インフルエンザとは?原因・症状・治療方法について解説|【医師監修】

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/02/05
このページでは、インフルエンザの原因・症状・治療方法についてお伝えしています。
目次

インフルエンザとは?

毎年冬になると必ずと言っていいほど流行するインフルエンザですが、ウィルスが少しずつその性質を変えながら「変異」しているために、いつも同じ症状が出るとは限らないのが困ったところです。

また、「一般のかぜ」と呼ばれるものよりも症状が強く、体調が悪い時や基礎疾患があれば重症化するリスクも伴う病気です。

インフルエンザは人から人へうつる感染症ですので子どもから大人まで感染は広がりを見せます。

感染対策をしなければ周りの人にも知らないうちに感染を広げることになります。

ここでは、インフルエンザがどのような性質を持っている病気なのか、その症状や治療法、インフルエンザにかかったらどうしたら良いか、日頃の手洗いやうがい、咳エチケットなどの予防法に加え、インフルエンザワクチン接種についての感染予防についても幅広く説明していきます。

毎年流行るからこそ、予防法を知って感染を回避し、感染してもまわりに広げないインフルエンザと戦う方法をそれぞれが身につけておきたいですね。

インフルエンザとは、インフルエンザウィルスを病原体とする気道の感染症のことです。

気道とは、鼻や口の入り口から始まり、喉や気管を通り気管支で細かく分岐し肺に通じている空気が行き来をする道のことを言います。

インフルエンザは一般的なかぜ症候群と分けて考えるべきであるとされ、感染すると「一般のかぜ」より症状が重くなりやすい病気です。

「一般のかぜ」と呼ばれるものは、正式名称はかぜ症候群と言われています。

インフルエンザウィルスのようにウィルスや細菌感染が原因で起こる、鼻から喉までの急な痛みや炎症による症状が出現します。

同じウィルスというくくりに分類されていますが、インフルエンザウィルス感染による症状は、かぜ症候群を起こすウィルスたちよりも強い症状を呈することがわかっているため、インフルエンザは他のかぜと区別されて対策されていることが多いのです。

​​毎年、世界各地で大なり小なりインフルエンザの流行がみられます。

温帯地域より緯度の高い国々での流行が冬季にみられ、北半球では1~2月頃、南半球では7~8月頃が流行のピークとなります。

熱帯・亜熱帯地域では、雨季を中心としてインフルエンザが発生します。

日本でのインフルエンザの発生は、毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月にかけて減少していくパターンを示します。

インフルエンザの流行の程度とピークの時期はその年によって異なります。

インフルエンザの流行の大きい年には、インフルエンザ死亡者数および肺炎死亡者数が著しく増えます。

さらには循環器の病気を始めとする様々な慢性の基礎疾患を死因とする死亡者数も増加し、結果的に全体の死亡者数が増加することが明らかになっています。

そして高齢者が重症化の影響を受けやすいこともわかっています。

インフルエンザウイルスにはA.B.Cの3つの型があります。

流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。

とくにA型では、様々な組み合わせを持つウイルスが、人以外にも豚や鳥など、その他の宿主に広く分布していて、世界中にパンデミックを起こすほどの大きな感染はこのA型インフルエンザによるものです。

インフルエンザは、数年から数十年ごとに世界的な大流行が見られます。

インフルエンザの中に突然別の、少しだけ違うウイルスが現れて、今までのウイルスにとって代わってしまうことによって起こります。

一方、少しだけ変わったウィルスの中でも、ウイルス遺伝子に起こる突然変異の蓄積によって、抗原性が少しずつ変化します。

インフルエンザウイルスでは、このウィルスが少しずつ変化する状態が頻繁に起こるので、毎年のように流行を繰り返し起こすのです。1)

症状は?

インフルエンザの症状にはどんなものがあるのでしょうか。

インフルエンザの症状は、A型またはB型インフルエンザウイルスの感染を受けてから、1~3日間ほどの潜伏期間があります。

その後、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などの症状が突然現われます。

発熱は、通常38℃以上の高熱になることが多いようです。

咳、鼻汁などの上気道炎症状もこれらの症状に続いて現れます。

約1週間ほどでよくなってくるのが典型的なインフルエンザの経過です。

いわゆる「一般のかぜ」に比べて、全身に現れる症状が強いのがインフルエンザの症状の特徴です。1)

重症化する危険の高い人は?

