水疱瘡(水痘)とは?
水疱瘡(水痘)とは、水痘帯状疱疹ウイルスが原因になり人から人への感染によって起こる急性の伝染性の病気です。
19世紀の終わりまでは、水疱瘡と天然痘の2つははっきりと区別されていませんでした。
その後の感染の状況や研究により、その正体が徐々にわかっていき、1970年代に日本で水痘ワクチンが開発され、現在の水痘の予防に使用されています。
水痘ウイルスが感染するのは人だけとされていますが、そのウィルスは世界中に分布し、その伝染力は麻疹よりは弱いものの、ムンプスや風疹よりは強いとされ、家庭内の家族間での接触で感染し発症する確率は 90%と報告されています。
発疹出現の1.2日前から発疹出現後の4.5日の間、あるいは、かさぶたになるという意味である痂皮化(かひか)するまで伝染力があります。
1999年4月の感染症法施行後の感染症発生動向調査によると、約3,000箇所の医療機関から毎週1,300〜9,500例の水疱瘡の感染報告があり、季節的には毎年12〜7月に多く、8〜11月には減少し、水疱瘡にかかる年齢のほとんどが9歳以下となっています。
水痘帯状疱疹ウイルスは、ヘルペスウイルス科に属するDNAウイルスです。
他のヘルペスウイルスがそうであるのと同様に、初感染の後、知覚神経節に潜伏して感染します。
水痘帯状疱疹ウイルスは、通常は鼻や口から入って気道の粘膜に付着して感染し、鼻やのどの侵入した場所とリンパ節でその数を増やした後、感染した後4~6日すると一次ウイルス血症という血液への感染を起こします。
これにより水痘帯状疱疹ウイルスは他の器官や、肝臓、脾臓などに広がっていき、さらにそこで増えた後、ニ次ウイルス血症を起こして、皮膚に水疱をつくり、皮膚症状が見られるようになります。
1)2)3)
症状とは?
水痘帯状疱疹ウイルスの潜伏期は、10~21日の2週間程度です。
大人では発疹が出現する前に1~2日の発熱と全身のだるさを伴うことがありますが、子どもでは発疹が始まりの症状であることが多いです。
経過は一般的には軽症で、だるさや皮膚のかゆみ、38度前後の発熱が2~3日間続く程度であることが大半です。
発疹は全身に広がり、かゆみがあります。
赤い斑点状のような形である紅斑(こうはん)、ふくらみのある皮疹である丘疹(きゅうしん)の状態から、短い時間で水疱(すいほう)に変化していき、かさぶたのことである痂皮化(かひか)していきます。
この皮膚病変の経過をたどり、通常の皮膚の状態に戻っていきます。
発疹の広がり方は、通常は最初に頭皮から発疹が出現して、その次に体幹、手足である四肢にあらわれますが、体幹には発疹が一番多く出現します。
発疹は、数日にわたって新しく次々と出現するので、症状の出始めの時期には、紅斑(こうはん)、丘疹(きゅうしん)、水疱(すいほう)、痂皮(かひ)のそれぞれの段階の皮膚の症状が混在することが水疱瘡の特徴でもあります。
発疹は、鼻やのど、気道、膣などの粘膜の部分にも出現することがあります。
大人の症状はより重症となり、合併症を発症する頻度も高くなります。
通常は、呼吸器系の症状や消化器系の胃腸症状を伴うことはありません。
水痘帯状疱疹ウイルスへの初感染からの回復後は、終生免疫を得ることができ、その後に再度少し違う水痘帯状疱疹ウイルスに感染しても、症状の出現はなく抗体だけが上昇して働き身体を守ってくれる状態となります。
妊婦が妊娠20週頃までに水疱瘡にかかると、1~2%の頻度で先天性水痘症候群を発症し、胎児・新生児に重い障害が出現し、死産に至る症例も稀に報告されています。
また、分娩前5日~産後2日間に妊産婦が水疱瘡になり症状が出現した場合、新生児は胎盤を通して水痘帯状疱疹ウイルスに感染していますが、母親からの移行抗体が間に合わないため重篤化しやすくなります。
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合併症とは?
