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  • 2023年3月最新【医師監修】ノロウイルスは11月~3月がピーク!特徴や症状、潜...

ノロウイルスの特徴や症状、潜伏期間や重症化について解説

ノロウイルスは乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層に急性胃腸炎を引き起こす、ウイルス性の感染症です。 特に冬場に流行しやすいウイルス性の感染症で、感染すると激しい下痢や嘔吐などの症状を引き起こすという特徴があり、長期免疫が成立しないため何度も感染してしまう可能性があります。

この記事では、BA5株の特徴や、症状、重症化率などについて詳しく解説します。

さらに、感染力が非常に強いウイルスのため、学校や保育施設などでの集団感染も起こりやすく、さらには持ち帰ってきたウイルスが家庭内で拡がってしまうというケースも少なくありません。 本記事では、ノロウイルスの症状や感染予防に効果的な対策などをご紹介していきます。

記事監修

名倉 義人 医師

○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院

○資格
救急科専門医

○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会

ノロウイルス感染症とは?

ノロウイルスは乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層に急性胃腸炎を引き起こす、ウイルス性の感染症です。
特に冬場に流行しやすいウイルス性の感染症で、感染すると激しい下痢や嘔吐などの症状を引き起こすという特徴があり、長期免疫が確立しないため何度も感染してしまう可能性があります。

さらに、感染力が非常に強いウイルスのため、学校や保育施設などでの集団感染も起こりやすく、さらには持ち帰ってきたウイルスが家庭内で拡がってしまうというケースも少なくありません。
本記事では、ノロウイルスの症状や感染予防に効果的な対策などをご紹介していきます。

特徴①少ないウイルスで感染しやすい

ノロウイルスは、感染力が非常に強いことで知られています。

原因となるウイルスは人の腸管内のみで増殖しますが、乾燥や熱にも強いうえに自然環境下でも長期間生存が可能なウイルスです。
そのため、少量(10~100個ほど)のウイルスが体内に入ってしまっただけでも感染してしまう恐れがあります。

また、体内に入ってきたウイルスの数が少なくても、1~2日後には100万~1兆個という莫大な数に増殖し。その増殖したウイルスが嘔吐物や便として体外に排出されることで、さらなる感染へとつながるため、集団感染が起こりやすくなっています。

※症状のない「不顕性感染」にも要注意!
感染していても発症しない場合(不顕性感染)もあります。
その場合、症状自体はなくとも便の中にウイルスを排出してしまう恐れがあるため、身近にノロウイルスの感染者が出ている人は周囲への感染拡大に繋がらないように細心の注意が必要となります。

特徴②感染経路が多い

このウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、次のような感染様式があると考えられています。

  1. 感染者のノロウイルスが大量に含まれるふん便や吐ぶつから人の手などを介して二次感染した場合
  2. 家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところで、ヒトからヒトへ飛沫感染等直接感染する場合
  3. 食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を行う者などが含まれます。)が感染しており、その者を介して汚染した食品を食べた場合
  4. 汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
  5. ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合

特に、食中毒では食品取扱者を介してウイルスに汚染された食品を原因とする事例が、近年増加傾向にあります。

また、ノロウイルスは食品や水を介したウイルス性食中毒の原因になるばかりでなく、家庭内や保育園、学校・職場などで感染者の嘔吐物や便に触れることによる『接触感染』や、感染者の嘔吐物の飛沫による『飛沫感染』、便や嘔吐物がほこりなどに付着し空気中を漂うことで起こる『空気感染』など、様々な感染の経路が想定されます。

参考:厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A
感染経路別ノロウイルス感染集団発生の推移(病原微生物検出情報(IASR))

特徴③抗ウイルス剤がない

インフルエンザウイルスなどのウイルスと異なり、現在、ノロウイルス効果のある抗ウイルス剤や予防接種は存在しません。

そのため、ノロウイルス感染症の治療法としては、自然治癒能力を高めて症状を軽減する対症療法を行うというのが一般的です。ノロウイルス感染症を予防するためには、こまめな手洗いうがいや適切な汚物処理の方法などの対策を実施するほかありません。

