帯状疱疹になったらしてはいけないこと
帯状疱疹の症状が現れたら、不安な気持ちから何をすべきか戸惑う方も多いでしょう。
帯状疱疹になった時は、以下の行動は避けなければなりません。
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患部を冷やす
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水ぶくれを破る
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小さな子どもに触れる
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コンタクトレンズを装用する
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症状があるのに無理をする
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自己判断で登校や出勤をする
それぞれについて、くわしく解説します。
患部を冷やす
帯状疱疹は患部を冷やすとさらに痛みが強くなることがあります。冷やすと血管が収縮して血行が悪くなるためです。
かゆみや痛みを伴う発疹が出ると冷やしたくなるかもしれませんが、患部を冷やすのは避けましょう。
反対に、患部を温めると血行が促進され痛みが軽減します。かゆみや痛みがあるときは冷やすのではなく、カイロや温めたタオルなどを使用して患部を適度に温めましょう。
水ぶくれを破る
帯状疱疹の水ぶくれは破らないようにしてください。破れた水ぶくれから細菌が入り、感染症を引き起こす可能性があります。
水ぶくれが破れた時は患部を直接触らないようにして、きれいに洗って清潔を保つことが大切です。
また、帯状疱疹の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスの感染力は非常に強く、水ぶくれが乾燥してかさぶたになるまでは周囲の人に感染する可能性があります。[1]
水ぶくれがある部位はガーゼなどで覆い、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したことがない人との接触を避けましょう。
小さな子どもに触れる
帯状疱疹の発疹を触った手で乳幼児に触れるのは避けましょう。帯状疱疹は水ぼうそうにかかったことのない乳幼児にうつる可能性があります。
水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染した場合、全身に水疱がたくさんできる水ぼうそうとして発症します。[2]
水ぼうそうは重症化すると肺炎や脳炎、敗血症などを引き起こす可能性があるため注意が必要です。
また、妊娠初期に水ぼうそうに感染すると生まれてくる赤ちゃんが「先天性水痘症候群」という重い病気になることもあります。
帯状疱疹になった時は小さな子どもや妊婦さんには接触しないようにしましょう。
コンタクトレンズを装用する
顔に帯状疱疹ができた場合、コンタクトレンズの装用により眼球に水痘・帯状疱疹ウイルスが付着する可能性があります。
角膜炎や結膜炎、ブドウ膜炎などの眼の合併症を引き起こし、視力低下や失明に至ることもあるため注意が必要です。[3]
コンタクトレンズは手で装用するため感染リスクを高めます。
顔に帯状疱疹ができた時はコンタクトレンズの装用をできるだけ控え、眼鏡で過ごすようにしましょう。
症状があるのに無理をする
帯状疱疹になった時は免疫力が低下するような行動を控えることが大切です。
帯状疱疹は加齢や疲労、ストレスなどによる免疫の力低下が原因となるため、無理をすると症状が悪化する可能性があります。
帯状疱疹の主な症状は身体の左右どちらかに生じる痛みやかゆみを伴う発疹ですが、発症部位によってさまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。[4]
たとえば、「ラムゼイ・ハント症候群」という合併症です。
味覚の障害や顔の表情筋を動かす神経の麻痺、難聴やめまいなどの症状が現れます。
仙骨部(お尻付近)の帯状疱疹では、膀胱や直腸の障害を引き起こし、尿が出なくなったり排便が困難になることがあります。
このような合併症を予防するためにも、仕事などで無理をせずに十分な休息・睡眠をとることが大切です。
疲労がたまりやすい運動も控え、1週間程度はゆっくり過ごして身体的・精神的な安静を保つことを心がけましょう。
自己判断で登校や出勤をする
自己判断で仕事や学校に行くと、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したことがない人にうつしてしまう可能性があります。
水痘・帯状疱疹ウイルスは感染力が強いため、ウイルスに対する免疫がない子どもたちの生活の場である幼稚園や学校では集団感染を起こすリスクがあります。
そのため、全ての発疹がかさぶたになるまで出席停止となることが「学校保健安全法」により定められています。[5]
帯状疱疹は適切な治療を受ければ比較的すぐに出勤や登校の再開が可能です。周囲の人にうつさないよう、医師と相談したうえで再開時期を決めましょう。
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帯状疱疹の原因
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスへの感染が原因で発症します。このウイルスは水ぼうそうの原因としてもよく知られています。
日本では成人のおよそ9割の方が帯状疱疹の原因となるウイルスを持ち、約3人に1人が80歳までに発症するといわれています。
はじめて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したときは帯状疱疹はみられず、水ぼうそうとして症状が現れるのが特徴です。
水ぼうそうが治ったあともウイルスは背骨近くの神経に潜み続けます。
免疫力が正常な状態であれば水痘・帯状疱疹ウイルスに感染していても帯状疱疹は現れません。
加齢や疲れ、ストレスなどで免疫力が低下したときにウイルスが再び活発になり、帯状疱疹が現れるのです。
日本国内の水痘・帯状疱疹ウイルスの抗体を保有している人の割合は、15歳以上で約90%、55歳以上で100%となっており、多くの人に帯状疱疹の発症リスクがあります。[6]
帯状疱疹の治療法
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスというヘルペスウイルスの1種によって引き起こされます。
そのため、抗ウイルス薬の内服が基本的な治療になります。
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抗ウイルス薬
症状が軽度~中等度の場合は内服の抗ウイルス薬で治療します。
水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化している段階でウイルスの複製を妨げ、増殖を抑えます。[7]
