水疱瘡(水痘)はどんな病気?出席停止や予防接種について医師が解説

更新日: 2024/09/29
子どもの通う保育園や学校で水疱瘡(みずぼうそう)が流行っていると聞いて、症状や感染力について不安を感じる人も多いのではないでしょうか。 「よく聞く病気だけどそもそもどんな病気なんだろう?」 「水疱瘡に2回かかることはあるの?」 「感染したら出席停止になるの?」 この記事ではそんな疑問にお答えします。 水疱瘡がどんな病気かを理解して、もし感染してしまってもあわてず対応できるようにしておきましょう。 また、予防接種についても解説しているため、水疱瘡対策の参考にしてみてください。
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水疱瘡(水痘)とはどんな病気なのか

水疱瘡と漢字表記で見ると難しく感じますが、いわゆる「みすぼうそう」のことです。また、水痘(すいとう)と呼ばれることもあります。

水疱瘡は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:ヒトヘルペスウイルス3型)による発疹症で、発症する人の90%以上が9歳以下のため小児の病気としても有名です。[1]

水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、水疱瘡を引き起こすため患者の大半が小児という結果になっています。

日本では1年間で100万人もの人が発症していると報告されています。[2]

水疱瘡の主な症状は以下通りです。

  • 全身の発疹

  • かゆみ

  • 発熱

  • 水ぶくれ

水疱瘡を発症した場合、段階的に症状が変化していく点も特徴といえるでしょう。発疹が現れる前の初期段階では、頭痛や発熱、全身倦怠感が生じるケースもみられます。

特に特徴的とされる症状は、皮膚の表面に小さな斑点状の発疹が頭皮から口の中まで全身の至るところに発生する点です。

特に体幹部には必ずと言って良い程、発疹が出現します。次から次へと発疹が現れ、頭や口の中まで発疹ができるため日常生活に支障をきたすでしょう。

喉や鼻の粘膜、膣や直腸の粘膜など、目では見えない場所にも発疹ができるケースもみられます。

その後、発疹が盛り上がったり、かゆみを伴ったりしながら水ぶくれへと変化。最終的には、かさぶたとなり徐々に消失し、発症から20日程度で消えるとされています。

水疱瘡の流行は12月後半頃から夏前にかけて流行するとされていますが、年間を通してみられる感染症です。[3]

誰でも感染する可能性はありますが、特に小児の場合は生後6ヶ月から4歳ごろに感染するケースが多いとされています。[4]

ごくまれに重症化する症例もあり、細菌感染の合併や脳炎などを引き起こすこともあります。小児では重症化しにくいとされていますが、症状の経過には注意しましょう。

感染経路と潜伏期間

水疱瘡を発症させる水痘・帯状疱疹ウイルスは感染力が非常に高いウイルスと理解しておきましょう。

水疱瘡の感染経路は主に以下の3つです。[5]

  • 空気感染

  • 接触感染

  • 飛沫感染

特に、感染者の咳やくしゃみに含まれているウイルスが空気中に残り、そのウイルスを吸い込むことで感染してしまう空気感染と、咳やくしゃみをそのまま吸い込んでしまう飛沫感染が主流の感染経路です。

そのため、同じ空間にいると感染しやすく、学校や保育園等で集団感染することもあります。

また、水疱瘡を発症している人の発疹や発疹からでた浸出液を触って接触感染するケースもあるのです。

感染者が触れたものに間接的に触れることでも感染の恐れがあります。お風呂でも感染するため家族間で感染が広がることも多いです。[6]

水疱瘡の潜伏期間は2週間程度です。

症状が現れた日を発症日として、発疹が現れる2日前から水ぶくれが完全にかさぶたになるまで感染性があります。

全ての発疹がかさぶたになるまで約1週間かかるため、根気強く感染対策する必要があります。

重症化することはある?

