喘息とは
喘息とは、激しい咳が出たり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴や呼吸苦など、発作性の呼吸困難が生じる疾患です。
喘息の発作は、重症度の低いものから小発作・中発作・大発作に大別されます。
小発作 |
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中発作 |
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大発作 |
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小発作では苦しくても横になることは可能ですが、中発作になると苦しくて横になるのも困難となります。
更に重症度の高い大発作に陥ると、苦しくて動けない・会話もできない状態に陥り、最終的には呼吸不全となります。
喘息になりやすい人の特徴は以下の通りです。
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アレルギー体質(アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を患っている方など)
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家族に喘息の人がいる(家族にアレルギー体質の人がいる)
喘息の治療方法
喘息は、気道に炎症が起きることで出現します。
そのため、抗炎症作用のある吸入ステロイド薬による治療が基本です。
「喘息予防・管理ガイドライン2021」及び「アレルギー総合ガイドライン2019」では長期管理を4つの治療ステップに分類していますが、
いずれのステップでも吸入ステロイド薬の使用が基本となります。
吸入ステロイド薬は、治療ステップに応じて低〜高用量を選択します。
治療ステップに応じた吸入ステロイド薬の使用量
治療ステップ1 |
その他の治療
※長時間作用性β2刺激薬の単剤使用は気道過敏を強め、窒息死に繋がる危険性があるためステップ1の段階での使用は行わない |
治療ステップ2 |
その他の治療
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治療ステップ3 |
その他の治療
※この段階で症状がコントロールできない場合は専門機関への紹介が望ましい |
治療ステップ4 |
その他の治療
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上記の吸入ステロイド薬による基本治療に加え、アレルゲン免疫療法(ロイトコリエン受容体拮抗薬以外の抗アレルギー薬)を並行して行います。
いずれのステップでも、増悪時は短時間作用性吸入B2刺激薬の使用が基本です。
治療の目的は、発作が起きた時に鎮めることではなく、発作が起きないように症状をコントロールすることです。
自宅でできる予防と発作時の対応
喘息に対して自宅でできることと、喘息の症状が出た時に楽になる方法を紹介していきます。
喘息は、アレルギーに起因するものです。
特に小児喘息のほとんどが、ハウスダストやダニなどのアレルゲンを吸入することで発症すると言われています。
そのため、家庭内では特に可能な限りアレルギーを排除することが重要です。
家庭でできる予防方法
床にはできるだけ物を置かず、特にカーペットの部屋は最低でも3日に1回はかけるようにしましょう。
晴れている日は天日干しし、掃除機をかけるようにしましょう。 また、シーツやカバーは1週間に1回は洗濯します。
乾燥機は高温によりダニを死滅させることができます。
換気は適度に行いましょう。空気清浄機や除湿器、加湿器などを使用するのもおすすめです。
喘息を患っている本人だけではなく、一緒に過ごしている家族も禁煙しましょう。副流煙は喘息に悪影響を及ぼします。
寒い日や空気が乾燥している時はマスクを着用することで気管支の収縮や気道の乾燥を予防することができます。また、風邪などの感染症は喘息発作を誘発する原因になるため、感染症の流行る時期は特に予防が必要です。
運動療法も喘息の治療のうちのひとつです。激しい運動は悪化の原因となるため、かならず主治医の指示のもと適度な運動を行うようにしてください。 |
家庭で発作が起きた時の対応
吸入を行っても症状が改善しない場合救急対応できる医療機関に受診する
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喘息かも?と思ったら呼吸器内科やアレルギー科に受診
喘息を疑う症状が出現した場合は、「呼吸器内科」や「アレルギー科」を受診しましょう。
いずれの診療科でも気管支喘息の治療を行っていますので、お近くのクリニックに受診してみてください。
喘息の治療は内科でも大丈夫?との声も多いですが、実は内科や耳鼻咽喉科でも治療が可能です。
内科・呼吸器内科・アレルギー科・耳鼻咽喉科の違いと特徴
内科 |
かかりつけの内科がある人は、まずかかりつけで相談してみてください。 |
呼吸器内科 |
より専門的な治療や検査を行いたい場合は呼吸器内科への受診をおすすめします。 |
アレルギー科 |
喘息は、アレルギーに起因する疾患です。ハウスダストやダニなどのアレルゲンを吸い込むことで症状が出現します。 一般的な内科や小児科でも治療は可能ですが、アレルギー科を得意とするクリニックがある場合はそちらに受診することをおすすめします。 |
耳鼻咽喉科 |
耳鼻科を正確に言ったものが耳鼻咽喉科です。 喘息やアレルギー性鼻炎、喉頭アレルギーなどのアレルギー疾患は、互いに合併することが多い疾患です。[5] 鼻炎などで耳鼻咽喉科にかかっている方は、そちらで喘息の相談をしてみてください。 耳鼻咽喉科では主に発作が生じている時に治療をすることが多いです。 |
一般内科を受診した際に医師が必要と判断した場合は、呼吸器内科やアレルギー科などより専門性の高い診療科に紹介されることもあります。
子供の喘息の場合病院は何科?大人と同じで良いの?