水疱瘡の合併症の危険性は年齢により違い、大人になるとその確率が上昇します。
健康な子どもでは水疱瘡にかかっても、合併症の出現はあまりみられませんが、特定の年齢ではその確率は上昇し、15歳以上と1歳以下では合併症が出現する確率は高くなります。
1~14歳の子どもでの感染後の死亡率は10万人のうち約1例ですが、15~19歳では2.7例で、30~49歳では25.2例とその確率は上昇します。
水疱瘡の合併症としては、皮膚の二次性細菌感染、脱水、肺炎、中枢神経合併症などがあります。
水疱瘡に合併する肺炎は、ウイルスや細菌の感染によるものです。
中枢神経合併症は無菌性髄膜炎や脳炎など種々ありえます。
脳炎を起こす場合では、小脳炎を発症することが多く、小脳失調を起こすことがありますが予後は良好です。
より広範な脳炎は稀ですが、大人に多く見られます。
水疱瘡になった症状の早い時期にアスピリンを服用した子どもでは、ライ症候群を発症することがあります。
免疫機能が低下している場合の水疱瘡では、命に関わる場合があるので十分な注意が必要です。
以下に主な合併症を説明します。1)2)3)4)5)6)
皮膚の二次性細菌感染
水疱瘡によってできた湿疹に新たな細菌の感染が起き、通常の皮膚症状の経過とは違う症状が出現したり、悪化したりすることをいいます。
かゆみで、発疹を掻きむしってしまうと、そこから細菌がはいり「とびひ」という状態になることが問題になります。
その場合には、抗生物質の投与などで治療します。
原因の細菌感染を抑制することができれば、皮膚症状も水疱瘡の回復に伴い、次第に改善されて、症状が落ち着いていきます。8)
無菌性髄膜炎
水痘帯状疱疹ウイルスが原因によって引き起こされる「水痘帯状疱疹ウイルス性髄膜炎」という病気があります。
この水痘帯状疱疹ウイルスによる髄膜炎は早期に治療しないと命に関わる病気です。
脳と脊髄の周りには髄膜と呼ばれる膜でおおわれています。
髄膜には、硬膜、くも膜、軟膜という3種類の膜があり、軟膜とくも膜の隙間はくも膜下腔と呼ばれ、脳脊髄液という液体で満たされています。
一般に「髄膜炎」とは、この軟膜に細菌またはウイルスの感染によって炎症をきたした状態のことをさします。
水痘帯状疱疹ウイルスは初感染後に知覚神経節に潜伏感染しますが、感染した人間の免疫力によって活動性が抑えられると多くの場合は生涯をとおして再発なく経過します。
しかし感染した人間の免疫力低下によってウイルスが再活性化すると、体の表面に帯状疱疹として現れます。
再活性化したウイルスが脳脊髄液に侵入してしまい、炎症を引き起こすのが髄膜炎です。
水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化によって帯状疱疹だけを発症する人、髄膜炎だけ発症する人、どちらも同時に発症する人がいます。
初感染の際に髄膜炎を併発する人もいます。
髄膜炎の診断に必要な検査によって水痘帯状疱疹ウイルスによる髄膜炎と診断された場合は、速やかにアシクロビルなどの抗ウイルス薬の投与が開始されます。
水痘帯状疱疹ウイルスは免疫力が低下すると、体内で再活性化することが知られています。
免疫力低下の要因としては、糖尿病、がん、免疫抑制剤や抗がん剤などの使用の他、高齢者や高ストレス、過労もリスクとしてあげられます。
水疱瘡にかかった後は、免疫力の低下でウィルスが活性化して、症状が出現する恐れがあるので注意が必要です。1)2)3)6)
小脳炎
小脳炎とは、急性小脳失調症のことで、水疱瘡等によるウイルス感染がきっかけとなって、小脳に炎症が起きて小脳が麻痺し、運動障害、意識障害、その他には身体に麻痺症状が現われます。
水疱瘡などの感染症の後遺症や、予防接種の副作用として突然発症することが多いのですが、感染が原因だけではなく、遺伝性が原因のものなどもあり、完全には原因はわかっていません。
病気になるのは大部分が子どもですが、リハビリを通じて自然に治癒していくことが多いです。
急性小脳失調症とは症状としては、急にふらついて上手く歩けなくなったり、立てなくなったりします。
小脳には歩行に関する機能や、手足の強調運動を取りまとめる機能があります。
この小脳が細菌に侵されると、歩行に困難をきたします。
強力な治療は必要とせず、数週間で回復するため、十分に除外診断を行ったうえで確定診断となれば、特別に投薬治療の必要はなく経過観察のみが行われます。
症状が強い場合や症状が長引く場合には、副腎皮質ステロイドやYグロブリンを使用するなど、炎症をターゲットにした積極的な治療を行うことがあります。
1)2)3)5)
ライ症候群
ライ症候群の原因は不明ですが、一般的にはインフルエンザまたは水疱瘡などのウイルス感染症の後にみられ、特にそれらの感染症にかかっている間の治療の際にアスピリンを服用した子どもによくみられます。
インフルエンザや水疱瘡などのウイルス感染症の症状に続いて激しい吐き気、嘔吐、錯乱、反応が鈍くなるなどの症状がみられるのが典型的で、ときに昏睡に至ることもあります。
脳への損傷がどの程度激しく、どの程度長く続いたかによってその後の予後が変わります。
アスピリンはこのように、ライ症候群のリスクを高めるために、一部の特定の病気(若年性特発性関節炎や川崎病)にかかっている場合を除いては、子どもへの投与は勧められません。
今ではこういった過去の症例から、アスピリンの使用が減ったため、ライ症候群を発症する患者はほとんどいません。
このライ症候群は主に18歳未満の子どもにみられ、米国ではほとんどの症例が晩秋から冬にかけて発生します。
アスピリンを処方されることがないか、小さなお子さまを持つ保護者の方はお薬の内容に注意しておくことも大切なことです。1)2)3)4)
治療とは?