水疱瘡はまれに重症化するケースもあります。

特に重症化しやすいのは、新生児と成人、皮膚に病気がある人ですが、小児よりも成人の方が感染すると重症化しやすいといわれています。

ただし、健康な小児や成人でも重症化する可能性はあるため、どのように重症化するか知っておくと良いでしょう。

発疹から細菌が二次感染することで、皮膚の重い細菌感染症を引き起こす例が最も多いです。

水疱瘡の発疹に新たな細菌が感染すると、通常の経過とは異なり悪化することもあります。

例えば、発疹を無意識に掻いてしまった場合、引っ掻き傷から細菌が入ってしまうのです。特に小児の場合、痒みを我慢することが難しいので注意しましょう。[7]

その他、ウイルスが肺や脳に感染して肺炎や脳炎に繋がることもあります。特に、脳炎や無菌性髄膜炎を引き起こす中枢神経合併症は、成人に多くみられる合併症です。

ふらついて歩けなくなったり、立てなくなったりと歩行に変化が生じる小脳失調症をきたすことが多いとされています。[3]

また、水疱瘡になって早い時期にアスピリンを服用した小児では、ライ症候群を発症することがあるため注意しましょう。

ライ症候群は嘔吐や錯乱などの症状をはじめ、進行すると昏睡状態となるケースもあります。

現在では、特定の病気(川崎病など)を除いてアスピリンの処方は勧められていないため、ライ症候群の患者もほとんどいないと報告されています。[7]

上記以外にも小児の場合は、熱性痙攣や気管支炎などの合併症にも注意しましょう。

水疱瘡は2回かかることはある?

水疱瘡は1度かかれば、基本的に2回かかることはありません。水痘・帯状疱疹ウイルスに対する終生免疫を獲得したと考えて良いでしょう。

ただし、軽症で免疫が十分に得られなかった場合は、再び水疱瘡になる可能性もないとはいえません。その場合も2回目以降であれば比較的軽い症状で済むでしょう。[8]

一度水疱瘡にかかると、その後背骨付近の神経にウイルスは生涯潜んでいるのです。加齢やストレス、免疫低下をきっかけにウイルスが活動再開し、水疱瘡ではなく「帯状疱疹」として発症します。

水痘・帯状疱疹ウイルスに感染してから、帯状疱疹を発症するまでの期間はさまざまです。[9]

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水疱瘡の治療方法

水疱瘡の治療方法は、重症度や感染の程度を診察して決めていきます。

一般的には、抗ウイルス薬(アシクロビル・バラシクロビル)を内服して、症状の経過を観察することが多いです。[7]

抗ウイルス薬を発症初期に使用すると、通常より発疹の数が少なくなり早くかさぶたになると期待されています。[10]

ただし、小児で軽症の場合は対処療法のみで抗ウイルス薬が必ず処方される訳ではありません。

例えば、発熱している時は解熱剤を処方するなど、症状に応じた治療を進めていきます。

また、水疱瘡による発疹に対してはカチリ(カルボルチンクリ二メント)と呼ばれる塗り薬を処方し、かゆみや炎症を抑えていくと症状の緩和にもなるでしょう。

発疹のかゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬を使用して対処することもあります。

また、発疹を引っ掻いてしまい「とびひ」の可能性がある時は抗生剤の塗り薬を処方するケースもあります。

発疹ができたら清潔な状態を保ち、刺激を避けて過ごすと良いでしょう。

水疱瘡は自然治癒するのか

水疱瘡の症状が軽症で全身状態が良い場合は、安静に過ごしていれば治療をしなくても自然治癒します。

通常は7〜10日程度で治癒しますが、重症化しないよう経過観察をしましょう。

また、自然治癒するからといって放置すると、適切な処置が遅れ重症化リスクも高まります。水疱瘡の症状を確認した場合は、速やかに受診しましょう。[7]

主治医の指示に従って、症状や経過に合わせた治療が必要となる場合もあります。

水疱瘡は出席停止?登園の目安は?

