喘息の検査と診断
喘息の診断に重要な項目は、喘鳴を伴う咳などのぜんそく特有の症状や、気道の過敏性亢進、気道が狭くなっても薬を使えばもとに戻る可逆性の気流制限など以下の6つです。
喘息の診断に重要な項目
喘息特有の症状がある場合は、生活習慣や環境についての問診と併せて、呼吸機能検査で気道の狭窄やアレルギーがないかを検査します。
初診の問診で症状や家族歴などを医師に話せるよう、まとめておくと良いでしょう。
喘息の検査は、被験者の正しい理解と検査の協力が必要です。検査の際に、不明点は医師や医療機関のスタッフに確認しましょう。
なお、現在ゼーゼーする咳や呼吸困難を自覚している方は、クリニックなどの医療機関を受診し、正しい診断をうけてください。[1][3]
喘息の診断に重要な問診
喘息の診断に重要なのは問診です。
問診に必要な内容をまとめているため、受診前にメモしておくと良いでしょう。
問診で問われる項目の例
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症状:咳、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューしていないか)呼吸困難の有無
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頻度はどのくらいか、1日何回?週に何回?どんな時に起こるか、夜間に起こりやすいか
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生活環境:自宅の状況、喫煙の有無、地域に公害が無いか,粉塵暴露の有無,ペット飼育歴
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既往歴:幼少期の喘息の有無、その他の疾患
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家族歴:喘息の家族の有無、家族のアレルギーの有無
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薬剤使用歴:アスピリンやACE阻害剤などの服用歴、副作用の有無
すでに喘息と診断されていても、治療の経過を確認するため問診は重要です。
気になった症状などをメモして、診察時に確認すると良いでしょう。[2]
喘息の血液検査
血液検査では、好酸球の状態や炎症の所見をみます。
アレルギー検査で好酸球数・総IgE値・抗原特異的IgE抗体を調べる
アレルギーの関与を調べるため、採血をします。
アレルギーを表す指標は、好酸球・血清総IgE、抗原特異的IgE抗体です。
アレルギーの指標
好酸球数 |
好酸球性気道炎症の存在があると上昇する値 指標250~300/μL以上 |
抗原特異的IgE抗体 |
アレルギーの原因が分かる “ハウスダスト、ダニ、カビなど環境アレルゲンに対する特異的IgE抗体が1つ以上存在する場合、アトピー型喘息と考える。”[3] |
血清総IgE |
基準値232IU/mL以下 アレルギーがあると上昇する値[16] |
喘息の発症に関与する代表的なアレルゲンは、ダニやカビ、ペットです。
アレルゲンを特定する場合、飼育しているペットや住環境を考慮して測定します。[5][3]
炎症の有無を調べるCRPの値
CRPの基準値は、0から0.3mg/glです。
炎症の指標として用いるCRPですが、喘息の際は初期の検査や感染の有無を調べるために用いられます。
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CRPの基準値:0~0.3mg/d
CRPは、喘息以外の疾患でも上昇します。CRPの値だけで喘息の診断はできません。
基準値は参考程度に覚えておきましょう。[6]
喘息の気管支検査
喘息の診断には、気道狭窄の可逆性や気管の炎症がないかを調べるために呼気NO検査やスパイロメトリー検査をします。
それぞれ詳しく解説します。
呼気NO検査の正常値とは
呼気NO検査は、一酸化窒素(NO)の濃度を調べる検査です。気道に炎症がおこると一酸化窒素(NO)が産生されます。呼気中のNO濃度を測れば、気道の炎症が評価できます。
呼気NO検査の方法
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息を吐いた状態でマウスピースをくわえる
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口で息を吸います
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大きく息を吸い込んで、一定の速さで息を吐いていきます
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10秒程度息を吐いて終了です
呼気NO濃度は、喘息の診断だけでなく治療が良好であるかを評価するのにも役立ちます。
健常人では、呼気中一酸化炭素は15ppbと言われており、37ppb以上あると喘息と診断される可能性が高いです。
呼気中NO濃度は、COPD(慢性呼吸器性肺疾患)との鑑別にも役立ちます。
呼気中NO濃度の参考値
健常人の値 |
喘息を疑う値 |
喘息の可能性が高い値 |
15ppb |
22ppb以上 |
37ppb以上 |
喫煙歴がある場合、数値の低下がみられるため注意が必要です。
検査を受ける際には説明を聞き、指示に従いましょう。
スパイロメトリー検査で喘息が疑われる数値
喘息は、気道の炎症により気管がせまくなり、空気が通りにくくなる病気です。
空気の通りにくさを測るために、スパイロメトリーと呼ばれる機械を使って呼吸機能検査をします。
気管支喘息は、1秒量(FEV1)や1秒率(FEV1%)によって特定されます。
1秒量(FEV1):“最初の 1 秒間で吐き出した空気量” 1秒率(FEV1%):“努力性肺活量に対する 1 秒量 の割合” 努力性肺活量:“最大限に息を吸って一気に吐き出 したときの空気量”[9] |
1秒量や1秒率が低下していると、気道が狭くなり空気を吐き出す時間がかかります。これが、呼吸機能検査ではフローボリューム曲線と言われる、喘息特有のグラフに現れます。
スパイロメトリー検査方法
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座位または立位で行う
