気管支喘息や咳喘息の人は運動をしても良い?できる運動としてはいけない運動について解説!

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/06/24
喘息であるからといって、運動を避けていませんか? 特に、運動中や運動直後に発作が起きる「運動誘発性喘息」の方は運動を極端に避けてしまいがちです。 しかし、治療によって症状が安定している場合には、適度な運動はむしろ発作の予防に繋がります。 極端に運動を避けると、肥満などの生活習慣病を患うリスク、心肺機能や呼吸機能などの身体機能が低下するリスクを高めてしまうことになるのです。 しかし、ただ闇雲に好きなスポーツを行うと、発作を起こしかねません。更に発作を放置して運動を続けると、徐々に症状が悪化し、重篤な呼吸困難に陥る可能性もあります。 そこで、今回の記事では喘息の方におすすめの運動や避けた方が良いスポーツ、また運動の際の注意点やポイントについて解説していきます。 無理のない範囲で行える運動量を知っておけば、運動誘発性発作を未然に予防することができ、更に心身の健康にもつながるでしょう。 喘息の子どもをもつ保護者の方や、自分自身が喘息と診断されて運動をしてもいいのか悩んでいる方も是非参考にしてください。
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目次

気管支喘息や咳喘息の人は運動をしてはいけないの?

喘息(小児喘息、咳喘息、気管支喘息)の方や慢性気管支炎の方は運動していいのか?と思っている方も多く、発作が出ることを心配して自他ともに運動を避けている人が多いのが現状です。

しかし、それによって運動不足となると、生活習慣病や身体機能の低下などにも発展しかねません。

更に運動は喘息の治療にも取り入れられているのです。

運動療法と言い、咳喘息や気管支喘息の方でも、症状が安定している場合はむしろ適度な運動が推奨されているのです。

適度な運動を行うことで、心肺機能や呼吸器の機能も高まり喘息の症状改善に繋がります。

喘息と運動の関係 ①ドクターストップがかかっている場合は制限または運動禁止

適度な運動は推奨されていますが、ここで注意が必要なことがあります。

それは、「全ての喘息患者が運動をしていい訳では無い」ということです。

運動をするにあたって特に注意が必要なのは、咳喘息や気管支喘息などの種類を問わず、運動によって咳や喘鳴が出現し、苦しいと感じたことがある方です。

このような方は、運動誘発喘息(EIA)や運動誘発性気管支攣縮(EIB)の可能性があります。

喘息の方は、まず運動誘発喘息の有無や程度を調べ、予防方法の指導を受けたうえで運動を行う必要があります。

また、主治医の判断によりドクターストップ(運動禁止や運動制限)の指示が出ている方は自己判断で運動を行うことは危険です。

自己判断での休薬や治療の中断が危険なように、運動療法も同様です。必ず医師の指示に従いましょう。

喘息と運動の関係 ②治療としての運動:運動療法

喘息に対する運動療法の効果は主に以下の3点が挙げられます。

  • 気道反応性閾値が上昇する(気道が炎症反応を起こさずに耐えられる刺激の程度が上がる)

  • 運動能力が向上する

  • ストレス解消にもつながり心理的健康が向上する

[1]

喘息と運動の関係 ③運動後の咳:運動誘発性発作

運動誘発喘息の発作は長時間の運動や気温、環境などによって誘発され、運動中または運動後5〜10分で喘鳴や咳、息苦しさが出現します。

実は小児喘息の内の約半数は、この運動誘発喘息と言われているのです。

運動で誘発される喘息発作:運動誘発性発作について

運動誘発喘息の方は、長時間の運動や、激しい運動を行うことで発作が現れます。

ほとんどの場合、発作が現れた際にすぐに運動を中断すれば5〜10分程度で症状が落ち着きますが、無理をして運動を続けると呼吸困難に陥ることもあります。

運動誘発性喘息の方が運動を行う際に注意するポイントは以下の4つです。

  • 運動の強度

  • 運動の時間

  • 運動する環境(湿度や気温)