特徴④アルコール抵抗性が強い

ノロウイルス自体は、アルコールへの抗体性が強いウィルスとなっております。
ノロウイルスはノンエンベロープウイルスというアルコール耐性が強いウイルスに分類されおり、ノロウイルスに対するアルコール消毒は、十分量の消毒用エタノール(消毒用エタノール液IPなど)を用いて30秒間以上接触させる必要があります。
清拭では2度拭き(清拭して、15秒後ぐらいに再度清拭)を行うようにしましょう

また、ノロウイルスに対してより効力を高めたアルコール製剤の使用も勧められています。

参考:https://www.kenei-pharm.com/medical/countermeasure/faq/d02/

ノロウイルスはなぜ冬場に流行しやすいのか?

国内におけるノロウイルスの月別の発生状況をみると、一年を通して発生はみられますが11月くらいから発生件数は増加しはじめ、12~翌年3月までの「冬場」増加する傾向にあります。

ノロウイルスは低温で長生きする

ノロウイルス感染症が冬場に流行しやすい理由の1つとしては、ノロウイルスは低温環境での寿命が長いということが挙げられます。

気温20℃ほどの環境でのノロウイルスの寿命は1ヵ月前後と言われていますが、気温が4℃の環境だと、ノロウイルスは約2か月も生存し続けることが可能です。
気温が低くなる冬場は、手や衣類などに付着したノロウイルスが長期間生き続けるため、結果としてノロウイルス感染症が流行しやすくなるのです。

乾燥した空気はウイルスが漂いやすい

ノロウイルス感染症が拡がる主な原因としては、ノロウイルス感染者の便や嘔吐物がほこりなどに付着し空気中を漂うということです。
十分な湿度が保たれた環境では、ウイルスが空気中の水分を吸収し重くなるため、長い時間空気中を漂うことができなくなります。

しかし、乾燥した環境下においては、ウイルスに含まれる水分が蒸発し軽くなってしまうため、ウイルスが空気中を漂う時間が長くなってしまいます。そのため、空気が乾燥しやすい冬場は、感染のリスクが高まってしまうのです。

また、低温環境と同様に、乾燥した環境だとノロウイルスの寿命が長くなるというのも、乾燥した環境でノロウイルス感染症になりやすい原因の1つです。

免疫力の低下

外気温が低くなる冬場は、必然的に体温も低下しやすいです。体温が低くなると代謝機能が低下し、それに伴って免疫力も低下してしまいます。

免疫は、ウイルスや細菌などの病原体が体外から体内へ侵入するのを防ぐという重要な働きを担っているため、この機能が低下してしまうと、感染症にかかりやすくなってしまいます。
ノロウイルス感染症に限らず、冬場に風邪やインフルエンザなどにかかりやすいのは、この免疫力の低下が大きな原因の1つと言えるでしょう。

ノロウイルス感染症にかからないためには、1年中予防対策を行うのが理想的ですが、特に冬場は入念な予防策を実施するということが大切です。

ノロウイルスの潜伏期間は?

ノロウイルスに感染した場合、感染後すぐに症状があらわれるわけではなく、1~2日ほどの潜伏期間(感染してから症状があらわれるまでの期間)があります。
そのため、すでにノロウイルスに感染していても、1~2日ほどは無症状のため気づかないということがほとんどです。
感染してしまうと数日後には急激な吐き気や下痢などの症状があらわれるほか、家族などへの二次感染をさせてしまう危険性があるので、ノロウイルス感染者との接触があった際は特に徹底して手洗いうがいなどの予防策を行いましょう。

