腎盂腎炎(じんうじんえん)の症状・原因・特徴とは?放置すると危険!

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/06/24
細菌が膀胱に入り込むことで頻尿や残尿感・排尿痛があらわれる膀胱炎を甘くみていませんか? 実は膀胱炎が悪化すると、発熱や腰・背部の痛みを伴う腎盂腎炎を発症してしまうことがあります。 あまり知られていないかもしれませんが、この腎盂腎炎、最悪の場合は死に至る可能性もある危険な病気です。 今回は、腎盂腎炎の症状や特徴・治療法について説明します。 腎盂腎炎の原因や予防法なども解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次

腎盂腎炎とは?重症化するとやばいってほんと?

腎盂腎炎は、急激に症状が現れる急性腎盂腎炎と、何度も症状を再発する慢性腎盂腎炎があります。

はじめに腎臓と腎盂について、簡単に説明します。

血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、尿を作り出すのが腎臓の役割です。作り出された尿は、腎盂に貯められて尿管を通り膀胱へ蓄積されます。

通常であれば腎盂は無菌状態です。しかし、腎盂に細菌が入ると腎盂腎炎を発症します。

また、腎盂腎炎は腎盂炎と呼ばれることもあります。

急性腎盂腎炎とは?

急性腎盂腎炎は、膀胱炎などに続いて細菌が腎盂に入ると、急性的に症状が現れます。

主な症状は、膀胱炎症状や、発熱、全身のだるさ、腰・背部の痛みです。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

また、男性よりも女性における発症率が高いです。

慢性腎盂腎炎とは?

腎盂腎炎を繰り返すと、慢性腎盂腎炎を発症します。

通常、尿が逆流したり尿路が閉ざされたりするような、他の疾患を持っていることが多いです。

主な症状は、微熱や倦怠感、腰・背部の痛みです。

急性腎盂腎炎よりも症状が軽いといわれていますが、慢性腎盂腎炎が急に悪化して急性腎盂腎炎の症状が現れる場合もあります。

自覚症状がないことも多く、知らず知らずのうちに腎機能の低下が進む可能性もあるので注意が必要です。

腎盂腎炎で病院を受診するタイミングは?

腎盂腎炎は自然治癒しないため、適切な処置をせずに放っておくと危険です。

最悪の場合、全身の炎症症状を伴う敗血症につながり、命を脅かす危険性もあるからです。

したがって、次に説明する症状に当てはまる場合は、ただちに近くの泌尿器科クリニック、もしくは内科を受診しましょう。

腎盂腎炎の症状ってどんなの?

腎盂腎炎の症状は、以下の通りです。

  • 膀胱炎症状
  • 腰や背部の痛み
  • 寒気やふるえを伴う発熱
  • 吐き気、嘔吐

主に急性腎盂腎炎の症状ですが、慢性腎盂腎炎でも生じます。

それぞれの症状について解説します。

腎盂腎炎の前触れは膀胱炎?

腎盂腎炎は、膀胱炎に続いて発症することが多いです。

痛みや発熱より先に現れる膀胱炎症状は、以下の通りです。

  • 頻尿:排尿の回数が多い
  • 残尿感:排尿をしたあとに尿が残っている感じがする
  • 排尿痛:排尿時に痛みを伴う
  • 血尿:尿に血が混ざる
  • 尿混濁:尿が白っぽく濁る

患者の約3分の1に膀胱炎症状が現れるため、上記の症状がない場合もあります。

腎盂腎炎はどんな痛み?腰痛や背部痛について

腎臓の位置は、腰に手を当てたときのわき腹と背骨の間、背中側左右に1つずつあります。

腎盂腎炎は腎臓の炎症のため、このあたりをたたくと強い痛みを生じるのが特徴です。

たたかなくても腰痛のような痛みがあることは多く、ひどい場合は眠れないくらいの痛みを伴います。

腎盂腎炎で発熱や頭痛が発現?

