排尿時の痛みや頻尿は膀胱炎?症状や対処・予防法を解説

公開日: 2025/01/21
排尿時に痛みを感じたり、頻繁にトイレに行きたくなったりすると「もしかして膀胱炎(ぼうこうえん)かも」と不安になりますよね。 忙しい毎日のなかで、仕事や育児の合間に受診の時間をつくるのは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。 膀胱炎の可能性があっても、すぐに医療機関を受診するか迷ってしまうものです。 しかし、膀胱炎を放置すると全身に細菌が広がり敗血症になるリスクもあります。 恥ずかしいと感じてしまうかもしれませんが、医療機関で最適な治療を受けることが早く治すための近道です。 本記事では、膀胱炎の初期症状や受診のタイミング、セルフケアについて解説します。
膀胱炎
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膀胱炎の初期症状とは?

膀胱炎の初期症状として

  • 排尿痛(はいにょうつう:尿をするときに痛みを感じる)

  • 残尿感(ざんにょうかん:排尿後も尿が残っているように感じる)

  • 頻尿(ひんにょう:排尿回数が増える)

  • 尿混濁(にょうこんだく:尿の色が白くにごる)

  • 血尿(けつにょう:尿にときどき血が混ざる)

などがあげられます。

おもに排尿時に症状があらわれるため、日常生活のなかで気づきやすいです。[1][2]

健康な成人の1日あたりの尿の回数は日中で6回程度です。また、尿の色は淡黄色から淡黄褐色で、泡立ちもみられません。

排尿時の痛みや尿の濁りなど、いつもと違う症状があらわれたら膀胱内に細菌が入り炎症を起こしているサインです。

尿の回数や尿の状態を日頃から観察しておくとよいでしょう。[5]

悪化するとどのような症状がでるの?

膀胱炎が悪化すると、早期に悪寒や発熱、腰・背中の痛みがあらわれます。全身症状が強くあらわれると理解しておきましょう。[3][4]

【膀胱炎が悪化したときにあらわれる症状】

  • 高熱(38度以上の熱)

  • 悪寒(おかん):高熱に伴い、震えるほどの寒さを感じる

  • 腰背部叩打痛(ようはいぶこうだつう):腰や背中のあたりに鋭い痛みがあらわれる

  • 吐き気や嘔吐

  • 全身のだるさ

初期症状を放置すると細菌が尿管を通り腎臓まで広がることがあります。

この状態は「急性腎盂腎炎(きゅうせいじんうじんえん)」と呼ばれ、腎臓で作られた尿が集まる部分である腎盂(じんう)が炎症を起こします。

急性腎盂腎炎が深刻化すると、全身に細菌が広がり敗血症になる場合もあり命に関わります。

膀胱炎が疑われる場合は早めに医療機関を受診しましょう。

そもそも膀胱炎はどんな病気?

膀胱炎は、膀胱に細菌が入り込み炎症を起こす病気です。

おもに大腸菌などの腸内細菌が尿道を通じて膀胱に入り込み、増殖することで発症します。

一般的には、治療によって比較的早く改善する急性膀胱炎が多いですが、中には何度も膀胱炎を繰り返す慢性膀胱炎に悩む人もいます。

膀胱炎の原因

膀胱炎の原因の多くは大腸菌などの細菌による感染です。細菌は腸内に存在し、肛門周辺に多く存在しています。

女性は尿道と肛門が近いため、細菌が尿道から膀胱に入りやすい構造です。そのため、女性の方が膀胱炎にかかりやすいといわれています。

またストレスや疲労、睡眠不足などで抵抗力が弱まると細菌の感染が引き起こされやすくなります。

トイレを我慢したり、性交渉後に陰部を十分に清潔に保たなかったりすることも細菌が膀胱に入りこむ原因です。

そのほか、尿路結石や糖尿病、がんなどが原因となる場合もあります。

検査方法

膀胱炎が疑われる場合、以下の検査方法を用いることがあります。[5]

検査方法

内容

問診

自覚症状(排尿痛や頻尿など)や生活習慣、症状の進行具合を確認します。

尿定性検査

(にょうていせいけんさ)

試験紙に尿を浸す検査で10分程度でできる簡易的な検査です。尿中の白血球や潜血の有無を調べます。膀胱炎の場合、炎症によって出血し尿潜血反応や尿タンパクが陽性になることがあります。

尿沈渣検査

(にょうちんさけんさ)

尿を遠心分離し沈殿物を観察して原因菌を詳しく調べます。細菌を攻撃する白血球が一定数認められると膀胱炎と診断されます。

尿培養検査

尿を培養して原因菌を特定し、効果的な抗菌薬を調べます。

エコー検査

超音波を使って、膀胱や腎臓の状態を確認します。

血液検査

全身の炎症反応や感染の広がりを調べるために血液の状態をチェックします。

治療方法

膀胱炎は、細菌の増殖を抑え炎症を和らげる「抗菌薬」による治療が一般的です。抗菌薬は症状や原因菌に応じて選択されますが、ニューキノロン系やセフェム系が処方されるケースが多いです。