インフルエンザを発症した中でも、重症化する可能性の高い人はどんな人でしょうか。

高齢者や、年齢を問わず、呼吸器、循環器、腎臓に慢性的な病気を持つ方、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が下がっている方では、もともと持っている病気の悪化とともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなることが知られていて、入院や死亡の危険が増加します。

小児では中耳炎を合わせて起こしたり、熱性けいれんや気管支喘息を誘発したりすることもあります。

近年では、幼児を中心として、インフルエンザが原因で急激に悪化する急性脳症であるインフルエンザ脳炎が増えることが明らかとなっています。

厚生労働省による「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」(班長:岡山大学医学部森島恒雄教授)で行った調査によると、毎年50~200人のインフルエンザ脳症患者が報告されており、その約10~30%が死亡しています。

1)

新生児とは、出生後4週未満の子ども

乳児とは、生後4週以上、1歳未満の子ども

幼児とは、1歳以上7歳未満の子ども

小児とは、7歳以上15歳未満の子ども

インフルエンザの異常行動に関する関連死

インフルエンザにかかると、抗インフルエンザ薬の服用の有無や種類に関わらず、異常行動に関連すると考えられる転落死等が報告されています。

抗インフルエンザでは過去服用後、異常行動による事故死が増え、その薬剤の使用が中止になったことがありました。

しかし、抗インフルエンザ薬を用いても用いなくても異常行動が起こるとされ、厚生労働省より注意喚起されています。

異常行動の特徴は

  1. 就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多い。

     

    (女性でも発現する)

  2. 発熱から2日間以内に発現することが多い。

ということが知られています。

<異常行動の例>

  • 突然立ち上がって部屋から出ようとする。
  • 興奮して窓を開けてベランダに出て、飛び降りようとする。
  • 人に襲われる感覚を覚え外に走り出す。
  • 突然笑い出し、階段を駆け上がろうとする。
  • 自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない。
  • 変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る。

などが挙げられます。

そのため、そういった異常行動があらわれた時に、事故を防止するために注意して観察して欲しい点と、実施して欲しい対策があります。

<注意点>

発熱から少なくとも2日間は、就寝中を含め、特に小児・未成年者が容易に住居外へ飛び出さないようにする。

<対策>

  • 玄関や全ての部屋の窓を確実に施錠する。

    (内鍵、チェーンロック、補助鍵がある場合は、その活用を含む。)

  • 窓に格子のある部屋がある場合は、その部屋で寝かせる。
  • ベランダに面していない部屋で寝かせる。
  • 一戸建てにお住まいの場合は、できる限り1階で寝かせる。

といったことを注意して実施していきましょう。11)

治療は?

インフルエンザの治療にはどんなものがあるのでしょうか。

インフルエンザの治療には主に抗インフルエンザ薬と症状緩和としての内服治療があります。

抗インフルエンザ薬のノイラミニダーゼ阻害薬とキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬といわれる薬が日本では使用されています。

ノイラミニダーゼ阻害薬はインフルエンザA型B型のどちらにも有効で、耐性も比較的できにくく、副作用も少ないとされており、発病後2日以内に服用すればインフルエンザによる症状を軽くするとともにインフルエンザにかかっている時期を短くすることに効果があります。

ノイラミニダーゼは、ウイルス自身が感染細胞から外へ出て行く際に、ウイルスを細胞から遊離させるものですが、いくつかの抗インフルエンザ剤は、このノイラミニダーゼを阻害することでウイルス感染細胞から次の細胞への感染拡大を阻止しています。

ノイラミニダーゼは、抗ウイルス剤のターゲットとして現在注目されているものです。

キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬は、新しい作用機序をもつ抗インフルエンザウイルス薬です。

ノイラミニダーゼ阻害薬とは効きかたが違います。

既存薬がウイルスの細胞外への拡散を阻止するのに対し、この薬は細胞内での増殖を直接阻害します。

ウイルス排出もより早く抑制されます。

2009年に流行したA型インフルエンザを含め、A型およびB型インフルエンザに適用可能です。

既存の薬耐性ウイルス、新型インフルエンザウイルスに対する有用性も期待できそうです。

治療上の影響なども今後の課題になるかもしれません。

内服方法が簡単で錠剤を1回分飲んで完了なのが特徴です。

治療効果は今までの抗インフルエンザウィルス薬とだいたい同じで、罹病期間が1~2日短縮します。

安全性が高くこれといった副作用もないうえ、予防投与も可能になりました。

しかし高齢、持病があるなどの重症化リスクが高い人が対象となっています。

ノイラミニダーゼ阻害薬

  • タミフル(一般名:オセルタミビルリン酸塩 中外製薬)
  • リレンザ(一般名:ザナミビル水和物 グラクソ・スミスクライン)
  • ラピアクタ(一般名:ペラミビル水和物 塩野義製薬)
  • イナビル(一般名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 第一三共)
  • オセルタミビル(一般名:オセルタミビルリン酸塩 沢井製薬)

キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

  • ゾフルーザ(一般名:バロキサビル マルボキシル 塩野義製薬)

また小児では、熱や痛み止めに使用されるアスピリンが原則的に使ってはならない薬とされているので知っておいてください。

ライ症候群という病気を引き起こすきっかけになる恐れがあるからです。

ライ症候群は非常にまれな病気ですが、脳の炎症や腫れと、肝機能の低下や機能不全となり生命を脅かすことがあります。

ライ症候群の原因は不明ですが、一般的には、インフルエンザまたは水痘などのウイルス感染症の後にみられ、特に感染症にかかってる間にアスピリンを服用した小児によくみられます。

このようにアスピリンは、ライ症候群のリスクを高めるため、一部の特定の病気(若年性特発性関節炎や川崎病)にかかっている場合を除いては、小児への投与は勧められません。

今ではアスピリンの使用が減ったため、ライ症候群を発症するのは年に2人程度となっています。

また、インフルエンザ脳症の悪化因子として、非ステロイド系解熱剤のうちジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸は同じく小児には基本的に使用しないようにとされています。

解熱剤が必要な場合は、なるべくアセトアミノフェンを使用しましょう。

肺炎や気管支炎を併発して重症化が予想される方に対しては、これらの合併症を予防するために、抗菌薬の投与が行われることがあります。

インフルエンザ脳症の治療に関しては確立されたものはなく、臨床症状と重症度に応じた専門医療機関での集中治療が必要になります。

このようにインフルエンザの治療には、抗ウィルス薬や症状緩和のための対症療法で対応していきます。9)

インフルエンザかなと思ったら

もし、インフルエンザにかかったと思ったらどうしたらよいのでしょうか。

インフルエンザにかかったと思ったらいつ受診するのがよいのか、何に注意するべきなのか、療養期間はどれくらいなのか知る必要があります。

まずは近くにある内科・小児科を受診しましょう。

受診のお出かけの際には、周りの人にうつさないよう、マスクをして行くと良いでしょう。

突然の症状で困らないように、普段からかかりつけ医を見つけておくことも大切です。

受診のタイミング

では、インフルエンザの受診のタイミングはいつになるのでしょうか。

インフルエンザにかかる目安としては、比較的急速に38℃以上の発熱があり、咳やのどの痛みがあり、全身の倦怠感を伴う場合はインフルエンザに感染している可能性があります。

こういった症状がある場合は受診のタイミングですので早めに医療機関を受診しましょう。

お年寄りやお子さん、妊婦さん、持病のある方、そして下記のような重症化のサインがみられる場合には、すぐに医療機関を受診してください。

<重症化のサイン>

お子さん

  • けいれんしたり呼びかけにこたえない
  • 呼吸が速い
  • 苦しそう
  • 顔色が悪い(青白)
  • 嘔吐や下痢が続いている
  • 症状が長引いて悪化してきた

大人

  • 呼吸困難、または息切れがある
  • 胸の痛みが続いている
  • 嘔吐や下痢が続いている
  • 症状が長引いて悪化してきた

お子さんでは特に「いつもと違う」状態をよく観察し注意しましょう。

持病のある方はあまり様子をみずに悪化してきた段階で早めに受診するようにしましょう。

インフルエンザにかかった時注意すること

インフルエンザにかかった時に注意すべきことはどんなことでしょうか。

それは「他の人にうつさない」ことです。

同居する他の家族、特に重症になりやすいお年寄りなどにはなるべく接触しないよう心がけ、 患者さんはできるだけ他の家族と離れて静養しましょう。

  • 感染予防のため、1時間に1回程度、短時間でも、部屋の換気を心がけましょう。
  • せきが出るときは、患者さんはマスクをつけましょう。
  • 家族が患者さんと接するときには念のためマスクを着用し、お世話の後は、こまめに手を 洗いましょう。
  • 熱が下がったあとも、2日程度は他の人にうつす可能性があります。
    熱が下がって症状 が治まっても、2日ほど学校に行かないようにし、自宅療養することが望ましいでしょう。

