熱中症の初期症状|病院に行くべきか・何科を受診するのかの判断

公開日: 2024/06/23 更新日: 2024/09/29
「熱中症になりかけているかも...どんな症状が出るの?」 「どういう状態になったら病院に受診した方がいい?何科を受診するの?」 「熱中症を疑った時の応急処置は?」 熱中症は気付いた時にすぐに対処しなければ命を落とす危険もある危険な状態です。 そこでこの記事では熱中症の初期症状と、どんな症状が出たら病院に行くべきなのかを詳しく解説します。
【熱中症】の気になる症状について教えてください
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熱中症の初期症状

熱中症になりかけているときは、以下の症状が出やすいとされています。

  • 大量の発汗

  • めまい

  • 失神(意識を失う)

  • こむら返り(足がつる)

  • 手足の筋肉痛のような痛み

高温多湿な状況で体温が上がると、体温を下げようと働き血圧が下がります。このような血圧や血流の変化と脳への血流低下で、めまいやぼーっとするような症状がでてくるのです。

また、体温を下げようと大量に汗をかき、体内の水分や塩分が失われると、足のつりやこむら返り、筋肉痛のような症状が出現します。

これらの症状が出現した場合は、すぐに応急処置をおこなうようにしましょう。

  1. すぐに涼しい場所に移動する

  2. 不要な衣類は脱いで体を冷やして体温を下げる

  3. 嘔吐がなく意識がある場合は水分と塩分を補給する

屋内でも湿度が高く風通しが悪いと熱中症になることがあります。熱中症は気温が25℃前後でも出現する可能性があるので、十分注意が必要です。

とくに体温調整が未発達な乳幼児や、暑さや口の乾きを感じにくい高齢者は熱中症にかかりやすいので注意しましょう。

ずっと室内で過ごしていても油断せず、温度・湿度管理、水分摂取には注意してください。[3]

熱中症が進行するとどうなる?

熱中症の初期症状をそのまま放置すると症状が悪化します。重症の方は入院、最悪の場合は死に至ることもあります。

熱中症の症状や対応方法を理解していないと応急処置が遅れ、重症化につながってしまうのです。

応急処置が必要な初期症状、速やかに医療機関に受診する必要がある中程度から重度の症状を知ることで、適切な対応ができます。

ここから、熱中症の分類ごとの症状について紹介します。

Ⅱ度熱中症(中度)ではどんな症状が出る?

Ⅱ度熱中症で出現する代表的な症状は以下のとおりです。

  • 頭痛

  • 吐き気・嘔吐

  • 体のだるさ

  • 頻脈(3本の指を反対側の手首に当てて10秒間脈をとってみましょう)

  • 集中力や判断力の低下

  • チアノーゼ:唇や指先が紫になる

Ⅱ度熱中症は、初期症状よりも脱水が進行しており、点滴するなど医療機関での適切な治療が必要な状態です。

頭痛や倦怠感などの自覚症状は、風邪や新型コロナウイルス感染症、インフルエンザなどと勘違いをして、発見が遅れてしまうことがあります。また、子どもや高齢者は自身の体調変化に気付きにくかったり、体調が悪いことをうまく伝えられずに発見が遅れてしまいがちです。熱中症が起きやすい条件下では、とくに注意するようにしましょう。[2]

Ⅲ度熱中症(重度)ではどんな症状が出る?

Ⅲ度熱中症で出現する代表的な症状は以下のとおりです。

  • 意識障害:呼びかけや刺激を与えても反応が悪い、にぶい、意識がない

  • 痙攣(けいれん):本人の意思と関係なく体や手足が震える

  • 手足の運動障害:手が思うように動かせない、真っ直ぐに歩けない

  • 高体温(40℃以上)

