喘息の症状とは?
喘息は発作が起こったときの、激しい咳と喘鳴(ぜんめい)が特徴です。
喘鳴とは呼吸をしたときに、喉が「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」という音がすることをいいます。
このような咳や喘鳴は、喘息以外の病気でも症状が出ることはありますが、喘息で特徴的なのは発作的に症状が出現することです。
発作が起こると、咳・喘鳴・息苦しさが出現します。
気管支喘息の症状の強さや長さは人によっても違いますし、その時々で変わるので、一概にはいえません。
喘息を適切に治療せずに放置すると「リモデリング」が起こりやすくなります。
リモデリングとは喘息発作を繰り返すことにより起こる気道狭窄症状のことです。
リモデリングが進行すると、気管支の炎症を抑えたり、気管支を拡張させたりする薬を使用しても効果が満足に得られない可能性があります。
リモデリングを起こさないためにも、適切に受診をして診断を受け、発作を起こさないように治療を継続することが重要です。[1] [2] [3]
喘息の診断はどうやってされる?診断の基準や使用する機械について解説
もし「喘息かな?」と思い病院を受診するとき、どのような検査をするのでしょうか。
喘息診断の目安となる検査や、気管支喘息の検査方法など、大人喘息のチェックについて解説します。
喘息の診断方法① 問診でのチェック
問診では、症状や家族歴、環境などの確認を行います。
とくに症状については他の病気との鑑別のためにも詳しく確認します。
どんな症状があるか(咳、息苦しさ、喘鳴など)、症状の具合(継続的なのか、発作的なのか、どのくらいの頻度で起こるか)、いつ頃起こるか、いつ頃から起こっているかなどです。
家族のアレルギー歴や自身のアレルギー歴、生活環境、ペットの有無、仕事でのアレルゲンの暴露などの確認も行います。
受診で医師と対面するのは一瞬です。受診前に普段の症状や状況をしっかりと伝えられるようにしておきましょう。[4]
喘息の診断方法② 血液検査
血液検査のみで喘息の確定診断はできませんが、アレルギーによる病気があるかどうかの確認をすることができます。
喘息診断の血液検査では、主に好酸球数※1、総IgE値、抗原特異的IgE抗体値※2などのアレルギーの数値を確認します。
※1 好酸球:白血球の一種。
アレルギー性疾患(喘息、アトピー、アレルギー性鼻炎)や寄生虫感染、特定のがんなどで増加する。
※2 IgE抗体:体内にある自身のアレルゲンに結合する抗体。アレルゲンが体内に入るとIgE抗体が産生される。IgE抗体を測定するとアレルギー症状があるかどうかが測定できる。抗原特異的IgE抗体は、アレルゲンごとのIgE抗体のことを指す。総IgE値は全てのIgE抗体量。[5]
喘息の診断方法③ 呼吸機能検査
医療機関で行う呼吸機能検査
呼吸機能検査、肺機能検査、スパイロメトリーと呼ばれる、喘息の有無や重症度など、呼吸器の症状を調べることができる検査です。
主に使用されるのは、スパイロメータと呼ばれる機械です。
息を吸ったり吐いたりする力を数値化して検査することにより、肺活量や肺機能を検査します。
フローボリューム曲線という図を使用し、検査した数値を図式化するとわかりやすくなります。
自宅で行う呼吸機能検査
ピークフローメーターという機械を使用して、自身で測定できる呼吸機能検査です。
ピークフローメーターを使用することにより、気道の炎症を数値化して確認することができます。
受診時以外の症状の経過や発作の頻度、強さ、起こる時間帯などを自己管理するツールが喘息日記です。
喘息日記にピークフロー値を記載する場所があり、そちらに記載して受診時に医師が確認し、治療に役立てます。
また、喘息日記をつけることにより、患者さん自身も発作が出やすい時間帯や時期、体調、ピークフロー値を確認することができるので、体調を管理することができます。
[6]引用:独立行政法人環境再生保全機構|成人ぜん息の基礎知識|自分のぜん息の状況を把握する
喘息の診断方法④ 気道可逆性テスト
気管支喘息は気道が狭窄して呼吸の苦しさなどが出る病気です。
喘息は自然、もしくは薬で症状が元に戻る(可逆性)のが特徴です。
気道可逆性テストは、薬を使用していない状態で肺機能検査を行います。その後、喘息で使用されるβ刺激薬といわれる薬剤を吸入してから再度検査をして検査結果を比較します。
この検査で結果に差があり、薬で改善する(可逆性)が認められると、喘息の可能性が高いといえるでしょう。
気管支喘息の確定診断に役立つ検査の一つです。
薬物治療中の喘息患者は、検査の前に事前に治療薬を休止してから検査を行います。
薬を使用していない状態でのフローボリューム曲線と、薬を使用した後のフローボリューム曲線を確認します。[7] [8]
喘息の診断方法⑤ 喀痰検査、呼気NO検査
呼気NO検査は、呼気(吐いた息)のNO(一酸化窒素)の量を測定します。
この検査により、好酸球による気道の炎症の度合いをみることができます。2013年に保険適応になった検査です。
息を吐くだけで苦痛もなく検査でき、結果が迅速にわかるのも良い点です。
喘息患者は一酸化窒素の量が、喘息ではない人に比べて有意に高くなるといわれています。
この検査のみでの確定診断はできませんが、他の検査や問診と総合して判断する材料にしたり、患者の治療コントロールの指標になったりします。
喀痰検査は痰を調べる検査です。
喘息患者では、痰の中の好酸球が増加するといわれています。[9]
子供の喘息の診断は何歳からできる?赤ちゃんや乳児、幼児でも診断される?