しかしインフルエンザの感染力はとても強く、このような対策を行っていても家庭内の誰かにうつってしまうことがあります。

家族のひとりひとりがインフルエンザ対策に取り組むことが大切です。

薬は医師の指示に従って正しく服用しよう

インフルエンザの治療には、抗インフルエンザウイルス薬というものがあります。

薬は医師が必要と認める場合にのみ処方されますので、処方されたら指示に従って服用してください。

症状がある間は水分の摂取も必要です。

汗をかいたときや脱水症状の予防のためにもこまめに水分を補給しましょう。10)

自宅療養期間を守ろう

インフルエンザの診断を受けたら、自宅療養が必要になります。

その期間は医師の指示する療養期間の指示に従いましょう。

一般的には発症後5日、かつ解熱後2日とされています。

3~7日は排菌している可能性があるため、自宅待機をしましょう。

また、注意が必要なのは「発症後5日間」とあれば、発症の翌日を1日目と数えることになります。

発症とは発熱の症状が現れたことを指すため、発熱がみられた当日は数えません。

また、解熱後2日間についても同様に、解熱の翌日を1日目と数えます。

なお症状が重く、なかなか平熱に下がらなかった時は、発症後5日間が経過していても、「解熱後2日間」が経ってからの療養期間の終了となります。

学校、保育園、幼稚園では学校保健安全法では、インフルエンザの出席停止期間の基準が「解熱後2日を経過するまで」から「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」と変わりました。

発症した日からかぞえると、6日間の出席停止が必要ということになります。

その後は、解熱した日によって出席停止日が延期されていきます。 8)

なお、それぞれの学校、保育園、幼稚園の取り決めで多少日数の取り決めも違うかもしれないので、そこは登校、登園している園に確認する必要があります。

登校、登園に関して必要な書類が必要になる場合もありますのでそちらも合わせて確認しておきましょう。

予防方法は?

では、インフルエンザにかからないようにするためにはどうしたらよいのでしょうか。

インフルエンザを予防する方法としては、外出後のうがいや手洗いをすること、体調のコントロールをすること、適度な保温と加湿をすること、インフルエンザの流行期には人込みを避けること、それが避けられない場合などにはマスクを着用すること、ワクチン摂取を行うこと、などが大切です。

その予防法をひとつずつ説明していきます。

手洗いとうがい

手洗いやうがいは、手やのどなどの体に付着したウイルスを退治するために効果があるといわれています。

インフルエンザに限らず、感染症予防の基本となります。

外出先から帰宅したら必ず手洗いうがいをしましょう。

・手の洗い方

  1. 流水でよく手を濡らした後、石けんをつけ、手のひらをよくこすります。
  2. 手の甲をのばすようにこすります。
  3. 指先・爪の間を念入りにこすります。
  4. 指の間を洗います。
  5. 親指と手のひらをねじり洗いします。
  6. 手首も忘れずに洗います。
  7. 石けんで洗い終わったら、十分に水で流し、清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き取って乾かします。

※手洗いの前に

  • 爪は短く切っておきましょう。
  • 時計や指輪ははずしておきましょう。4)

保育園や幼稚園では手洗いの歌があり、手洗いの工程が歌詞になっていて、手洗いの際に歌を歌いながら手を洗い、歌を歌い切ると上記の項目全てが手順通りに実施できるようになっています。