  • 運動前の準備

[2]

運動前の準備については後ほど詳しく解説します。

運動誘発性喘息が起こるメカニズムは以下の通りです。

  • 運動による換気量の増大によって気道の冷却と加温が繰り返されること

  • 気道が乾燥することによって浸透圧が変化すること

  • 運動によって自律神経のバランスが乱れること

[3]

上記の状態は、いずれも気道が狭くなる原因となります。更に気道の冷却と加湿が繰り返されることで、敏感な気道が炎症を起こし発作が出現するのです。

喘息の運動性発作 予防と対策

運動性発作を予防するには、まず日頃の治療が重要になります。

治療で発作が起こりにくいように症状がコントロールできていることが、運動するうえでの前提条件になります。

運動誘発喘息の予防法

  • 激しい運動は1~2分以内(休憩を入れながら行うインターバルトレーニングを選択すると良い)

  • 運動強度は徐々に上げていく

  • 気温が低く乾燥している時期(特に冬)にスポーツを行う場合は可能な限りマスクを着用し、気道内の湿度と温度を保つ

  • 息を吸うときは口ではなく鼻から吸うようにする

  • 少なくとも週に2回以上の運動する日を設ける

  • 重症と診断されている人や運動誘発喘息で発作を起こしやすい人は水泳が推奨されているが、運動誘発発作を起こしにくい人は他の運動でも良い
    (温度や湿度、砂埃などの環境によって発作が誘発されることもあるため可能な限り屋内で行える運動選択する)

  • ウォーミングアップを十分に行う

  • 運動の合間に水分と休息を十分にとる

  • 前述の予防法をとっても運動誘発発作を起こす場合や、激しい運動を続ける必要がある場合は、β刺激薬や抗アレルギー薬などの吸入薬を運動の30分程度前に行う

[1]

喘息の運動性発作 発作時の対処法

運動中に喘鳴や咳などの発作が起きた場合は、すぐに運動を中断しましょう。

運動を中断したら、水分摂取をし楽な姿勢で休みます。この時点で喘鳴や咳などの症状が強い場合は気管支拡張薬を使用してください。

15分程度様子を見て、症状がおさまるようであれば運動を再開することも可能です。[4]

ただし、症状が改善しない時はすぐに医療機関に受診しましょう。

自分で受診が困難なほど呼吸困難感が強い場合は、救急要請をしてください。

喘息におすすめの運動はウォーキングと水泳!

運動誘発性喘息の方が行う運動として特におすすめなのが水泳と水中歩行です。これは、大人や子供などの年代を問わず推奨されています。

水泳は、持久力を必要とするスポーツの中で唯一喘息の方におすすめのスポーツです。[5]

プール内で湿度が保たれているのもポイントで、更に温水プールであれば寒暖差も少ないため喘息発作を最も起こしにくい環境といえるでしょう。

ウォーキングは過剰な負荷をかけることなく行える運動です。

何かスポーツをしたいけど、喘息発作が起きるのではないかと不安がある方は、まずウォーキングから始めてみてください。

継続的な運動として取り入れやすく、更に徐々に距離を延ばしていくことで運動への耐久性も身につきます。

ウォーキングや水泳以外にも、休憩をこまめに挟みながら行えるスポーツであれば、基本的に発作は起こりにくいでしょう。

しかし、喘息はアレルギー疾患であるため運動によって完全に治ることはありません。

運動によって運動に対する耐久性や気道反応性閾値が上がることで、発作が起きにくい身体づくりができ、結果的に症状の改善に繋がるでしょう。

喘息の人がしてはいけない運動はある?