ノロウイルス感染症の主な症状

ノロウイルス感染症による症状は以下の通りです。

・腹痛や下痢
・吐き気や嘔吐
・発熱
・食欲低下
・全身のだるさ など

下痢や嘔吐、発熱などの症状があらわれるのは、ノロウイルスに感染してから3~4日ほど経ってからです。
この期間はノロウイルス感染症の症状がピークに達するため、必要であれば病院で診察を受けたり、市販の整腸剤や吐き気止めを服用するなどするのがよいでしょう。
特に脱水症状には注意が必要なため、症状を重篤化させないためにも、こまめな水分補給を行うことが大切です。

特に現れやすい症状と言われている『下痢』『発熱』『嘔吐』の3つの症状についてさらに詳しく解説していきます。

ノロウイルス感染によって起こる「腹痛や下痢」

ノロウイルスに感染してしまうと、腸の中に侵入したノロウイルスを体の外へ排出しようとします。この結果、腸の動きが活発になり、通常時よりも多くの腸液が分泌されるため、下痢や腹痛の症状が現れやすくなるのです。

ノロウイルス感染症による下痢は水っぽいのが特徴で、1日に数回~10回以上生じる場合が多いです。
また、他のノロウイルス感染症の症状が1~2日ほどで治まるのに対して、腹痛や下痢の症状は4~5日続くので注意が必要です。
なお、ノロウイルスによる下痢は、基本的には血便になることはありません。もし便に血が混じっている場合は、他の胃腸炎の疑いがあります。

ノロウイルス感染者の便は大量のノロウイルスを含んでいるため、他者が触れることの無いよう気を付けましょう。

ノロウイルス感染によって起こる「発熱」

ノロウイルス性の発熱は、インフルエンザなど他のウイルス性の発熱と比べると軽微な場合が多く、基本的には37〜38℃の発熱が1~2日の間続くという場合が多いです。
また、発熱にともない、頭痛や悪寒、体のだるさなどの症状も併発するというケースもあります。

ノロウイルス感染によって起こる「吐き気や嘔吐」

吐き気や嘔吐症状については、基本的には1~2日間継続し、1日数回~10回以上生じることが多いです。嘔吐物は消化前の食べ物や飲み物、緑色の胆汁が混じるという場合もあります。

そして、ノロウイルスによる嘔吐の大きな特徴は、急に吐き気があらわれるということです。そのため、トイレに行くのが間に合わずにその場で嘔吐してしまうというケースが多くなります。
便と同様に、ノロウイルス感染者の嘔吐物には大量のノロウイルスが混じっています。そのため、嘔吐物にも直接触れないように注意しましょう。

適切な汚物処理の方法

ノロウイルスが感染・増殖する部位は小腸と考えられています。したがって、嘔吐症状が強いときには、小腸の内容物とともにウイルスが逆流して、吐ぶつとともに排泄されます。
そのためノロウイルス感染者の便や嘔吐物にはとても多くのウイルスが含まれているため、正しく処理を行わないと感染のリスクが非常に高まってしまいます。便や嘔吐物の処理は、以下のように状況に合わせて正しく処理をしてください。

用意するもの:使い捨てのビニール袋、ビニール手袋、マスク、ペーパータオル(もしくは雑巾)、0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム消毒液

0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方:作成例)濃度1000ppmの次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方は、500mlペットボトルに満タンの水を入れ、キャップ2杯分の原液濃度5%の塩素系消毒剤を入れてよく振って混ぜて作ります。