水疱瘡の経過は良好で7~10日で治ります。
そのため、全身状態が良い場合には自然治癒が期待できます。
治療を行なう場合には抗ウイルス薬であるアシクロビルまたはバラシクロビルを使用します。
内服することで症状が緩和されて、発疹がかさぶたに変化していきます。
発疹が出始めてから48時間以内に内服を開始すると効果的です。
もし、高熱が出現する場合には解熱薬を使用することもあります。
ただし、子どもではアスピリンなどの解熱薬により、急性脳症および肝機能障害を起こすライ症候群という重篤な副作用を生じてしまうことがあるため注意が必要です。
大人は発症すると発熱、倦怠感などの全身症状が強く出現する可能性が高く、その場合には入院して抗ウイルス薬の点滴投与を行なうことがあります。
水疱瘡の発疹は赤い斑点状のような形である紅斑(こうはん)、ふくらみのある皮疹である丘疹(きゅうしん)の状態から、短い時間で水疱に変化していき、かさぶたのことである痂皮化(かひか)していきます。
この水疱瘡の発疹の治療には石炭酸亜鉛化リニメント(カルボルチンクリニメント=カチリ)などの外用薬を使用します。
通称「カチリ」は古くから使われている外用薬です。
防腐、消毒、かゆみを鎮める作用のある「フェノール」と患部を保護し炎症をやわらげる作用のある「酸化亜鉛」が含まれています。
また、他には添加物のトラガントが含まれ、水分が蒸発後に薄い膜を残し、皮膚を保護する働きをしています。
この薬は皮膚のかゆみ、あせも、虫さされなどにも用います。
外用薬を塗布する際は、ウイルスが手指につかないように、指ではなく綿棒などを使いましょう。
かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン剤などの内服薬を併用して対処します。
二次感染をおこした場合には抗生物質の外用、全身投与が行われます。
抗ウイルス剤として「アシクロビル」があり、重症の水疱瘡、および水疱瘡の重症化が安易に予測される免疫不全者などでは第一選択薬剤となります。
一方、免疫機能が正常である水疱瘡の症状についても、アシクロビルの経口からの投与は軽症化に有効と考えられており、その場合には、発症してから48時間以内に50~80mg/kg/日を4〜5日間投与するのが適当であるとされています。
しかし、全ての水疱瘡の患者に対して必ずアシクロビルを投与する必要はないと考えられています。1)2)3)
水疱瘡の発疹のケア
水疱瘡は、空気感染をするウイルス感染で、2週間程度の潜伏期のあとにぶつぶつがでます。
最初は2~3個のものが、1日で10個から、ときにはかなりの多数に増えます。
そしてぶつぶつの先端が水ぶくれとなり破れます。
最終的に破れたあと「かさぶた」ができて、治っていきますが、最初の3日程度は新しい発疹ができて「かさぶた」のできた古い物と新しい物が混じります。
全てが「かさぶた」になれば治癒となりますが、それまでに約1週間はかかります。
かゆみで発疹を掻きむしるとそこから細菌がはいり「とびひ」になることが問題になります。
カチリは水疱の乾燥を早めて「とびひ」などを予防する目的で処方されます。
乾燥すれば塗布する必要がなくなります。
お風呂に入った際には、石けんを使ってよく泡立ててかるく洗い、清潔に保つことが大事です。
熱いお風呂に入ったり、長湯をするとかゆみが強くなるため避けるようにしましょう。1)2)8)9)
スキンケアの基本とは?