腎盂腎炎では、寒気やふるえを伴う発熱(38度〜40度)を生じます。

発熱に伴い、頭痛や全身のだるさ、食欲不振といった全身症状が強く現れることが多いです。

発熱したときは、脱水症状にも注意してください。

また、腎臓付近の胃腸の調子が悪くなり、吐き気や嘔吐を生じることもあります。

腎盂腎炎の原因は?かかりやすい人は?

腎盂腎炎の原因は、細菌が腎臓に入ることです。

原因菌として、大腸菌が75%以上だと知られています。

その他の原因菌には、クレブシエラ属やプロテウス属の腸内細菌、緑膿菌、ブドウ球菌などがあります。

細菌が腎臓に入る経路は主に以下の通りです。

  • 細菌が尿道の出口から逆流する
  • 腎臓の周りにあるリンパ腺から感染する
  • 体の他の箇所で感染した細菌が血管を通って腎臓に入る

ほとんどの場合、尿道の出口から細菌が逆流し感染を起こします。

そのため、女性や、前立腺肥大症・尿路結石などの疾患を持つ男性は、腎盂腎炎にかかりやすいので注意しましょう。

糖尿病やステロイドなどを内服していて免疫が低下している方も、感染がおこりやすくなります。

理由を詳しく説明します。

女性は腎盂腎炎にかかりやすいってほんと?

腎盂腎炎は、男女比が1:30で女性の方がかかりやすいと知られています。

なぜならば、女性の方が尿道が短く、細菌が尿道を逆流して膀胱内に侵入しやすいためです。

さらに、細菌の繁殖しやすい膣や肛門が、尿道と隣接していることも女性比率が多い理由として考えられます。

また、妊娠中は普段と比べて腎盂腎炎にかかりやすいといわれています。

主な理由は以下の通りです。

  • 腎盂や尿管が緩み、尿の逆流がおこりやすい
  • 大きくなった子宮で尿の通り道が圧迫され、尿が出しづらい
  • つわりにより水分摂取量が少なくなることで、尿量が減りやすい

このように、妊娠中は膀胱や腎盂内に細菌が増えやすくなるので注意しましょう。

腎盂腎炎にかかりやすい病気があるってほんと?

男性が腎盂腎炎にかかる場合は、他に病気があることがほとんどです。

以下のような病気の場合、腎盂腎炎のリスクが上がると考えられるので注意してください。

  • 前立腺肥大症・尿路結石・尿路がん:尿路が閉ざされ尿が出にくいため、膀胱内の細菌が増えやすい
  • 神経因性膀胱:尿をためたり出したりしにくいため、膀胱内の細菌が増えやすい
  • 尿路カテーテル留置:カテーテル内外から細菌が膀胱内に侵入することで、感染が起こりやすい
  • 糖尿病・ステロイドや免疫抑制剤を内服:免疫力の低下により、細菌への抵抗力が下がるため感染が起こりやすい

腎盂腎炎はストレスが原因ってほんと?

ストレスは、腎盂腎炎の直接的な原因にはなりません。

しかし、ストレスによる不眠や疲労、栄養不足により腎盂腎炎になる可能性が上がると考えられます。

このような状態では免疫力が低下し、腎盂の細菌が増殖しやすくなるからです。

また、忙しくてトイレに行けなかったり、水分を摂れず排尿量が減ったりする状態が続くのは危険といえるでしょう。

なぜなら膀胱内の細菌が増殖しやすく、腎盂腎炎になる可能性が高まるからです。

特に接客業の女性は、トイレに行けない状況になりやすいので注意してください。

腎盂腎炎の検査は何をするの?

腎盂腎炎の診断をするため、尿検査や血液検査が行われます。

状態によっては、腹部CTや超音波検査が行われる場合もあるでしょう。

尿検査

尿検査では、尿中の白血球と細菌を調べます。

白血球が一定数以上確認されると、尿路感染症が疑われるため、尿培養にて原因菌の特定を行います。

原因菌の特定は、治療に用いる薬剤を決めるのに有効です。

血液検査

血液検査では、CRP(C反応性蛋白質)や白血球数といった炎症反応に関わる数値の上昇がみられます。

さらに腎機能や肝機能の値を確認することで、使用する薬剤を決めるのにも役立ちます。

重症化の可能性がある場合、定期的な血液検査で全身状態をモニタリングし、敗血症へつながらないように注意しなければいけません。

一刻を争うため、同時に血液培養を行い原因菌を特定します。

腹部CT・超音波検査

腎臓にガスがたまる気腫性腎盂腎炎や、腎臓に膿がたまる膿腎症、腎がんなどの特殊な状態で腎盂腎炎を発症している場合、腹部 CT や超音波検査を行うことがあります。

腎盂腎炎の治療法は?