小児喘息の診断はいつからできるのでしょうか。
小児喘息の中でも、5歳以下の喘息を乳幼児喘息とよびます。
喘息は何歳でも起こる可能性はありますが、2歳未満では喘息の診断基準はとても難しいです。乳幼児は、風邪でも喘息のようなぜいぜいした症状が出ることがあるからです。
専門医が経過をみながら診断していきます。
小児の喘息は、親からの遺伝や特定のアレルゲン、感染症、栄養状態などが危険因子になるといわれています。
このような環境因子も確認し、判断しなくてはなりません。[10]
喘息の診断をうけるには何科に行けばいい?内科?耳鼻科?
喘息かなと思って受診したいとき、何科に行けばいいのでしょうか。
症状が安定して、薬物治療の継続で経過観察の場合は、近所の内科や耳鼻科、診療所やかかりつけ医で相談してみてもいいでしょう。
喘息の診断を受ける場合は呼吸器内科、アレルギー科を受診するのがよいです。
喘息に似ている症状の病気について
呼吸器の病気には、気管支喘息に似た呼吸の苦しさや咳が出る病気があります。
気管支喘息と鑑別診断が必要な、COPD(慢性閉塞性肺疾患)と、咳喘息についてご紹介します。
COPDと喘息の違いと診断
COPDとは長年の有害物質の影響で肺が慢性的な炎症を起こし、徐々に気管支が狭くなっていくことにより呼吸が苦しくなる病気です。
大気汚染や有害物質を吸い込むような仕事が原因で起こることもありますが、ほとんどが喫煙が原因だといわれています。
そのため、COPDは弱年齢で発症することは非常に稀であり、60歳以上の発症がほとんどです。
長期間の喫煙者の約20%にCOPDを発症するといわれています。息切れをしやすくなる、長引く咳や痰、呼吸苦が症状として出現します。
COPDは症状が改善することがないので、悪化させないように禁煙することが大切です。
気管支の慢性的な炎症という点では、気管支喘息とCOPDは共通しています。
気管支喘息は発作が起こると咳、息苦しさ、喘鳴などが強く起こりますが、発作が改善するとほとんど症状がないことが多いです。
COPDは、動いたりする度に息苦しさが出ることが多いです。
病気が起こる原因も異なります。
問診、呼吸機能検査、画像検査などから総合的に診断されますが、COPDと気管支喘息を合併している人もいます。
症状が似ているため、どちらか一方に診断されて合併していることに気づかない症例もあるのです。
気管支喘息とCOPDを合併している人はCOPDの患者全体の20~30%にのぼるといわれています。
喘息と咳喘息の違いと診断
近年、長引く咳で咳喘息と診断される人は増加しています。では、咳喘息と喘息は何が違うのでしょか?
咳喘息は気管支喘息の亜型(派生したもの)といわれています。
気管支喘息は喘鳴(ゼイゼイする、ヒューヒューする症状)が出現し、呼吸苦があります。
咳喘息は喘鳴がなく、慢性的な咳症状が特徴です。
治療薬は、吸入ステロイドや吸入気管支拡張剤、内服の抗アレルギー剤など、気管支喘息の治療薬と同じものが使用されることが多いです。
症状が改善すれば、薬剤の減量は可能ですが、中止すると再発することがあります。
薬物治療で早期に症状が改善した場合は、治療中止も可能ですが、治療期間の推奨される根拠はないので、症状や検査結果から医師が総合的に判断します。
しっかりと症状がコントロールできていないと、約30~40%が気管支喘息に移行するといわれていますので、適切な治療が重要です。[13]
喘息の診断書のもらい方は?休職をしなくてはならなくなった。
料金の目安など
なかなか喘息の症状が改善せず仕事を続けるのが難しい、喘息に影響する仕事のため医師から休職を勧められた、など仕事を長期間休まざるを得ない場合どうすればいいでしょうか。
仕事を休職する、病気治療・療養に対する福祉制度を利用するとき、診断書を求められることがあります。
診断書は、大学病院や総合病院など規模の大きいところでは専用の窓口があるので、そちらで依頼することが多いです。
クリニックや診療所では受付や受診時に確認してみましょう。
金額は自費になるので、医療機関によって変わります。
通常は2,000円~10,000円程度ですが、心配なら事前に確認しておくとよいでしょう。
即日発行されないこともあるので、時間には余裕をもって依頼するようにしてください。
病気で長期間仕事を休まざるを得ない場合は、疾病手当などの給付金の制度についても職場と相談しておきましょう。
入院した、高額な薬を使用したなど、医療費が高額になった場合は、高額療養費制度を使用することが可能です。
年間で、一定金額以上の医療費を支払った場合は、所得税が軽減される医療費控除も申請することができます。
喘息の治療費を助成する制度がある自治体もありますので、確認してみるとよいでしょう。
Q&A
喘息かどうかの判断の仕方は?