水疱瘡は発疹が出現する病気なので、その症状を悪化させないためにもスキンケアの基本をおさえておきましょう。
スキンケアは、きれいにする「保清」皮膚の湿度を保つ「保湿」皮膚を守る「保護」の3つが基本です。
「保清」は肌をきれいにすることですが、洗い方にもコツがあります。
皮膚への刺激となるのは、皮脂、汗、古い角質、埃などが混ざった汚れです。
これらは石けんをよく泡立て、こすらないように丁寧に洗い落とすようにしましょう。
アルカリ性の石けんは、洗浄効果は高いのですが、皮脂も取り除きすぎてしまいます。
乾燥が強い場合には、弱酸性の石けんや皮脂をとりすぎないタイプの洗浄剤を選択するとよいです。
「保湿」は皮膚の湿度を保つことですが、洗浄後にバリア機能を回復させる目的があります。
皮膚からの水分の喪失を防ぐためには油分や保湿剤などを補い、しっかり保湿して皮膚のバリア機能を回復させる必要があります。
特に高齢者は、皮膚の保湿機能が低下し、ドライスキンになりやすいです。
保湿剤には尿素軟膏、オリーブオイル、ワセリンなどさまざまな種類があり、用途に合わせて使用しますが、十分な量をこすらずに優しく、まんべんなく塗ることが大切です。
かゆみが辛いときには、かゆみ止めや保湿ローションなどを使います。
水疱瘡の発疹には一般的には石炭酸亜鉛化リニメント(カルボルチンクリニメント=カチリ)などの外用薬を使用します。
使用は医師に相談してから使用するようにしてください。
「保護」は皮膚を刺激から守ることですが、皮膚を傷つけない工夫が役立ちます。
皮膚のかゆみが強くて掻きむしってしまうと、痒みがひどくなったり、皮膚が傷ついて炎症を起こし、またその上に感染を起こしてよりひどくなるという悪循環に陥るためその動作を予防します。
自身の爪を短くして先端を滑らかに整えておきましょう。
体幹では、肌着を着用したり、足ではストッキングやレッグウォーマーなどを着用し、かゆみのある場所を覆うことで皮膚を傷つけないようにします。
発疹の状態を悪化させる場合にはこの限りではなく、発疹の状況に合わせて取り入れてください。
かゆみが辛いときには、かゆみ止めや保湿ローションなどを使います。
かゆみの強い部分は、冷たいタオルなどで冷やしても局所の血流を減少させて痒みを軽減する効果が期待でき、かゆみが楽になることも多いです。
ただし、冷やし過ぎると低体温になったり、冷やすのをやめた後に血流が改善して、灼熱感や余計にかゆみを誘発することがあるので注意が必要です。
熱が下がって、ふらつきなどがなく元気であれば、入浴は可能です。
発疹は熱いお湯に入るとかゆみが増してしまうので、ぬるめのお湯に入り、身体を温めすぎないようにしましょう。
入浴時には、皮膚への刺激が強いナイロン製タオルの使用を避けましょう。
他には、加湿器などで室内の湿度をコントロールして乾燥を防ぎます。
衣類の工夫としては、チクチクする素材や化繊のもの、ゴムがきついものなどは、皮膚への刺激となるため避けるとともに、ゆったりした木綿を選び着用すると良いです。
下着などの縫い目が刺激になるときは、裏返して着用すると刺激が緩和されて良いです。8)9)
感染症法、学校保険法における取り扱いは?
水疱瘡は感染症法による取り扱いでは、定点報告対象の5類感染症であり、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は週ごとにその報告を保健所に届け出なければならない決まりがあります。
学校保健安全法における取り扱いでは、第2種の感染症に定められており、水疱瘡の発症により出現した体の全ての発疹がかさぶたになるまでは出席を停止することとされています。
ただし、その病状により学校医やその他の医師の診断において感染のおそれがないと認めたときは、この決まりの通りではありません。
また、以下のような場合も出席の停止期間となります。
・患者のいる家に住んでいる者、水疱瘡にかかっている疑いがある者については、感染の予防処置を受けるまで、またその他の事情により、学校医やその他の医師において感染のおそれがないと認めるまでは出席の停止期間となります。
・水疱瘡の感染が発生した地域から通学する者については、その発生状況により必要と認めたときは、学校医の意見を聞いて、出席を停止することが適当と認める期間は出席を停止します。
・水疱瘡の流行している土地を旅行した者については、その状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて、出席を停止することが適当と認める期間は出席を停止します。
1)2)
登園・登校許可についてはどうしたらいい?