一般的に、持久力を必要とする運動は喘息に不向きであると言われています。

運動誘発性喘息の発作が起こりやすい競技としては以下のスポーツが挙げられます。

例えば

  • マラソン

  • ジョギング

  • サッカー

  • バスケットボール

これらのスポーツは、全身を常に動かし続ける必要があるため、身体への負担が大きいです。[5]

ただし、これらのスポーツが絶対にできないというわけではありません。

喘息発作を起こりにくくするための予防治療を受けており、医師の許可があれば可能です。

喘息だからとあきらめずに、やりたい事がある時はまず主治医と相談しましょう。

喘息の人が運動するときの注意点

喘息の人も基本的には運動を行うことができます。

ただし、発作が起きる可能性があることは忘れてはいけません。

特に重度の喘息の方や、運動誘発喘息の方は注意が必要です。

しっかり対策をとり、万が一発作が起きてしまった時は冷静に対処できるようにしておきましょう。

喘息の人が運動するときの注意点を5つ紹介します。

喘息の人が運動するときの注意点①息切れするほどの激しい運動は避ける

休みを挟まずに絶えず動き続けなければならない運動はできるだけ避けましょう。

詳しくは「喘息の人がしてはいけない運動はある?」の章をご参照ください。

激しい運動でも、合間に息を整えられるように休息を挟めるのであれば問題ありません。

喘息の人が運動するときの注意点②準備運動やストレッチを念入りに行う

ウォーミングアップやストレッチは欠かさずに行いましょう。

いきなり激しい運動を始めると、自律神経が乱れ気道が急に狭くなるため発作が起こりやすくなります。

ウォーミングアップやストレッチで身体を慣らせてから、徐々に負荷を上げていきましょう。

喘息の人が運動するときの注意点③水分補給をこまめにとる

気道の乾燥は発作を起こす原因になります。

運動をして呼吸回数が増えると気道が乾燥しやすくなるため、適度な水分補給は欠かせません。

更に、水分補給は脱水予防にもつながるため必ず行いましょう。

喘息の人が運動するときの注意点④運動しやすい環境下で行う

冷たい空気によって気道が冷えると、収縮して気道が狭くなります。

寒い冬に行われる持久走などで発作が起こりやすいのはこのためです。

また、乾燥や砂埃などの刺激も発作を誘発する原因となります。

水泳がおすすめされる理由として、室内の温水プールでは乾燥や砂埃などの外的な誘発要因が少ないこともあげられます。

喘息の人が運動するときの注意点⑤万が一の喘息発作に備えて吸入器を準備しておく

発作時の吸入器が処方されている方は、必ず持ち歩きましょう。

主治医の指示のもと、発作が起こった際にはすぐに対応できるように準備しておきます。

指示通り対応しても症状が改善しない時は、救急受診の必要があります。

Q&A

喘息でも出来る運動は?

基本的には喘息だからといって運動制限はありません。

ただし、発作が起きやすく運動をしても良い段階にないと医師が判断した場合はその指示に従いましょう。

喘息におすすめの運動は、水泳やウォーキング等が挙げられます。

詳しくは「喘息におすすめの運動はウォーキングと水泳!」の章をご参照ください。

喘息でしてはいけない運動は?

ジョギングやマラソン、サッカーやバスケットボールなど、持久力を必要とし、休むことなく体を動かす必要のある運動は発作が起きやすくなります。

しかし、絶対にしてはいけないというわけではありません。

予防治療によって症状が安定しており、発作が起きにくい場合、主治医の許可があればこれらの運動も可能です。

運動の前はストレッチやウォーミングアップを念入りに行って身体を慣らしてから運動を開始すること、

また日頃からウォーキングなどの軽負荷の運動を継続的に行って耐久性を上げるなど、できる限り発作が起きないような工夫を取り入れて行うと良いでしょう。

喘息でやってはいけないことは何ですか?

