帯状疱疹とはどんな病気?
帯状疱疹は、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによって発症する皮膚の感染症です。
多くの人は、子供の頃に感染した水ぼうそうと同じウイルスである水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで帯状疱疹として発症します。[1]
実は、子供の頃罹患した水ぼうそうが完治したと思っていても、背骨に近い神経に症状を出さない状態でウイルスが潜んでいるのです。
水ぼうそうに罹患したことがある人はその状態になっていると考えて良いでしょう。
疲労や加齢、ストレスなどによって免疫機能が低下するとウイルスが再び活性化してしまいます。
50歳代から発症率が上昇し、80歳までに約3人に1人が発症するといわれています。
ただし、ストレスや疲れが原因で若い人に発症することも少なくありません。
帯状疱疹の原因と初期からの症状の経過
帯状疱疹は、ほとんどの場合子供の頃に感染する水ぼうそうのウイルスが原因です。
皮膚の症状としては、身体の左右どちらかの神経に沿って、発疹と水ぶくれが帯状に集まり現れます。
皮膚症状だけでなく、神経にも炎症を起こすのが帯状疱疹の特徴の一つで”ピリピリ”や”チクチク”した痛みを伴うのも特徴の一つ。
また、発熱やリンパ節の腫れなどもみられることもあります。
発疹出現後は、水ぶくれに変化。水ぶくれは1週間ほどで破れ、皮膚がただれた後かさぶたとなります。
皮膚症状は3〜4週間前後で治まりますが色素沈着や傷跡が残る場合もあります。その頃には、痛みも軽減してくるでしょう。
ただし、症状が重い場合には後遺症として帯状疱疹後神経痛(PHN)が起こり、日常生活に支障をきたすような痛みに悩まされることもあります。
帯状疱疹の初期症状
帯状疱疹の初期症状は、皮膚のかゆみや痛み、違和感などです。
経過は様々ですが、発疹や水ぶくれが出現する2〜3日前から、身体の左右どちらかにかゆみや痛みを感じることが多いです。
皮膚に現れる初期症状は、皮膚表面が小さく盛り上がり丘疹(きゅうしん)と呼ばれる発疹の出現。
多くは体幹部(胸や背中、腹部など)に出現し、顔や目の周りに出現することもあります。
帯状疱疹の前兆はある?
一般的に、皮膚の症状が出現するよりも前に、前駆痛と呼ばれる痛みや違和感があらわれます。
前駆痛はビリビリするような痛みや、刺されるような痛み等苦痛を感じる程痛む人もいれば、違和感程度で気がつかない人もいるようです。
また、頭や顔に帯状疱疹を発症した場合、「目の痛み」や「頭痛」として捉えてしまう方もいるため、帯状疱疹と気づくまでに時間がかかってしまうパターンもあるでしょう。
帯状疱疹による痛みが数日続いた後、特徴的な赤い皮膚の発疹が出てくることでようやく帯状疱疹と気づく方も少なからずいらっしゃいます。
癌の前触れって本当?
帯状疱疹を発症したからといって、必ずしも癌になるわけではありません。
帯状疱疹を発症する原因の一つに免疫力の低下が挙げられます。
特に免疫力の中でもウイルス感染や癌を防ぐ細胞性免疫の低下によって発症します。
つまり、帯状疱疹を発症する人は細胞性免疫力が低下しているとも考えて良いでしょう。
一般の人と比較すると帯状疱疹を発症した人は、その後の5年間の癌の発生率が2倍から17倍という報告もあります。[2]
逆に、がん患者さんは一般の人と比べて帯状疱疹のリスクが高いことも示されています。
必ずしも帯状疱疹と癌が結びつくわけではありませんが、年に一度の健康診断でご自身の体調をチェックしておくのが良いでしょう。
帯状疱疹の症状はうつるのか?
帯状疱疹という病気そのものが人にうつることはありません。
ただし、水痘(みずぼうそう)のウイルスを、水痘にかかったことがない人へうつして水痘を発症する可能性があります。
帯状疱疹は他人からうつされる、あるいはうつす感染症ではないことを知っておきましょう。
帯状疱疹はどうやってうつるの?
