認知症の予防法|食事・運動・ストレス・睡眠の4つの観点から取り組む認知症対策
高齢化した社会に伴い、認知症は近年増加している脳の病気の一つです。この病気によって、ときに記憶力や思考能力の低下、日常生活の制限などが生じることがあります。
しかし、最近の研究によって、認知症の予防に関する新たな可能性が明らかにされています。適切な生活習慣や予防策を取り入れることで、認知症の発症リスクを軽減することができるのです。この記事では、認知症予防のための具体的な方法やアドバイスについて詳しく説明します。

名倉 義人 医師
○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院
○資格
救急科専門医
○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会
認知症のリスクについて
認知症は、さまざまな要素が組み合わさることによって引き起こされる病気であり、そのリスクは人ぞれぞれ異なります。以下では、認知症の主なリスク要素について詳しく説明します。
遺伝
遺伝的要素は認知症の発症リスクの中でも、重要視されている要素の一つです。特に、アルツハイマー病の発症リスクは遺伝要素によって高まるとされています。したがって、認知症のご家族がいる場合には、自身も認知症になる可能性が高いといえるでしょう。
年齢
年齢は最も重要な認知症のリスク要素の一つです。年を重ねるにつれて、認知症の発症リスクは高まります。この加齢による認知症の発症は誰しも避けることはできませんが、認知症の予防により発症を遅らせたり、症状の出現を押さえたりすることは可能です。
生活習慣
生活習慣も認知症のリスクに関係します。喫煙、高脂肪食、高塩分食、肥満、過度のアルコール摂取などの不健康な生活習慣は、認知症の発症リスクを高めることがあります。また、運動不足や社会的な孤立もリスク要素となります。健康的な生活習慣を維持することは、認知症予防の重要な要素です。
精神的な活性度
認知症のリスクは、日常生活での刺激や社会的な参加のレベルにも関連しています。日々の生活で刺激がなく、社会的な参加が少ないと、認知症のリスクが高まる可能性があります。脳を活性化させるために、読書、パズル、学習、社会的な活動に積極的に取り組むことが推奨されます。
これらのリスク要素はこれだけで認知症を引き起こすわけではありませんが、いくつかの要素が積み重なることで認知症の進行に関係します。ただし、リスク要素にさらされているからといって必ずしも認知症になるとは限りません。予防策や健康的な生活習慣を送ることは、認知症のリスクを軽減し、発症を遅らせることができます。
認知症予防に効果的な食生活
健康的な食事は、脳の健康においてとても重要です。適切な栄養素を摂取することで、脳細胞の機能を維持し、認知症のリスクを低減することができます。以下では、脳の機能を若く保つための食生活のアドバイスについて詳しく解説します。
バランスの取れた食事
バランスの取れた食事は、栄養素の摂取バランスを保つために重要です。主食となる穀物や豆類、タンパク質源となる魚や肉、ビタミンやミネラルが豊富な果物や野菜、健康的な脂質源となるナッツやオリーブオイルなどを適切な割合で摂取しましょう。
心臓に良い食事
心臓に良い食事は、脳の健康にも良い影響を与えます。高脂肪や高コレステロールの食品を制限し、代わりに飽和脂肪酸を含まない健康的な脂質源(例:魚、アボカド、ナッツ)を積極的に摂取しましょう。また、食塩の摂取量を制限し、血圧を管理することも重要です。
抗酸化物質を摂取
抗酸化物質は、脳の酸化ストレスを軽減し、神経細胞のダメージを防ぐ役割を果たします。ビタミンC(柑橘類、ベリー)、ビタミンE(ナッツ、種子、植物油)、β-カロテン(にんじん、かぼちゃ)などの抗酸化物質を含む食品を摂取しましょう。
オメガ-3脂肪酸を摂取
オメガ-3脂肪酸は、脳の健康に重要な役割を果たします。魚(サーモン、マグロ)、亜麻仁油、チアシードなどの食品に含まれるオメガ-3脂肪酸を摂取することで、脳の機能をサポートしましょう。
穀物と食物繊維の摂取
穀物や食物繊維は、血糖値の上昇を抑え、脳のエネルギー供給を安定させる役割を果たします。全粒穀物(全粒小麦、オーツ麦)、野菜、果物などの食品を摂取し、食物繊維の摂取量を増やしましょう。
飲酒の適度な制限
適度な飲酒は、心臓の健康に良い影響を与えるかもしれませんが、過度の飲酒は脳の機能を損なう可能性があります。飲酒は適度に抑え、節度を持って摂取しましょう。
