女性は更年期高血圧に要注意!50代の正常血圧はどのくらいなのか理解しよう

公開日: 2023/12/11 更新日: 2024/06/24
50代へ突入してから「最近血圧が高めかも」と気になっている人もいるのではないでしょうか。 男女ともにホルモンバランスの変化や加齢に伴う様々な不調があらわれやすく、中でも血圧は身近に計測する機会も多いため、数値を見て変化に気づきやすいです。 そして50代女性は更年期に差し掛かることにより、より血圧値に注意が必要だということをご存じでしょうか。 この記事では、50代の正常血圧値がどれくらいなのか、そして気になる更年期高血圧について解説します。 男性の高血圧の原因はもちろん、予防や治療方法についてもご紹介しますので参考にしてください。
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50代の正常の血圧を知ろう

血圧の正常値は、若年者や高齢者など年齢を問わず共通です。

しかし、加齢に伴って血管は硬くなります。

そのため年齢とともに徐々に血圧が上昇するのはごく自然なことなのです。

実際に年齢階級別の高血圧有病率を見てみると以下のように推移しており、年齢とともに増加していることがわかります。

 

男性

女性

30歳代

20.5%

5.7%

40歳代

36.2%

13.6%

50歳代

60.8%

35.7%

60歳代

68.8%

58.5%

70歳代

74.7%

69.2%

[1]

特に50歳代からは男女ともに有病率が急速に増加していることがわかります。

更に血圧は気温や動作、精神状態など様々な要因によって容易に変動するため、再現性に乏しいものです。

もしも健康診断などで初めて高血圧と診断された人は、その時の気温や精神状態によって極端に高くなっていたという可能性も考えられます。

高血圧の可能性が指摘された人は、まず家庭で毎日血圧測定を行う習慣をつけ、自分の普段の血圧を知ることから始めると良いでしょう。

50代の血圧の正常値は?

前述したように、若年者や高齢者など年齢を問わず血圧の正常値は共通です。

正常血圧の基準値

 

収縮期血圧(上)

拡張期血圧(下)

診察室での血圧

120mmHg未満 かつ 80mmHg未満

家庭での血圧

115mmHg未満 かつ 75mmHg未満

[2]

高血圧と診断される基準値

 

収縮期血圧(上)

拡張期血圧(下)

診察室での血圧

140mmHg以上 かつ/または 90mmHg以上

家庭での血圧

135mmHg以上 かつ/または 85mmHg以上

[2]

血圧の正常値は、脳心血管病の発病率を基準に定められています。

つまり、脳卒中や心筋梗塞などの合併症を起こしにくいと言われる数値です。

しかし50代を超えると、ほとんどの人が正常血圧より高い場合が多く、高血圧の基準値未満であればそれほど問題視されることはありません。

治療の開始や治療によって目指す血圧の値は年齢や性別、元の血圧によって異なります。

診察室での血圧と家庭での血圧で基準が異なる理由は、病院に居るときだけ高血圧を示す「白衣高血圧」の人がいるからです。

白衣高血圧は不安や緊張によって一時的に血圧が上昇することで起こります。

また、これとは逆の病態を示すのが「仮面高血圧」です。

仮面高血圧では、病院に居る時だけ血圧が正常値になります。

これは、夜間や早朝には高血圧を示しているのに、昼間の病院に行く時間帯のみ正常値を示すことで起こります。

これらのことからも、血圧コントロールをするうえで家庭での習慣的な血圧測定が重要であるといえるでしょう。

男女での血圧の違いはあるのか

男性と女性では高血圧になる要因が異なる場合があります。

ともに食事や運動、ストレスや嗜好品などが要因となることが多い一方で、女性は更に注意すべきことがあります。それが「更年期高血圧」です。

男性の方が生活習慣の影響で高血圧の割合は多いですが、女性も気を付けるべきことがあるのを覚えておきましょう。

では、男女の高血圧の要因について解説していきます。

女性は更年期高血圧症に注意を

国立生物工学情報センターでは、閉経後早期の女性に与える最も重要な危険因子を高血圧だとしています。[3]