なお、消毒液は時間が経つにつれて効果が薄くなっていくので、極力作り置きをせず、使う時に必要な量だけ作るようにしてください。

床などの便・嘔吐物の処理

  1. 二次感染を防止するため便・嘔吐物のある場所には処理をする方以外は近づかせず、窓を開けて換気するようにします。
  2. 処理をする方は体に便・嘔吐物が付着しないよう、使い捨てのビニール手袋・マスクを着けます。
  3. 便・嘔吐物は使い捨てのペーパータオルや雑巾などで外側から内側に向けて、飛沫が飛ばないように静かに拭き取ります
  4. 拭き取る際に使用したペーパータオルや雑巾などはビニール袋に入れて処理します。その後ビニール袋には0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム消毒液を入れます。
  5. 便・嘔吐物があった場所やその周辺は、0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム消毒液を浸したペーパータオルなどで5分ほど覆って消毒します。
  6. 使用したマスクやビニール手袋をビニール袋に入れて処理します。このとき、ウイルスの拡散を防ぐため、ビニール手袋は裏返すように脱ぎ、表面を触らないようにして口をしっかりと縛りましょう。
  7. 処理を終えたら石鹸でしっかりと手を洗い、手指消毒を行いましょう。

ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、吐ぶつやふん便は乾燥しないうちに床等に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら十分に喚気を行うことが感染防止に重要です。

トイレの消毒

  1. 便座や床を0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム消毒液を浸したペーパータオルなどで5分ほど覆って消毒します。 また、便座の蓋やトイレのドアノブなど触れる機会の多い場所も次亜塩素酸ナトリウムで消毒するとよいでしょう。
  2. 使用したペーパータオル・マスク・ビニール手袋をビニール袋に入れて処理します。ビニール袋には0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム消毒液を入れておくとよいでしょう。 
  3. 処理を終えたら石鹸でしっかりと手を洗い、手指消毒を行いましょう。

おむつの処理

  1. 二次感染を防止するためビニール手袋・マスクを着用し、窓を開けて換気するようにします。
  2. お尻拭きなどで、体に付着している便や尿を丁寧に拭き取ります。皮膚が炎症を起こす可能性があるので、体を直に次亜塩素酸ナトリウム消毒液で浸したペーパータオルなどで拭くのは厳禁です。
  3. 交換したおむつや便や尿を拭き取ったお尻拭きは床やテーブルなどには置かずに、ビニール袋に入れて処理します。その後ビニール袋には0.1%(1000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム消毒液を入れます。 
  4. 処理を終えたら石鹸でしっかりと手を洗い、手指消毒を行いましょう。

汚物が衣類や寝具についてしまった場合の対処方法

洗濯機で汚物が付着した衣服や寝具をそのまま洗ってしまうと、洗濯槽内にウイルスが付着してしまい、ウイルスが拡散してしまう危険があるので避けるようにしましょう。
ノロウイルスに汚染された衣類や寝具を洗濯する方法としては、「塩素系漂白剤で消毒する」もしくは「熱湯消毒する」の2パターンがあります。

塩素系漂白剤で消毒する場合

用意するもの: 使い捨てのビニール手袋、マスク、塩素系漂白剤(キッチンハイターなど)、洗濯桶(もしくはバケツ)、キッチンペーパー、洗濯洗剤

  1. 二次感染を防止するため、ビニール手袋、マスクを装着します。
  2. 洗面桶(もしくはバケツ)に水と塩素系漂白剤を入れて0.1%(1000ppm)消毒液を作ります。
    ※水1Lに対して塩素系漂白剤5ml(200倍)に薄まるように洗面桶に投入します。
  3. 汚染された嘔吐物をキッチンペーパーで拭き取ります。飛沫感染の恐れがあるため、乾燥する前に必ず取り除きましょう。
  4. 拭き取ったキッチンペーパーはビニール袋に入れて密閉し処分します。
  5. 水で薄めた塩素系漂白剤の中に衣類を入れ、30分付け置きをします。
  6.  つけ置きが終了した後は、洗濯機に入れ通常通り洗濯洗剤で洗濯をしましょう。
    ※この際に他の洗濯物と一緒に洗濯をしてしまうと、色落ちの原因になってしまうため、汚物で汚れてしまった衣類のみ洗濯を行うようにしましょう。