認知症予防には運動が大切
運動は、脳の血流を改善し、神経細胞の成長を促進します。これにより、認知機能や学習能力の向上、記憶の改善が期待できます。また、運動はストレスの軽減や心の健康にも良い働きをします。さらに、適度な運動は心臓や血管の健康を保つためにも重要です。つまり認知症の予防に運動はきっても切り離せない要素なのです。
具体的な運動例としては、以下のようなものがあります
有酸素運動
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動は、全身の血流を増加させ、酸素や栄養を脳に供給します。週に150分以上の有酸素運動を目指しましょう。
強度運動
筋力トレーニングや重い荷物を持つ作業など、筋力を鍛える活動も重要です。筋力トレーニングは週に2回以上行い、特に大きい筋肉を鍛えるようにしましょう。
バランスと柔軟性のトレーニング
ヨガやピラティスなどのバランスと柔軟性を鍛える活動も取り入れると良いでしょう。これによって、転びにくくなり身体の柔軟性を維持することができます。
心の健康とストレスを管理しよう
心が健康であることは、脳の機能や認知能力の維持につながります。長期的にストレスがかかると、脳の機能や神経細胞に悪影響を及ぼす可能性があり、認知症の発症リスクを高めるとされています。また、ストレスは認知機能や記憶に悪影響を与えることがあります。したがって、ストレスの適切な管理は認知症予防において重要です。
ストレス管理のためには、以下の方法が役立ちます
リラクゼーション法の実践
深呼吸、瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法は、心と体のリラックスを促し、ストレスを軽減する助けとなります。日常生活に取り入れる短い休憩や休息も有効です。
趣味や興味を持つ活動
興味や趣味を持つことは、心のリフレッシュやストレス解消につながります。自分に合った活動を見つけ、定期的に楽しむことを心がけましょう。
社会的なつながりの維持
家族や友人とのコミュニケーションや交流は、心の健康に大きな影響を与えます。孤立を避け、社会的なつながりを大切にしましょう。
ストレスフルな状況の回避
ストレスの原因となる状況を避けることができれば、心の負担を軽減することができます。自分自身の限界を理解し、無理な負荷をかけないようにしましょう。
心理的なサポートの受け入れ
心理カウンセリングやサポートグループに参加することで、ストレス管理や心の健康のサポートを受けることができます。専門家や医療スタッフのサポートを活用しましょう。
ストレス管理は個人の状況や好みに応じて異なる方法があります。自分に合った方法を見つけ、継続的に取り組むことが重要です。日常生活の中でストレス管理を意識し、心の健康に配慮しましょう。
睡眠と認知症
良い睡眠を取ることは、脳の健康と認知症予防において重要な要素です。
睡眠の質と認知症の関係は、密接に関連していて、短い睡眠時間や不規則な睡眠は、認知機能の低下や記憶の問題などと強く関連しています。睡眠不足や睡眠の質の低下が長く続くと、認知症のリスクを増加させる可能性があります。
良質な睡眠を得るためには、以下のことに気をつけましょう。
定期的な睡眠スケジュール
睡眠のリズムを整えるために、毎日同じ時間に寝る習慣を作りましょう。朝起きる時間も一定にすることで、体内時計を調整することができます。
快適な寝室環境の整備
静かで暗い寝室を作り、快適な温度や適切な湿度を保つことが重要です。寝具や枕も自分に合ったものを選び、寝心地を確保しましょう。
睡眠前のリラックスタイム
就寝前にリラックスする時間を設けることで、睡眠の質を向上させることができます。入浴やヨガ、瞑想、音楽を聴くなど、個人の好みに合わせたリラックス方法を取り入れましょう。
適切な運動と身体活動
適度な運動は、睡眠の質を向上させることができます。ただし、就寝前に過度の運動を行うことは逆効果ですので注意しましょう。
まとめ
認知症予防のためには、生活習慣の見直しが重要です。バランスの取れた食事、適度な身体活動、ストレス管理、良質な睡眠などを取り入れることで、脳の健康を保ち認知症のリスクを低減できます。
また、医療機関のサポートを受けることもおすすめです。定期的な健康チェックや専門家のアドバイスを受けることで、個人の状況に合わせたサポートを受けることができます。興味のある方は、ぜひ一度当院にお越しください。あなた自身、そしてあなたの身近な人の心の健康を守るために、スタッフ一同全力でサポートします。