オミクロン株流行時から子どもの感染者が急増
第5波までの新型コロナウイルス感染症の流行では、子どもの感染者数は大人と比べると少なく、重症化するケースもまれであるとされていました。
しかし、第6波以降ではより感染力の強いオミクロン株への置き換わりが進んだこと、そしてワクチン接種や感染により大人の免疫保有者が増加したことを背景に、子どもの感染者が増加しました。
2024年第17週(4/22〜4/28)の定点当たり報告数・年代別推移によると、10歳未満の子どもの報告数が最も多くなっています。[1]
また、インフルエンザやアデノウイルス、胃腸炎といったコロナウイルス以外の感染症も流行しているため、救急外来への受診が急増しています。
都内での小児医療や救急医療のひっ迫は落ちつきつつあるものの、多くの感染症が蔓延しているため引き続き警戒が必要です。
子どものコロナの症状について
子どもがコロナにかかったときの症状は、基本的に大人と大きく変わりません。発熱や喉の痛み、咳、鼻水など、風邪と似たような諸症状があらわれます。
大人と同様、肺炎になるケースも報告されていますが、報告数としては多くありません。しかし、肺炎になる確率は大人とさほど変わらないと言われています。嗅覚や味覚の異常を訴える子どもの患者はオミクロン株流行以前から少ない傾向にありました。
さらに第6波以降はクループ症候群(※1)や、熱性けいれん(※2)を伴う小児患者も出てきており、まれな症状として、嘔吐や腹痛、下痢などの消化器症状があらわれるケースもあります。
消化器症状が現れる10歳前後の患者の中には、心臓の動きが悪くなるような事例も報告されています。
欧米諸国では、発疹やしもやけのような症状が出たという報告も見られました。
子どもの感染者は大人よりも重症化する割合が低いことも大きな特徴ですが、大人同様に呼吸状態が悪くなるケースもあり、 2歳未満の子どもや基礎疾患を持っている子どもは注意が必要です。
極めて少数ながら、死亡例も出ています。2022年5月10日時点の厚生労働省の集計では、10 歳未満で6件、10代で8件の死亡例がありました。
2023年5月8日に感染症5類に移行してからは、死亡者の収集や調査は原則終了しているため、以降の正確な数値は出ていません。
だからといって「コロナで死亡はしない」というわけではないため、感染対策を怠らないようにしましょう。
子どもの場合、症状が出ていても本人は正確に訴えられない可能性もあります。大人が注意深く経過観察することが重要です。
※1:特徴的な咳やかすれ声など、感染症によって引き起こされる特定の呼吸症状の症状
※2:6カ月~5歳くらいの小児が急な発熱に伴いけいれんや意識障害や引き起こす病気
受診の目安は?
2022年以降に流行しているオミクロン株以降の新型コロナウイルスの症状は風邪かどうか見分けるのが難しいです。
子どもに発熱や風邪症状があらわれたら新型コロナウイルス感染症を疑ってしまうかもしれませんが、まずは周囲の感染状況を確認することが大切です。
学校や保育園でクラスターは発生していないか、居住している地域が流行地になっているか、職場で感染者が発生していないかなどを評価し、受診すべきか冷静に判断してください。
そのうえで、子どもの状態をよく観察します。
高熱が出ている、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、食事をとらない、元気がなくぐったりしているといった症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
また、小さな子どもが高熱を出した場合は「熱性けいれん」にも注意が必要です。けいれんを発症してしまった際には救急外来に相談してください。
コロナの流行が以前より落ち着いたとはいえ、「新型コロナの疑い」がある場合は受診に何時間もかかる可能性があり、受診の予約が必要な医療機関も存在します。
意識がもうろうとしている、呼吸が苦しそうなど普通の風邪と異なる症状があれば早期の受診が必要ですが、軽症の場合は自宅でゆっくり休養をとったほうがいいという意見もあります。
生後1カ月~6歳までの子どもで時間外診療をするべきか迷ったときは、子どもの救急オンラインを利用すると、判断の目安を確認できるでしょう。
ほかにも、子ども医療でんわ相談では「#8000」に電話すると、居住地の小児科医や看護師に受診の相談ができます。必要に応じて、これらのサービスを活用してください。
関連記事:子どもの救急対応の基本、#8000で得る信頼のアドバイス
子どもがコロナに感染したときの治療は?