子供で痰がらみの咳が出るときや、喘息のような症状が続いている時は何科に受診するべきでしょうか。子供の場合、基本的にはかかりつけの小児科で治療することができます。
小児科の中でもアレルギー疾患を得意とする病院がおすすめです。
喘息の症状が重い場合や、アレルギーが多い子供の場合は、より専門的な機関をおすすめされる場合もあります。
そのような場合は、大人と同様に症状に合わせて呼吸器内科やアレルギー科、耳鼻咽喉科などを受診します。
かかりつけの小児科から紹介してもらうことも可能ですので、まずは小児科で相談してみるのも良いでしょう。
喘息は、長期的な治療が必要な疾患です。
大人や子供に関わらず、信頼できる医師と長く付き合っていくことをおすすめします。
子供の場合は、自分の体調の変化を上手く言葉にできないため特に注意が必要です。
普段一緒に生活している保護者や保育者が、少しでもいつもと違うと感じる時にはすぐに医療機関で相談しましょう。
受診のタイミング
受診のタイミングは以下のことを目安に判断してください。
子供の場合
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2週間以上咳が続いている
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息を吸い込むときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と音がする
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息を吸うときに喉や肋骨の間などがはっきりとへこむ(呼吸が深く苦しい状態)
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話すときに息苦しい
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苦しくて眠れない
上記のような状態の場合は受診が必要です。
元々喘息の診断がついているお子さんの場合、特に生活の様子や顔色、呼吸状態をよく観察し、ひどい発作が出る前に受診できるように心がけましょう。
咳だけが続いていて他に症状がないときは、多くの場合急いで受診する必要はありません。
元気で食欲のあるときは特に心配ないでしょう。
ただし、上記のような呼吸苦を伴う症状がみられるときや、ぐったりしている時はすぐに受診しましょう。
大人の喘息の方が病院に行くタイミングも基本的には子供と同じです。
ただし既に喘息と診断されており、吸入薬などの処方、発作時の指示がある場合は、まず医師の指示通りに対処しましょう。
それでも効果が不十分なときや苦しくて眠れないときは、受診のタイミングといえます。
以下のような症状がみられる場合は救急受診しましょう。
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苦しくて眠れない
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短時間作用性β2刺激薬や内服薬の効果が不十分
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発作止めの薬が手元にない
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強いぜん息発作の症状がある
咳の期間が短くても、痰の色が黄色や緑色に変化した場合は受診して治療を受けましょう。色のある痰や鼻汁が出るときは感染症の可能性があります。
咳喘息と気管支炎
咳喘息や気管支炎も、喘息と同様に主な症状は「咳」ですが、その他の症状や発症誘因などが異なります。
それぞれの疾患について解説します。
咳喘息の症状と受診の目安
咳喘息は、喘息と異なり喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を伴わず、咳だけが長引くことが特徴です。
咳喘息はアレルギー炎症などによって気道が過敏な状態になることで、気道が少しでも伸び縮みすると咳が出やすくなってしまっていることが原因であると考えられています。
咳喘息の特徴は以下の通りです。
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2~3週間以上、咳だけが続いている
(診断の基準は8週間以上続く咳) -
早朝や寝ている時などの一定の条件が揃った時に症状が出やすくなる
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特定の時期に咳が長引いたことがある(気圧の変化や寒暖差の影響を受けやすいため)
上記のような症状がみられる場合には咳喘息の可能性が考えられます。
風邪と間違えられることも多いですが、咳だけだからと放置するのはやめましょう。
放置すると、症状が悪化し気管支ぜんそくに移行してしまうことがあります。
咳喘息は適切な治療を受ければ、多くの方が快方に向かう疾患です。
咳喘息の治療は耳鼻科と内科のどっちでも大丈夫?耳鼻科でもいいの?という質問が多く見受けられますが、喘息と同様にどちらでも治療可能です。
気管支炎の症状と受診の目安
気管支炎は、気管や気管支にウイルスや細菌が入り込んで炎症を起こしている状態です。
インフルエンザウイルスやRSウイルスなどのウイルス感染、マイコプラズマや百日咳などの細菌感染などが主な原因です。
他にも、微粒子やガスなどの刺激が原因となることがあります。
気管支炎には、急性気管支炎と慢性気管支炎があります。
特徴と症状 |
診断 |
治療 | |
急性気管支炎 |
風邪症状が出てから3〜5日後に気管支炎が発症する。 主な症状は強い咳。 乾性咳嗽(乾いた咳)から徐々に湿性咳嗽(痰の絡んだような咳)に移行する。 子どもは、気管支が細いため喘鳴を伴うことも多い。 通常はウイルス感染によるものだが、一度解熱したあとに再び発熱したり、発熱期間が長い場合等は細菌感染の合併が疑われる。 |
主に咳や痰などの症状と胸部聴診所見から診断する。 |
痰を伴う咳の場合:去痰薬 痰を伴わない場合:鎮咳薬 細菌感染の場合:抗菌薬 上記の内服に加え、水分や栄養の補給、休息が主な治療となる。 |
慢性気管支炎 |
原因不明の咳や痰が1年のうちに3か月以上持続し、なおかつそれが2年以上続いている場合を指す。 様々な検査を行っても原因がわからない時に慢性気管支炎と診断される。 粘り気のある痰がでるのが典型的な症状。 |
生活背景(アレルギーや喫煙歴など)や身体所見から慢性気管支炎を疑う。 画像検査・呼吸機能検査などを行って確定診断を行う。 |
喫煙者は禁煙、アレルギーのある人はアレルゲンの除去を行う。 痰が多い場合:去痰薬 息苦しい(気道が狭くなっている)場合:気管支拡張薬 などが使用される。 重症度によっては、ネブライザーや在宅酸素療法などを行う場合もある。 冬のように空気が冷たく乾燥している時期は症状が悪化しやすいので注意が必要。 |
受診の目安は以下の通りです。
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黄色や緑の痰がでる
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2~3週間以上咳が続いている
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発熱や倦怠感が伴っているまたは風邪などの感染症後咳と痰だけが長引いている
気管支炎の治療は内科と耳鼻咽喉科のどっちでもできる?気管支炎の治療は耳鼻咽喉科でも大丈夫?という質問も多く見受けられますが、喘息と同様にどちらでも治療は可能です。
Q&A
喘息何科に行けばいいの?