水疱瘡に感染した場合は「すべての発疹がきれいにかさぶたになるまで」大体1週間は自宅で過ごす必要があります。
保育園、幼稚園、学校で登園許可証が必要になる場合は、発疹が出始めて約1週間を目安に全てが「かさぶた」になった時点で受診するのが良いです。
皮膚の赤みが強く残っている場合には、医師の診断の結果、登園許可証を発行できないこともあります。
いずれの場合にしても登園・登校している施設に連絡し相談することが大切です。
その施設の指示に従い届出や登園・登校の再開をするようにしましょう。1)2)
予防とは?
水疱瘡は水痘帯状疱疹ウイルスの初感染により発症します。
水疱瘡・帯状疱疹の患者の水疱内容物や気道分泌物が感染源となり、空気感染、飛沫感染、接触感染により広がります。
感染力のある期間は、発疹出現1~2日前より通常発疹出現後4~5日程度の間です。
すべての発疹がかさぶたになるまで感染します。
なお、かさぶたになった場所からは感染しません。
そのため予防策は感染源の人との接触をさけることが重要であるとされています。
ワクチン接種での予防も有用性が高く、2001年3月、米国でがNew England Journal of Medicineにまとめられた報告によると、水痘ワクチン発売後約6年を経過した時点での接種成績は「水痘ワクチン接種は子ども達の水痘を85%予防し、中等度から重症の水痘に関しては97%予防するこ とが可能であった。
」と述べています。
また、「接種後罹患した者においては、ワクチン接種6週間後の水痘帯状疱疹ウイルスに対する抗体価が低いことに関係しているようである。
」とも述べられています。
この報告では、水痘ワクチンを接種した子どもの85%は発症せず経過し、発症した97%の重症化を防ぎ、かかってしまった子どもたちは、ワクチン接種をしたが体内で十分に抗体がつくることができなかったことにより発症した可能性があると言っています。
すなわち、ワクチンの予防効果が非常に大きいという報告です。1)2)3)
水痘ワクチンの特徴とは?
弱毒化生ワクチンが日本、韓国、米国などで認可されていますが、任意接種のワクチンの扱いです。
1回の接種での抗体獲得率は約92%でとても高いです。
米国では、1歳以上で水疱瘡の既往のない全ての子どもに対してワクチン接種が推奨されています。
ワクチン接種後の副反応としては、軽い局所の発赤、腫れ(小児では19%、成人では24%)が主なものです。
水疱瘡の様な発疹の出現は4~6%とされていますが、発疹の個数は5個程度でほとんどははんてんの様な発疹の斑丘疹で、全身性の副反応は稀です。
また従来、生ワクチンに含まれるゼラチンに対しアレルギー反応の出現がみられる例があり、ゼラチンアレルギーのある子どもなどでは注意が必要でしたが、各ワクチンメーカーの努力により、全ての生ワクチンからゼラチンが除去されるか、アレルギー反応を起こしにくい低分子のゼラチンの使用に変更されました。
これに伴い、水疱瘡のワクチンである水痘ワクチンからもゼラチンが取り除かれ、現在の日本で流通している水痘ワクチンにはゼラチンが含まれない製剤となっています。
水痘ワクチンは、麻疹・ 風疹などのワクチンと異なり、ワクチン接種によって抗体が獲得されても、水痘ウイルスに暴露した時に発症することが10~20%程度ありえます。
ただし、この場合の水疱瘡は発疹の数も少なく極めて軽症です。
水疱瘡が流行している施設や家族内での予防は、感染者と接触した後にできるだけ早く、少なくとも72時間以内に水痘ワクチンを接種することにより、発症を防ぎ、症状が軽くなる効果を期待でき、そういった方法で感染を予防することもできます。
研究によると、家族内感染での発症予防に関しては、発症すると予想される日の1週間前からアシクロビルを予防的に内服することにより症状を抑えるとともに免疫反応を獲得することができると報告されています。
ただし、発症すると予想される日から約2カ月後に水痘帯状疱疹ウイルス抗体の有無を確認しておく必要があります。
獲得が見られなければ、その時点で水痘ワクチンを改めて接種しておくことが望ましいとされています。
また最近では、高齢者に対する帯状疱疹の予防として、水痘ワクチンを接種する試みが海外や国内でも広まっており、効果の経過を観察しています。1)2)3)
日本での水痘ワクチンの取り扱いとは?