喘鳴などの発作が出現した際に、無理をして運動を続けてはいけません。

我慢できる程度だと感じても、それを放置すると徐々に症状が悪化し最悪の場合は呼吸不全に陥ることもあるのです。

喘息の人は、少しでも息苦しさを感じたら休息と水分補給を必ず行ってください。

また、運動に関すること以外で注意すべき点もいくつかあります。

  • 風邪などの感染症に注意する

  • 煙や殺虫剤、柔軟剤や化粧品のにおい等の化学製品を極力避ける

  • 喫煙をしない、または副流煙を吸わないように注意する
    (周囲の人は喘息の方の近くで喫煙しない)

  • ストレスをため込んだり、肥満にならないように注意する

大人喘息でランニングはできますか?

いきなりランニングを始めることはおすすめできません。

ウォーキングから始め、徐々に耐久性を向上させていきましょう。

ウォーキングからランニングに移行した後も、いきなり長距離に挑戦するのではなく、徐々に距離を伸ばします。

軽く息が上がる程度で休息を取り入れるようにしましょう。

ウォーキングでは運動として物足りないと感じるかたもいるかもしれませんが、継続的に行うことで代謝も上がり、心肺機能や呼吸機能も向上します。

喘息の人は運動していいのか

基本的には運動は推奨されています。

ただし、個々の重症度によっては、ドクターストップがかかる場合もあります。

それ以外の場合は適度な運動はむしろ喘息の症状改善に効果的です。

子どもの喘息 運動会は出ても良い?

運動会への参加の可否は主治医と相談のうえ決定してください。

グラウンドで行われる運動会は砂埃も多く、場合によっては参加できない可能性もあります。

マスクを着用するなどしてできる種目だけ参加するという方法もありますので、主治医や教員と相談し具体的な方法と対策を考えたうえで参加すると良いでしょう。

喘息は運動で悪化する?

自分の症状に対して無茶な運動をしなければ、運動が原因で悪化するということはありません。

息苦しさが出現しているにも関わらず、無理をして運動を続けると症状が悪化することもあります。

喘息は運動で改善するって本当?

喘息は運動で改善すると考えられています。運動療法も喘息治療のひとつです。

適度な運動は、呼吸機能や心肺機能が向上するため、発作が起きにくくなります。

また、喘息以外にも肥満などの生活習慣病予防や自律神経を整えることにもつながるため、心身の健康を保つためにも運動習慣は重要となります。

喘息で運動後苦しい人はしない方が良い?

喘息で、運動中や運動後に苦しくなったり喘鳴が現れる人は「運動誘発喘息」の可能性が高いです。

運動誘発性喘息だからといって運動をしない方が良いというわけではありません。

注意点を守ればむしろ症状の改善にもつながります。

詳しくは「喘息の運動性発作 予防と対策」の章をご参照ください。

現在行っている運動で発作が強く現われる場合は、今より軽負荷な運動から徐々に身体を慣らしていきましょう。

いずれにしても、治療と今後の運動量の目安を医師と相談することをおすすめします。

まとめ

今まで喘息を理由にスポーツをあきらめていた方も、運動の必要性をおわかりいただけたでしょうか。

運動を行えば、当然身体機能は向上します。

しかし、それと同時に心理的にも良い効果が生まれるのです。

それは、喘息という病気によって今までできなかったスポーツができるようになったという達成感や自信が芽生えたり、適度な運動がストレス解消に繋がるためです。

薬物療法だけでなく運動療法を取り入れることは、喘息患者のQOL(生活の質)向上に繋がるでしょう。

そのためにはまず運動ができる状態まで症状が安定し、コントロールできていることが前提となります。

現時点で既に症状が安定している方は、ウォーキングや水泳などの運動を日々の生活に取り入れ、継続的に運動を行っていきましょう。

看護師に現在の症状を相談してみませんか?

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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。

参考文献

[1]厚生労働省|治 療 1. 薬物療法

[2](独)労働者健康福祉機構|リーフレット

[3]すぎもとキッズクリニック|運動誘発性喘息

[4]独立行政法人 環境再生保全機構|運動時のポイント|小児喘息基礎知識

[5] 横浜弘明寺呼吸器内科クリニック健康情報局|喘息の方におすすめのスポーツと、運動時の発作を予防する対処法

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