最後に、使用したビニール手袋やエプロンは袋に入れ密閉した状態で処分します。

熱湯で消毒する場合

用意するもの: 使い捨てのビニール手袋、マスク、洗濯桶(もしくはバケツ)、キッチンペーパー、洗濯洗剤

  1. 二次感染を防止するため、ビニール手袋、マスクを装着します。
  2. 汚染された嘔吐物をキッチンペーパーで拭き取ります。飛沫感染の恐れがあるため、乾燥する前に必ず取り除きましょう。
  3. 洗面桶(もしくはバケツ)に85℃以上のお湯を注ぎ、1分以上浸けます。
  4. 浸け終わった後は、バケツのお湯を一回捨ててよく洗ってから洗濯洗剤でもみ洗いをします。

参考:厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A
   ノロウイルスの感染を広げないために!! – 大阪府

ノロウイルス感染症に初期症状はあるの?

ノロウイルス感染症に初期症状があれば早めに対処が出来そうですが、残念ながらノロウイルス感染症は分かりやすい初期症状というものがなく、急激に体調が変化する場合が多いです。

特に、ノロウイルス感染症による吐き気や嘔吐は、何の前触れもなく起こるケースが多いので、冬場にそのような症状があらわれた場合は、ノロウイルス感染症を疑った方がよいでしょう。
また、吐き気や嘔吐以外の症状についても、ノロウイルス感染者との接触後2日以内に体調の変化があった場合は、ノロウイルス感染症の可能性が高いと言えるでしょう。

受診のタイミングは?

ノロウイルスには抗ウイルス剤がなく、治療法としては自然治癒能力を高めて症状を軽減する対症療法を行うというのが一般的です。
また、ノロウイルスによる症状は、長くても1週間ほどで治まるため、健康な成人の場合は病院で受診する必要性は低いでしょう。
しかし、小さな子どもや高齢者の場合は症状の重篤化の危険性が高いため、できる限り病院で受診をした方がよいでしょう。

受診の目安

一般的には、次のような症状が現れた場合、受診をするようにしましょう。

・激しい腹痛の症状がある
・下痢が2~3日間ほど続いている
・嘔吐が半日以上続く
・脱水症状がある(のどや口の渇きなど)
・体力がなく、脱力感がある
・ 2~3日間ほど高熱が続いている など

血便症状や高熱症状のみの症状はノロウイルスの症状としてあらわれるというケースが少なく、他の病気を発症している可能性も考えられるため、これらの症状があらわれた場合には、ノロウイルスが疑われない場合でも病院にて診察を受けた方がよいでしょう。

受診をする際のポイント

ノロウイルス感染症の疑いで病院で診察を受ける際には、現在の症状などについての問診を受ける必要があります。
その際は、スムーズな診察を受けるためにも、医師が正しく診察するためにも、次のようなことを伝えるとよいでしょう。

・いつから症状(下痢・嘔吐・腹痛・発熱など)が出現したか
・嘔吐・下痢の回数や性状
・周囲に同様の有症状者がいないか
・食歴(生もの等摂取していないか) など

基本的には基本的にはお近くの消化器科や内科に連絡して受診すればよいですが、脱水症状などがひどいなど症状が重篤化している場合には、迷わずに救急車を要請してください。

ノロウイルス感染の注意ポイント

高齢者や小児では重症化する可能性がある

健康な成人がノロウイルスに感染した場合、基本的には1~2日ほどで症状が治まるのですが、高齢者や小さな子どもがノロウイルスに感染した場合、症状が重症化してしまう可能性があります。

免疫力が低い高齢者や小さな子どもは下痢や嘔吐などから脱水症状へとつながる危険性が高いです。
脱水症状が重度になると、けいれんや意識障害などの症状が起こる可能性があるので、それらの症状を防ぐためにも、高齢者や小さな子どもには特に注意してこまめな水分補給をさせる必要があります。

