XBB系統とは?症状の特徴やワクチンの効果・日本の流行状況を解説

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/02/05
新型コロナウイルスの変異株「XBB」が現れ、世界中でその影響が注目されています。 流行の初期からアルファ株、デルタ株、オミクロン株(BA.1とBA.4-5)と変遷し、2023年7月現在の主流はオミクロン株の一種である「XBB系統」という亜系統です。 この変異株はどのようにして生まれたのか、どのような特性を持っているのか、そして私たちがどのように対処すべきなのか、疑問や不安を感じている方も多いでしょう。 そこで、本記事では、「変異株XBB」について、ウイルスが変異した原因やこれまでのウイルスと比べたときの特徴、そして対策方法について紹介します。
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ウイルスの変異メカニズムとは?

コロナウイルスは「RNA」という遺伝情報を持つRNAウイルスです。

RNAは、DNAと比べると何万倍ものスピードで変異を起こすことがわかっており、そのためパンデミック(世界的な大流行)になりやすいといわれています。

たとえば、インフルエンザウイルスもRNAウイルスで、1900年以降、3回のパンデミックが起こりました。

実際に1918年のパンデミックでは、世界で約3,000万人もの方が亡くなっています。

変異は、ウイルスが増殖する際のコピーミスが原因です。

1つのウイルスから2つに増殖するときに、RNAを2倍に複製する必要があります。

このとき、RNAの一部のコピーミス(変異)が起こりますが、たいていの変異はウイルスの性質に大きな影響を与えません。

しかし、ごく一部の変異ではウイルスの性質に影響を与えるようになり、重症化リスクや症状、感染力などが変わってしまうのです。

DNAの場合はコピーミスを修正する仕組みを持っているため、変異が起こることは少ないのですが、RNAにはその仕組みがないために頻繁に変異が生じてしまいます。

その変異の仕方が、ウイルスの生存にとって有利なものであれば、その変異を持ったウイルスが多く増殖し、今までのウイルスと置き換わっていきます。

XBB系統とは?

変異を続けている新型コロナウイルスですが、XBB系統の変異株にはどのような特徴があるのでしょうか?

XBB系統の流行状況

XBB系統は、2023年3月頃から世界的に流行が始まったオミクロン株の亜系統です。

亜系統というのは、大元のウイルス株から一部が変異してできた株という意味で、オミクロン株と総称されるものの中にはいくつもの亜系統があります。

XBB系統は、オミクロンBA.2から派生した系統です。

日本全体では、2023年7月現在、XBB.1.16系統とXBB.1.5系統が主に流行していますが、都内では欧米で流行しているXBB.1.9系統もみられます。

XBB.1.16系統の検出率は、日本全国的に上昇傾向です。

地域主系統第二系統第三系統
東京XBB.1.16XBB1.5.5XBB1.9.1
日本全体XBB.1.16XBB.1.5XBB1.16.1
韓国EG.1XBB.1.16XBB.1.5
アメリカXBB.1.5XBB.1.16XBB.1.9.1
イギリスXBB.1.16XBB.1.5XBB.1.9.2
スペインXBB.1.5XBB.1.9.1XBB.2.3

(2023年6月の報告)

