水疱瘡ワクチンの接種回数、時期
2024年現在の水疱瘡ワクチンの接種回数は、2回です。
対象は、「水疱瘡(水痘)にかかったことのない」生後12か月〜36か月(1歳の誕生日前日~3歳の誕生日前日)のお子さんです。
1回目は12〜15か月までに接種します。
2回目は1回目から6〜12か月あけるのが標準の接種時期になります。
水疱瘡ワクチンはどこで受けられる?予約方法など
水疱瘡ワクチンは定期予防接種であるため、接種時期が近付くと自治体(市区町村)から案内が届くことが多いです。
また、予診票を受け取る際に、予防接種を受けることができる医療機関(実施医療機関、協力医療機関)を一覧にして案内していることがほとんどです。
もし接種のできる医療機関がわからない場合は、各自治体のホームページや電話で確認しましょう。
多くの場合は、小児科や皮膚科で受けることができます。
定期予防接種は対象年齢であれば自己負担はありません。
大人になってからワクチンを接種したいと考える方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、内科や皮膚科に相談をして全額自己負担で受けることが可能です。
自費での水疱瘡ワクチンは8000円前後で設定されていることが多いです。
医療機関によって料金は異なるため、料金表や事前の問い合わせなどで確認しておきましょう。
水疱瘡(みずぼうそう)ワクチンとは?
一般的に予防接種で使われるワクチンは「生ワクチン」と「不活化ワクチン」に分けられますが、水疱瘡(みずぼうそう)ワクチンは、水疱瘡を発症するウイルスを弱くして作られた「生ワクチン」です。
日本では、乾燥弱毒生水痘ワクチンと呼ばれる生ワクチンが用いられており、水疱瘡の発症や重症化をおさえる効果をもちます。
水疱瘡ワクチンが定期予防接種となったのは2014年で、その前と比べると水疱瘡患者が大幅に減少したというデータがあり、高いワクチン効果があることがわかります。[1]
水疱瘡の正式名称は「水痘(すいとう)」です。この記事では一般的に知られている「水疱瘡」で統一します。
水疱瘡は「水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルス」が原因の感染症です。
このウイルスに「初めて」感染した場合を水疱瘡といいます。
水疱瘡を発症するとかゆみをともなう発疹(ほっしん:赤い小さなぶつぶつ)や水ぶくれがあらわれますが、その出現タイミングは成人と子どもで異なります。[2]
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成人‥1~2日間の発熱と全身のだるさが続いたあとに発疹が出現
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子ども‥初めから発疹が出現
水疱瘡にかかると、子どもより成人の方が傾向的に重症化しやすいです。
大人が重症化すると肺炎や敗血症(はいけつしょう:体内にウイルスがまわり、臓器が正常に動かなくなる状態)、脳炎などを発症する可能性が高くなります。
子どもが重症化した場合は、熱性けいれんや肺炎、気管支炎などの合併症によるものが多くを占めています。[3]
関連記事:水疱瘡(水痘)はどんな病気?出席停止や予防接種について医師が解説
この水疱瘡の発症と、発症後の重症化をおさえてくれるのが水疱瘡ワクチンです。
ワクチンを接種した後に水疱瘡を発症しても発疹が少なかったり、短期間で治癒したりと、軽症で済む場合も多くあります。[4]
帯状疱疹との関係
帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは、からだの左右どちらかに、痛みやかゆみをともなった発疹があらわれる病気です。
実はその原因は「水痘帯状疱疹ウイルス」で、水疱瘡と同じウイルスです。
水疱瘡にかかったかどうかで、帯状発疹を発症するかしないかがわかれます。
詳しく説明します。
水疱瘡にかかったことのある方は、治ったあとでもウイルスが消えることはなく、からだの中で眠っている状態です。
それが、年をとったり疲れやストレスを感じたりなどで免疫機能が下がると、ウイルスが目覚めて悪さをします。
これが帯状疱疹の起こるメカニズムです。
つまり、水疱瘡にかかったことのある人は全員平等に発症するリスクはあるものの、発症するかどうかや発症するタイミングは個人によって異なるということです。
水疱瘡と帯状疱疹にはこのような関係性があります。
関連記事:帯状疱疹になった時にしてはいけないこと 注意点と悪化の予防について解説!