症状が重い場合や合併症を起こした場合は、入院して抗ウイルス薬の点滴による治療が必要です。
抗ウイルス薬による治療は、帯状疱疹が疑われたらできるだけ早く開始する必要があります。[8]
発疹が出てから72時間経過すると、抗ウイルス薬が効かない可能性が高くなります。
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鎮痛剤
帯状疱疹の痛みに対しては、鎮痛剤(痛み止め)で治療が行われます。
帯状疱疹では体の左右どちらかの神経に沿って皮膚に強い痛みが生じることが多いです。
夜も眠れないほどの強い痛みが続く場合、局所麻酔薬を用いた神経ブロックという治療が行われることもあります。[9]
神経の近くに麻酔薬を注入することで、神経の伝達をブロックして痛みを抑える治療法です。
ただし、痛み止めはあくまで痛みに対する治療です。帯状疱疹の治療には抗ウイルス薬が必要となります。
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外用薬
軽症の場合も抗ウイルス薬の内服治療が基本となりますが、外用薬(塗り薬)を用いて治療が行われることがあります。[10]
抗ウイルス薬のほかにも、患部の痛みや炎症を抑える湿布や塗り薬、患部の細菌感染を抑える抗菌薬の塗り薬などが処方されることも多いです。
悪化を防ぐ日常生活の過ごし方
帯状疱疹の悪化を防ぐには、休息や睡眠をしっかりとって体を休めることが特に大切です。
帯状疱疹は重篤化すると激しい痛みや合併症により入院が必要になる可能性があります。
また、皮膚症状が治ったあとも神経痛が残る「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という後遺症にも注意が必要です。
ここでは、帯状疱疹の悪化を防ぐ日常生活の過ごし方について詳しく解説します。
患部を温める
患部が痛むときは、温めて血行を促進すると痛みがやわらぎます。
帯状疱疹の痛みは、通常は発疹が出て10日前後でピークを迎えます。その後、発疹の治癒とともに3~4週間で消失することがほとんどです。
時間の経過とともに痛みは治まりますが、夜も眠れないほどの激しい痛みにより日常生活に支障が生じることもあります。
痛みがつらいときはお風呂に入ったり、カイロや蒸しタオルなどを使用したりして身体を温めると痛みがやわらぎます。
ただし、敏感肌の人の場合は温めるとかゆみが出る可能性があることに注意が必要です。
処方された薬の用法・用量を必ず守ること
抗ウイルス薬は服用してから効果が現れるまでには数日かかり、服用を始めてからも数日は発疹が広がり続けることもあります。
自己判断で服用を中止したり量を調節したりせず、医師に指示された用法・用量をきちんと守ることが大切です。
痛みに対して処方された鎮痛剤も忘れずに使用しましょう。
痛みがなかなか治まらない場合は、早めに医療機関を再受診して医師の診察を受けてください。
バランスの良い食事を摂る
帯状疱疹は免疫力の低下が原因となるため、バランスの良い食事をとって免疫力を高めることが大切です。
免疫細胞のおよそ7割は腸内で作られています。[11]腸内環境を整える以下の食品を意識して摂りましょう。
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ヨーグルト
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キムチなどの乳酸菌
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野菜
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根菜類
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海藻類
免疫力を高めるには、腸内環境を整える食物繊維や免疫細胞を生成するたんぱく質を含む肉や魚、大豆食品も摂ると良いです。
また、抗酸化成分を含んだ野菜やビタミンCを多く含む果物もおすすめです。
バランスの良い食事は帯状疱疹の予防にも効果的です。普段から栄養をしっかり摂って免疫力を高めましょう。
できるだけ安静に過ごす
帯状疱疹は疲労やストレスが原因で発症します。
帯状疱疹が出ているときは免疫力が低下している状態なので、無理をせず安静にして過ごすことが大切です。
早期に抗ウイルス薬による治療を開始してウイルスの増殖を抑えることができても、発症中に無理をすると病状が悪化する可能性があります。
重症化して入院が必要になったり、回復後も神経痛が残る帯状疱疹後神経痛を発症したりする可能性もあるため注意が必要です。
帯状疱疹は発疹が現れてから3日以内に適切な治療を受ければ、7~10日程度で治ります。
休息と睡眠をしっかりとり、身体的・精神的な安静を保ちましょう。
まとめ
帯状疱疹になったときに患部を冷やしたり、水ぶくれを破ったりすると症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。
水ぶくれがかさぶたになるまでは周囲の人にうつす可能性も高いため、自己判断での登校や出勤も控えなければなりません。
帯状疱疹はうつりませんが、はじめての感染では水ぼうそうを発症するおそれがあります。とくに、ウイルスに対する免疫がない子どもとの接触は避けましょう。
帯状疱疹は重症化や合併症のリスクがある怖い病気です。
回復後も痛みが続く帯状疱疹後神経痛を予防するためにも早期に適切な治療を受け、休息・睡眠をしっかりとることが重要です。
帯状疱疹の症状が出たときは早めに医療機関を受診して治療を受け、回復するまで安静に過ごしましょう。
帯状疱疹でお困りのときは、ファストドクターのオンライン診療で相談してみませんか。
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参考文献
[2]一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会|こどもとおとなのワクチンサイト|ワクチンと病気について|水ぼうそう(水痘)について
[3]MSDマニュアルプロフェッショナル版 |17. 眼疾患 |角膜疾患 |眼部帯状疱疹
[4]日本皮膚科学会|皮膚科Q&A|ヘルペスと帯状疱疹|Q16帯状疱疹の合併症には何がありますか?
[5]厚生労働省|学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説
[6]NID国立感染症研究所|水痘抗体保有状況:2014~2017年度感染症流行予測調査事業より
[7]MSDマニュアル家庭版| 16. 感染症 / ウイルス感染症の概要 / ウイルス感染症の概要
[8]MSDマニュアル家庭版| 16. 感染症 / ヘルペスウイルス感染症 / 帯状疱疹
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。