子どもは、大人に比べると重症化しにくく、軽症で済む場合がほとんどです。そのため、治療としては経過観察や対症療法が選択されることが多くなっています。
医師の判断によっては、解熱剤や咳止めの薬が処方されることもあります。
解熱そのものが治療になるわけではありませんが、子どもの気分を楽にし、ゆっくり休めるようにしたり、飲食しやすくなったりします。
子どもの様子をしっかり見ながら、必要だと感じた際には医療機関を受診した際に医師に相談してみるとよいでしょう。
子どもは症状の変化が早く、熱が下がった後から咳や下痢などの症状が出ることもあります。
また年齢や症状によっては、処方薬だけでなく市販の子ども用解熱剤や咳止め、総合感冒薬を使っても問題ありません。子どもに使いやすい解熱剤としては「アセトアミノフェン」がおすすめです。
必ず子ども用の薬を購入し、大人用の薬を子どもに飲ませることは避けてください。
子どもの看病をするとなると、両親ともに濃厚接触者になることは避けられません。外出が困難な場合は、オンライン診療を活用して薬を郵送してもらうといいでしょう。
食事の与え方は?
発熱がある時は、子ども用のイオン飲料やスポーツドリンクを飲ませると一時的な体力の回復を期待できます。
ただし、砂糖が多く含まれており、虫歯や食欲不振の原因になりますので、常用は避けてください。
熱があるときのおすすめメニュー・避けたいメニューは、以下を参考にしてください。
おすすめの食品、メニュー
ポタージュスープ、茶碗蒸し、煮込みうどん、麦茶、卵雑炊、煮奴、ヨーグルト、りんご果汁、ゼリー、プリン、など
避けたい食品、メニュー
脂質の多いメニュー(ラーメンや焼肉など)、消化の悪いメニュー(カップラーメンなど)、海草、きのこ、こんにゃく、など
また、喉に炎症が出ていると酸味のある食べ物を嫌がることがありますので、キウイやトマトなどは避けた方がいいでしょう。
のど越しの良いゼリーやプリンなどは、喉が痛くても食べやすく、水分補給にもなりおすすめです。
下痢をしている時は脱水症状を防ぐため、湯冷ましや麦茶、りんご果汁などで水分補給をしてください。吐き気をともなう時は、少量ずつこまめに飲ませることがポイントです。
症状が落ち着いたら、おかゆやうどん、かぶ、豆腐など消化の良い食品を中心に、様子を見ながら少しずつ与えてください。
また、乳児が感染しても必ずしも母乳育児をやめる必要はありません。母親が持つ免疫が母乳を介して乳児に運ばれ、乳児の免疫力向上が期待できます。
母乳育児が可能な状況なのであれば、積極的に母乳を飲ませましょう。
軽症でも母乳やミルクの飲みが悪く機嫌が悪い場合、鼻づまりが原因かもしれません。鼻吸い器などで鼻汁を取ると哺乳しやすくなり、機嫌が回復することがあります。
脱水には十分注意が必要
子どものコロナ感染で特に注意してほしいのが、水分不足による脱水症状です。
高熱や喉の痛みにより十分な水分がとれず、脱水症状を起こして入院が必要になるケースもあります。
新型コロナで入院した生後3カ月の赤ちゃんのケースでは、40度の発熱とおう吐の症状でミルクが飲めなくなり、点滴が必要になりました。
特に夏場は汗の量も増えますので、意識して水分補給を行うようにしてください。
水分補給と同時に、エアコンを利用して室温を快適に保ち、汗の量をコントロールすることも大切です。
もし、飲み物が飲めずに、尿の量が普段の半分くらいに減っているようであれば、受診が必要です。すぐに医療機関へ相談するようにしてください。
家族の感染対策について
令和4年1月に作成された東京都福祉保健局が配布している「自宅療養者向けハンドブック」では、家庭内感染を防ぐために気を付けるべき8つのポイントが紹介されています。