主な感染経路は、帯状疱疹の患者さんの水ぶくれ液に接触すること(接触感染)です。
咳やくしゃみ唾液から飛沫感染することもあります。
水ぶくれの中には多量のウイルスが含まれているため、すべての水ぶくれが完全に乾燥してかさぶたになるまで感染力があります。
水痘にかかったことがない子どもとの接触は避けた方が良いでしょう。
帯状疱疹は大人から子供にうつる?
帯状疱疹として大人から子供にうつることはないと考えて良いでしょう。
ただし、水ぼうそうにかかったことのない子供にうつると、水痘(みずぼうそう)として発症する可能性があります。
特に、水痘の免疫がない母親から生まれた乳児は水痘に罹患すると重症化するリスクが高いです。
帯状疱疹を発症した際は、子供との接触は避けるようにしましょう。
帯状疱疹のうつる期間は?
帯状疱疹のうつる期間、いわゆる感染力のある期間は発疹が出現する1~2日前から発疹出現後1週間〜10日程度です。
ただし、発疹が完全に乾いたかさぶたになるまでは感染力があります。
帯状疱疹でしてはいけないことや気をつけること
d帯状疱疹を発症している場合、免疫力が低下していると思って良いでしょう。
基本的には安静にしてしっかり休養することが必要です。
また、帯状疱疹を発症している場合、他の人にウイルスを感染させないような行動が重要です。
接触感染や飛沫感染に気をつけるのはもちろんですが、家族の中で最後に入浴をするなどして完治するまでは感染させないように気をつけましょう。
特に、重症化させず早く完治するために気をつけることをご紹介します。
免疫低下をさせない
帯状疱疹を発症中は免疫低下をさせないことが大切です。
そもそも発症しているということは、免疫力が低下しており、潜伏していたウイルスが再活性化している可能性があります。
免疫を低下させる睡眠不足や疲れ、過度のストレスを感じるような行動は極力控えましょう。
疲労が溜まってしまうため、運動も控えた方が良いですよ。
免疫力維持に期待できるバナナがおすすめ
免疫力が低下している時はバナナの摂取がおすすめです。バナナには免疫細胞のエネルギー源になる糖質が多く含まれています。
さらに、たんぱく質の代謝に必要なビタミンB6やビオチンも多く含まれており免疫力維持に期待できるでしょう。
ただし、帯状疱疹を発症したからバナナがおすすめという訳ではなく、あくまで免疫力を保つためと覚えておきましょう。
水泡をつぶす
帯状疱疹の時にできた水泡は潰してしまわないようにしましょう。
水泡を潰してしまうと、細菌感染を起こし悪化してしまうケースも見られます。
水ぶくれはしっかりと洗い、万が一破れてしまった場合はガーゼで覆っておくと良いでしょう。
また、水ぶくれ内の液にはウイルスが多量に含まれています。
水疱瘡にかかったことがない子どもと接触すると感染の恐れもありますので、気をつけましょう。
自己判断で市販の薬を使う
帯状疱疹の際に自己判断で市販薬を使用するのは控えましょう。
現時点で、帯状疱疹の治療に有効な成分を含んだ市販薬は販売されていません。
早めに医療機関を受診して、適切な薬を処方してもらうと良いでしょう。
帯状疱疹の治療方法は?薬物療法の種類
帯状疱疹の治療方法は大きく分けて「抗ウイルス薬での治療」と「外用薬での治療」に分類されます。
ご自身の症状に合わせた治療が必要なので、帯状疱疹の初期症状が現れたら、速やかに医療機関を受診をしましょう。
抗ウイルス薬での治療
帯状疱疹の原因である水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を使用した治療が有効です。
抗ウイルス薬は基本的には内服薬で、医療機関によっては点滴薬を使用する場合もあります。
帯状疱疹を発症した際に主に使用される抗ウイルス薬は以下の通りです。[3]
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アシクロビル(内服薬)
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バラシクロビル(内服薬)
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ファムシクロビル(内服薬)
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アシクロビル(注射薬)
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ビダラビン(注射薬)
抗ウイルス薬の効果が現れるまで、3日程度かかりますが、初期症状の時点で飲み始めると良いとされています。
外用薬(塗り薬)での治療
皮膚の症状を抑えるために、抗ウイルス薬の塗り薬(軟膏など)を使用することもあります。
初期では非ステロイド抗炎症薬(コンベック軟膏、アズノール軟膏など)、潰瘍形成したものには潰瘍治療薬(ゲーベンクリームなど)を処方します。
軽症の場合やウイルスの活性化が抑えられている場合は、外用薬のみ処方される場合もあるでしょう。
抗ウイルス成分の外用薬以外にも、炎症や痛みを抑えるための鎮痛薬、皮膚の傷に対する軟膏などの塗り薬が使われることもあります。
鎮痛薬の使用
帯状疱疹そのものを抑えるためではなく、帯状疱疹による痛みに対して鎮痛薬(カロナールなど)を使用します。
帯状疱疹の痛みは初期の時点で感じることも多く、そのような場合は鎮痛剤を処方されることが多いでしょう。
鎮痛薬を服用しても痛みが非常に強い場合には、ペインクリニックを紹介し神経ブロックと呼ばれる治療をすることもあります。
帯状疱疹はワクチンで予防できる?
