糖尿病の運動療法とは?禁忌や注意点も徹底解説!

公開日: 2023/12/30 更新日: 2024/05/22
効果の高い糖尿病の運動は?運動をしないとどうなるの?といった悩みでお困りでないでしょうか? この記事では糖尿病の運動療法についてご紹介します。 効果的な運動の方法や、運動時の注意点をお伝えします。 運動療法が禁忌になる場合や運動の中止基準も解説しますので参考にしてください。
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目次

糖尿病の運動療法は治療効果があるの?

運動療法は糖尿病の治療の一つです。

糖尿病は、糖や脂質の代謝に重要な役割をもつ、インスリンというホルモンの働きが不足することでおこります。

安静にしているときに、体のエネルギー源になるのは脂肪です。しかし、運動時にはブドウ糖がエネルギー源になります。

本来血液中のブドウ糖はわずかですが、糖尿病の患者様は血中の糖を使用しなければなりません。

また、運動により筋肉の血流が増えるとインスリンが効きやすくなり、糖の代謝を促すことで糖尿病の治療に効果的です。

運動を継続することで、細胞に取り込まれる糖が増えるので、血中の血糖値を穏やかにします。

糖尿病の治療は薬物療法・食事療法・運動療法の三つの柱があります。

運動は糖尿病を治療するために必要な要素です。運動を継続することで血糖コントロールを穏やかにし、薬の量を減らせるでしょう。

糖尿病で運動をしないとどうなるの?運動不足の影響は?

糖尿病で運動をしないと、薬の量が増えたり、血糖がコントロールされないことで糖尿病合併症などを引き起こす可能性があります。

運動不足は心疾患における死亡率にも影響しています。

糖尿病での運動療法の最大のメリットは、インスリンが効きやすい体になることです。運動をやめてしまうと3日で効果は落ちてしまいます。

さらに、1週間で効果が無くなってもとに戻ってしまうので運動は継続が必要です。運動不足と糖尿病の発生には因果関係があるようです。

有酸素運動能力と糖尿病の有病率を調べた研究では、有酸素運動能力の低下が著しいほど、糖尿病の発症率が高い結果が出ています。

安静時は脂肪がエネルギー源となりますが、運動時は糖がエネルギー源になるので、運動不足となると筋肉で糖が消費されません。

2型糖尿病に対する運動療法は、インスリンが効きやすくなり血糖をコントロールするだけではありません。

運動は心血管疾患の原因となりうる肥満、内臓脂肪の蓄積、脂質異常症、高血圧症の改善に関与しています。

生活の質の向上やうつ状態の改善、さらには認知機能障害の改善も可能です。運動不足は運動のもつメリットを手放すことになるため、糖尿病の治療を行う上で非効率です。

糖尿病の運動不足は死亡率が高い心筋梗塞や脳卒中にも影響します。

運動療法は最大酸素摂取量(酸素を効率よく使う値) の増加 や 長期の血糖コントロールを示すHbA1c値 の改善が期待できます。

2型糖尿病に対する運動療法は、心拍変動の改善や血管機能の上昇にも繋がり、心筋梗塞や脳卒中の発症予防となるでしょう。

参考:https://www.pieronline.jp/content/article/0022-1961/113010/101

糖尿病の運動療法の種類は?強度や時間について説明!

糖尿病の運動療法は、スクワットやダンベル運動のようなレジスタンス運動と、ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動が効果的です。