水疱瘡のワクチンは現在国内では乾燥弱毒生水痘ワクチン(以下、水痘ワクチン)が用いられています。
水痘ワクチンの1回の接種により重症の水痘をほぼ100%予防でき、2回の接種により軽症の水痘も含めてその発症を予防できると考えられています。
そのため日本では水痘を対象とした定期接種が平成26年10月1日から開始されています。1)2)3)
水痘ワクチンの定期接種は何歳でどのように受ける?
水痘ワクチンの定期接種は、生後12か月から生後36か月までの間の方(1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日)が対象とされています。
水痘ワクチンは2回の接種を行うこととなっています。
1回目の接種は、標準的には生後12か月から生後15か月までの間に行います。
2回目の接種は、1回目の接種から3か月以上経過してから行いますが、標準的には1回目の接種後6か月から12か月経過した時期に行うこととなっています。
1)2)3)
水痘ワクチンの副反応とは?
一定の頻度で見られるとして報告されている副反応については下記のとおりです
全身症状としては、発熱、発疹が見られることがありますがどちらも一過性で、通常は数日中に消失するとされています。
局所症状としては、注射部位の赤み、腫れ、腫れた部位が硬くなる硬結(こうけつ)があらわれることがあります。
こちらも数日のうちに徐々に皮膚症状は改善していきます。
過敏症状としては、接種直後から翌日に発疹、蕁麻疹(じんましん)、紅斑(こうはん)、かゆみ、発熱等があらわれることがあります。
稀に報告される重い副反応としては、注射直後に見られるショック症状のアナフィラキシー様症状、皮膚に赤紫の斑点が現れる内出血の反応の急性血小板減少性紫斑病等があります。
予防接種後に心配な症状があれば、遠慮することなく接種を受けた医療機関に連絡し、相談してみましょう。
もし水痘ワクチンの定期接種により、重い副反応が起き健康被害が発生した場合には、救済給付を行うための制度がありますので、詳細についてはお住まいの市区町村にご相談ください。
1)2)3)
すでに水疱瘡にかかったことのある人に予防接種は必要?
すでに水疱瘡にかかったことのある方は、水疱瘡に対する終生免疫を獲得したと考えられますので、基本的には水疱瘡の定期接種を受ける必要はなくなり、定期接種の対象外になります。
1)2)3)
療養のために予防接種ができなかった場合の接種は?
水痘ワクチンの接種対象年齢の際に、病気にかかって長く療養していて、接種を受けられずに対象年齢が終わってしまった場合は、届けに基づき、その理由が認められた場合には、長期療養特例として定期接種を受けることができます。
しかしこの場合、接種可能となった日から2年以内に接種を受ける必要があります。
特例に該当するか否かについては、医学的な判断が必要となります。
詳細についてはお住まいの市区町村で異なる可能性があるのでお問い合わせください。1)2)3)
すでに水痘ワクチンを接種したことがある場合には定期接種はどのように受ければよい?
すでに任意接種として接種した水痘ワクチンについては、定期接種を受けたものと考えてそれ以降の定期接種を受けることになります。
具体的には、生後12か月以降に3か月以上の間隔をおいて2回接種を行っている方は、すでに定期接種は終了しているものとなり、定期接種の対象とはなりません。
生後12か月以降に1回の接種を行っている方は、1回の定期接種を行っているとされます。
生後12か月から生後36か月に至るまでの間にある(1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日まで)場合は、過去の接種から3か月以上の間隔をおいて1回の接種を行います。
生後36か月に至った日の翌日から生後60か月に至るまでの間にある(3歳の誕生日から5歳の誕生日の前日まで)場合は、定期接種を終了しているものとなり、定期接種の対象とはなりません。
生後12か月以降に2回接種を行っているが、その間隔が3か月未満である方は1回の定期接種を行っているものとみなされます。
(3か月以上の間隔をおいていないため、2回の定期接種を行っているものとはみなされません。
)
生後12か月から生後36か月に至るまでの間にある(1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日まで)場合は、過去の1回目の接種から3か月以上(2回目の接種から27日以上)の間隔をおいて1回の接種を行います。
生後36か月に至った日の翌日から生後60か月に至るまでの間にある(3歳の誕生日から5歳の誕生日の前日まで)場合は、定期接種を終了しているものとみなされ、定期接種の対象とはなりません。
1)2)3)
妊婦と水疱瘡の関係とは?