帯状疱疹はワクチンで予防できます。
現在日本では以下2種類のワクチンがあります。
どちらも帯状疱疹の予防に有効であるといえるでしょう。
帯状疱疹のワクチン接種対象は?
帯状疱疹のワクチンは、主に50歳以上の方が接種対象です。[6]
水疱瘡に罹患歴のある人は、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスの免疫を獲得済みですが、加齢とともに免疫が弱まってしまいます。
そのため、ワクチン接種によって免疫を強化することで予防に繋がるでしょう。
帯状疱疹ワクチンは保険適用できる?金額と自治体による助成
現時点では、予防接種法に基づき公費負担される定期接種に位置付けられていないため、帯状疱疹ワクチンは保険適用されていません。
そのため、基本的に接種料金は自己負担です。
ワクチンの金額は、新ワクチン(シングリックス)で1回約18,000円〜25,000円、旧ワクチン(水痘ワクチン)で1回約6,000円〜8,000円です。[7]
自治体によっては、一部費用助成制度がありますので、お住まいの自治体HPにてご確認ください。
帯状疱疹のワクチンは何年おきに接種する?
帯状疱疹のワクチンのうち、新ワクチン(シングリックス)のみ2回接種が必要です。
シングリックスは1回目の接種から2ヶ月後に2回目の接種をします。
2ヶ月以上の間隔があいた場合は、遅くとも1回目から6ヶ月後までの接種が推奨されています。
帯状疱疹ワクチンの副反応で発熱する?解熱剤は使ってもいい?
帯状疱疹のワクチンの副反応で発熱する場合もあります。
通常ワクチンの副反応による発熱は接種後1~2日以内に起こります。
必要に応じて、解熱鎮痛剤を服用することも可能です。発熱中は水分を十分に摂取し安静に過ごしましょう。
帯状疱疹ワクチンの副反応でかゆみや発疹は現れる?
帯状疱疹ワクチンの副反応でかゆみや発疹が現れる場合もあります。
主な副反応として、新ワクチン(シングリックス)でよくみられる副反応は、発熱、注射部位の痛みや発赤、腫れ、頭痛、疲労、筋肉痛、ふるえ(シバリング)などです。
旧ワクチン(水痘ワクチン)では、注射部位の痛み、発赤、腫れ、かゆみ、頭痛などが副反応として現れます。
帯状疱疹のワクチン接種後、副反応はいつまで続く?
