルを飲む飲まないに関わらず、インフルエンザ発症後2日間はとくに異常行動を起こす可能性があることを踏まえて、自分や大切な家族を見守りましょう。
参考文献
[1]医薬品医療機器情報提供ホームページ.タミフルカプセル75添付文書
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。