A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?症状や治療法などについて解説

公開日: 2023/12/26 更新日: 2024/06/24
のどの痛みと熱で病院を受診し「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」の診断を受けたけど、どんな病気なのかわからない、と思ったことはないでしょうか。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(a群β溶血性連鎖球菌)とは「溶血性連鎖球菌」がのどに感染して引き起こされる咽頭炎です。 一般的に溶血性連鎖球菌を「溶連菌」とも呼びます。溶血性連鎖球菌による感染は正しい治療や感染対策を行わないと、合併症や周りへの感染を引き起こしてしまいます。また、子どもが感染した場合は決められた期間、登園・登校ができません。 そこでこの記事では、初めて感染した人でも正しく対応できるように、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎をわかりやすく解説します。記事を読むことでA群溶血性レンサ球菌咽頭炎に関する下記のことが分かります。 ・症状や治療法 ・検査方法 ・感染経路 ・感染しやすい年齢 ・登園や登校のめやす ・のどの痛みが強い時の対処法 自分や家族、周りの人が溶血性連鎖球菌の診断を受けたという人は、ぜひお読みください。
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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?

溶血性連鎖球菌にはいくつかの種類がありますが、一般的に知られているのがA群溶血性レンサ球菌です。のどに感染することで咽頭炎や扁桃炎を引き起こします。症状が落ち着いても再発したり、合併症を起こしたりするため、適切な治療が重要です。

ここでは、A群溶血性レンサ球菌による咽頭炎の症状や検査方法、合併症、治療法について解説します。

症状

A群溶血性レンサ球菌は、咽頭炎を引き起こしやすく下記のような症状がみられます。

  • 強いのどの痛み

  • 発熱(38~39℃)

  • いちご舌(舌が赤く腫れ、いちごのツブツブのような舌)

  • のどに白色の膿(うみ)

  • 吐き気や嘔吐

のどが赤くなり腫れ、点状に膿(うみ)ができます。強いのどの痛みがあるのが特徴です。そして、舌がいちごのように赤くなり、ブツブツがみられます。

重症化すると、A群溶血性レンサ球菌の感染によって、全身に皮疹ができるなどの症状があります。

  • 全身の倦怠感

  • 全身の赤い発疹

  • 日焼けのような赤い肌

  • 目が赤くなる など

発疹はまず首や脇の下、足の付け根などにでき、全身に広がります。そして、熱が下がり1〜2週間すると発疹は薄くなり、手のひらや足の裏の皮膚が剥がれ落ちます(皮膚落屑)。発疹がひどくなければ、皮膚が剥がれ落ちる症状はあまり見られません。

急な発熱や強いのどの痛み、いちご舌、全身の赤みと発疹などがA群溶血性レンサ球菌による特徴的な症状です。A群溶血性レンサ球菌による発熱やのどの痛み、発疹などの症状が出る感染症を「しょうこう熱」とも言います。

検査の方法

発熱だけでなく、いちご舌や強いのどの痛みなどのA群溶血性レンサ球菌咽頭炎に特徴的な症状がある場合に検査します。綿棒でのどをぬぐって細菌を採取する検査です。およそ5〜10分ほどで結果が出ます。

重症化を防ぐために、早期に診断することが重要です。したがって、A群溶血性レンサ球菌を検査するための迅速診断キットは、多くの医療機関で準備されています。特徴的な症状が出現した際には、まずはお近くの医療機関へ受診してみましょう。

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合併症

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎のおもな合併症として急性糸球体腎炎やリウマチ熱があります。感染後2〜4週間に引き起こされることがあり、発熱などの症状が落ち着いた後でも注意が必要です。

特に下記のような症状が出た場合は、すぐに医療機関に受診してください。

急性糸球体腎炎

  • むくみ(顔や手足など)

  • 血尿(茶色っぽい尿)

  • 尿の量が減る

  • 全身倦怠感

  • 背中の痛み など

リウマチ熱

  • 発熱

  • 関節痛(膝やひじ、手首など)

  • 胸痛や動機(心臓の炎症によるもの)

  • けいれん性の動き

  • 発疹

  • 小さなしこり(皮膚の下にできる) など

他にもA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の合併症として、髄膜炎や中耳炎、敗血症があります。熱やのどの痛みが落ち着いた後でも、合併症には注意しておきましょう。

治療法

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎と診断されると、抗生剤(抗菌薬)の薬が処方されます。薬を飲み始めると、2〜3日で症状がやわらぎます。症状が落ち着いた場合でも必ず処方された薬は最後まで飲みきりましょう。薬を中断すると再発する可能性があります。完全に除菌するために、処方された薬をすべて飲むことが重要です。