新ワクチン(シングリックス)の場合、2~3日程度で副反応は落ち着くとされています。
一方、旧ワクチン(水痘ワクチン)の場合は、ワクチン接種をして1~3週間後に発熱することもあります。
接種するワクチンの種類によっても異なりますので、ワクチン接種後は経過を観察して過ごすことをおすすめします。
帯状疱疹の発症部位別症状解説
帯状疱疹の症状は通常、身体の左右どちらかの神経に沿って帯状に現れます。
発症する部位の多くは上半身です。
上肢~胸部背部が約30%、腹部が約20%です。
発症部位①:顔面
帯状疱疹を顔面に発症した場合、おでこから目にかけて発疹が現れることが多いです。
また頬の辺りに片側のみ現れることもあります。
また、目の周りに現れたものは「眼部帯状疱疹」と呼ばれ、特に注意が必要です。
発症初期から結膜炎や角膜炎などが起こることもあります。
発症部位②:首
帯状疱疹は、首に症状が出ることもあります。
発症した場合、首の左右どちらかに症状が出ることがほとんどです。
肩から首筋の痛みだけでなく、腕が上がらないといった運動麻痺の症状が出ることがあります。
また、首の神経は指先までつながっているため、指先にも痛みや痺れを感じる方もいます。
発症部位③:上肢
帯状疱疹は、左右どちらかの上肢(肩や腕)に症状が出ることもあります。
痛みやかゆみ、腕が上がらなくなる程の症状が出ることもあります。
発症部位④:背中
帯状疱疹は背中にも出現します。
背中の一部が、片側だけビリビリ痛いというのが典型的な症状です。
背中の場合、自分で目視しづらいので、発疹を見つけにくく発見が遅れることもあります。
Q&A
帯状疱疹の症状について気になる質問をまとめました。
帯状疱疹の初期症状はどんな痛みですか?
帯状疱疹を発症すると、ピリピリ、ズキズキといった痛みを感じます。
また初期であっても「焼けるように痛い」といった鋭い痛みを感じることもあります。
帯状疱疹は何日ぐらいで治るんですか?
一般的には治療開始後から3週間程度で治ります。
早めに医療機関を受診して適切な治療を受ければ、その分治りも早いでしょう。
帯状疱疹を発症した方の多くは1週間くらいで皮膚症状(赤みや水ぶくれ)が落ち着き始め、その後はかさぶたとなります。
皮膚症状が治まった後も、痛みが何ヶ月も続く場合もあります。
帯状疱疹はどうしたら治りますか?
帯状疱疹の治療は、原因となるウイルスを抑える抗ウイルス薬の投与と、痛みに対する鎮痛薬が主な治療方法です。
重症の場合や免疫機能の低下が見られる場合は、入院して抗ウイルス薬の点滴による治療が必要となることがあります。
帯状疱疹の初期症状はどこに出る?
帯状疱疹は全身どこにでも起こります。
特に発症しやすいのは、顔や胸、背中です。
帯状疱疹はほっといても治りますか?
帯状疱疹の症状(発疹や水ぶくれなど)は、ごく軽症の場合は治療を行わなくても治る場合もあります。
しかし、治療が遅れ重症化してしまうと、頭痛や39℃以上の発熱などの全身症状が現れることもあります。
放置して長期間症状に苦しむことがないよう、早めの受診がおすすめです。
帯状疱疹はやばいですか?
帯状疱疹は水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによるもので、神経の流れに沿って障がいをおよぼす特徴があります。
そのため、重症化し目や耳などの神経を傷つけると視力低下や失明、難聴などを引き起こすこともあります。
一言で「やばい」とまとめることはできませんが、帯状疱疹の症状をあなどってはいけません。
まとめ
帯状疱疹は水疱瘡にかかったことがある人であれば、誰でもなり得る病気です。
初期症状を見逃して放置してしまい重症化した場合、合併症や後遺症のリスクが高まります。
帯状疱疹の症状や特徴を理解しておくことで早期発見、早期治療でき、重症化を防げるでしょう。
帯状疱疹は予防できます。
むやみに発症を怖がるのではなく、身体の免疫が低下して発症のきっかけを作らないことも大切です。
バランスの良い食事や適度な運動、睡眠をしっかりとるなど、日々の生活を規則正しく過ごし、免疫力を保ちましょう。
特に50歳以上は発症率が高い傾向にありますので、予防接種も検討しておきましょう。
日頃からご自身の身体をチェックして発症した時に適切な対処ができるよう、帯状疱疹についての理解を深めることも重症化を防ぐ第一歩です。
本記事を参考にして、帯状疱疹の初期症状を見逃さないよう参考にしてみてください。
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
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参考文献
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。