水疱瘡ワクチンの効果
水疱瘡ワクチンを接種することで発症と重症化それぞれのリスクを大幅に下げることができます。
水疱瘡ワクチンは、1回の接種で77%、2回接種で94%水疱瘡の発症リスクを下げることが可能です。[5]
また、かかった際の重症化については1回の接種でほぼ100%リスクを下げることができるといわれています。
このことから水疱瘡ワクチンは高い効果が期待できます。
反対に、接種しなかった場合はどうなるのでしょうか。
ワクチンを接種しなかった、したことがない場合、水痘帯状疱疹ウイルスに感染するとほとんどが発症します。[6]
その場合は以下が懸念されます。[4]
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水疱瘡に特有の発疹があらわれる
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発熱をともなう場合もある
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感染しても症状が出ない(不顕性感染:ふけんせいかんせん)ということはほぼない
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肺炎や脳炎など、重症化しやすい
水疱瘡はすれ違っただけでも感染するほどの感染力を持っています。
また、先述したように帯状疱疹も同じウイルスによって引き起こされるため、帯状疱疹の方からも感染しやすいです。
大人が水疱瘡を発症してしまうと、子どもより重症化しやすい傾向にあります。
自分が水疱瘡にかかったか、もしくはワクチンを打ったかわからない場合は、調べる方法を後述していますので参考にしてください。
水疱瘡ワクチンの副反応
健康なお子さんの場合、副反応が起こることはほとんどありません。
まれに、水疱瘡ワクチン接種後14〜30日の間に丘疹(きゅうしん)とよばれる米粒くらいの小さな皮膚の盛り上がりや水疱(すいほう)がみられることがあります。[5]
そのほかのワクチンの副反応として以下があげられます。[3]
重篤な副反応 (接種直後にあらわれる反応) |
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過敏症 (接種翌日にあらわれる反応) |
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全身症状 (接種1~3週間後にあらわれる反応) |
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局所症状 (接種した部位にあらわれる反応) |
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予防接種前後の過ごし方
以前は「予防接種したらお風呂に入ってはいけない」ということも聞かれました。
2024年現在も、予防接種前は健康な状態で摂取するというのが前提条件となっています。
そして接種後は「お風呂にはいってはいけない」という決まりもありません。
ただし、接種後に激しい運動をしたり接種した箇所を強くこすったりする行為は避けることが大切です。
予防接種前、接種後の注意点について順を追って詳しく説明します。
ワクチンや予防接種を受ける前の注意点
ワクチンや予防接種を受ける際には以下の点に注意しましょう。
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検温をして普段と変わりないか
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体調や機嫌、うんちやおしっこはいつも通りか
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最近受けた予防接種はないか
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アレルギーがないか
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予診表や母子健康手帳(母子手帳)、ある場合は予防接種手帳が手元にあるか
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(女性の場合)妊娠の可能性はないか
水疱瘡ワクチンに限らず、ワクチン接種は健康な状態で受けることが前提です。
これは、体調が万全でない状態で接種することで副反応が出やすくなります。
熱がないかはもちろん、自分で体調不良を訴えることができないお子さんは、機嫌が悪くないかで判断することも重要です。
おしっこやうんちの変化が体調の変化をあらわすことも多いので、普段と変わりないか確認しましょう。
少しでも心配な場合は、かならず予防接種を受ける医療機関や医師に相談してください。
また、水疱瘡ワクチンは「生ワクチン」であるため、生ワクチン同士を27日間あける必要があります。[7]
そのため、最近受けた予防接種はないかを確認することも忘れないようにしましょう。
ワクチンの重い副反応のひとつに「アナフィラキシーショック」があげられます。
これはワクチンの成分に体が過剰なアレルギー反応を起こすことで生じるもので、アレルギー体質の方は十分な注意が必要です。
これらを総合的に判断してくれる材料としてあらかじめ配布された「予診表」があげられます。
ここには体調に関する事項やワクチン接種歴など、予防接種前に確認すべきことが記載されています。
この予診表と母子手帳、ある場合は予防接種手帳を必ず持参して医療機関に行きましょう。
予診表が手元にない場合は、各市町村の役所に準備されていることもあります。
ワクチンや予防接種を受けた後の注意点
ワクチンを受けたあとに特に注意する点は以下の通りです。
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接種後30分は帰らない(車内待機でもよいがすぐに連絡がとれる体制をとる)
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激しい運動はしない
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入浴は可能だが、接種したところを強くこすったりもんだりしない
先述した通り、水疱瘡ワクチンの接種直後はアナフィラキシーショックなど重篤な副反応を起こす可能性があります。
そのため、少なくとも30分は院内もしくはすぐに医療機関に行ける場所で待機しましょう。
また、激しい運動は副反応を強くさせることがあります。
日常的にスポーツや部活動をしている場合は、医師に相談してください。[8]
接種したところに強い刺激を与えると、赤みや腫れなどが強くなることがあります。
入浴は問題ありませんが、強くこすらないように注意しましょう。
水疱瘡ワクチンでよくある疑問
水疱瘡ワクチンについてよくある質問を、子どもと大人の場合それぞれにわけてお答えします。
子どもの場合
Q①水疱瘡ワクチンを打っても水疱瘡にかかることはある?