赤ちゃんを望む夫婦にとって、無視できないのが水疱瘡です。
妊婦になってから水疱瘡になると重症化するリスクが高い上に胎児感染、胎児死亡のリスクがあり、夫婦ともに抗体価を確認して、抗体価が低い場合にはワクチン接種することが妊娠前に進められています。
何らかの微生物、いわゆる細菌やウイルスなどがお母さんから赤ちゃんに感染することを「母子感染」と言います。
妊娠前から元々その微生物を持っているお母さんもいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。
「母子感染」は、感染時期と感染経路によって3つに分類されます。
胎内感染は赤ちゃんがお腹の中で感染します。
産道感染は分娩が始まって産道を通る時に感染します。
母乳感染は母乳を与えることによって感染します。
妊娠初期に水疱瘡にかかると、流産を引き起こす危険性があります。
妊娠中期以降の感染では、赤ちゃんに皮膚の瘢痕や神経、眼球、手足や指の異常などが出る「先天性水痘症候群」と呼ばれる先天異常が現れる危険があります。
また、出産前21日以降に水疱瘡にかかると、生まれた赤ちゃんが水疱瘡になる可能性があります。
もし出生後すぐに水疱瘡の症状が出現しなかったとしても、お母さんの免疫が切れる出生後6か月前後には帯状疱疹となって症状が出現する可能性もあります。
妊娠後期では、妊婦がかかると水痘肺炎となり重症化することが知られています。
これは子宮が大きくなり、肺を押し上げ、呼吸する機能が低下することが関係していると考えられています。
特に注意が必要となるのは、出産前5日から出産後2日の間に、お母さんが水疱瘡にかかった場合です。
出産前5日より前に水疱瘡にかかっていればお母さんの免疫は赤ちゃんに移行しているため、赤ちゃんがもし万が一発症しても軽症であることが多いのですが、出産前5日から出産後2日の間に発症した場合には、お母さんの免疫が赤ちゃんに伝わらないために、赤ちゃんは重症化しやすい状態になります。
なお、妊娠中に水疱瘡ではなく、帯状疱疹になった場合は初めての感染ではないため、赤ちゃんへの影響はあまり心配いりません。1)2)3)
感染した場合の治療は?
もし、感染した場合の治療は、水疱瘡ウイルスに対しては抗ウイルス薬があり、妊娠中であっても妊婦さん自身はそれによって治療できます。
この薬による赤ちゃんの発育への悪影響はあまり報告されておらず、お母さんの重症化や赤ちゃんへの感染を防ぐためには、抗ウイルス薬を使用したほうが良いと考えられています。
もし、妊婦さんが水疱瘡の感染者に接触したことによって、自身の感染が心配される場合は、発症予防や、発症しても重症化しないようにするために、ガンマグロブリンなどの免疫力を高めるための薬を予防的に使うことがあります。
また、分娩前5日~分娩後2日に妊婦さんが水疱瘡にかかった場合には、生まれる赤ちゃんにも水疱瘡が感染すると重症化しやすいため、子宮の収縮を抑える薬によって妊娠期間を延長し、お母さんの胎内で免疫が作られて、赤ちゃんに移行するのを待ってから出産する方法も考えられます。
さらに生まれた赤ちゃんに対しては、水疱瘡の発症と重症化のリスクを防ぐために、ガンマグロブリンや抗ウイルス薬を予防的に使用することもあります。
1)2)3)
水痘ワクチンの接種時期は?
この水疱瘡を防ぐ方法には水痘ワクチンを接種する方法があります。
水疱瘡予防のためのワクチンは、ウイルスの病原性の成分を弱めて使用し免疫効果を獲得する生ワクチンです。
妊娠中は胎児に移行する可能性が考えられるため、予防接種を受けることができません。
そのため妊娠する前に接種しておくことが大切です。
さらに接種後2、3か月は避妊しておく必要があります。
ワクチンの発症予防効果は85%ほどと言われ完全ではありませんが、重症化は100%予防できると言われている有用性の高いワクチンです。
水疱瘡の抗体検査は、一般的な妊婦健診では行われていません。
もし、妊娠を希望することになったら抗体価を調べ、抗体価が低いとわかったら予防接種を受けておくようにしましょう。
水疱瘡は一度かかると免疫ができ再感染はしないことが多い病気です。1)2)3)
妊婦の水疱瘡予防
妊婦さんの水疱瘡の予防方法は、予防接種を受けておくことが最も最良な方法ですが、もし子どもの頃に水疱瘡にかかったことがなく、妊娠前にも予防接種を受けなかった方は注意が必要です。
水疱瘡が流行っている地域には外出を控えるようにしましょう。
水疱瘡が流行すると、国立感染症研究所や感染の広がっている自治体のホームページにその状況が掲載されます。
外出の際には、その地域で水疱瘡などの感染症が流行しているかどうか確認するようにしましょう。
また、感染症予防のための一般的な注意として、マスクや手洗いはしっかりと行うように心がけておきましょう。1)2)3)
帯状疱疹とは?