最近ではyoutubeで手洗い動画もあり、芸能人が手洗いの歌をつくり配信したりしていますね。

お気に入りの手洗いの歌をみつけて実施すると、手洗いの手順を頭で覚えるより楽しく早く自然に実施できると思うので試してみるのも良いですよ。

・うがい

うがいを行うと、口腔内にいるウイルスや細菌などを洗い流して減らし、インフルエンザやかぜを予防する効果があります。

口に含んでグシュグシュして2~3回洗い、次に上を向いて10秒くらいかけゴロゴロとしたうがいを数回繰り返します。

イソジンなどの消毒液は入れすぎると粘膜を弱らせ、逆効果になることがあるので注意しましょう。

コップ1杯に対し数的で十分効果がありますので、用法用量をよく読んで使用するようにしてください。

免疫力をあげるor普段の健康管理

​​インフルエンザは身体の免疫力が弱っていると感染しやすくなります。

感染したときに、体調が悪いと症状が重くなってしまうおそれもあります。

インフルエンザの流行期には特に普段の生活を見直し、充分な睡眠とバランスのよい食事を心がけ、免疫力を高めておきましょう。

適度な保温と加湿

空気が乾燥すると、鼻やのどの粘膜が乾燥することによって、体の防御機能が低下してインフルエンザウイルスに感染しやすくなります。

また、夏場の冷房や冬の寒さなどで体が冷えると、血液循環が悪くなることによって、身体の中にウイルスが侵入しやすくなります。

室内の温度や湿度を適度に保って、感染しにくい環境を整えましょう。

人ごみ・繁華街への外出を控える

人の多く集まる場所では感染のリスクが高まります。

学校や職場のほか、ショッピングセンターや繁華街などの人混みで感染することが多いため、インフルエンザの流行している時期は、不要な外出は避けたほうが安心です。

やむを得ず出かける場合は、マスクを着用したり、なるべく短時間ですませるように心がけましょう。

インフルエンザワクチン接種

インフルワクチンを接種することで発症を抑えます。

インフルエンザのワクチンは、不活性化ウイルスを体内に接種することで、抗体がつくられるものです。

ワクチンは毎年、世界各国での流行状況などをみて、国内での流行を予測して作られていますが、接種すれば絶対にかからないというわけではありません。

ただしかかった場合には、重症化したり肺炎などの合併症が起こったりすることを、予防する効果が期待できるといわれています。

とくに、乳幼児や高齢者、呼吸器や心臓、腎臓などに持病のある人、そのご家族にはワクチンの接種をおすすめします。

以下の項目で詳しくワクチン接種について説明していきます。10)

インフルエンザワクチンとワクチン接種について

日本で毎年行われるインフルエンザワクチンはどのようなものなのでしょうか。また接種はどのようにしたらよいのでしょうか。

インフルエンザワクチンについて、予防接種の効果、接種する回数や時期、接種した後の効果の持続期間、接種後の副反応や注意点、妊婦の接種についてもひとつずつ説明していきます。

現在、日本で用いられているインフルエンザワクチンは不活化HAワクチンです。

感染や発症そのものを完全には防御はできないものの、重症化や合併症の発生を予防する効果は証明されており、高齢者に対してワクチンを接種すると、接種しなかった場合に比べて、死亡の危険を1/5に、入院の危険を約1/3~1/2にまで減少させることが期待できることが実証されています。

  • インフルエンザウイルスA型株(H1N1株)
  • インフルエンザウイルスA型株(H3N2株)
  • インフルエンザウイルスB型株(山形系統株)
  • インフルエンザウイルスB型株(ビクトリア系統株)

これらの4つのウイルス型がそれぞれ選定されて、インフルエンザワクチンは作られ「4価ワクチン」となっています。

インフルエンザワクチンの予防接種の回数・間隔

インフルエンザワクチンの予防接種の回数・間隔は、日本式とCDC式によって異なります。

CDCは​​米国疾病管理センターとよばれる組織です。

米国の保健社会福祉省の主要下部機関の1つで、CDCにはいくつかの主要組織があり、これらの組織はそれぞれの専門分野で独立して活動する一方、それぞれの持つ資源と専門知識を組み合わせて様々な健康への問題に対処しています。

<日本式の場合>

日本式の場合は13歳を境に予防接種の回数・間隔に違いがあります。

その理由は、13歳以上であれば1回接種でも十分な抗体価の上昇が認められるからです。

特に、これまでのシーズンでインフルエンザワクチンの接種を受けている方は、1回の予防接種で2回接種したのと同じ程度の効果を得られるとされています。

13歳未満の方は、推奨予防接種の回数は2回とされています。

まだ免疫が十分ついていない13歳未満の方に対し、予防接種の回数を増やしブースター効果が得られることで、1回目の予防接種後よりも2回目の予防接種後の方が強い免疫を得られるためです。

また、インフルエンザの予防接種の間隔は、2〜4週間の間隔をあければ接種可能ですが、できれば3〜4週間の間隔をあける方が、より高い免疫の獲得が期待できると考えられています。

一方でCDC式の場合は9歳を境に予防接種の回数・間隔に違いがあります。

3歳から9歳未満の方は、推奨予防接種回数は2回とされています。

9歳以上の方の場合は、推奨接種回数は1回とされています。

ただし前年までに2シーズン以上のワクチン予防接種をしていれば、1回の予防接種で良いとされています。

2回予防接種する場合の予防接種の間隔は、20日以上の間隔をあけます。

どちらの方法を採用しているかは、それぞれのクリニックや病院で違います。

ホームページに記載されている場合もあるので確認してみてください。

インフルエンザの効果とは?

