インフルエンザが治癒したかの判断は何日後?感染力は?家族がかかった時の対処についても解説

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/09/29
インフルエンザになってしまったとき、周囲の人にうつさないかと心配したことがある方は多いでしょう。 あるいは家族がインフルエンザにかかり、うつったらどうしようと不安に思ったことがある方もいるかもしれません。 インフルエンザは高熱・頭痛・全身倦怠感・関節痛・筋肉痛・咳・鼻汁・のどの痛みなど強い症状をきたす疾患です。 高い感染力を持ち、度々流行をきたします。 インフルエンザにはA型・B型・C型があります。 このうち、頻繁に流行するのはインフルエンザA型およびB型です。 いずれも完全に治るまでにはしばらく時間がかかり、その間は他の人に感染させるリスクが高いと考えられます。 本記事では、インフルエンザの感染力の強さや持続する期間、治癒の判断はどうするのかについて解説します。 さらに、強い感染力を持つインフルエンザに家族がかかってしまったとき、どのように対応したら良いかもあわせてみていきましょう。
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目次

インフルエンザの感染力はどのくらいの強さなの?

1人の新たな感染症患者さんが全く免疫を持っていない人々の集団に入ったとき、平均で何人に病気を感染させたか示す数値を「基本再生産数」と呼びます。

つまり、病原体がどのくらい感染しやすいかを表すためのものです[1]。

基本再生産数が1より大きければ、感染者は急激に増加し、流行がおこります。

インフルエンザの基本再生産数は1.4-2.4と推計されており、免疫のない人の集団において広がりやすい病気であることがわかります[2]

ただし、基本再生産数は病原体の生物学的な特性だけでなく、どれだけ人と人が接触するかなどの環境因子も関わってくるものです[3]。

そのため研究の行われた場所や年代などが違うと、基本再生産数は大きく変わる可能性もあります。

インフルエンザの感染力は何日目がピーク?

インフルエンザの症状が出現して2日目あたりが、最も感染力が強いと考えられています。

インフルエンザの感染がおこるのは、患者さんから何らかの形で健康な人にウイルスが伝播したときです。

そのため、感染力が強いのは、ウイルス排出量が多い時期と言えるでしょう。

インフルエンザウイルス排出量のピークは発症後2日目ごろといわれています。

しかし、小児や免疫力が落ちている方はもう少しピークが後になるかもしれません。

ピーク以降もしばらくウイルス排出は続きますが、徐々に量は減少していきます[4]。

インフルエンザがうつらなくなるのは4日目?5日目?6日目?感染力はいつまでなの?

インフルエンザが他の人に感染しなくなるのは、発症3〜7日程度してからです。

発症の直前からこの期間まではウイルス排出は続きます[4]

解熱後であっても、感染をさせる可能性は残っており、注意するべきです。

何日目からと断言することは難しいため、良くなったと思っても1週間程度は可能な限り自宅に留まり、外出は最小限にとどめましょう。

どうしても外出が必要な場合は、マスクを着用した上でなるべく短時間にしてください。

会食など感染リスクが上がる行為は避ける方が良いでしょう。
インフルエンザの完治の判断ってどうするの

治癒したかどうかは、診察をした医師が患者さんの症状や身体所見を総合的に考えて判断します[5]

残念ながら、ウイルスを本当に排出していないか、人にうつす可能性が完全に否定できるか検査することは非常に難しいです。

いつから学校や会社に行って良いの

学校保健安全法ではインフルエンザに罹患した場合の出席停止期間は発症後5日かつ解熱後2日とされています。

なお、幼児の場合は発症後5日かつ解熱後3日が登園の目安です[6]。

成人の場合、インフルエンザで仕事を何日休むべきかについて法的な決まりはありません。

多くの場合は学校保健安全法での決まりと同程度の期間になるでしょう。

会社勤めであれば、就業規則に定められているところもあるので確認してみてください。

インフルエンザの家族内感染について

家族の誰かがインフルエンザになってしまうと、接触が多いためどうしてもうつってしまう可能性が高くなります。

では、その確率はどのくらいで、体調に気をつけるべきはいつまででしょうか。

また、感染の可能性を少しでも抑えるためには、どのようにしたら良いでしょうか。

ここからはインフルエンザの家族内感染の実際と、その対策について考えていきましょう。

家族からインフルエンザがうつる確率は?