レジスタンス運動とウォーキングはそれぞれ単独でも効果がありますが、組み合わせることでHbA1cの数値を改善できます。無理なく楽しんでできるものを選択しましょう。

糖尿病の運動にレジスタンス運動がいい理由

レジスタンス運動は、身体活動に必要な筋肉量や筋力を増加させ、インスリンが使われやすい体になります。血糖コントロールにも有効です。

筋肉は食事から得たブドウ糖を取り込み、グリコーゲンとして貯蔵する役割があります。グリコーゲンとは、糖を筋肉に貯蔵するために形を変えたものです。

グリコーゲンを貯蔵できる筋肉量が増加すると、筋肉にグリコーゲンをためられるため、血糖値を下げられます。

糖尿病の運動に有酸素運動がいい理由

有酸素運動は、運動により糖の代謝を促すため血糖コントロールに有効です。軽い運動でも、継続時間を増やすことで有効な糖の代謝を促せます。

心臓への負担が少ないため、心疾患を合併している方には有酸素運動が良いでしょう。

室内でできる糖尿病の運動

雨の日や暑すぎて外に出られない日などは、室内で行う運動も効果的です。日常生活に合わせ、少し負荷量を増やすだけでも運動になるでしょう。

例えば椅子につかまってスクワットをしたり、段差の上り下りをしたりする運動がレジスタンス運動です。

テレビをみながら座って行う足踏みは、有酸素運動につながります。テレビでやっている体操やラジオ体操なども効果的です。

2型糖尿病において、30分に一度軽い運動を行うと、座位を維持した状態と比べて食後の血糖値が改善すると示されています。

座っている時間が30分を超える場合は、一度打ち切り、家事などの軽い運動をするのがおすすめです。

糖尿病に効果的な運動強度は?

糖尿病に効果的な運動強度は、ご自身の自覚症状として『やや楽である』もしくは『楽である』程度の負荷から始めると良いでしょう。

50歳以上の方であれば心拍数が100回/分程度、50歳未満の方であれば100〜120回/分程度です。

不整脈があったり、脈を押さえる薬を飲んでいる方は病院で相談し、自覚症状を目安にしましょう。

運動に慣れてきたら『ややきつい』程度まで負荷を上げいきます。

『きつい』程度の運動では、体を動かすエネルギーを補充しようとして血糖値を上げてしまう危険性があるため、注意してください。

糖尿病の運動に必要な時間、回数は?

糖尿病の運動に必要な有酸素運動の時間は、1週間で150分といわれています。150分の運動とは15,000歩程度の歩行となります。

週4回運動するのであれば、一日30〜40分、5,000〜6,000歩程度のウォーキングが目安です。

一日のうち1回でまとめて歩いても、3回に分けて歩いても血糖コンロトールが改善できます。

運動による糖代謝の改善は12〜72時間といわれているため、2日は空けないで行うことが推奨されます。週3-4回の頻度が効果的です。

レジスタンス運動は連続しない日数で週2-3回、上半身下半身の筋肉を含んだ8-10種類の運動がおすすめです。

1セットにつき10-15回繰り返すことができる負荷にしましょう。慣れてきたら8-12回繰り返すことができる負荷で、2-3セット行いましょう。

体を動かす機会がなかなか取れない方は、体を動かす機会を作るだけでも長期で続けていくと効果があります。

例えば、エレベーターやエスカレーターをやめて階段を使ったり、バスや電車を使わず一駅分歩いたりして、レジスタンス運動や有酸素運動の代用が可能です。

自分にできる運動から始めてみましょう。

糖尿病の運動療法の注意点は?

糖尿病の運動療法の注意点は3つあります。

  • 低血糖に気を付ける
  • 足の状態を確認する
  • 準備体操をおこなう

糖尿病で運動する際は低血糖に注意が必要です。血糖値を下げる薬を飲んでいたり、インスリンの注射をしていたりすると、低血糖となる可能性があります。

低血糖の可能性を医師に確認しておきましょう。空腹時に運動療法を行うと低血糖をひきおこしやすいです。

低血糖は意識消失など救急車を呼ばなければならない事態になります。運動は食後に行うように心がけ、低血糖に対してブドウ糖を携帯して備えましょう。

運動前後での足の状態の確認をしましょう。

糖尿病になるとキズの治りが遅くなり、壊疽(足が腐ってしまう)を起こすと切断の危険性があります。

足の小さなキズは感染を引き起こすと壊疽(足が腐ってしまう)の危険性が高いです。

運動前後で足の見えにくいところにキズがないか確認しましょう。

糖尿病では感覚が鈍くなることが多いため、必ず目で見て確認します。靴下や靴を常に清潔なものにするのも大切です。

糖尿病の運動療法を始める際は準備体操が大切です。

今まで習慣がない人が急に運動を始めると、思わぬ体の不調を招くことになります。準備体操やストレッチをおこない、少しずつ負荷を増やすようにしましょう。

糖尿病性網膜症でも運動していいの?

糖尿病性網膜症でも運動は可能ですが、注意点があります。

糖尿病性網膜症は、血糖値がコントロールされていない状態が続き、網膜の細かい血管にこぶができたり、小さく出血したりする病気です。

血管がもろく、急激な血圧の変化や衝撃で悪化してしまう危険性があります。

ジャンプなど体に衝撃を与えるもの、頭を下げておこなう運動、息をこらえるような動作は控えましょう。

糖尿病の運動療法を中止する基準は?

