知っておこう!とびひ(伝染性膿痂疹)6つのポイント
とびひは皮膚の細菌感染で起きる
とびひは皮膚に細菌が感染することで起きる病気です。
正式な病名としては伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)といいます。
原因となる細菌は、手のひらや鼻の中など人間が常に持っている常在菌の中に含まれています。
あせもや湿疹、虫刺されなどを掻きこわしたり、怪我の傷やアトピー性皮膚炎などによって、皮膚のバリア機能が低下した部位に細菌が入り感染することで、そこから飛び火するように症状が広がります。
子どもに多いですが、大人も発症する場合があります。
感染していない人も、他人の水ぶくれ(水疱)や水ぶくれ(水疱)の中身にふれて自分の傷口などにさわることでうつります。
子どもはかゆみ・水ぶくれをともなうことが多い
とびひには種類があります。
夏、子どもに多く生じるのが水ぶくれ(水疱)から広がるタイプのとびひです。
水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)といい、かゆみを伴う水ぶくれ(水疱)ができるのが特徴で、水疱の中身には感染力があります。
水ぶくれ(水疱)が破れるととびひが全身へ広がってしまいます。
蚊に刺される機会が増え、気温や湿度が高く細菌が活発な夏に起こりやすいです。
子どもは「かゆい」と思ったところを、我慢できずに掻いてしまうことが多いです。
大人にも起きる
とびひのうち、アトピー性皮膚炎など、皮膚疾患をもっている人に多く生じるのが、痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)です。
皮膚疾患で肌のバリア機能が落ちていると、もともと持っている常在菌によってとびひが生じやすくなります。
痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)はかさぶたができるのが特徴で、発熱やリンパ節の腫れ、喉の痛みをともなう場合があります。
季節や年齢を問わず、大人も発症します。
とびひに至る前に対処することが大切
とびひの症状は突然起こることはまずありません。
とびひよりも先に、あせもや虫刺され、湿疹、小さな傷など、原因となる皮膚症状が起こります。
とびひが生じる前に、早めにかゆみや傷の対処をすることで、とびひを防ぐことができます。
皮膚症状に気づいたら、適切に対処しましょう。
感染者の皮膚にふれてうつる
とびひは、感染者の皮膚に直接ふれることでうつります。
特にとびひでできた水ぶくれ(水疱)の中身には大量の菌が含まれているため、ふれると感染する可能性が高いです。
また、感染者の水ぶくれ(水疱)の中身が付着した物を介しても感染します。
知っておきたい豆知識
ふれるとなぜうつる?
とびひについて、「人がもともと持っている常在菌が原因で、傷に菌が入ることで感染する」と説明したため、ふれただけでうつると聞くと疑問に思うかもしれません。
人の皮膚には気づきにくい小さな傷が存在します。
そこへ、感染者の皮膚でたくさん増殖した菌(元々は常在菌)が付着すると感染してしまうのです。
重症化して全身に症状が出ることも
とびひが重症化すると、黄色ブドウ球菌が作り出す毒素によって全身に強い症状が出る「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」になってしまう場合があります。
6歳までの子どもに多いですが、大人も発症します。
早めの治療が必要となる病気なので、症状に応じた受診目安を確認しておきましょう。
とびひ(伝染性膿痂疹)はどんな症状?
とびひ(伝染性膿痂疹)は原因菌や症状によって2種類に分けられます。
夏、子どもに多い水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)
原因や感染経路など
- 原因菌:ほとんどが黄色ブドウ球菌
- 感染経路:掻きこわしや傷口から細菌が侵入することで感染
- 感染しやすい時期:6〜10月
症状
- 赤み、痒みを伴う水ぶくれ(水疱)
- 水ぶくれ(水疱)が破れることで生じるただれ
水ぶくれ(水疱)の中身には感染力があり、破れると全身へ広がります。
感染していない人も、他人の水ぶくれ(水疱)や中身にふれることでうつります。
通年、大人に多い痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)
原因や感染経路など
- 原因菌:化膿レンサ球菌
- 感染経路:皮膚のバリア機能が低下した部分から感染
- 感染しやすい時期:1年中感染する可能性がある
症状
- 小さな膿を伴う水ぶくれ(早期にあらわれる症状)
- 発熱
- 喉の痛み
- リンパ節の腫れ
とびひ(伝染性膿痂疹)が関連する病気
とびひと似たような湿疹・症状が出る病気
- アトピー性皮膚炎
- あせも
- 水ぼうそう
- 蕁麻疹
- 接触皮膚炎
- カポジ水痘様発疹症
- 虫刺され
とびひによる合併症
- ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
毒素が血液中に入り込むことで全身の皮膚が火傷のように剥がれる合併症です。
とびひ(伝染性膿痂疹)の対処方法は?