新型コロナウイルスの流行後、家族がインフルエンザにかかったときにうつる確率は高くなっているかもしれません。

米国において家庭内でA型インフルエンザがうつる確率を調べた研究が行われています。

それによると、新型コロナウイルスが流行する以前の結果は20.1%であったのに対し、2021年〜2022年のシーズンでは50.0%でした。

様々な要因を補正して計算した結果、およそ2.31倍家庭内感染がおこりやすくなっていました。

原因として、インフルエンザに対する抗体価が下がったこと、コロナ禍でインフルエンザワクチン接種が落ち込んだことなどが考えられますがはっきりしたものはわかっていません[7]

また、日本人ではどうなのか、この後もこの傾向が続くのかも不明です。

しかし、家族がかかってしまったときには十分に注意するに越したことはないでしょう。

インフルエンザの家族感染 何日後に発症するの?

2009年の新型インフルエンザの流行時の研究のまとめによると、一人の患者さんの発症から次の患者さんの発症までの発症期間は2.4-3.6日でした。

少数ながら、同様の研究が季節性インフルエンザでも行われており、やはり3日前後の結果だったことがわかっています[8]

したがって、家族が発症してから3〜4日は熱やその他の症状が出ないか、特に体調に気をつけていたほうが良いでしょう。

もちろん、その後も感染力のある期間は続いている可能性があるので、しっかり対策を続けてください。

インフルエンザの家族と一緒にいてもうつらないためにはどうしたらいい?

インフルエンザは発症の直前からウイルスを排出しているため、家族の誰かがかかってしまうと感染を100%予防することは実際問題として困難でしょう。

しかし、前述の通り感染力のピークは発症2日目頃なので、しっかりと対策をすればリスクを減らすことはできます。

その方法について考えていきましょう。

予防のポイントは感染経路を断つことです。

インフルエンザは飛沫感染および接触感染をする感染症です[9]

