咳が長引くのはどうして?原因、対処法を解説

公開日: 2024/11/16 更新日: 2024/11/16
「熱は下がったけれど、咳だけ続いていてつらい…」 「咳だけが続いているから、先生に診てもらったほうがいいのかな?」 咳が続くと体力も消耗して、不安に感じるかもしれません。咳が続いていると、精神的につらいだけでなく咳をすることで体力を消耗して体に負担もかかってしまいます。本記事では咳が続く原因と、自宅でできる対処方法について解説しています。医療機関に行く目安もわかるため、ぜひ参考にしてください。 医療機関に行く目安もわかるので、ぜひ参考にしてください。
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咳が長引くが熱はない原因は?

咳喘息やアトピー咳嗽(がいそう)など、感染症以外の病気にかかっている可能性があります。そのため咳症状が続いていても発熱症状はあらわれません。通常、風邪のような感染症である場合、咳は3週間以内で治まる傾向にあります。

しかし咳が3週間以上続いている場合は注意が必要です。咳の持続期間や原因別のおもな病気は、以下のとおりです。[1][2][3][4]

 

持続期間

原因

主な病気

急性咳嗽(きゅうせいがいそう)

3 週間以内

ウイルス

  • 風邪

  • インフルエンザ

  • 新型コロナウイルス感染症

遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)

3 週間〜8 週間

病気によって異なる

  • 咳喘息

  • 胃食道逆流症(GERD)

  • 副鼻腔気管支症候群

  • 慢性気管支炎

  • アトピー咳嗽

  • 感染後咳嗽

慢性咳嗽(まんせいがいそう)

8 週間以上

病気によって異なる

  • 咳喘息

  • 胃食道逆流症(GERD)

  • 副鼻腔気管支症候群

  • 慢性気管支炎

  • アトピー咳嗽

咳症状が続いている期間だけで原因を判断することは非常に難しく、乾いた咳なのか痰が絡んだ湿った咳なのかでも原因疾患を判断することができます。

乾いた咳が長引く原因は?

乾いた咳が続く場合は、咳喘息やアトピー咳嗽、胃食道逆流症などの病気である可能性が高いです。風邪症状が治っても治りきらずに後遺症のような症状として咳が続くケースがあります。

それぞれ疾患の特徴は、以下のとおりです。[1][3][4][5][6]

 

原因

特徴

咳喘息

気道の炎症

  • 「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という喘鳴(ぜんめい)や、呼吸困難を伴わない咳が8週間以上続く

  • 就寝時や深夜、早朝に咳が悪化する

  • 吸入ステロイドが有効

アトピー咳嗽

中枢気道の好酸球性気道炎症

  • 喉(のど)のイガイガ感がある

  • 中年の女性に多い

  • 咳が出る時間帯は就寝時が一番多く、続いて深夜から早朝、起床時、早朝に出やすい

  • H1受容体拮抗薬が有効

胃食道逆流症

  • 迷走神経反射(ストレスや疲れなどで心拍数や血圧が下がる)による咳

  • 胃の内容物が気管や気管支に誤飲され、刺激によって咳が出る

  • 咳が長く続く(平均13か月~58か月)

  • 逆流性食道炎の症状(胸やけなど)のあとに咳が出る

  • 咳のみの場合もある

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬が有効

感染後咳嗽

ウイルスや細菌感染後に起こる

  • 中高年者や女性に多い

  • 風邪の後、3週間以上咳が続く

  • 咳は就寝前から夜間、朝が多い

  • ヒスタミンH1受容体拮抗薬や麦門冬湯、吸入抗コリン薬が有効

マイコプラズマ肺炎

細菌(マイコプラズマ・ニューモニエ)

  • 子どもから若い世代の大人に多い

  • 発熱や全身倦怠感(けんたいかん)、頭痛から始まる

  • 3日~5日後に痰を伴わない咳が出る

  • 咳は3週間~4週間程度続く

  • 抗菌薬(マクロライド系)が有効

乾いた咳であっても、軽度の副鼻腔炎や副鼻腔気管支症候群が原因の場合もあります。痰はでなくても、咳払いや痰払いが数秒から数十分おきに起こることが特徴です。[3]

マイコプラズマ肺炎に関しては乾いた咳が特徴ですが、大人の場合は湿った咳に変化することもあるため「痰が絡んでいないからマイコプラズマ肺炎ではないだろう」と自己判断しないようにしましょう。

痰の絡んだ咳が長引く原因は?