免疫力の他に、高齢者や小さな子どもはものを飲み込む力が弱いため、嘔吐物を喉に詰まらせてしまうことで窒息してしまう可能性があります。症状が少し落ち着いた時に、少しずつ水分補給を行ってください。
特に、乳幼児の場合、授乳によって吐き戻しをしてしまう可能性もあるので注が必要です。
高齢者や小さな子どもがノロウイルス感染症を患った場合には、周囲の人が定期的に様子を見るということも大切です。

接触予防策を徹底し、二次感染を予防する

ノロウイルスは非常に感染力が強いため、家庭や学校、職場などにノロウイルス感染者が出てしまった場合には二次感染に注意しなければなりません。

二次感染を防ぐためには、学校や職場に行く際にはマスクをする、ドアノブや手すりなど多くの人が触れる機会の多い場所に触った後はしっかりと手洗いをするなどの予防策を徹底することが大切です。
また、ノロウイルス感染者の便や嘔吐物には大量のノロウイルスが混じっているため、極力触らず近づかないよう注意しましょう。

ノロウイルスの感染拡大を防ぐためには、自分が感染者になってしまった場合も、感染者が身近に出てしまった場合も、ウイルスを持ち込まない・移さないことが大切です。
特に家庭内に小さなお子さんや高齢者がいる場合、また、子どもや高齢者と関わるような仕事に就いている方は、徹底して感染の予防を行いましょう。

家庭内で二次感染を防ぐためには?

ノロウイルスはノロウイルス感染者の便や嘔吐物などを介して感染が拡大するため、特に家庭内での二次感染が起こりやすくなります。
二次感染のリスクを最小限に抑えるために、次のようなポイントを意識することが大切です。

石鹸を使った手洗いをしっかり行う

石鹸を使った手洗いはノロウイルスの予防策として十分な効果があります。

家庭内での二次感染の原因としては、感染者が触れたドアノブや手すりに触れることでノロウイルスが手に付着し、ウイルスの付着した手で食事などを行うことで感染するというケースが多いです。
手洗い用の石鹼にはノロウイルスを死滅させる効果はありませんが、手に付着したウイルスを洗い流すという点では、石鹼を使った手洗いは非常に効果的です。

手を洗う際には石鹼を十分に泡立てて、指を1本ずつ丁寧に洗いましょう。
また、指や爪の間、手の甲、手首なども入念に洗うようにしてください。蛇口にウイルスが付着している可能性もあるので、手を洗う際には蛇口も一緒に洗うようにしてください。
手洗い後は清潔なタオルや使い捨てのペーパータオルでしっかりと手を拭くようにしましょう。
感染者のいるご家庭では、タオルの共有はNGになります。

手洗いは帰宅後やトイレの後だけでなく、料理の前や食事の後、おむつ交換の後などこまめに行うことで、より二次感染のリスクを下げることができます。

食品は十分に加熱する

ノロウイルス感染症を患った方が調理を行う場合、手洗いを徹底していても食品の中にノロウイルスが混入してしまう可能性があります。
ノロウイルスは10~100個ほどの少量でも感染症を発症させてしまうほどの感染力があるので、食品内に混入したノロウイルスを失活させるためにも、食品は十分に加熱することが大切です。

ノロウイルスを失活させるためには、食品の中心部が85℃~90℃ほどの状態で90秒間以上の加熱が必要とされています。
また、二次感染を防ぐためにも、家庭内にノロウイルス感染者がいる場合は、極力生ものや低温調理食品は控えた方がよいでしょう。

使用後の調理器具や食器類は消毒する

使用後の調理器具や食器類にはノロウイルスが付着している可能性があります。
特に箸やスプーンなど口に含むものにノロウイルスが付着した場合は、二次感染のリスクが非常に高まるので、使用後に消毒するというのはとても重要です。

食器類や、ふきんなどの耐熱性のある器具は、85℃~90℃ほどの熱湯の中に入れ、1分以上加熱することで、ノロウイルスを失活させることができます。
耐熱性のないものやまな板など大きいものについては、食器用洗剤で洗った後、濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム消毒液で10分ほど浸すようにして消毒し、その後水拭きしましょう。
調理器具や食器の消毒の際は食器洗い用のスポンジや蛇口も一緒に消毒することで、二次感染のリスクを抑えられる可能性が高まります。