水疱瘡にかかると出席停止扱いです。水疱瘡は感染症法で第5類に分類され、学校保健安全法では第二種感染症に分類されます。

出席停止の期間は、水ぶくれが全てかさぶたになるまでで通常1週間程度は出席停止となるケースが多いです。

もちろん1週間程度経過しても、かさぶたになっていない水ぶくれがあると、登園はできません。[11]

ただし、登園の目安については園によって対応が異なる場合があるため、一度通っている園に登園可能か確認してみると安心です。

水疱瘡の予防はワクチン接種が有効

水疱瘡の予防にはワクチン接種が有効です。

日本では乾燥弱毒生水痘ワクチンと呼ばれるワクチンが用いられ、接種回数は2回です。[1]

一般的に予防接種で使われるワクチンは「生ワクチン」と「不活化ワクチン」に分けられます。

水疱瘡に用いられるワクチンは生ワクチンで、毒性を低下させた生きているウイルスをそのまま用いているのです。

定期接種の対象で、水疱瘡にかかったことがない生後12〜36ヶ月の子どもは任意で無料接種が可能。

一般的に生後12〜15ヶ月の間に1回目を接種し、1回目から6ヶ月以上の間隔を空けて2回目を接種します。

2歳までに接種を終えることが理想的ですが、定期接種期間外でも接種後に充分な免疫を獲得できます。

ワクチンを2回接種するとおよそ94%も発症リスクを軽減できるのです。[12]

ただし、ワクチンを接種していたとしても水疱瘡を発症してしまうケースもありますが、ワクチンを接種していれば、重症化を防ぎ合併症のリスクも減らせると報告されています。

実際に、乾燥弱毒生水痘ワクチンの定期接種が開始されてからは水疱瘡を発症する患者が減少しているというデータもあります。

乾燥弱毒生水痘ワクチン接種後の副反応として、接種してから3週間以内の発熱や全身に水ぶくれが出現する可能性もあるのです。

まれに現れる重い副反応については、アナフィラキシー様症状や急性血小板減少性紫斑病などが報告されています。接種時は副反応についても理解しておきましょう。

また、以下に当てはまる場合はワクチンの接種ができません。[11]

  • ワクチンによってアナフィラキシーを起こしたことがある人

  • 明らかに発熱を認めた場合

  • 免疫機能に異常がある病気の人や免疫機能を抑える治療を受けている人

  • 妊娠している人

上記に加えて、ワクチン接種後2ヶ月間は妊娠を避ける必要があります。

また、50代以上の人が水痘ウイルスに対して抗体をもち免疫強化するために、帯状疱疹ワクチンの接種も推奨されています。

帯状疱疹ワクチンは任意接種です。自治体によっては一部費用助成制度もあるので、お住まいの自治体で確認してみましょう。

関連記事:水疱瘡(みずぼうそう)ワクチンの概要とよくある疑問を医師が解説

まとめ:水疱瘡に感染しないためにもワクチン接種を

水疱瘡の症状や治療方法、ワクチン接種について解説しました。

子どものワクチンの定期接種の重要性も改めて確認できたのではないでしょうか。

保育園や学校は出席停止になってしまうほど感染力が強く、軽くあなどれない病気です。

水疱瘡かな?と思う症状があれば、早めに受診して適切な治療を受けましょう。

また、水疱瘡は子どもに起こりやすい病気と思われがちですが、大人でもかかる可能性は十分あります。

定期接種期間以外でも充分に免疫獲得できるので、重症化を防ぐためにもワクチン接種は済ませておくと良いでしょう。

参考文献

[1]厚生労働省|水痘

[2]MSDマニュアル|水痘(水ぼうそう)

[3]土浦協同病院 なめがた地域医療センター|みずぼうそう

[4]KNOW VPD|水痘

[5]東京都感染症情報センター|水痘

[6]目白通り皮フ科|水痘(みずぼうそう)について

[7]まめクリニック|水疱瘡とは?原因・症状・治療方法について解説【医師監修】

[8]品川イーストクリニック|水痘ワクチン

[9]帯状疱疹.jp|帯状疱疹の原因

[10]まなこどもクリニック|水痘

[11]こどもとおとなのワクチンサイト|水ぼうそうについて

[12]日本小児学会|水痘ワクチン

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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