痰が絡むとは、粘り気のある分泌物が喉にたまっている状態のことです。

痰は異物を体の外に出すための防御反応で、健康な状態でも分泌されています。しかし、細菌やウイルスに感染すると、痰に粘り気が出て喉に絡まりやすくなります。

痰の絡む咳が出る場合は、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、副鼻腔炎の可能性が高いです。

それぞれの疾患の特徴は、以下のとおりです。[3][7][8]

 

原因

特徴

気管支喘息

気道の過敏症

  • 感染症によって悪化する

  • 発作性の呼吸困難を伴う喘鳴(ぜんめい)、咳発作が起こる

  • 夜間の咳が多い

  • 吸入薬やロイコトリエン拮抗薬が有効

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

  • 慢性気管支炎

  • 喫煙

  • 受動喫煙

  • 禁煙が有効

  • 抗コリン薬が有効

副鼻腔炎

後鼻漏(鼻からのどの奥に鼻水が流れる)

  • 朝方に長引く咳が出る

  • マクロライド系やβ-ラクタム系抗菌薬が有効

痰が絡むと不快感があったり、呼吸がしにくくなったりしますが、無理に痰を出そうとすると喉の粘膜が傷ついてしまいます。

水分をたくさんとると、喉が潤って痰を出しやすくなります。

痰が絡む場合は去痰薬(きょたんやく)を使用しますが、副鼻腔炎の場合は抗生剤を用いることもあるため注意しましょう。[7]

去痰薬は痰を出しやすくする薬で、ドラッグストアでも販売されています。

咳が長引くときの対処法は?

咳が長引くときは腹式呼吸をおこなったり、水分補給したりすることが大切です。

喉を潤すための対策として、はちみつも有効です。市販薬も自己判断で服用はせず、ドラッグストアなどで薬剤師や登録販売者に相談しながら購入しましょう。

症状が長引くと精神的にも体力的にも負担がかかってしまいます。

咳が止まらない状態が続くと、人によっては肋骨にひびが入ってしまい日常生活に支障が出てしまいかねません。

対処法を参考に、無理のない範囲で試してみてください。

腹式呼吸

咳で呼吸が苦しい場合は、腹式呼吸を意識しましょう。腹式呼吸では胸部と一緒に腹部が膨らむため、横隔膜の収縮効率が改善します。しっかり息をはき切ることで楽に息が吸えるようになり、深い呼吸がおこないやすく、咳が落ち着きます。[9]

腹式呼吸の方法は、以下のとおりです。[10]

  1. 鼻から息を吸いながら、お腹を膨らませる

  2. 口をすぼめてお腹をへこませながら、息をはく

通常おこなっている胸式呼吸に比べると、深い呼吸ができるので、ぜひ試してみてください。

水分補給

人の鼻や喉の内側には、ウイルスの侵入を防ぐ線毛がたくさん生えており、繊毛の運動機能を活発にさせるためにも水分補給が必要です。線毛は1分間に1000回も動き続け、体内に入ってきたウイルスを外へ追い出す働きをしていますが、水分が不足すると働きが大幅に低下することが報告されています。

1日に必要な水分量は、大人の場合500mlのペットボトル3本分(1.5リットル)が目安です。のどが渇いたと感じる前に、少しずつ飲むことが大切です。

特に冬場は暖房による室内の乾燥で、気道の粘膜も乾きやすくなります。マスク着用時も同様です。意識的に水分を取り、線毛の働きを助けることでインフルエンザ予防につながります。[12]