上記の症状はⅢ度(最重度)の熱中症です。

Ⅲ度の熱中症は、脳神経などの中枢神経(ちゅうすうしんけい)や臓器に障害が出現し、後遺症や命に関わる危険な状態を招く危険性があります。

このような中枢神経障害や、臓器障害を招く原因として

  1. 高熱により、細胞や臓器に障害が起こる

  2. 体の血流が急激に低下して臓器に障害が起こる

  3. 全身性の急性な炎症反応が起こる

などがあげられます。

Ⅲ度の 熱中症は緊急的な対応が必要な状態です。すぐに救急車を呼びましょう。

救急車を要請した場合、救急車が家に到着するまでに体を冷やしたり、不要な衣服を脱がせて体温をできる限り下げることが重要です。 [4]

熱中症セルフチェックシート

熱中症セルフチェックシートは、症状をチェックするだけで現在の熱中症の状態を簡易的に確認できるシートです。

このチェックシートを利用すると、応急処置で対応可能か、すぐに救急車を呼ぶべきか目安が確認できます。

夏場に温度と湿度が高い場所で活動するときは、下記のセルフチェックシートで熱中症になっていないかチェックすると良いでしょう。

とくに学校や行事、部活などで活用すると効果的です。

チェック

 
 

1 大量に汗をかいている

 

2 頭がぼーっとする、めまいや立ちくらみがある

 

3 気持ちが悪い

 

4 足がつる感じ、筋肉がピクピクする

 

5 頭が痛い

 

6 吐き気、吐いてしまった

 

7 全身のだるさ、ぐったりしている

 

8 脈拍が早くなっている

 

9 体に力が入らない

 

10 手や唇が紫色になっている

 

11 手足や体が本人の意思と関係なくピクピクする、ひきつけを起こしている

 

12 足がもつれている、真っ直ぐに歩けない、立ち上がれない

 

13 意識がない、意識がもうろうとしている

 

14 異常な言動や行動

 

15 体が異常に熱い(40℃前後の高熱)

  • 1~4の項目が当てはまった方

    軽度熱中症の疑いがあり、初期症状が出現している可能性があります。

すぐに涼しく風通しのある日陰や冷房の効いた室内に移動して、水分と塩分を補給しましょう。

脱げる衣類は脱いでください。とくに体に密着している衣類を着ている場合は脱がせましょう。

軽度熱中症の場合、すぐに適切な処置をすれば数十分~数時間で症状が良くなることがほとんどです。

  • 5~10の項目が当てはまった方

    中度熱中症の疑いがあります。

    すぐに内科や救急科を受診して、点滴や冷却処置を受ける必要がある状態です。

    早めに対処しなければ重度熱中症に悪化したり、入院になるリスクが高まります。

  • 11~15の項目が当てはまった方

    命の危険がある、重度熱中症の疑いがあります。

臓器や脳に異常や起きている状況が考えられ、入院して集中治療をおこなう必要があります。

迷わず救急車を要請してください。[5]

中等症以上の症状が当てはまったら

頭痛や吐き気などの中等症状がある場合はファストドクターでも相談・治療を行うことができます。

ファストドクターにお電話いただければ「病院に行った方が良いのか」などの相談ができ、治療の必要があればそのまま医師がご自宅に伺います。

ささいな症状でもまずは一度症状をお聞かせください。

※意識がない、まっすぐ歩けないなど重度の症状が出ている方は救急車を要請してください。

熱中症と間違えやすい他の病気

熱中症と似た症状が出現する病気に、風邪や新型コロナなどの感染症や脳梗塞があります。

体温上昇や頭痛やだるさ、めまい、意識障害など、熱中症の症状と似た症状が出現するからです。

気温や湿度が高い状況で症状があった場合は、まずは熱中症を疑うべきですが、病気を特定するには診察や検査が必要です。

  1. 風邪や新型コロナなどの感染症

新型コロナや風邪のようなウイルス感染症と熱中症に共通する症状に、高熱・頭痛・体のだるさなどがあります。

風邪や新型コロナによる発熱は、ウイルスを排除するための体の防御反応です。熱中症による発熱は、体温調整機能が機能しなくなり、熱を体外に放出できずに出現する症状です。