水疱瘡ワクチンを打っても水疱瘡にかかることはあります。
ただし、ワクチン接種によって水疱瘡の発症(症状がでること)をおさえることは可能です。
その上、感染したとしても軽症ですむことがわかっているため、ワクチンの効果は非常に高いものといえるでしょう。
Q②一度水疱瘡になったことがある場合はワクチンを接種する必要はあるの?
一度水疱瘡にかかった方のワクチン接種は必要ないとされています。
水疱瘡にかかったことのある方は、水疱瘡の免疫を獲得していると考えられ、基本的にはワクチン接種の対象外となります。[3]
Q③水疱瘡ワクチンを一回打ってから期間が空いてしまった!2回目は打てる?
定期接種の対象年齢(12~36か月)を超えてしまった場合でも、打つことは可能ですし、十分な免疫を獲得することができます。
ただし、定期接種の対象年齢が過ぎた場合は全額自己負担になりますので、料金については接種する医療機関に問い合わせましょう。[5]
Q④水疱瘡は何回なる?
水疱瘡は一度かかったら繰り返すことはありません。
ただし、水疱瘡の原因である水痘帯状疱疹ウイルスは一生体の中に潜むため、大人になって免疫が落ちたときなどに帯状疱疹を発症する可能性があります。
大人の場合
Q①水疱瘡ワクチンを受けてない世代は何歳の人?※
以下に該当する方は水疱瘡ワクチンを受けていない可能性が考えられます。
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1987年以前に生まれた方
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2013年までに生まれた方の一部
水疱瘡ワクチンが開発されたのは1987年です。
そのため、それ以前に生まれた方は水疱瘡ワクチンを受けていない可能性があります。
また、水疱瘡ワクチンは2014年に定期接種に指定されましたが、それまでは受けるか受けないかを個人で判断する任意接種でした。
その接種率は30〜40%と決して高いわけではなく、成人の多くが接種していない可能性があります。[9]
定期予防接種に指定された2014年に、当時3〜4歳のお子さんに特例措置として1回のワクチン接種が定められました。[3]
その対象は水疱瘡にかかったことがなく、水疱瘡ワクチンを打っていない生後36か月から生後60か月までの間にある方(概ね3歳、4歳の方)です。
この措置は、水痘・帯状疱疹ウイルスの免疫をもたないまま成長してしまうと、成人で水疱瘡にかかったときに重症化リスクが高まることを懸念して実施されました。
そのため、2014年に3〜4歳であった方は、反対に接種している可能性が高いです。
自分が予防接種を受けたかどうかわからない方は次の項で説明する方法で確認しましょう。
Q②自分が過去にワクチンを打ったかどうかは何でわかる?