女性は閉経すると卵巣からのエストロゲン分泌量が減少します。

エストロゲンは血管を拡張させる働きを持っているため、閉経して分泌量が減少してしまうと拡張させる機能が低下し、血圧をコントロールできなくなってしまうのです。

今まで分泌されていたホルモンが少なくなるということは、ホルモンバランスの乱れも十分考えられます。

しかし、ホルモンバランスの乱れはイライラや不眠などを引き起こすため、血圧が上がりやすくなっていることも覚えておいてください。

女性の30~50%が60歳未満で高血圧を発症していますが、更年期が要因となっている人も多いため、血圧値の変化には注意が必要です。

もちろん塩分の摂りすぎや肥満も影響を与えるため、日常生活でも気を付けることは多くあります。

女性は男性に比べて低血圧の人が多いため、血圧を意識しない方が多いですが、50代という節目に一度血圧に目を向けるのも良いでしょう。

男性は生活習慣が主な原因だが・・・

女性とは異なり、男性が高血圧となってしまう主な原因は生活習慣が関係しています。

塩分の摂りすぎが大きな原因となっていますが、肥満や飲酒、喫煙の高血圧患者も増加しています。

そして今、「更年期は男性の自分には関係ない」と思った方もいるでしょう。

実はそんなことはありません。50代以降になると男性はテストステロンの分泌量が減少します。

血圧に直接関係するホルモンではありませんが、テストステロンが減少すると疲れやすい、イライラしやすい、不眠がちになるなどさまざまな症状があらわれることがあります。

その症状により、血圧が上がってしまうことも少なくありません。

もちろん高血圧になる原因の割合は生活習慣の方が大きいですが、男性も注意しましょう。

血圧数値は寿命にも影響がある

血圧は高すぎても低すぎても寿命に影響を及ぼします。

高血圧・低血圧ともに様々な要因が考えられますが、多くの場合、日常生活の中で予防・改善に取り組むことが可能です。

高血圧と低血圧それぞれのリスクについて知り、正しい血圧管理をしていきましょう。

高血圧のリスク

高血圧の最大のリスクは動脈硬化とそれに伴う脳心血管病の発症です。

血圧が高い状態が続き慢性的に血管壁へ圧力がかかることによって、血管は「硬く」、「脆く」、「狭く」なります。

その結果、血管が詰まりやすくなったり破裂しやすくなるのです。

低血圧のリスク

低血圧の一番のリスクは脳血流量の低下です。

低血圧は、全身に血液を送る力が弱まっている状態です。そのため、身体の一番高い場所にある脳に血液が十分に供給されなくなります。

その結果、めまいやふらつきを起こし、更に急な血圧低下は失神のリスクもあるのです。

この時、転倒にも注意する必要があります。

低血圧とは、収縮期血圧(上)が100mmHg未満の状態で、血管が拡張することで起こります。

低血圧には、本態性低血圧と二次性低血圧というものがあります。

本態性低血圧は原因となる疾患が特定できない場合を指し、主な原因は生活習慣や精神的・心理的な背景です。

二次性高血圧は低血圧の原因が特定できる状態を指し、加齢や薬の影響、自律神経障害、パーキンソン病などの疾患が関係しているものなど様々な原因があります。

低血圧は多くの場合、一過性に引き起こされます。

一過性に低血圧を起こしやすいタイミングは以下の通りです。

  • 起立時

  • 食後

  • 排尿後

  • 排便後

低血圧を起こしやすい人は、これらのタイミングでは特に注意して突発的な動きを避けゆっくりと動き始めることを意識すると良いでしょう。

また血圧が低いときは、まず横になりましょう。

足の下にクッションなどを入れ、下肢を心臓より高い位置に上げることで心拍出量を増やし、脳血流量も増加させることができます。

高血圧の原因

高血圧というと、塩分の摂りすぎなど食事による影響を連想する人も多いでしょう。

しかし、高血圧の原因は生活習慣によるものだけではありません。

高血圧も低血圧と同様に大きく分けて2つに分類されます。

1つ目は「本態性高血圧」です。

これは、原因疾患が特定できない高血圧のことを指します。

主な原因は遺伝や加齢、生活習慣などと考えられており、高血圧患者のうち90%がこの本態性高血圧とされています。

塩分の摂りすぎなどがイメージされる高血圧は、本態性高血圧と言えるでしょう。

2つ目は、「二次性高血圧」です。