飛沫感染は、患者さんの咳やくしゃみなどをしたときに飛び散る「飛沫」を介してウイルスを吸い込んでしまいおこります。

接触感染とは、患者さんが咳をおさえたりしてウイルスを手につけてしまい、ドアノブなどを介して別の人にうつしてしまうことをさします。

つまり、家族がインフルエンザになってしまったときにうつらないための対策の要は「飛沫予防策」と「接触予防策」です。

では、具体的にどのようにすれば良いのでしょうか。

以下にその例をお示しします[9,10,11]。

こまめに手を洗う

こまめに手を洗うことは接触感染を防ぐ意味で非常に重要です。

なぜなら、手にインフルエンザウイルスが付着しただけで即感染するわけではないからです。

汚染された手で目・口・鼻などを触ることで感染がおこります。

ですから頻回に流水と石鹸で手を洗いましょう。

手指消毒用のアルコールも役に立ちます。

特に患者さんのお世話をした直後は必ず手を洗ってください。

また、患者さん本人にも、咳を手でおさえたり鼻をかんだりした後には可能な限り手指衛生をしてもらいましょう。

マスクをする

患者さんが他の方と過ごすときは、小さなお子さんなど使用できない事情がない限りはマスクをしましょう。

飛沫が拡散するのを防ぐため、鼻の上から顎先までしっかり覆う正しい付け方を確認してください。

患者さんのお世話をする人についても、マスクの着用が望ましいです。

なるべく部屋を分ける

可能な限り患者さんと長時間同じ部屋にいることは避けましょう。

特に、妊婦さんや持病のある方、高齢者などは離れていたほうが良いです。

どうしても難しいときは1m以上の間隔をあけて過ごしてください。

また、患者さんが過ごす部屋はこまめに換気をしましょう。

タオルを分ける

手を拭くためのタオルについては、個人専用にしましょう。

特に患者さんと健康な方でのタオルの共用は望ましくありません。

もしくは、インフルエンザにかかっている期間については使い捨てのペーパータオルを使用するのでも良いです。

使用済みマスクやティッシュは袋に入れる

患者さんが使用したマスクや、鼻水がついたティッシュなどにはウイルスが付着しています。

そのまま他の人が触ると接触感染のリスクとなります。

そのため、使用済みのマスクやティッシュなどはビニール袋などに入れてから捨てるようにしましょう。

物品や衣類などをこまめに清掃・消毒・洗浄する

ドアノブ・蛇口・トイレの水洗レバーなど人が触れるところや、患者さんが触れたものはこまめに拭きあげましょう。

アルコールや次亜塩素酸ナトリウムを薄めた液を使用してください。

いずれも薬局などで購入することができます。

なお、患者さんの食器や衣類・タオルなどは他の人のものと分けて洗う必要はありません。

ただし、患者さんが使用したものを取り扱った後は手を洗いましょう。

家族が感染したときにうつらないための「予防投与」とは

インフルエンザ対策の基本は予防接種と手洗い・マスク着用など基本的な事項です。

しかし、家庭内でインフルエンザ患者さんと濃厚に接触してしまったとき、一部のインフルエンザの治療薬を予防目的に使用することで発症リスクを下げることができます。

日本感染症学会によると、予防投与を検討する必要がある対象者は患者さんと共同で生活している、次のような方々です[12]。

  • 65歳以上の高齢者

  • 慢性呼吸器疾患/慢性心疾患がある方

  • 糖尿病などの代謝性疾患がある方

  • 腎機能障害のある方

対象者でなくても、病院やクリニックなどで予防投与として薬を処方してもらうこと自体は可能です。

ただし、予防は「治療」とは異なるので健康保険は利用できず、自費診療となります。

また、むやみに抗ウイルス薬を使用することは耐性化にもつながりかねません。

100%発症を防ぐものでもありません。

どうしてもかかりたくない事情も個人個人で異なるでしょう。

予防投与を受けるべきか否かはかかりつけ医と十分相談の上で決定してください。

Q & A

インフルエンザが疑わしいとき、病院に行かないとどうなるのですか?

健康な方であれば、インフルエンザはほとんどの場合は自然治癒します。

必ずしも薬をもらわなくても、安静にしていれば何日かで良くなる可能性が高いです。

一方で、持病がある方・妊婦さん・高齢者・小さなお子さんなど重症化や合併症のリスクがある方は、かかりつけ医に一度相談したほうが良いでしょう。

また、次のようなときは必ず急いで受診をしてください[10,11]。

  • 呼吸困難や息切れがあるとき

  • 胸が苦しそうなとき

  • 顔色が真っ青になっているとき

  • 嘔吐や下痢が続いて水分がとれないとき

  • 症状が長引いて悪化してきているとき

  • ひきつけをおこしたり呼びかけに反応がなかったりするとき

子供がインフルエンザになりました。

次に学校に行くのに治癒証明書は必要ですか?

厚生労働省は学校保健安全法における出席停止期間(発症後5日かつ解熱後2日)が経過した後にもう一度検査などを受けたり、治癒証明書を発行してもらったりすることは不要としています。

保育所などの場合も同様です。

乳幼児の場合の登園は、発症5日かつ解熱後3日経過していることが一つの目安になっています[5]。

特に、令和4年11月には新型コロナウイルスとの同時流行を見据えて、医療機関への負担を減らすために治癒証明書の発行を求めないようにという通達が出されました[13]。

しかしながら、地域あるいは施設によっては治癒証明書の提出を求めているところもあります。

そのため、一度治癒証明書の要否については確認をしたほうが良いでしょう。

インフルエンザにかかったけど1日で解熱しました。

外出しても良いでしょうか?