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マウスピースをくわえて3回以上深呼吸をする
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その後一定のスピードで息を吐きだし測定します
1秒率が70%未満の場合、喘息の可能性が高いです |
気道可逆性検査で気道の広がりを調べる
呼吸機能検査の前後で、気道を広げるβ2刺激薬を吸入し気道が広がるかどうか確認する検査です。
気道を広げるβ2刺激薬を吸入します。その15〜60分後に再び努力性肺活量を測定し、吸入前後の1秒量から気道可逆性を求めます。
検査方法
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はじめに努力肺活量測定し薬剤吸入前の数値を確認する
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その後気管を広げるβ2刺激薬を吸入し、息を目いっぱい吸ってから一気に吐き出したときの肺活量である、努力肺活量を測定します
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状態により15分から60分時間を開けて、再度努力肺活量を測定します
可逆性判定基準
気道可逆性検査で肺活量が200ml以上かつ、1秒量が12%以上改善された場合、喘息の可能性が高いとされています。[11]
気道過敏性テストやその他の検査
ぜんそくの診断にかかわるその他の検査をまとめました。
喘息診断にかかわるその他の検査
検査名 |
気道過敏性テスト |
喀痰検査 |
気管支鏡検査 |
モストグラフ |
目的 |
気道の過敏性を見るために、アレルギーの原因と考えられる薬物を使用する検査 |
たんの中に好酸球がどの程度出現しているかを確認し、アレルギーが分かる検査 |
気管や肺の内部を観察し、病変部の組織や細胞、細菌などを採取したり、腫瘍や異物による狭窄を確認する検査 |
呼吸抵抗を評価する検査。気道の状態を部位ごと(太い気管支なのか細い気管支なのか)に分けて評価できる |
方法 |
アセチルコリン メサコリン ヒスタミンなどを少量から徐々に吸入し、気道抵抗を評価する アレルギー反応を起こす場合もあるので慎重に行います |
吐いた痰の成分を調べる |
麻酔を使用し気管支鏡を挿入して行う検査 |
マウスピースをくわえ、鼻から息が漏れないようにクリップを装着し、何回か普通に呼吸をする検査 |
的確な診断のため喘息の検査は、正しい理解と協力が必要です。
不明点は、診察時に確認しましょう。
喘息以外の病気を調べる検査
喘息は、肺炎やCOPD(慢性呼吸器性肺疾患)など他の病気との鑑別も重要です。喘息以外の病気を調べる検査をそれぞれ解説します。
胸部X線撮影
胸部レントゲンでは、肺気腫や肺結核など喘息以外の疾患がないか調べます。
CT検査
レントゲンで、見落としやすい異常を確認するのがCT検査です。
レントゲンではわからない肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患の鑑別に用いられます。
子どもの喘息検査
子どもの喘息検査では、まず問診で症状や家族歴を確認します。
アレルギーの関与が疑われた場合、アレルゲン特定のため血液検査などを行います。
子どもの喘息検査は、成人同様に呼吸機能検査や呼気中一酸化窒素測定(FeNo検査)、ピークフロー測定が一般的です。
喘息の検査に、痛みや苦痛はありません。
ただし、医師が意図する動作やタイミングを理解して行えなければ正しい結果が得られません。正しい検査結果を得るためには、年齢や理解度により可能な検査が限られます。
6歳ごろから受けられる検査として、息を吐く力を測定するピークフロー測定やスパイロメトリー検査があります。
ただし、場合によっては、自宅で検査の方法を練習したり、検査の様子を見せたりすることから始めます。
喘息の検査は、年齢だけではなくお子さんのその日の状況によりできない場合もあります。医師と相談しながら検査をすすめましょう。[9][15]
喘息診断チェック方法
喘息の臨床診断においては、まずレントゲンなどで喘息以外の診断を除外します。
次に問診チェックリストに該当するかどうかを評価し、呼吸機能検査やNO検査、喀痰中の好酸球の検査結果と合わせて総合的に診断します。
喘息診断チェック方法のポイント
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喘息を疑う患者に対する問診チェックリストに該当するかどうか確認
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ICS/LABAを投与して臨床症状が改善する
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ICS/LABA使用前後で1秒量(FEV1)が12%以上かつ200ml以上の改善があるかどうかを確認する
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呼気中一酸化窒素濃度:50ppb以上
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喀痰中好酸球:300/μl以上
LABAとは、長時間作用性β2刺激薬
ICSとは、吸入ステロイド
“喘息を疑う患者に対する問診チェックリスト
大項目 |
喘息を疑う症状(喘鳴,咳嗽,喀痰,胸苦しさ,息苦しさ,胸痛)がある | |
小項目 |
症状 |
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小項目 |
背景 |
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大項目+小項目(いずれか1つ以上)があれば喘息を疑う”[1]
大項目にあるような喘鳴を伴う咳や、息苦しさがあることと、小項目の症状もしくは背景に該当した場合、ステロイドなどの薬剤を投与します。
薬剤投与によって症状改善があれば、喘息の可能性が高いです。
これに加えて呼吸機能検査やNO検査、喀痰好酸球の値で診断します。
喘息の診断は、呼吸器内科やアレルギー内科が専門です。心配な方は、近くのクリニックなどを受診すると良いでしょう。
検査内容によっては予約が必要な場合があります。
まずは、医療機関の受付にお尋ねください。
喘息の検査は何科に行けばいい?