薬の投与期間は3〜5日程度で、通常服薬してから数日以内に症状が改善します。

ただし症状が改善した場合も、医師から指示された期間は薬を飲み続けることが大切です。

抗菌薬を自己判断で中断してしまうと、症状が改善したあとも体内に細菌が残る可能性があります。

残った細菌が再び増え、再発するリスクが高まります。

さらに、細菌が抗菌薬に対して耐性をもつ「薬剤耐性菌」を生む原因となります。同じ抗菌薬が効きにくくなり、治療が難しくなってしまうのです。

また、妊娠中の場合は服用できない抗菌薬もあります。妊娠の可能性がある場合は医師に相談しましょう。

授乳中の方も同様に注意が必要です。一部の抗菌薬は母乳を通じて赤ちゃんに移行する可能性もあるといわれています。

ただし授乳中でも安全に使用できると考えられている抗菌薬もあります。医師に授乳中であることを伝えたうえで、適切な薬を処方してもらいましょう。[6]

症状の改善を目的として漢方薬が処方されることもあります。

市販薬を用いたセルフケアも可能ですが、自己判断での対応は重症化や慢性化を招くリスクがあります。

膀胱炎が疑われる場合は早めに泌尿器科か内科を受診し、原因菌に合った抗菌薬の処方を受けましょう。

細菌がなくなったかどうかを判断するための経過観察も大事な治療です。

【受診目安】自宅で様子を見てもいい?すぐに受診すべき?

膀胱炎かな?と思った場合、まずは医療機関の受診をおすすめします。

ただし、仕事や家事、育児で休みがとれない場合や症状が軽い場合、自宅で対応したいと考える方もいるでしょう。

すぐに受診が必要なケースを解説しますので、自分が本当に受診の必要があるのかひとつの判断基準として知っておきましょう。

医療機関に相談するべきケース

膀胱炎の疑いがあり、以下の症状がある場合は腎臓やほかの臓器に影響を及ぼしている可能性があります。早急に医療機関を受診してください。

  • 高熱(38度以上の熱)がある

  • 悪寒がする(ゾクゾクとした寒気)

  • 腰や背中に強い痛みがある

  • 吐き気や嘔吐がある

  • お腹がはげしく痛む

  • 全身の倦怠感

膀胱炎は、悪化すると急性腎盂腎炎や敗血症になるリスクもあるため、迷わず医療機関を受診しましょう。

おしっこが近い、痛いを最速で改善!自宅でできるセルフケア

病院に行く時間がとれない、できれば自分でなんとかしたいと思う方もいるでしょう。

また医療機関を受診して薬を服用していても、一刻も早く症状を改善したいものです。症状を和らげる際に役立つ自宅でできるセルフケア方法を解説します。

水分をたっぷり摂る

十分に水分補給することで、膀胱内の細菌を尿とともに排出する効果が期待できます。1日2リットル以上の水を目安に摂取すると良いでしょう。

水やカフェインレスのお茶(麦茶・ルイボスティーなど)がおすすめです。カフェインを多く含む飲み物(コーヒー・緑茶など)は利尿作用が強いため避けましょう。

一度に大量に飲むのではなく、少しずつ摂取するのがポイントです。こまめに水分をとるタイミングを意識し、無理なく水分補給をしましょう。

お腹を温める

お腹を温めると体全体の血行が促進し、白血球や酸素が膀胱に巡りやすくなります。炎症している膀胱の緩和にもつながるでしょう。

また、体を温めると免疫力の向上が期待でき、膀胱炎の予防にも効果的です。お風呂で温めるほか、湯たんぽや腹巻を活用するとよいでしょう。

腎臓の働きを高める食べ物を食べる

東洋医学において「腎」の働きを助けてくれる食材は、黒い食べ物が良いといわれています。

たとえば、黒米・黒ゴマ・黒豆・ひじき・海苔・黒酢などは「腎」を強くする作用を期待できます。そのほか、豚肉や椎茸、キャベツなども弱った腎臓をサポートする食べ物です。

また、カリウムを多く含む野菜や果物は、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出に役立ちます。

これにより、腎臓の負担を軽減し、尿をスムーズに作り出すことができるのです。尿の量が増えると、膀胱内の細菌を出しやすくなり、悪化を防ぐ効果が期待できます。

カリウムを多く含む食材には、バナナやアボカド、トマトなどがあります。

膀胱炎の症状があるときは、塩分の多い食材を控え、カリウムを意識したバランスの良い食事を心がけましょう。

市販薬を活用する

膀胱炎のおもな症状に応じた市販薬と特徴について解説します。症状が軽い場合、市販薬をセルフケアに活用するとよいでしょう。

症状

市販薬の成分

特徴

頻尿・残尿感

フラボキサート塩酸塩

尿意を抑える効果が期待できる。

排尿痛

五淋散(ごりんさん)

漢方薬で尿路の炎症を抑え、排尿時の痛みを和らげる。

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)

尿路の熱感や炎症を取り除き、排尿時の不快感を軽減するのに役立つ。

体質改善したい

牛車腎気丸(ごしゃきがん)

腎臓や膀胱の機能を整える効果が期待できる。慢性的な症状に適している。

猪苓湯(ちょれいとう)

利尿作用があり、尿路の詰まりや炎症を和らげる。膀胱炎の予防にも使用される。

市販薬を使用する場合は自己判断ではなく、薬剤師や医師に相談して使用しましょう。

また4〜7日程度市販薬を使用しても症状が続く場合、症状が悪化した場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

膀胱炎を一晩で治す方法はあるの?