大人もうつる?A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の感染経路について

A群溶血性レンサ球菌は感染力が強く、治療だけでなく、感染しないための予防も大切です。そこで、ここではA群溶血性レンサ球菌の感染経路や感染しやすい年齢、予防法について詳しく解説します。また、感染した子どもが幼稚園や保育園、小学校などに登園・登校してよい時期についても説明します。

感染経路

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、飛沫と接触によって感染します。

飛沫感染

  • くしゃみや咳、会話による飛沫によって感染

  • 感染範囲は2m以内(飛沫が飛び散る範囲)

接触感染

  • 直接触れることによって感染(握手やだっこなど)

  • 間接的に触れることで感染(ドアノブや遊具など)

  • 細菌が付いているものに触れた後に鼻や目をこすることで、からだの中に入る

潜伏期間は2〜5日であるため、感染して数日経ってから症状がでます。

子どもに感染しやすい

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は年齢に関係なく感染します。しかし、学童期(3〜14歳)の子どもに感染が多く、3歳以下の子どもや大人は感染しても症状が出にくいです。また、流行期は寒い時期や春から初夏にかけてです。流行期には大人にも感染しやすいので、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の特徴的な症状が出たらすぐに医療機関を受診しましょう。

予防方法 

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の予防方法は、手洗いやうがい、マスクの着用です。飛沫および接触感染であるため、咳やくしゃみの飛沫を浴びないようにし、ドアなどを触った手で目や鼻をこすらないようにすることが重要です。

症状が落ち着くまで登園・登校できない

溶連菌は学校保健安全法で、第3種の感染症として出席停止措置をとれる疾患のひとつです。そのため、登園・登校できる期間が決まっています。「治療を開始してから1日経過し、全身状態がよければ登園や登校が可能」です。

適切な抗菌薬を使うことで、24時間以内には細菌の感染力がほとんどなくなります。感染力がなくなるからといって、内服して24時間後に登園・登校してよいというわけではありません。症状の有無を確認し、体調に合わせて登園・登校しましょう。

【A群溶血性レンサ球菌咽頭炎】食欲がないときと対処法は?

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は強いのどの痛みや吐き気によって、食事が摂りにくくなります。しかし、体力をつけ免疫力を高めるためにも、できる限り食事を摂ることは大切です。

そのため、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎に感染した場合は、のどの痛みを悪化させない食べやすい食事を摂るようにしましょう。

のどに刺激のある食べ物は避ける

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎に感染した時は、のどに刺激のある食べ物は避けましょう。のどに刺激のある食べものは、下記の通りです。

  • すっぱいもの

  • 熱いもの

  • 冷たすぎるもの

  • 辛いもの

  • にがいもの

  • 炭酸飲料

食欲がないときは無理に食べる必要はありませんが、体力をつけ、免疫力を上げるために食事を摂ることは大切です。

食事ができそうな時はのどごしがよく、消化に良い食事がおすすめです。

  • おかゆ

  • パンがゆ

  • やわらかいうどん

  • 豆腐

  • ゼリー

  • ヨーグルト

  • プリン など

少しずつ、無理なく食事を摂るようにしましょう。そして、脱水予防のために水分摂取は忘れないようにしてください。

水分はしっかり摂る

水分をしっかり摂ることは重要です。発熱によって脱水になりやすいからです。のどの痛みがあり、水分を摂りにくいこともあるでしょう。しかし、少しずつでもよいので水分は必ず摂りましょう。水分は、麦茶や経口補水液、イオン飲料を飲むとよいです。

万が一、水分を全く飲み込めないという場合は、脱水症状に陥る場合があります。状況によっては点滴などの何かしらの治療が必要になる場合もあるので、医療機関に相談しましょう。

まとめ

今回の記事では、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の症状や治療法、感染経路、予防法などについて解説しました。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、いちご舌や全身の発疹、強いのどの痛み、急な発熱といった特徴ある症状が引き起こされる感染です。

適切な治療を受けないと、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。また、感染力が強いため周りの人に感染を広げてしまいます。そのため、発熱にのどの痛みがあるなど疑わしい症状がある場合は、すぐに医療機関を受診し、早期に治療を始めましょう。



【参考文献】

「学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説」|日本小児科学会

保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)|こども家庭庁

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律|厚生労働省

参照:学校感染症:出席停止の基準 学校保健ポータルサイト

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本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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