感染症による発熱は汗をかいて熱が上がることが多いですが、熱中症が重度になると汗がかけずに熱がこもって体温が上がります。

ウイルス感染症の鼻水やのどの痛み、咳などの特徴的な症状も判断材料になります。

しかし、それだけでは判断できませんし、自分たちで判断するのも危険ですので必ず受診するようにしましょう。

 

環境

症状

熱中症

高温、多湿な場所で活動していた

水分を摂取できていなかった

Ⅰ度:めまいや立ちくらみ、発汗、足のつり

Ⅱ度:吐き気、嘔吐、脱力感、だるさ

Ⅲ度:ひきつけ、意識障害、高熱

新型コロナウイルス

家族や周りに感染者がいる

高熱、寒気、だるさ、関節痛、筋肉痛、鼻水、のどの痛み、咳、くしゃみ、声がれ、味覚・嗅覚の異常、下痢など

[6]

  1. 脳梗塞

脳梗塞と熱中症の共通の症状として、めまいやふらつき、ぼーっとしたりする症状があります。

どちらも夏場に起こる可能性があるのも区別しづらい理由の一つです。

夏場暑くなり水分摂取量が少ないと、血液中の水分量が減り、血液がドロドロになって血栓(血のかたまり)ができやすくなるのです。

脳梗塞の特徴的な症状として、麻痺があります。麻痺とは、体の一部が動かせなくなる症状です。麻痺は片側に起こりやすいのも特徴です。

ろれつが回らなったり、言葉が出なくなったりする「言語障害」も脳梗塞で起こる症状の一つです。

脳梗塞も重度の熱中症も緊急的に対応しないと命に関わります。すぐに救急車を呼ぶようにしましょう。

 

環境

症状

熱中症

夏、初夏や初秋で急に温度が上がったとき

湿度が高いとき

Ⅰ度:めまいや立ちくらみ、発汗、足のつりなど

Ⅱ度:吐き気、嘔吐、脱力感、だるさなど

Ⅲ度:ひきつけ、意識障害、高熱など

脳梗塞

夏で脱水傾向のとき

冬の血圧上昇や、寒暖差で血圧変動出やすい時期も起こりやすくなる

めまいやふらつき、麻痺、言語障害(ろれつが回らない・言葉が出てこない)、しびれ、視野の異常、

[7]

 

軽度熱中症の治し方

熱中症を治す方法で最も重要なのは「体を冷やす」「水分と塩分をとる」です。

軽症の熱中症であれば、適切な応急処置で数十分程度で改善が見込めます。

具体的にどのような応急処置をおこなうと良いか、効果的な方法を紹介します。

体の冷やし方

  1. クーラーの効いた屋内に移動する、もしくは風通しの良い日陰に移動する

  2. 靴や靴下、帽子など、密着している衣類を脱いだり、ベルトを緩めたりする

  3. 首やわきの下、太ももの付け根など、太い血管が通っている部位を冷やす

  4. 扇風機やうちわで風を送る

熱中症は体内に熱がこもっている状態なので、早急に冷やして熱を逃がす必要があります。

氷のうがあれば良いですが、無い場合は、濡れたタオルや冷たいペットボトルなどを使用すると簡単に冷やすことができます。

水分と塩分のとり方

  1. 経口補水液を飲む

  2. スポーツドリンクを飲む

  3. 塩タブレットと水を飲む

熱中症で脱水になると、体内から水分とともにミネラルも大量に失われます。OS-1のような経口補水液やスポーツドリンクには、ミネラル成分が配合されています。水とミネラルがバランスよく配合されている飲料は、細胞への水の吸収率・吸収速度が非常に高いのです。

スポーツドリンクに比べて、経口補水液はミネラル濃度が高いので、軽度熱中症の水分摂取に推奨されます。

経口補水液やスポーツドリンクが手元にないときは、塩味がある食べ物と水をとるようにしましょう。[8]

よくある質問

Q1.熱中症で頭痛や吐き気は出る?