喘息の症状を疑う場合、呼吸器内科やアレルギー内科を受診すると良いでしょう。
子どもの場合は、小児科でも可能です。
ただし、発作がおさまらず、会話ができない場合や呼吸困難がある場合は救急車も検討しましょう。
日曜や祝日、曜日によって午後は休診日のクリニックも多いです。
発作が心配な方は、夜間、休日に救急対応している病院を見つけておきましょう。
Q&A
喘息の検査に関する質問をまとめました。
喘息の検査にはどんな検査がありますか?
喘息の検査には、問診や採血、呼吸機能を測るスパイロメトリー検査などがあります。
喘息以外の疾患鑑別のため、レントゲンやCT検査も必要です。検査方法は事前に説明があります。正しく検査するためには、検査方法の理解と協力が重要です。
不明点は、事前に医師に確認しましょう。
喘息の検査はいくらくらいかかりますか?
喘息の検査費用は、適用される保険により違うため医療機関に直接お尋ねください。
ただし、厚生労働大臣によって定められている初診料は、10割負担で2880円です。
これに加えて、医療行為ごとに点数が決められており、検査の内容や加算により支払額が変わります。
診察料がいくらかかるか知りたい場合は、診察の際に医師に確認しましょう。症状や疾患によって検査の内容が変わるため、検査費用が毎回同じとは限りません。[18]
喘息の検査で症状がなくてもわかることは?
喘息の症状がおさまっていても、気管支の炎症は検査でわかります。喘息は症状が無くても目に見えない炎症が残っている場合があるためです。
自己判断で治療を中断するのは危険です。症状がなくても、経過観察のため通院が必要な場合があります。不明点があれば、医師に確認しましょう。[18]
喘息はレントゲンでわかりますか?
胸部レントゲン撮影のみで喘息はわかりません。問診を的確に行い、呼吸機能検査や喀痰、採血検査など総合的に行い、喘息と判断します。
まとめ
この記事では、喘息の検査について解説しました。
喘息の検査で重要なのは問診です。
問診では、ゼーゼーする咳や呼吸困難などの症状、喘息の家族がいるかどうかの遺伝的要素を調べます。
問診以外の喘息に関する検査項目は以下の通りです。
喘息に関する検査
検査名 |
内容 |
基準値 |
呼吸機能検査 |
1秒量や1秒率、肺活量を測定 |
1秒率が70%未満 |
気道可逆性テスト |
狭くなった気管支が気管支拡張薬で拡がるかどうかを検査 |
肺活量が200ml以上かつ1秒量が12%以上 |
呼気NO検査 |
呼気中のNO(一酸化窒素)を測定 |
呼気中一酸化窒素の値が 37ppb以上 |
レントゲンやCT |
喘息以外の疾患と鑑別する |
肺炎やCOPDの除外 |
どの検査も痛みや苦痛はありませんが、検査には被験者の理解と協力が必要です。
正しい診断のために、検査の際は方法を理解して望むと良いでしょう。
尚、ゼーゼーする咳や呼吸苦が続いている方は、早期に医療機関を受診し対処してください。
ファストドクターでは無料の医療相談を行なっています。
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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。
参考文献
[4]アトピー性皮膚炎|みんなの医療ガイド|兵庫医科大学病院
[13]呼吸抵抗検査(モストグラフ)とは測定方法呼吸抵抗検査(モストグラフ)でわかること
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。