膀胱炎を一晩で治すことは困難です。抗菌薬を服用することで、多くの場合3〜5日程度で症状が緩和されます。

抗菌薬は医師による処方が必要になるため、医療機関を受診し最適な治療を受けることが早く治すための近道といえます。

また適切なセルフケアによってより早い症状の緩和を期待できるでしょう。

これは避けよう!膀胱炎を悪化させる原因

膀胱炎を悪化させる原因は、日常生活のなかにいくつかあります。膀胱炎を悪化させる原因と理由をまとめましたので参考にしてください。[7]

【膀胱炎を悪化させる原因と理由】

悪化させる原因

理由

香辛料(胡椒・唐辛子)を食べる

香辛料が膀胱を刺激し、症状を悪化させる可能性がある

アルコールを摂取する

アルコールが膀胱を刺激し、炎症を悪化させる可能性がある

カリウムの多い食べ物を食べる

カリウムを多く含む食品も膀胱を刺激することがある

温水洗浄便座(ウォシュレット)を過度に使用する

過度な使用が防御機能を低下させ、感染のリスクを増加させる

トイレを我慢する

膀胱内で細菌が繁殖しやすくなり、悪化するリスクを高める

水分が不足している

尿量が減り、膀胱内の細菌が排出されにくくなる

疲れやストレスを放置する

免疫力が低下し、感染への抵抗力が弱くなる

抗菌薬の服用を自己判断で中断する

細菌が完全に排除されず、膀胱炎が再発・悪化するリスクがある

膀胱炎を遠ざける7つの生活習慣

膀胱炎を予防するため、心がけるべき7つの生活習慣を紹介します。ご自身の生活習慣を見直してみましょう。

1.トイレを我慢しない

トイレを我慢すると膀胱内に菌が繁殖しやすくなります。尿意を感じたら、できるだけ早くトイレをすませるよう心がけましょう。

2.こまめに水分を摂る

水をしっかり飲むことで尿量が増え、膀胱や尿道が洗浄されます。細菌が増殖するのを防ぐことができます。1日あたり2リットル程度の水を目安に摂取すると良いでしょう。

3.ストレスをため込まない

過度なストレスや疲労は体の抵抗力を低下させます。適度な運動や趣味の時間を設け、リラックスできる習慣を作りましょう。

4.生理用ナプキンやおりものシートはこまめに変える

生理用ナプキンやおりものシートを長時間変えないと、湿気や温度によって細菌が増えやすい環境になります。清潔を保つためにも、こまめに交換しましょう。

5.排便後の拭き方に気をつける

女性の場合、肛門と尿道が近いため大腸菌が尿道に入りやすい構造です。排便後は、前から後ろに向かって拭くようにし、細菌が尿道に入らないようにしましょ

う。

6.免疫力を高める

バランスの良い食事や十分な睡眠が免疫力向上につながります。細菌感染への抵抗力を高めましょう。

7.性交渉後はトイレにいく

性交渉後は尿道に細菌が入りやすいため、排尿によって細菌を洗い流すことで膀胱炎のリスクを減らすことができます。

生活習慣に日常的にとりいれることで、膀胱炎の予防や再発防止が期待できます。比較的簡単にできるため、意識してみましょう。

まとめ|膀胱炎は早期発見・対処で悪化を防ごう

膀胱炎は早期に対処することで、短期間で改善できる疾患です。

セルフケアで症状が改善することもありますが、多くの場合抗菌薬の服用により3〜5日程度で症状が緩和します。

抗菌薬は、医師による処方が必要なため短期間で確実に治療したい場合は医療機関を受診しましょう。

また膀胱炎は悪化すると急性腎盂腎炎につながるリスクがあります。高熱や嘔吐・吐き気、腰や背中に強い痛みがあらわれた場合も医療機関への受診を検討してください。

膀胱炎の症状をより早く改善し予防するためには、トイレを我慢しない、適度に水分をとるなど、基本的な生活習慣の見直しが重要です。

とくに女性の場合は尿道の構造上細菌が侵入しやすいため、排便後の拭き方や生理用品の交換頻度など、衛生面に注意しましょう。

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参考文献

[1]膀 胱 炎 に 関 す る 研 究 第1編 臨 床 的 観 察 京都大学医学部泌尿器科教室

[2]4. 尿路性器感染症 (Genitourinary tract infections)

[3]尿路感染症

[4]急性腎盂腎炎

[5]JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―

[6]4. 尿路性器感染症 (Genitourinary tract infections)

[7]間質性膀胱炎・膀胱痛症候群 診療ガイドライン

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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