これは、高血圧の原因となる疾患が特定できる場合を指します。

若年者の高血圧や急激な発症、治療抵抗性高血圧などは二次性高血圧の可能性が高いといわれています。

治療性高血圧とは、一般的に生活習慣の改善かつ3剤以上の異なる降圧剤を服用しても目標の血圧に達しない状態です。

今回は、本態性高血圧の原因について詳しく見ていきましょう。

塩分の摂りすぎ

塩分を摂りすぎると、血液中のナトリウム濃度が上昇します。すると、からだは血管内に水分を引き込み、ナトリウム濃度を下げようとするのです。

その結果血管内の血液量が増え血管にかかる圧力が増大します。

これが塩分の摂りすぎで高血圧になる理由です。

肥満

肥満が高血圧を引き起こす原因は大きく分けて4つあります。

1つ目は過食による塩分の過剰摂取です。

2つ目は糖質の過剰摂取です。糖質を摂りすぎることで、血糖を下げるインスリンというホルモンが過剰に分泌されます。

そのインスリンが交感神経を刺激するのです。交感神経は血管を収縮させる役割があるため、それにより血圧が上昇します。

3つ目は脂質異常です。脂質異常は血液をドロドロにする原因となります。ドロドロな血液は、血流を悪くし動脈硬化を促進し、その結果血圧が上昇します。

4つ目は内臓脂肪によるものです。内臓脂肪型肥満では、肥大した脂肪細胞から血管を収縮させる作用のある物質が分泌されており、血管が収縮することで血圧が上昇します。

喫煙

喫煙によって取り込まれた一酸化炭素が、本来酸素と結びつくはずだった赤血球と結びつくことで、体内で酸欠状態が起こります。

その結果、心臓は酸欠状態を改善するために心拍出量を増大させるのです。

更に、煙草に含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があります。その結果高血圧を引き起こすのです。

また、脂質異常と同様に煙草に含まれる化学物質も血液をドロドロにさせます。その結果動脈硬化が進み更に高血圧を助長させるのです。

過度な飲酒

実はアルコールを飲んだ直後は血管が拡張するため、血圧が下がります。

しかし、長期間のアルコール摂取は逆に血圧を上昇させるのです。

これに関しては、はっきりとした理由は解明されていません。

しかし交感神経の興奮や、肝機能の低下に関連した動脈硬化なども理由のひとつではないかと考えられます。

また、飲酒とともに塩分の多いつまみやお菓子を食べることも高血圧の原因となります。

遺伝

高血圧と遺伝の関係は30〜60%[4]と言われています。

体質的な遺伝だけでなく、親から受け継いだ食の好みや普段の生活習慣なども関係しています。

しかし、遺伝だけが原因で高血圧を発症することはほとんどありません。

多くの場合遺伝的要因に加えて生活習慣やストレスなどの様々な要因が絡み合って発症するのです。

遺伝的に高血圧を引き起こしやすい家系であることがわかっている人は、若いうちから食事や運動に気を付け、ストレスをため込まない生活を意識すると良いでしょう。

ストレス

ストレスは、自律神経の働きに影響しています。

自律神経には交感神経と副交感神経があり、緊張や興奮状態にある時は交感神経が優位の状態です。逆にリラックスしている時には副交感神経が優位になっていることになります。

ストレスを感じているときは緊張状態になり、交感神経が優位になっています。

交感神経には心拍数を上げたり血管を収縮させる働きがあるため、血圧が上昇するのです。

自律神経は身体のあらゆる機能をバランスよく保つためにはたらきます。

そのため、慢性的なストレス状態が続き自律神経の調節がうまくできなくなると様々な不調が現れます。

その他の病気

遺伝や環境以外に、既存の疾患が原因で高血圧を引き起こしている場合もあります。

このように、高血圧の原因疾患が特定できる場合には二次性高血圧と診断されます。

代表的な二次性高血圧と原因疾患は以下の通りです。

 

主な原因疾患

腎性高血圧

  • 慢性腎臓病

  • 糖尿病性腎症

  • 慢性糸球体腎炎

  • 腎血流量の低下 など

血管性高血圧

  • 高安動脈炎

  • 上記以外の血管炎症候群

  • 大動脈縮窄症 など

内分泌性高血圧

  • 原発性アルドステロン症

  • 褐色細胞腫

  • クッシング症候群 など

[5]