帯状疱疹は、水疱瘡にかかったあとに、神経節にウィルスが潜んでいて、後々に疲れや病気や加齢のために免疫力が低下した時に出現します。
水疱瘡も、帯状疱疹も、水痘帯状疱疹ウイルスが原因です。
水疱瘡は、先述のとおり、全身にかゆみを伴う発疹ができる病気ですが、帯状疱疹は体の左右どちらか一方に、ピリピリとさすような痛みと発赤、水ぶくれができるのが特徴の病気です。
内臓の痛みかと思って外科を受診したら痛みのある皮膚周辺に帯状疱疹様の湿疹が出現し始めていて、帯状疱疹だったということもあり、わかりにくい場合もあるので発見が遅れないよう注意が必要です。
帯状疱疹の治療は抗ウイルス剤の内服になります。
特に帯状疱疹の場合は、発疹が治った後もズキズキした痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」という症状が出ることがありますので、その予防のためにも早めの治療が望ましいです。
予防の方法としては、水痘ワクチンがあり、帯状疱疹の予防を目的として接種を行うことも可能です。
帯状疱疹を疑う湿疹が出現した場合には、とにかく早めに受診して治療を開始することが、神経痛の後遺症を残さないためにはとても重要です。10)
まとめ
水疱瘡は、水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスによって引き起こされる発疹性の病気です。
空気感染、飛沫感染、接触感染により広がり、その潜伏期間は感染から2週間程度と言われています。
発疹の発現する前から発熱が認められ、典型的な症例では、発疹は紅斑から始まり水疱を経て痂皮化し治癒するとされています。
一部の人では重症化し、近年の統計によれば、日本では水疱瘡は年間100万人程度が発症し、入院や死亡例もありましたが、子どもに水疱瘡の定期接種が始まり、その数も激減しています。
水疱瘡は9歳以下の子どもでの発症が90%以上を占めると言われています。
子どもの合併症では皮膚の二次性細菌感染、脱水、肺炎、中枢神経合併症によるものがあります。
大人での水疱瘡も時々見られますが、大人に水疱瘡が発症した場合には水疱瘡そのものが重症化するリスクが高いと言われています。
また、これから妊娠して赤ちゃんを産みたいと思っている方は、妊娠中に水疱瘡にかかると妊婦と胎児に与える障害のそのリスクは大きく、妊娠前に抗体検査を受けて、抗体価の低い方は水痘ワクチン接種をし予防しておくことがとても大切です。
VPDは、Vaccine(ワクチン) Preventable(防げる) Diseases(病気)の略で、ワクチンで防げる病気のことです。
VPDで防げる病気に上がっているものの中には、子どもたちの命にかかわる重大な病気があります。
日本では、毎年多くの子どもたちが、ワクチンで予防できるはずのVPDに感染して、重い後遺症で苦しんだり、命を落としたりしている現状があります。
世界中に数多くある感染症の中でワクチンで防げる病気はわずかですが、そのうちのひとつに水疱瘡があります。
水疱瘡はワクチン接種で防げるとわかっている病気なので、あらかじめ予防接種を受けて大切な子どもたちの命を守ることがとても有用なことだと考えられています。
現在、水痘ワクチンは定期接種が始まり、2回接種が無料で行うことができます。
そのため、定期接種以降のお子さんでは水疱瘡に感染する数が激減していますが、今後高年齢で水疱瘡にかかったことのない方でワクチンが未接種、または1回しか接種していない方での流行も考えられます。
これまで水疱瘡にかかっておらず、ワクチンを未接種または1回しか接種していない方には、水痘ワクチン接種をすることが勧められており、広がりを見せています。
水痘帯状疱疹ウイルスは水疱瘡にかかった後、体内に潜伏して、宿主の免疫力が低下したときに帯状疱疹となって皮膚症状をあらわします。
その際にも対処が遅くなると、ウィルスが神経に入り込み、神経痛などを引き起こす可能性がありますので、帯状疱疹の症状が出た時は早めに受診して治療することを心がけてください。
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参考文献
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。