痰が硬いときは、体内の水分が不足しているかもしれません。痰が出やすくするために、十分に水分をとりましょう。[13]

はちみつ

はちみつには「メルピロール」と「フラジン」という鎮咳(ちんがい)成分が含まれており、鎮咳薬「デキストロメトルファン」に匹敵する鎮咳効果が認められています。咳が出るときに小さじ1杯のはちみつを舐めると、喉の炎症を抑え、咳を和らげる働きが期待できます。[14]

ただし、1歳未満の乳児にはボツリヌス菌のリスクがあるため、与えないよう注意してください。乳児の未熟な腸内環境では、菌が増殖しやすいです。ボツリヌス菌による感染症は、便秘や全身の筋力低下などの症状を引き起こす可能性があります。

市販薬

咳がひどい場合は、市販の鎮咳去痰薬(ちんがいきょたんやく)を飲んでもかまいません。鎮咳去痰薬は、以下の効果があります。

  • 咳をしずめる

  • 気管支を広げる

  • 痰の切れをよくする

  • 気道の炎症を和らげる

自分に合った製品がわからない場合は、ドラッグストアの薬剤師に相談しましょう。

リン酸コデインやリン酸ジヒドロコデインが含まれている市販薬は、妊娠中の服用は避けてください。吸収された成分の一部が胎盤関門を通過して、胎児へ移行することが知られています。[15]

ただし、血の混じった痰や、黄色・緑色の痰が出る場合は、医療機関を受診してください。これらの痰は、細菌に感染していたり、重い病気になっていたりする可能性があります。

咳が何日続いたら病院?

咳が3週間以上続いている場合は、医療機関を受診しましょう。一般的に、風邪が原因で咳が出ている場合は、3週間を目安に自然に治ることがほとんどです。

3週間以上の咳の症状は2種類に分けられます。

  • 遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)

  • 慢性咳嗽(まんせいがいそう)

しかし咳が3週間以上長引くときは、咳喘息や気管支喘息といった風邪以外の可能性があります。

医療機関を受診する際には、咳の症状がいつからあらわれているのかやどのような咳症状なのかを説明できるようにしておきましょう。

咳が長引くことで原因を追究するための検査などの内容も変わってきます。

遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)

3 週間〜8 週間

  • 咳喘息

  • 胃食道逆流症(GERD)

  • 副鼻腔気管支症候群

  • 慢性気管支炎

  • アトピー咳嗽

  • 感染後咳嗽

慢性咳嗽(まんせいがいそう)

8 週間以上

  • 咳喘息

  • 胃食道逆流症(GERD)

  • 副鼻腔気管支症候群

  • 慢性気管支炎

  • アトピー咳嗽

まれに結核や肺がんなどの病気の可能性があるため、咳が3週間以上続く場合は放置しないで受診することがおすすめです。[3]

咳が長引く場合は、何科を受診する?

咳が長引く場合は、喘息などの呼吸器疾患の可能性があります。3週間以上咳が続くときは、呼吸器内科の受診がおすすめです。

咳だけが長引く場合

内科、呼吸器科、耳鼻咽喉科

風邪を引いている場合

内科

咳と鼻の症状もある場合

耳鼻咽喉科

咳と合わせて鼻の症状がある場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

受診する診療科に迷うときは、かかりつけの医師に相談することもおすすめです。症状に合わせて、適切な診療科を紹介してもらえます。

Q&A

咳が長引く場合のよくある質問をまとめました。咳でつらい場合や、原因が気になる人は参考にしてください。

咳がどのくらい続いたら危ないですか?