もし食器を洗うのが大変という場合には、一時的に使い捨てのお皿やスプーンなどで食事をとるというのも一つの手です。

入浴のタイミング

浴室や浴槽は、体に付着したノロウイルスが滞在しやすいので、ノロウイルス感染者の入浴は1番最後にするのがベストです。
また、浴槽に浸かる前にはお尻をしっかりと洗いましょう。
ノロウイルス感染者の入浴が終わった後は、浴槽や蛇口、ドアノブなどを熱湯または200ppmの次亜塩素酸ナトリウム消毒液でしっかりと消毒しましょう。

参考:厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A

ノロウイルス感染中の自宅ケア方法

ノロウイルス感染中は基本的には自宅療養となるため、自宅でのケアが必要となります。症状を悪化させないためにも、次のようなポイントを意識することが大切です。

こまめな水分補給

ノロウイルス感染症は、下痢や嘔吐などの症状にともない、脱水症状を引き起こす危険性があります。
基本的にはのどや口の渇きなど軽度な症状で治まることが多いですが、重篤化すると、けいれんや立ちくらみ、意識障害などを引き起こす場合があるので、水分補給はこまめに行うように心がけましょう。
また、下痢や嘔吐によって、水分だけでなく体内のミネラルも排出されてしまうので、水分補給の際は、ただの水ではなく経口補水液を摂取するのがよいでしょう。

食事は少量を複数回に分ける

ノロウイルス感染中、特に嘔吐症状がひどい場合は、一度に大量の食事をとると吐き気を催す場合や胃腸への負担になってしまう可能性がありますので、食事は複数回に分けて少しずつとるのがよいでしょう。
また、感染中は消化管の機能が弱まっているため、うどんやおかゆなどの消化の良い食べ物をとるのがベストです。

下痢止めは極力使わない

下痢の症状があらわれた場合、下痢止めを服用したいと思うかもしれませんが、下痢を止めてしまうと、腸内のノロウイルスを排出しづらくなってしまうため、まずは下痢止めではなく整腸剤を服用して様子をみることをおすすめします。
ただし、症状がひどい場合は医師の診察を受けて判断しましょう。

受診後の過ごし方

基本的に受診後は自宅での療養となります。自宅療養の際は特に脱水症状に注意して、こまめな水分補給をするように心がけましょう。
また、症状が悪化した際には、病院で処方された薬や市販の吐き気止めなどを服用することで、症状が緩和します。
ただし、市販の下痢止めは、病気の治りを遅くさせてしまう可能性があるので、使用しないほうがいいでしょう。もしおなかの調子が悪化するようなら整腸剤を服用してください。

ノロウイルスの症状は基本的には1~2日ほどで治まりますが、最長で1週間ほどは便と一緒にウイルスが体外に排出されるため、感染が拡大しないためにも、こまめな手洗いうがいや消毒などの感染拡大の対策をする必要があります。

学校や保育園、職場復帰はいつから可能か?

インフルエンザなどの感染症と違い、ノロウイルス感染症は、学校保健安全法による学校への出席を停止すべき期間の基準というものが定められていません。
ただし、ノロウイルスも感染拡大の危険性があるため、保育園や学校、医師の判断により出席停止となるケースがあります。
社会人の場合も同じように出勤停止の判断が下されることがあります。

ノロウイルスに感染した場合は自己判断で出席や出勤をせずに、学校や職場に相談して判断してもらうのがよいでしょう。

まとめ

通年で発生数はあるものの、冬場にピークを迎えるノロウイルス。
感染経路も多く、特に家庭内での二次感染も多いため、「高齢者や乳幼児」のご家族がいる方は特に細心の注意を払って消毒や手洗いを徹底するようにしていきましょう。