インフルエンザワクチンには、インフルエンザの合併症を減らし、重症化や死亡率をおさえる効果があります。

インフルエンザワクチンを接種しても、インフルエンザにかかることを完全に予防できるわけではありませんが、かかった後の症状が軽くなったり、合併症を抑える効果がある程度認められています。

また、インフルエンザは1週間程度で治る方がいる一方で、肺炎や脳症などの重症化により死亡される方もいます。

インフルエンザワクチンではその重症化を予防することができます。

国内の研究によると、65歳以上の方の重症化による死亡を抑える効果は約80%という高い結果が報告されています。

生後6ヶ月から3歳までの小児や、喘息の体質がある方、熱性けいれんを起こしたことがある方、てんかんなどのけいれんを起こす基礎疾患などがある方は、積極的に予防接種を受けるようにしましょう。

インフルエンザの効果が持続する期間とは

インフルエンザワクチンの効果が持続する期間はおよそ3〜5ヵ月であることが明らかになっています。

ウイルスの抗原型と予防接種の間隔・回数が適正だった場合には効果が持続します。

その効果にも個人差がありますが、概ねインフルエンザ流行の1シーズンの期間はワクチンの効果が期待できるでしょう。

インフルエンザの予防接種を受ける時期とは

日本の国内でのインフルエンザの流行は、通常では12月から4月の冬から春の季節といわれています。

また流行の立ち上がりは、年末年始であることが多く、流行のピークは例年では1月末から3月上旬の冬季に迎えます。

インフルエンザの流行初期に免疫をつけておきたい場合は、11月~12月にインフルエンザワクチンの予防接種をすることが望ましいです。

ただ、春にも流行することがあるので1月に受けても流行の後半の時期をカバーしてくれます。

インフルエンザに対する免疫効果は、予防接種後のおよそ2週間後からあらわれます。

予防接種2回目の場合においても、予防接種後のおよそ2週間後から免疫効果があらわれます。

一般的に2回接種する場合は、インフルエンザに対する免疫が十分にできるまでに4〜8週間程度かかると見込まれています。

2回目の接種は、ブースター効果により、さらに強く長い期間の免疫獲得が期待されます。

インフルエンザワクチンの予防接種の回数

インフルエンザワクチンは何歳から接種できる?

インフルエンザワクチンの予防接種は、生後6ヶ月から受けることが可能です。

インフルエンザワクチンには接種した以降の年の方が免疫の獲得の効果がより高くなるというプライミング効果というものがありますが、13歳未満の方の接種では、まだその効果が十分に発揮されないため、ワクチン接種をしても感染するケースもあります。

インフルエンザは低年齢での感染時に、熱性けいれんや肺炎の合併症などの重症化のリスクがあります。

そのため、もし接種していたのにもかかわらずインフルエンザにかかってしまったとしても、合併症の重症化のリスクを減らすことはできるため、ワクチン接種を受けておくことが望ましいと言えるでしょう。

インフルエンザの副反応について

インフルエンザの副反応は主に接種後の接種部位周辺の赤み、腫れ、痛みといった局所的な症状が一般的ですが、副反応には局所にあらわれるものと全身にあらわれるものがあります。

<局所にあらわれる可能性のある副反応>

  • 赤み、腫れ、紅斑
  • じんましん(盛り上がる赤みや強いかゆみを伴う皮疹)
  • かゆみ
  • 痛み

局所に現れる副反応は、予防接種を受けた方のおよそ10~20%にあらわれ、数日間続きます。

<全身にあらわれる可能性のある副反応>

  • 発熱
  • 頭痛
  • だるさ

全身に現れる副反応は、予防接種を受けた方のおよそ5~10%に発症し、通常2~3日まで症状が続きます。

しかし重度なものではアナフィラキシーショックと言われる重い症状があらわれることもあり、注意が必要です。

アナフィラキシーショックのアナフィラキシーとは、発症後とても短い時間のうちに全身にあらわれるアレルギー症状です。

このアナフィラキシーによって、血圧の低下や意識障害などを引き起こし、場合によっては命にかかわる危険な状態になることもあります。

この命にかかわる危険な状態になることをアナフィラキシーショックといいます。

主に、アレルギーの原因物質に触れる、食べる(飲む)、吸い込むことで引き起こされます。

アナフィラキシー症状は皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、循環器などや全身にあらわれます。

重度な副反応はインフルエンザワクチンの予防接種後15分以内に反応が起きることが多いため、インフルエンザワクチンの予防接種後のおよそ30分間は、経過を慎重に見るのが良いでしょう。

インフルエンザワクチン接種後の注意点

インフルエンザワクチンの予防接種による副反応は、だいたい24時間以内に発症することが多いので、予防接種後のおよそ24時間以内は体調をよく観察しましょう。

お風呂には入れますがこすらないようにしてください。

ワクチン接種の当日の激しい運動は避けましょう。

飲酒は注射部位が強く腫れる原因になるので控えましょう。

あまり高い熱や耐えられないほどの接種部位の強い腫れは強いアレルギー反応なので、接種した医療機関に相談してください。

妊婦のインフルエンザワクチン接種は?