ワクチンを接種したかどうかは以下の方法で知ることができます。
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自分の母子手帳を確認する
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親や兄弟に聞いてみる
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通知表などに「水疱瘡で休んだ」という旨が記載されている場合がある
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自治体に問い合わせてみる
過去のワクチン接種記録は自分の母子手帳に記載されています。
しかし、結婚や引っ越しなどライフスタイルの変化などで母子手帳をなくしてしまった方やすぐに確認ができない方もいらっしゃいますよね。
その場合は親や兄弟に聞いてみるのもひとつの方法です。
また、小学校などで配布される通知表に記載されていることもあります。
自宅に残っている場合は確認してみましょう。
自治体(市区町村)では「予防接種台帳」という予診表にもとづいて作成されるものがあります。
この予防接種台帳に過去のワクチン接種記録が残っている可能性もありますので、問い合わせてみるのも良いでしょう。
Q③ワクチンを受けた時の抗体は何年残っているの?
水疱瘡ワクチンの抗体は20年続くと言われています。
以前は水疱瘡に一度かかったり、水疱瘡の予防接種をすると生涯免疫がつくと考えられていました。
しかし最近になって、水疱瘡にかかったかどうかに関わらず水疱瘡の抗体効果は20数年で弱まることがわかっています。[10]
そのため、ワクチン接種歴があっても大人になって水疱瘡にかかる方がいるのです。
Q④水疱瘡ワクチンの効果が切れたら打ち直した方がいい?
水疱瘡ワクチンの効果は先述したとおり20年あまりです。
そのため、前回のワクチン接種から20年経過していれば、追加接種を行うことがもっとも安全ともいえます。[10]
ただし、その際はかかりつけ医や接種を希望する医療機関の医師に相談しましょう。
Q⑤水疱瘡ワクチンを打ってないと帯状疱疹になりやすい?
結果的にはなりやすい傾向にあるといえるでしょう。
そもそも帯状疱疹になるのは、水疱瘡にかかったときに体に入った水痘帯状疱疹ウイルスが目覚めて悪さをするためです。
そのため、水疱瘡のワクチンを打っているかどうかというよりは、水疱瘡にかかったことがあるかどうかで帯状疱疹を発症するかが変わります。
水疱瘡にかかったことがなく水疱瘡ワクチンを打ってない方は、原因ウイルスと闘う抗体がないため、水疱瘡にかかるリスクはワクチンを打っている方よりも高いです。
水疱瘡にかかるリスクが高まると、帯状疱疹を引き起こす可能性も自然と高まるため、こうしたことから水疱瘡ワクチンを打っていない場合は帯状疱疹になりやすいといえるでしょう。
Q⑥大人だけど水疱瘡ワクチンを打ちたい場合はどうする?
今までに一度も水疱瘡にかかっておらず、ワクチンの接種もしたことがない場合は、重症化リスクを考えると接種した方が安全でしょう。
また、過去に水疱瘡や帯状疱疹にかかったことがある50歳以上の方に、帯状疱疹予防として水疱瘡ワクチンを打つと抗体が増えることがわかっています。[11]
以上のことから、成人でもワクチンを打つメリットが大きい場合もあります。
希望がある場合は必ずかかりつけ医やワクチンを接種する医療機関の医師に相談しましょう。
まとめ
水疱瘡ワクチンを接種することで、水疱瘡の発症や重症化を大幅に下げてくれます。
また、将来的に帯状疱疹を発症する可能性も低くしてくれるため、定期予防接種を受けてしっかり予防をしましょう。
大人でも水疱瘡になるリスクはあり、発症すると子どもより重症化しやすく、重大な合併症を引き起こすこともあります。
この記事を読んで、ワクチン接種が必要かもしれないと感じたら、まずは自分の水疱瘡の既往やワクチンの接種歴を確認しましょう。
その上でワクチン接種を希望される場合は、かならずかかりつけ医やワクチン接種を受ける医療機関の医師に相談してから接種するようにしてください。
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参考文献
[1]病原微生物検出情報 Vol.39 No. 8(No.462)2018年 8 月発行|国立感染症研究所 厚生労働省健康局 結核感染症課
[4]水痘ワクチンについて〈生ワクチン〉|医療法人 仁尚会 きむら内科小児科クリニック
[6]現役ミドル世代のワクチンで防げる病気|KNOW・VPD!オトナも!
[7]ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ|厚生労働省
[8]インフルエンザワクチン後の運動はNG?知っておきたい接種後の過ごし方|健栄製薬
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。