人によって様々な症状や重症度が違い、年齢によっても変化するので、問診と検査で総合的に判断します。
問診では症状の強さ、頻度、期間、どんな症状があるか、アレルギーが出現するような環境がないか、遺伝要因など細かく確認します。
行われる検査は、肺機能検査、採血検査、X線検査、喀痰検査、尿検査、酸素飽和度などです。
気管支喘息と鑑別しなくてはならない疾患についても考慮されて判断されます。
喘息の診断は決して一つの検査で判定されるものではありません。
複数の検査や問診を行い、他の疾患との鑑別も行って初めて診断される疾患なのです。
喘息の診断はどの科で受けられますか?
風邪で咳が出るという程度であれば、内科や街の診療所、かかりつけのクリニックなどでよいです。
しかし、喘息と考えられる症状があり、診断を受ける場合は、呼吸器科(呼吸器内科)やアレルギー科がよいでしょう。
子供の場合は小児科でも診てもらえることがあります。
喘息はレントゲンでわかりますか?
喘息の診断の検査の一つとして胸部レントゲンをとることはありますが、レントゲンのみで確定診断はできません。
異常を示すこともありますが、通常は喘息患者のレントゲン写真は正常にうつり、異常は発見できません。
喘息の診断時にレントゲンを撮影するのは、喘息の確定診断ではなく、他の肺疾患や心不全の鑑別に利用される目的が大きいです。[14]
喘息no検査で症状がなくてもわかることは?
気管支喘息は慢性的に気道に炎症が起こることによって、呼吸が苦しくなったり、咳が出たりする病気です。
アレルギーによるno(一酸化窒素)の産生の増加を測定する検査が、呼気no検査検査です。
気管支喘息、咳喘息で数値が上がります。
この検査のみでの確定診断はできませんが、10秒間息を装置に吹き込むだけで検査ができるので、体の負担がなく隠れ喘息を見つけることができるでしょう。
呼気NO検査は2013年より保険診療が可能になったので、保険診療の範囲内で検査ができるようになりました。
今後、咳が長引く人の気管支喘息や咳喘息の鑑別に広がっていく検査と考えられます。
まとめ
喘息は子供から大人まで発症する可能性がある疾患です。
適切な診断を受けて早期に治療を開始することが重要です。
喘息は一つの検査では確定診断できません。複数の検査、問診から総合的に判断される疾患です。さらに、他の病気との鑑別も重要になってきます。
しかし、発作を我慢したり、長引く咳を放っておいたりして症状が悪化する人もいます。
気になる症状が自身やご家族などのまわりの方にあるときは、まずは専門医に相談してみましょう。
適切な検査を受け、適切な診断を受けることが大切です。
症状を放置せずに適切な医療機関を受診できるように、わたしたち自身が正しい知識を身に着けましょう。
ファストドクターでは無料の医療相談を行なっています。
アプリから往診の待ち時間を見れるだけではなく、チャットや電話での無料の医療相談が可能です。
もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。
参考文献
[1]オムロン公式ネット|ネブライザーねっと|喘息の基礎知識|放置せずに適切な治療を
[2]オムロン公式ネット|ネブライザーねっと|喘息の基礎知識|ぜんそくの主な症状
[3]藤田医科大学総合アレルギーセンター|検査の部屋|アレルギー疾患の検査方法
[4]独立行政法人環境再生保全機構|成人ぜん息の基礎知識|検査と診断
[6]独立行政法人環境再生保全機構|成人ぜん息の基礎知識|自分のぜん息の状況を把握する
[7]慶應義塾大学病院臨床検査科|肺機能検査室|気道可逆性試験
[8]JSTAGE|日本内科学会雑誌第108巻第6号|呼吸機能検査
[9]JSTAGE|日本内科学会雑誌第108巻第6号|喘息診療における気道炎症モニタリングの意義ー呼気NO測定、喀痰好酸球、末梢血好酸球ー
[12]独立行政法人環境再生保全機構|COPDは全身の病気です~知っておきましょう、肺合併症と全身依存症のこと~②
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。