この他にも様々な二次性高血圧が存在します。妊娠高血圧症候群も二次性高血圧の一種です。

また、薬剤誘導性高血圧といい、薬の副作用として高血圧を引き起こすこともあります。

高血圧の症状で不安に感じたら

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高血圧の治療方法

高血圧の治療方法というと、降圧薬の服用をイメージする方も多いでしょう。

しかし、治療の方法は薬物療法だけではなく、生活習慣の改善や栄養指導も重要な治療です。

高血圧ガイドラインをもとに、医師が治療の基本方針や生活習慣の修正、降圧治療などを決定します。

年齢や性別、元の血圧の値によって目標血圧の設定が異なることもあります。

今日からできる高血圧予防のためのポイント

今日からでも少しずつ予防のためにできることがあります。

それは、食事・運動・休息などの生活習慣の見直しや、ストレスの解消に努めることです。

これらに努めることで、生活習慣病と呼ばれる疾患全般や、うつ病などの精神疾患の予防に繋がることもあるのです。

生活習慣の改善で、高血圧やそれ以外の病気の予防に努めましょう。

バランスの良い食事

高血圧の治療では、減塩食が基本です。

成人の1日の塩分摂取量は、男性7.5g未満、女性では6.5g未満と設定されています。

しかし、高血圧及び慢性腎臓病の重症化を予防するためには、男女ともに 6.0g未満が推奨されています。[6]

更に、脂肪やコレステロールの高い食事は控えてください。

食物繊維の豊富な野菜や、豆類・キノコ類・魚介類などの食材をバランスよく摂取し、身体に対して適正な摂取量を意識しましょう。

運動

運動には、自律神経を整える働きがあります。自律神経の変動は血圧の変動と直結しています。

また習慣的な運動により適度な筋肉量を維持することで血管を広げる作用もあるのです。

激しい運動をする必要はありません。

ウォーキングやストレッチなどの低負荷な運動を毎日継続して行うことが重要です。

禁煙

煙草は高血圧だけでなく、肺気腫や肺がん、慢性閉塞性肺疾患などの発症リスクを高めます。

本数を減らすよりも、禁煙することが望ましいです。

自力での禁煙が困難な場合、一定の要件を満たせば保険治療で禁煙外来に通うこともできます。

禁酒

アルコールは喫煙とは異なり、絶対に飲んでいけないと言うわけではありません。

少量の適度な飲酒であれば、ストレスを解消したり血管を拡張するなどの効果もあります。

毎日酔っぱらうほど飲んでしまう人は1回の飲酒量も減らすようにしてください。

完全に禁酒する必要はないので、お酒を飲まずに肝臓を休める日(休肝日)を設けるようにしましょう。

ストレスをため込まない

ストレスは誰しも感じるものです。

しかし、ストレスの理由や解消方法は人によって異なります。

解消する方法は主に2通りあります。

1つ目は、ストレスとなっている根本的な問題を解決しストレスの要因を取り除く方法です。

2つ目は、入浴やアロマ、音楽などによってリラックス効果を得ることで間接的にストレスを解消する方法です。趣味や運動に取り組むことも効果的です。

ストレスを感じた時に解消する自分なりの方法を見つけましょう。

まとめ:生活習慣を見直してみよう

血圧は、その時の環境や動作、精神状態などの様々な要因により変動します。

更に、病院と家で血圧が異なることも多いです。

そのため、健康診断などで初めて高血圧と診断された人は、まずは自分の普段の血圧を知る必要があります。

高血圧の心配がある人は、まず1日2回朝と夕に毎日同じタイミング・同じ姿勢で血圧測定を行うようにしましょう。

更に、測定した値をメモし、病院に持参すれば治療の指標も定めやすいです。

そして、最も重要なことは生活習慣の見直しです。

診断された人に限らず、遺伝的に高血圧の要因がもともとある人や肥満傾向の人など、すでに生活習慣病のリスクが高い人は、食事・運動・休息を見直し、高血圧の発症や悪化の予防に努めましょう。

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参考文献

[1]岡庭豊, 循環器第5版[, 病気がみえるvol.2], 医療情報科学研究所, 2003[, p377]

[2]高血圧 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

[3]Women’s health in menopause with a focus on hypertension - PMC (nih.gov)

[4]高血圧と遺伝 | 名古屋糖尿病内科 アスクレピオス診療院 - 名東区の糖尿病専門医

[5]岡庭豊, 循環器第5版[, 病気がみえるvol.2], 医療情報科学研究所, 2003[, p378]

[6]日本高血圧学会 減塩・栄養委員会

[7]年代別・世代別の課題(その2)|厚生労働省

[8]令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要|厚生労働省

[9]3 生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連 3─1 高血圧|厚生労働省

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