A.出ます。

熱中症になると、体内の水分やミネラルが喪失します。それにより、脳や消化器への血流が悪くなって頭痛や吐き気が出現するのです。

頭痛や吐き気が出る場合は、Ⅱ度(中度)熱中症の特徴です。応急処置をしながら、すぐに医療機関を受診してください。

適切な治療をしないとⅢ度異常へ重症化する恐れもあります。すみやかに適切な対応をすれば当日や翌日中に回復するケースがほとんどです。

Q2.熱中症は夜や翌日に症状が出ることはある?

A.あります。

日中暑い中で活動しているときは体調に異変はなかったものの、時間が経過してから熱中症が出現するケースもあります。

脱水や体温上昇から症状がゆっくりと悪化して夜や翌日に熱中症を発症するのです。

家でさほど温度が高くない状態でも湿度が高く、風通しが悪いため熱中症になるケースもあります。就寝中は水分が摂取できないため、翌日に発症する場合もあるため注意が必要です。

下記の、労働災害における熱中症発生時刻のグラフを見ても、どの時間でも熱中症が発生する可能性があることがわかるでしょう。夜に温度が下がらない場合は寝るときもエアコンをつけっぱなしにして、湿度は60%以下に保つようにしましょう。

就寝前にコップ一杯の水をとるのも効果的です。お酒は利尿作用で脱水になりやすくなるので控えてください。

[9]

引用|熱中症環境保険マニュアル2014|環境省

Q.3熱中症は何日で治る?

A.軽症で適切な応急処置をすれば、数十分で回復することが多く、入院や自宅で療養となっても、数日で回復することがほとんどです。

軽症でも応急処置で改善せず入院した場合や、Ⅱ度の熱中症で入院した場合は、1~3泊程度入院する可能性があります。

Ⅲ度熱中症では、10日以上入院する方もいるのが表からわかります。[10]

引用|熱中症の実態調査- Heatstroke STUDY 2006 最終報告-

まとめ

熱中症と思われる症状が出現したら、

  • 涼しく風通しの良い場所に移動して、体を冷やす

  • 塩分と水分を摂取する

この2点をすみやかにおこないましょう。チェックシートで重症度が高い場合はすぐに救急車を呼び、待っている間に応急処置で対応しましょう。

また、熱中症にならないための予防も大切です。外で活動する日は熱中症予防などを確認して、適切な休憩と水分・塩分摂取してください。

屋内でも、室温が28℃以上、湿度が70%を超える場合はエアコンを使用しましょう。

中度の熱中症症状はでていませんか?

頭痛や吐き気がある場合は医療機関で点滴治療を受けることが推奨されています。

ファストドクターにお電話いただければ「熱中症の可能性があるのか」「病院に行った方がいいのか」などを聞くことができ、もし治療が必要な状況だと判断した場合はそのまま治療が可能です。

「ただの体調不良かもしれない」と放置する前に、まずは一度症状をお聞かせください。

参考文献

[1]熱中症の基礎知識|熱中症予防情報 サイト|環境省

[2]熱中症を防ごう!|厚生労働省

[3]熱中症について学ぼう:症状|熱中症ゼロへ|一般財団法人日本気象協会

[4]熱中症Ⅰ~Ⅲ度分類の意義|日本医師会雑誌|第140巻第4号

[5]熱中症チェックシート|弘前大学

[6]コロナと熱中症の診療|総合病院国保旭中央病院

[7]熱中症? いや、脳梗塞かもしれない! Part 1

症状の見分け方と対策|日本生活習慣病予防協会

[8]熱中症診療ガイドライン2015|一般社団法人日本救急医学会

[9]熱中症環境保険マニュアル2014|環境省

[10]熱中症の実態調査- Heatstroke STUDY 2006 最終報告-

記事監修
  • 名倉 義人
    救急科専門医

    ・平成21年 名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事 ・平成23年 東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得 ・平成27年 東戸塚記念病院で整形外科として勤務 ・令和元年 新宿ホームクリニック開院

    日本救急医学会、日本整形外科学会

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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