腎盂腎炎の治療で用いられるのは、抗菌薬です。状態によって、点滴や飲み薬が選択されます。

また、発熱や痛みの状態に応じて、解熱鎮痛薬が処方されることもあります。

多くの場合、抗菌薬の服用は1〜2週間です。慢性腎盂腎炎の場合や閉経後の女性、妊婦は抗菌薬の長期服用もあります。

治療中は水分をたくさんとり、安静に過ごしましょう。

処方された抗菌薬は、症状がなくなっても全て飲み切りましょう。症状がなくても、細菌が体内に残っていることがあるからです。

医師に指示された分を飲み切らないと体内で耐性菌ができ、次に同じ薬を服用しても効果が出ず重症化してしまう可能性があります。

次の受診が決まっている場合は、忘れずに受診しましょう。

腎盂腎炎はどうなったら入院?

実は腎盂腎炎は、肺炎に続いて2番目に入院が多い感染症です。

以下のように全身状態が悪い場合は入院となります。

  • ショック状態(血圧の低下、顔面の蒼白、脈拍の低下など)である
  • 食事や水分が取れない
  • 敗血症になる可能性が高い

入院期間の目安は1〜2週間です。

腎盂腎炎は他の人にうつるの?

腎盂腎炎は、他の人にはうつりません。

なぜなら、細菌が尿道を逆流して腎盂に入った場合に発症する疾患だからです。

腎盂腎炎のときは出勤停止になる?

腎盂腎炎は他人にうつらないため、出勤停止にはなりません。

感染症法においても、行動制限の規定はありません。

ですが、腎盂腎炎のときは、全身状態が悪く免疫力が低下しています。仕事は休み、安静に過ごすようにしましょう。

腎盂腎炎のときは性行為をいつからしてもいい?

腎盂腎炎は性感染症ではないため、性行為によってうつりません。

しかし、女性はもともと性行為によって陰部に細菌が増殖しやすいです。

そのため、腎盂腎炎を治療中の性行為は、細菌の増殖による症状の悪化を招く可能性があります。

腎盂腎炎が完治するまで、性行為は控えた方がよいでしょう。

腎盂腎炎の予防法は?

慢性腎盂腎炎は基礎疾患がある限り再発を繰り返してしまうため、基礎疾患の治療に専念しましょう。

基礎疾患がない方の急性腎盂腎炎の予防法について解説します。

まず、こまめに水分をとり排尿を促すことで、腎臓や膀胱に細菌がとどまらないようにしましょう。

排尿を我慢しないことも重要です。

また、陰部を清潔に保つよう心がけましょう。

女性の場合、以下のように陰部を清潔に保つのが効果的です。

  • 排泄後のふき取りを前から後ろに向かって拭く
  • おりものシートや生理用ナプキンをこまめに取り換える
  • 性交後は陰部をシャワーで洗い流す

まとめ

腎盂腎炎は、細菌が腎盂に入り炎症を起こすと発症します。

特に女性や、前立腺肥大症・尿路結石などの疾患を持つ男性は、腎盂腎炎にかかりやすいので注意してください。

腎盂腎炎の主な症状は、膀胱炎症状や、発熱、全身のだるさ、腰・背部の痛みです。

放置すると全身の炎症症状を伴う敗血症につながり、命を脅かす危険性があります。

抗菌薬を服用すれば1〜2週間で回復するので、気になる症状があったら早めに泌尿器科クリニックや内科を受診しましょう。

看護師に現在の症状を相談してみませんか?

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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。

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