喘息を疑う症状が出現した場合、「呼吸器内科」や「アレルギー科」を受診しましょう。
また、一般内科や耳鼻咽喉科でも治療が可能です。かかりつけのクリニックがある方はまずそちらで相談してみてください。
子供の場合はかかりつけの小児科で相談しましょう。
喘息かも大人何科?
喘息は何科に行くのが良いか、また大人や子供に違いはあるのでしょうか。
一般的に、内科・呼吸器内科・アレルギー科・耳鼻咽喉科で治療が可能です。
上記の中であれば、大人や子供に関わらず治療できます。
更に、子供の場合はかかりつけの小児科で治療を受けることが可能です。
内科の中でも呼吸器の疾患に特化して診療しているのが呼吸器内科になります。
また喘息はアレルギーに起因する疾患であるため、アレルギー科で相談するのも良いでしょう。
内科を受診した場合でも、重症度の高い場合やアレルギーが多い場合などにより医師が必要と判断したときは、より専門性の高い診療科に紹介されることがあります。
詳しくは「喘息かも?と思ったら呼吸器内科やアレルギー科に受診」の章をご参照ください。
喘息は耳鼻咽喉科と呼吸器内科のどちらで治療を受けるべき?
耳鼻咽喉科と呼吸器内科のどっちに受診するべき?という方も多くいますが、どちらでも同様の治療を受けられます。
すでにかかりつけの内科や耳鼻咽喉科がある場合はそちらで相談してみてください。
自分が喘息かどうか分かる方法はありますか?
喘息の特徴的な症状は、呼吸すると聞こえる「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴)です。
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喘鳴がある
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アレルギー体質
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夜間や早朝に咳がよく出る
上記に当てはまる場合は喘息の可能性があります。
喘息が疑われる場合は、必ず専門の医療機関に受診して適切な治療を受けましょう。
喘息を放置してしまうと、重篤な発作が出る可能性が高まります。重篤な発作は、最悪の場合死に至ることもあります。
大人の喘息 仕事を休む目安は?
仕事を休む目安は以下の通りです。
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喘息の症状が数週間続く
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発作により息苦しい
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強い咳が長引いている
自分自身で判断できない時は、無理をせず医療機関へ受診し、医師の判断に従いましょう。
咳喘息 病院は何科に受診?
咳喘息が疑われる場合も、喘息と同様に呼吸器内科やアレルギー科を受診します。
また、内科や耳鼻咽喉科でも治療は可能です。
咳喘息について詳しくは「咳喘息の症状と受診の目安」の章をご参照ください。
まとめ
喘息は、放置すると重篤な発作を起こし、最悪の場合には死に至る可能性もある疾患です。
咳が長引いている方や、喘息かもしれないと感じている方は呼吸器内科やアレルギー科に受診しましょう。
かかりつけの内科や小児科、耳鼻咽喉科がある場合はそちらで相談することも可能です。
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2週間以上咳が続いている
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喘鳴がある
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息苦しい
長引く咳で病院に行く目安は大人も子供も基本的には同じです。
上記のような症状がある方は、我慢せずにすぐに受診してください。
喘息は、早期発見・早期治療を行うことで重症化を防ぐことができます。
重篤な発作を起こす前に症状をコントロールしていきましょう。
ファストドクターでは無料の医療相談を行なっています。
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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。
参考文献
[1] Q2-1ぜん息発作の程度は、どのように見極めるのでしょうか?
[2] アレルギー疾患の手引き
[4] 子どもの救急ってどんなとき?~喘息(ぜんそく)の発作が出た時-群馬県ホームページ(医務課)
[5] 内科と耳鼻科の違い
[7] »気管支炎
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。