3週間以上続いている場合は、風邪以外の病気の可能性があるため、注意が必要です。

咳の持続期間別の主な病気は、以下のとおりです。

 

持続期間

原因

主な病気

急性咳嗽(きゅうせいがいそう)

3 週間以内

ウイルス

  • 風邪

  • インフルエンザ

  • 新型コロナウイルス感染症

遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう)

3 週間〜8 週間

病気によって異なる

  • 咳喘息

  • 胃食道逆流症(GERD)

  • 副鼻腔気管支症候群

  • 慢性気管支炎

  • アトピー咳嗽

  • 感染後咳嗽

慢性咳嗽(まんせいがいそう)

8 週間以上

病気によって異なる

  • 咳喘息

  • 胃食道逆流症(GERD)

  • 副鼻腔気管支症候群

  • 慢性気管支炎

  • アトピー咳嗽

咳が続く場合は医療機関を受診し、医師の診察を受けましょう。

8週間以上続いているからといって非常に危険だと判断するべきではありません。

3週間以上続く咳症状でなくても早めに対応するべき咳症状は多くあります。

咳の症状がつらく「いつもより長く続いているかもしれない」と感じた場合は早めに医療機関を受診し、医師に相談するようにしましょう。

咳が長く続く原因は何ですか?

咳が続く原因は、持続期間によって異なります。3週間以内に落ち着く場合は、ウイルスなどの風邪が原因の場合がほとんどです。風邪による咳の場合は、自然に症状が改善します。

乾いた咳(乾性咳嗽 )か痰の絡む咳(湿性咳嗽 )かどうかによっても、原因は異なります。咳の種類別のおもな原因は、以下のとおりです。

咳の種類

原因

乾性咳嗽

  • 咳喘息

  • アトピー咳嗽

  • 胃食道逆流症(GERD)

  • 感染後咳嗽

湿性咳嗽

  • 気管支喘息

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

  • 副鼻腔炎

咳が3週間以上続く場合は、医療機関を受診しましょう。

咳が長引く原因が花粉症である可能性は?

咳の原因が花粉症の可能性も考えられます。

花粉症の約70%はスギ花粉症と言われており、スギの抗原成分が鼻から喉へと流れることで、喉のかゆみや咳が出ることが特徴です。[16] 花粉症の見分け方としては、次のポイントを参考にしてください。

  • 乾いた咳が出る

  • 咳の発作は比較的軽い

  • 喉に違和感を伴う

  • 目のかゆみや鼻水などの症状があらわれる

花粉症による咳には、ヒスタミンH1受容体拮抗薬が効果的です。[17]

まとめ

咳が長引く期間によって、原因はさまざまです。

風邪による咳は自然によくなりますが、咳が3週間以上続く場合は、咳喘息や胃食道逆流症(GERD)、副鼻腔気管支症候群などの病気の可能性があります。

腹式呼吸や水分をとるなど、自宅でできる対処方法もあります。

しかし、3週間以上咳が続く場合は医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

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参考文献

[1]成人の長引く咳について

[2]急性咳嗽の鑑別: 感染性咳嗽を中心に

[3]遷延性・慢性咳嗽の鑑別診断

[4]マイコプラズマ肺炎ってどんな病気??

[5]感染後咳嗽(かぜ症候群後咳嗽)

[6]咳喘息の診断と治療

[7]慢性咳嗽の病態,鑑別診断と治療 ―咳喘息を中心に―

[8]咳と感染症を考える

[9]呼吸理学療法の実際

[10]喘息の呼吸リハビリテーション

[11]絨毛上皮

[12]培養 ヒト副鼻腔粘膜 による繊毛運動の律速因子に関する研究

[13]4. 喀痰吸引

[14]蜂蜜のせき止め成分を世界で初めて同定

[15]Ⅱ 呼吸器官に作用する薬 1 咳 止め・痰 を出しやすくする薬(鎮咳 去痰 薬) 1)咳 や痰 が

[16]的確な花粉症の 治療のために(第2版)

[17]原 著 小児および成人スギ花粉症患者における咳嗽の検討

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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