糖尿病の運動療法を中止する基準は5つあります。

  • 血糖コントロールが悪いとき
  • 糖尿病の合併症が進行しているとき
  • 心機能が低下したとき
  • 低血糖症状が出たとき
  • 足やひざなどに痛みを感じたとき

血糖のコントロールが悪い場合、運動が体の負担となる場合があります。

冷や汗、体の震え、強い頭痛などの低血糖症状、口渇感、頻尿・多尿、集中力の低下などの高血糖症状がある場合は運動を控えましょう。

糖尿病の合併症が進行しているときは安静が必要です。

排尿しにくくなった、体がむくみやすくなった、目が見えにくくなった、手先の感覚が鈍くなった、創がなかなか治らずぐちゃぐちゃしている場合は、医師に相談します。

心機能が低下している場合、運動は危険です。

血糖値が高いと、心臓の血管が詰まりやすく心筋梗塞になるリスクが高いためです。 胸が急に苦しくなった、動機や息切れがなおらないといった場合は、早期に受診しましょう。

低血糖症状が出たときは運動を中止します。

低血糖の初期症状

  • 冷や汗をかく
  • 不安な気持ちになる
  • 脈が速くなる
  • 手や指が震える
  • 顔色が青白くなる
 

低血糖の症状が出た場合は血糖値を測定し、低血糖だった場合は食事をとったり、ジュースを飲んだりしてから運動しましょう。

足やひざなどに痛みを感じたときは安全な場所で休憩し、改善しない場合はなるべく安静に過ごすようにしましょう。負荷量の見直し、無理のない運動の継続が必要です。

糖尿病の運動療法の禁忌は?

糖尿病には運動が重要ですが、禁忌(やってはいけない状況)があります。

ここでは、糖尿病に運動が禁忌となる例を紹介します。

1型糖尿病でケトン体が多い場合

尿中にケトン体が多い場合、運動は禁忌となります。

とくに1型糖尿病で発生しやすい状況です。インスリンの注射を減らしたり、中止した際、運動時にエネルギー源となるのは脂肪です。

脂肪をエネルギー源にするとケトン体という物質が産生されます。ケトン体は酸性であり、体内にケトン体が増えると酸性に傾き、危険です。

ひどい場合は昏睡状態となります。2型糖尿病でも急激に糖分を摂取すると(清涼飲料水などを一日に何Lも飲むなど)、同様の状態が発生する場合があります。

定期的に尿検査でケトン体の数値を確認して、早めに気づくようにしましょう。

マッサージは危険?

糖尿病でマッサージを受ける際には注意が必要です。

糖尿病の合併症の一つに末梢神経障害があります。つまり、手足の先の感覚が鈍くなってしまう神経障害です。

そのため、糖尿病が進行し鈍くなった状態でマッサージを受けると、あまりもまれている感じがないために強くもんでもらうことがあるかもしれません。

強い刺激を受けると、血管がもろくなっているため内出血などが発生し、感染などが起きると壊死(足が腐ってしまう)の原因となります。

Q &A

糖尿病の運動において多く寄せられる質問に対して回答します。

糖尿病に有効な運動は?

スクワットなどのレジスタンス運動や、ウォーキングなどの有酸素運動です。

有酸素運動は週3〜4回、一日30〜45分程度、レジスタンス運動は1セット10〜12回繰り返しできる負荷量で行いましょう。

糖尿病で運動療法が禁忌になるときはどんなとき?

血糖コントロールが不良なときは、運動で高血糖にも低血糖にもなり、意識障害が起きるため禁忌となります。

また、合併症や心疾患が進行しているときも禁忌となります。治療をおこない、医師と相談してから運動療法を開始しましょう。

まとめ

糖尿病の運動療法は今後の寿命を左右する大事な治療です。

糖尿病で運動を行うと、血糖値が下がり、インスリンが効きやすい体になります。運動不足は死亡率の高い心筋梗塞や脳卒中の危険性を高めてしまうでしょう。

運動はウォーキングなどの有酸素運動を一日30分程度、スクワットなどのレジスタンス運動を1セット10-20回目安におこないます。

週に3~4回実施することで血糖値が低い状態の維持が可能です。運動するときには低血糖や足のキズがないか注意しましょう。

血糖コントロールが悪く、糖尿病の合併症があるときや運動に不安があるときは中止して医師の診療を受けましょう。

必要な知識を身につけることで、安全で効果的な運動を継続し、健康的な日常生活を目指してください。

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本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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