- 部屋を分けましょう
- 感染者の世話をする人は、できるだけ限られた方にしましょう
- 感染者・同居者は、どちらも正しくマスクをつけましょう
- 感染者・同居者は、こまめに手を洗いましょう
- こまめに換気をしましょう
- 手がよく触れる共用部分をそうじ・消毒しましょう
- 汚れたリネン、衣服を洗濯しましょう
- ゴミは密閉して捨てましょう
上記以外にも、小さな子どもをケアをする場合に重要なポイントを解説します。
マスクの着用
子どもの看病をする場合、世話をする家族は可能な限りマスクを着用しましょう。
症状が出てから10日間、または症状が治まってから3日間、どちらかのうち長い期間が経過したら外してかまいません。
ただし、2歳未満のマスクの着用は推奨されていません。また、未就学児がマスクを着用する場合は、大人が子どもの体調を十分に注意した上で着用しましょう。[2]
排泄物やゴミの処理
新型コロナウイルスは便にも排出されますので、おむつの取り扱いにも注意が必要です。
おむつ交換の際には、使い捨てのおむつ交換シートを使用するか、交換後の清掃を徹底するようにしましょう。
おむつを捨てる際にはビニール袋で密閉し、さらにもう1枚のビニール袋で2重に密閉してから捨ててください。
なお、使用済みマスクや鼻をかんだティッシュなどの処理も同様です。おむつやゴミを処理した後は、必ず石鹸で手を洗います。
子どもがトイレで用を足せる場合は、蓋を閉めてから水を流します。トイレを使った後は家庭用の洗剤で掃除をし、子どもと一緒に手洗いしましょう。
食器の取り扱い
食事の際に使う食器は、紙皿など使い捨てのものを利用するのがベストです。使い終わった紙皿はビニール袋に入れ、口を縛って捨ててください。
使い捨ての食器が使用できない場合でも、通常の食器用洗剤でしっかり洗えば、感染者のものと分けて洗う必要はありません。
気になる場合は、0.05%に希釈した次亜塩素酸ナトリウムに10 分ほど浸け置きし、通常通り洗剤で洗うと安心です。
食器を洗った後は、手洗いも忘れないようにしましょう。
歯磨きやお風呂
歯磨きの際には、歯磨き粉の共有を避けるようにしましょう。
ほかにも、洗顔や入浴の際に使用するタオルの使いまわしは避け、家族それぞれ別のタオルを使用するようにしてください。
看病の仕方
体を拭いたり、排泄物の処理をしたりする際には、マスクだけでなく、使い捨てのエプロンや手袋を使うとさらに安心です。最後に石鹸で洗うことを習慣づけてください。
子どもを抱っこする場合や、寝かしつけで添い寝をする場合なども、マスクと使い捨てエプロン・手袋を使ったほうがいいでしょう。
また、部屋の中でも常時マスクやエプロンを着用するため、熱中症に注意してください。部屋の温度に配慮し、暑い日は冷房を使用することがおすすめです。
コロナ以外の感染症にも要注意
2023年夏くらいから、新型コロナウイルス感染症だけでなく、インフルエンザや胃腸炎、アデノウイルスと診断される子どもも相次いでいます。
新型コロナ以外の感染症流行情報にも気を配り、予防に努めることが重要です。
2024年もさまざまな感染症が流行しているため、引き続き体調に気をつける必要があります。
手洗いうがいの徹底や、感染リスクの高い行動は控えるなど、普段の行動にも改めて気を配りましょう。
子どもの症状は夜間に急変しやすいから、病院が開いていない時間は特に気を張りますよね。
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本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。