インフルエンザは発症直前から発症後3〜7日程度まで感染力を持ちます[4]。

回復の早い人では1日で熱が下がる場合もありますが、直後にはまだ感染力が残っている可能性が否定できません。

できる限り不要不急の外出は避けましょう。

どうしても必要な場合は、マスクを着用した上で最小限にとどめるようにしてください。

何より病後は自分が考えているよりも体力が落ちている可能性が高いです。

無理せずに休養をとることを最優先にしてください。

インフルエンザが治りかけと思っていたらまた熱が出ました。

どうしてでしょうか?

2つの可能性が考えられます。

1つはインフルエンザの「2峰性発熱」です。

いったん解熱しても24時間以上たってから再発熱することで、特に免疫力が低い小児に多く見られる現象です。

いちどウイルス量が減少しても、再び再活性化してしまい発熱をきたすのではないかと考えられています[14]。

もう1つは細菌の2次感染です。

高齢者や免疫力が低下している方では、インフルエンザウイルスによる感染後に細菌性肺炎が合併しやすいことがわかっています。

インフルエンザ感染後のヒトの気道粘膜細胞には細菌が定着しやすくなるためです[15]

2次性の肺炎は重症化しやすく、致命的になることもあります。

高齢者や持病のある方では、インフルエンザが治りかけていると思っても注意深い観察が必要です。

再び熱や咳などの症状が出たら早めに病院受診をしてください。

まとめ

インフルエンザになってしまうと、症状のつらさに加えて仕事や学校を休まなければいけなかったり、周りを感染させていないか心配になったりと気になることがたくさん出てくることでしょう。

当然のことながら、インフルエンザにかからないのが一番です。

しかし、強い感染力を持つインフルエンザウイルスに対して、完全な予防というのはどうしても不可能です。

そのような中でも、感染力や予防方法についての基礎知識を持っていれば、被害を最小限に食い止めることができるかもしれません。

もし、かかってしまったときは、症状が良くなった直後も他の人に感染させてしまうかもしれないと考えて行動しましょう。

また、家族内でインフルエンザが発生してしまったら、感染をしないように対策を心がけてください。

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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。

参考文献

[1] 原めぐみ. カレントテラピー 38(12): 1187-1187, 2020.

[2] 庵原俊昭. 医療 67(5): 206-209, 2013.

[3] 矢野邦夫. インフェクションコントロール 28(4): 378-378, 2019.

[4] 一般社団法人 日本感染症学会| 院内感染対策講習会Q&A Q80

[5] 厚生労働省|令和4年度インフルエンザQ&A

[6] 厚生労働省|保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)

[7] Rolfes MA, et al. JAMA. 2023 Feb 14;329(6):482-489.

[8] Boëlle PY, et al. Influenza Otder Respir Viruses. 2011 Sep;5(5):306-16.

[9] 福岡県感染症予防|インフルエンザの感染予防策について

[10] 厚生労働省|インフルエンザ一問一答

[11] 東京都感染症情報センター|インフルエンザ対策のポイント

[12] 一般社団法人 日本感染症学会|症状からアプローチするインバウンド感染症への対応 感染症クイック・リファレンス インフルエンザ(季節性)(seasonal influenza)

[13] 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部|新型コロナウイルス感染症及び季節性インフルエンザに係る医療機関・保健所からの証明書等の取得に対する配慮について

[14] 日本臨床内科医会会誌 29(5): 761-764, 2015.

[15] 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構|インフルエンザに罹ると細菌性肺炎を合併しやすくなるメカニズムを解明―抗ウイルス薬や抗菌薬に代わる治療薬の開発に期待―

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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