XBB系統の特徴

XBB系統には、これまでに流行した変異株との違いがいくつかあります。

①特徴的な目の症状

XBB系統も、これまでに流行してきた株と同様に風邪のような症状が主体です。

  • 発熱
  • のどの痛み
  • だるさ、関節痛
  • 頭痛
  • 味覚異常

XBB.1.16系統では、特徴的な症状として「結膜炎」が報告されています。

頻度は1〜3%とさほど高くはありませんが、目の充血やかゆみ、目やになどの症状があれば、結膜炎かもしれません。

変異によって目へ症状が出やすくなった可能性があります。

手にウイルスが付着した状態で目を触るなどして結膜炎になることが考えられますので、以下の点を意識してください。

  • あまり目を触らないこと
  • 目を触る場合は手を洗ってからにする
  • 目を触ったあとは手を洗う
  • タオルは共有しない

②免疫を逃れる傾向がある

2022年1〜6月頃(第6波)に流行していたBA.1と比べると、中和抗体から逃避する可能性が高いようです。

中和抗体というのは、ウイルスが人の細胞に侵入するのを抑える物質で、感染予防効果を持ちます。

ワクチンの接種によって得られるほか、自然に感染した場合も得られることがあります。

ウイルスに中和抗体が結合してしまうと、人の細胞内に侵入するための「ACE2受容体」というスイッチを押すことができなくなり、ウイルスは人に感染できません。

そうなると、ウイルスの生存にとっては不利になってしまいます。

XBB系統は、中和抗体に抵抗する作用をもつように変化しているほか、「ACE2受容体」への結合力も増しており、ウイルスの生存にとって有利な変異を遂げました。

ウイルスにとっては、致死率が高くて多くの生き物に広まりにくいよりも、致死率は低くても多くの生き物に感染を広げられる方が、生存にとって有利なのです。

③感染力が高い

XBB系統は、2022年7〜9月頃(第7波)に流行していたBA.5と比べて、感染力が強い傾向があります。

XBB系統は、BA.2やBA.5よりも血液中の中和抗体から逃れる力があるため、感染を成立させる力が強いです。

一方で、重症化させる力は、2021年7〜9月頃(第5波)に流行していたデルタ株に比べて、全体的に低くなっています。

したがって、人工呼吸器などが必要になる重症患者の割合は減ったものの、より多くの人に感染するようになったことから、重症患者の数はさほど減らない見込みです。

XBB系統にもワクチンは効果あり

抗体の効果がなく、重症化が減ったのであれば、ワクチンは意味ないのではないかという疑問があるかと思います。

しかしながら、新型コロナウイルスが変異によって免疫から逃れる能力を得たとはいえ、ワクチンが無意味ということではありません。

XBB系統に対して有効なワクチンとして、「オミクロン株対応2価ワクチン(BA.4-5対応型)」があります。

このワクチンを追加接種した場合の中和抗体価は、オミクロン株の亜種(BA.1、BA.5、BA.2.75.2、BQ.1.1、XBB)のいずれに対しても高かったそうです。

「オミクロン株対応2価ワクチン(BA.4-5対応型)」の追加接種で、以下のような有効性があるとわかっています。

  • 救急外来の受診が減少する。

    (ワクチンを打っていない方と比べて56%、従来型ワクチンを打った方と比べて31%減少した)

  • 入院が減少する。

    (ワクチンを打っていない方と比べて57%、従来型ワクチンを打った方と比べて38%減少した)

  • 発症を予防する効果がある
    (従来型ワクチンを2回接種してから8か月以上経過している方と比べて、18~49歳で56%、50~64歳で48%、65歳以上で43%の発症予防効果が認められた)

また、現在、製薬会社のファイザーとモデルナは「XBB.1.5」や「XBB.1.16」といったXBB系統に効果が認められたワクチンについて、厚生労働省へ承認申請をおこなっているところです。

今後も、変異株が出ればそれに対応したワクチンが開発されると思いますので、その都度、変異株の感染力や重症化率などをみて接種をご検討ください。

まとめ

今回は、2023年7月現在、世界的に流行している新型コロナウイルスのXBB系統について、特徴やワクチンの効果を解説しました。

XBB系統は、重症化率は2022年に流行したデルタ株に比べて低いものの、感染力が高くなったことでより多くの方に感染しやすくなった変異株です。

ワクチンによって得られる中和抗体への抵抗性を持っていますが、それでもワクチンは依然として発症予防や重症化予防に効果があるとわかっています。

新たな変異株に直面しても、基本的な予防策は変わりません。

手洗い、マスクの着用、社会的距離の維持、そして何よりも重要なワクチンの接種は引き続き行うべきです。

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参考文献

記事監修
  • 名倉 義人
    救急科専門医

    ・平成21年 名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事 ・平成23年 東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得 ・平成27年 東戸塚記念病院で整形外科として勤務 ・令和元年 新宿ホームクリニック開院

    日本救急医学会、日本整形外科学会

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