インフルエンザワクチンの予防接種は、妊娠中または妊娠している可能性のある方、産後や授乳している方でも問題なく受けることができます。

社団法人日本産科婦人科学会の新型インフルエンザワクチンに対する要望には、以下のことが記されています。

  • 妊婦は新型インフルエンザに罹患すると重症化しやすく、また死亡率も高い可能性がある。
  • これまでの臨床試験から胎児に対する重大な影響は確認されていない。

また、公益社団法人日本産科婦人科学会と公益社団法人日本産婦人科医会による産婦人科診療ガイドライン(産科編 2020)では、以下の通り記されています。

  • 妊婦へのインフルエンザワクチンの予防接種はインフルエンザの予防に有効であり、母体および胎児への危険性は妊娠全期間を通じてきわめて低いと説明する。
  • インフルエンザに感染した妊婦・分娩後2週間以内の褥婦への抗インフルエンザウィルス薬投与は、重症化を予防する効果があると説明する。
  • インフルエンザ患者と濃厚接触した妊婦または分娩後2週間以内の褥婦への、抗インフルエンザウイルス薬予防投与は有益性があると説明する。
  • 以上を状況にあわせて説明し、希望する妊婦または褥婦にはインフルエンザワクチン予防接種あるいは抗インフルエンザウイルス薬投与を行う。

    7)

他の人にうつさないために咳エチケット

インフルエンザをはじめとして、咳やくしゃみなどの飛沫により他者に感染する感染症は数多くあります。

「咳エチケット」はこれらの感染症を他の人にうつさないために、個人が咳やくしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ・袖を使って口や鼻をおさえる方法のことを言います。

職場や学校、電車などの人が集まるところで実践することが大切で、ひとりひとりが日頃から飛沫を予防する習慣をつけましょう。

では、実際に咳エチケットの方法はどうしたら良いのでしょうか。

厚生労働省は、他の人への感染を防ぐため、「咳エチケット」をキーワードとした普及啓発活動を行い、マスクの着用や人混みにおいて咳をする際の注意点について呼びかけていますので、その方法を下記にご紹介します。

咳エチケットの方法

1.マスクを着用する。

咳・くしゃみが出る時は、他の人にうつさないためにマスクを着用しましょう。

マスクをつけるときは取り扱い説明書をよく読んで、正しくつけるようにしましょう。

マスクの大きさが顔に対して小さすぎたり、大きすぎたりすると、顔にマスクがフィットせず、予防効果が半減してしまいます。

マスクは、鼻から顎までが覆えて顔に添わせたときに隙間がないものを選びましょう。

※咳エチケット用のマスクは、薬局やコンビニエンスストア等で市販されている不織布(ふしょくふ)製マスクの使用が推奨されます。

2.ティッシュやハンカチなどで口や鼻を覆う。

マスクを持っていない場合は、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけて1m以上離れましょう。

鼻汁・痰などを含んだティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、 手のひらで咳やくしゃみを受け止めた時はすぐに手を洗いましょう。

ティッシュやハンカチを広げて、広げたまま鼻の根元あたりから当てます。

両手で鼻の両サイドから軽く押さえます。

口や鼻を覆ったティッシュはすぐにゴミ箱に捨てるようにしましょう。

3.上着の内側や服の袖(そで)で口元を覆う。

マスクもなくティッシュやハンカチも間に合わない時には、上着の内側や服の袖で口元を覆います。

肘を曲げて、ちょうど肘の内側が鼻の頭付近に当たるようにします。

鼻の頭から口元までを覆うことで咄嗟の時には飛沫を予防することができます。4)

まとめ

ここまで説明してきたインフルエンザについて簡単にまとめます。

インフルエンザが毎年流行する背景には理由があります。

ウィルスが新しく発生して一時的に世界中のパンデミックを起こすものや、パンデミックで流行した既存のものが少しずつ変わって毎年感染を引き起こします。

そのインフルエンザに感染すると「一般的なかぜ」よりも症状が強くあらわれ、高齢者や小児や喘息や腎臓病や妊婦さんでは重症化する危険が高いため注意が必要で一般的な「かぜ症候群」と分けて考えるべきであるとされています。

日本でのインフルエンザの発生は、毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月にかけて減少していくパターンを示します。

インフルエンザの流行の程度とピークの時期はその年によって異なります。

インフルエンザの症状は、A型またはB型インフルエンザウイルスの感染を受けてから、1~3日間ほどの潜伏期間があります。

その後、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などの症状が突然現われます。

発熱は、通常38℃以上の高熱になることが多いようです。

咳、鼻汁などの上気道炎症状もこれらの症状に続いて現れます。

約1週間ほどでよくなってくるのが典型的なインフルエンザの経過です。

インフルエンザにかかったと思ったら、近くにある内科・小児科を受診しましょう。

周りの人にうつさないよう、マスクをして行くと良いでしょう。

普段からかかりつけ医を見つけておくことも大切です

インフルエンザにかかると、抗インフルエンザ薬の服用の有無や種類に関わらず、異常行動に関連すると考えられる転落死等が報告されています。

事故を防止するために、発熱から少なくとも2日間は、就寝中を含め、特に小児・未成年者が容易に住居外へ飛び出さないために対策をしましょう。

玄関や窓を確実に施錠し、格子のある部屋や、ベランダに面していない部屋で寝かせ、一戸建てにお住まいの場合は、できる限り1階で寝かせる。

といったことを注意して実施していき対策を講じて注意をしましょう。

インフルエンザの治療には、抗インフルエンザウイルス薬と症状緩和のために処方されるお薬があります。

薬は医師が必要と認める場合にのみ処方されますので、処方されたら指示に従って服用しましょう。

インフルエンザにかかったら療養機関が必要です。

自宅待機の指示が受診時にありますので、その指示に従いましょう。

「解熱後2日を経過するまで」から「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」自宅に待機し、感染する人を増やさないようにしましょう。

インフルエンザにかからないように予防する方法としては、流行期に人込みを避けること、それが避けられない場合などにはマスクを着用すること、外出後のうがいや手洗いを励行すること、体調を調えておくこと、自宅は保温加湿の環境を整えること、インフルエンザワクチンの接種をすることなどです。

インフルエンザのワクチンは、不活性化ウイルスを体内に接種することで、抗体がつくられて発症を抑えるもので、毎年、世界各国での流行状況などをみて、国内での流行を予測して作られています。

接種すれば絶対にかからないというわけではありません。

ただし、かかった場合に重症化したり、肺炎などの合併症が起こったりすることを予防する効果は期待できるといわれています。

とくに、乳幼児や高齢者、呼吸器や心臓、腎臓などに持病のある人、その家族はワクチンの接種をしておくのが良いでしょう。

インフルエンザワクチン接種後はアナフィラキシーショックや強いアレルギー反応がないか注意して過ごすようにしましょう。

高熱や異常な接種部位の腫れなどは、接種したクリニックや病院に遠慮せずに問い合わせ、症状を伝えて相談してくださいね。

インフルエンザは飛沫、空気感染する感染症なので、知らないうちに感染していて、さらに周りに広がる危険があるかもしれないことを心にとめて、咳エチケットを身につけておくと良いですね。

毎年流行るインフルエンザですから、自分の身を守る為、家族を守る為、周囲の人を守る為に覚えておいて損のない知識だと思います。

まずはインフルエンザの流行る時期には予防的に生活を送り、それでもかかってしまった時には周りにうつさないように、そして療養生活では身体をいたわって1日もはやく治りますよう大事にしてくださいね。

参考文献

1)NIID国立感染症研究所 インフルエンザ

2)厚生労働省 今冬のインフルエンザの対策について

3)厚生労働省 咳エチケット

4)首相官邸 手の洗い方

5)厚生労働省「インフルエンザワクチンの添付文書」

6)社団法人 日本産科婦人科学会「新型インフルエンザワクチンに対する要望」

7)公益社団法人日本産科婦人科学会と公益社団法人日本産婦人科医会による「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」

8)文部科学省 学校安全保健法 インフルエンザの出席停止期間

9)MSDマニュアル ライ病

10)厚生労働省健康局 結核感染症課

11)医療従事者の皆様へ インフルエンザ患者さんへの注意喚起 厚生労働省

記事監修
  • 名倉 義人
    救急科専門医

    ・平成21年 名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事 ・平成23年 東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得 ・平成27年 東戸塚記念病院で整形外科として勤務 ・令和元年 新宿ホームクリニック開院

    日本救急医学会、日本整形外科学会

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