かきこわさないためのケアを
かきこわさなければ傷にならないので、これ以上とびひが広がる心配はありません。
かきこわさないために以下のケアを行いましょう。
爪を切る
長い爪は皮膚に傷を作りやすいため、短く切って整えましょう。
薬でかゆみを抑える
あせも、湿疹があるとき
薬の使用でかゆみを抑えられます。市販薬もありますが、病院で医師から適切な処方を受けるとよいでしょう。
虫刺されがあるとき
小さな子どもの場合、蚊に刺されることが多くなります。
市販の塗り薬でかゆみを抑えたり、パッチを貼りましょう。
小さな怪我も清潔に
外遊びなどで小さな怪我ができたら、傷口を清潔に保ちましょう。
泥や砂がついている場合は流水で洗い流しましょう。
その後、消毒をして傷口にさわらないように絆創膏などを貼ります。
※市販薬には子供用のしみない消毒液もあります
※小さな傷で絆創膏を嫌がる場合、無理に貼らなくてもよいです
皮膚を清潔に保つ
とびひは皮膚に菌が感染することで起こる病気なので、皮膚表面を洗って清潔に保つことはよいことです。
皮膚を清潔に保つことは予防にもつながります。
とびひが流行しやすい夏は汗もたくさんかきます。
とびひが生じていなくても、短時間でもよいので毎日お風呂に入り、石鹸で体を洗いましょう。
お風呂は短めに
とびひがあるときはシャワーで済ませるか、湯舟につかる場合は短時間で済ませましょう。
体が温まるとかゆみが強くなり、かきたくなってしまうことがあります。
シャワーの温度はぬるめにするとよいでしょう。
患部は泡で優しく洗い、清潔を保ってください。
家庭内感染や、とびひの症状の悪化を防ぐため、以下の点を意識しましょう。
- バスタオルを他人と共有しない
- 湯舟に入る場合、感染者は最後に入る
プールは控える
上記を意識すればお風呂に入ることは問題ありませんが、プールはとびひが完全に治るまでは控えましょう。
水を介して感染することはありませんが、感染した人の肌にふれることでうつります。
プールでは肌が接触する機会が増えるほか、タオルなどの共有物を介して感染が広がる可能性もあるため、感染拡大防止の観点から避けた方がよいでしょう。
かきこわしてしまったら受診を
かきこわして傷になってしまったら、元の皮膚症状も悪化していることがほとんどです。
早めに医師の診察を受けましょう。
自宅では清潔を保つことが大切です。
受診後も毎日シャワーをし皮膚を清潔に保ちましょう。
患部にガーゼを貼る
登園・登校の際は患部にガーゼや包帯をはって、きちんと覆いましょう。
他人に肌がふれてしまうと、とびひをうつしてしまう原因になります。
登校・登園は可能(学校保健安全法第3種)
とびひ(伝染性膿痂疹)は学校保健安全法で第3種として扱われています。
日本臨床皮膚科医会、日本小児皮膚科学会、日本皮膚科学会、日本小児感染症学会によって、出席停止に関する統一見解を以下のように出しています。
「病変が広範囲の場合や全身症状のある場合は学校を休んで治療を必要とする場合がありますが、病変部を外用処置してきちんと覆ってあれば学校を休む必要はありません。」
症状や学校の方針により対処は異なるので、上記を踏まえて医師や学校に相談するとよいでしょう。
以下の場合は学校を休み、治療を行った方がよいでしょう。
- ガーゼや包帯、服などでは覆いきれないほど全身に症状がある
- 皮膚症状以外に熱などの症状がある
とびひかも?と思ったら
皮膚症状に対して適切に対処をしていても、完全にとびひを防げるわけではありません。
とびひの症状が現れた場合は病院が開いている時間帯に受診しましょう。
オンライン診察を受けることも可能です。
【病院?救急車?オンライン診療?迷ったら】今の症状と適した受診先
受診が必要な症状について知っておきましょう。緊急度チェックでは、症状に応じた受診先をすぐに判定できます。
判断に迷う時の相談先
- 緊急度チェックで症状に応じた受診先を判定
- #7119や♯8000(子ども)へ電話
- オンライン診療(24時間対応)で医師に相談
至急受診を
とびひに伴い以下の症状がある場合は、時間を問わず救急外来を受診してください。
- 37.5℃以上の発熱がある
- 症状のある部位に強い痛みがある(赤ちゃんが泣き止まない)
- 皮膚が真っ赤に腫れて熱を持っている
- 皮膚がめくれた
受診が必要
以下の症状がある場合は、医療機関が開いている時間帯に早めに受診してください
- 皮膚にかゆみをともなう赤い腫れがある
- 皮膚にかゆみをともなう水ぶくれ(水疱)がある
判断に迷う場合はオンライン診療で医師の診察を受けることが可能です。
受診するときのポイント
受診の際は時系列で状況を伝えるとよいでしょう。
余裕があればメモなどを作成しておくとよりスムーズです。
病院の持ち物リスト(優先順)
緊急時(救急車)も必ず持参
- スマートフォン/携帯電話
- 家族の連絡先がわかるもの
- お財布
- お薬手帳(持病がある場合は必ず)
持参が必要
- 保険証
- 医療証
- 診察券
※保険証・医療証が無いと、費用が一時的に10割負担となることがあります
子どもに必要
子どもは下記も準備しましょう。
- 着替え
- おむつ
- おしりふき
- ビニール袋2−3枚
- 大きめのタオル(フェイスタオル等)
症状が出る前に備えられること
近隣の病院を確認しておく
近隣の夜間・休日に対応している病院やかかりつけ医の診療時間を確認しておきましょう。
タクシー会社の連絡先を確認しておく
自分や家族が体調不良のときは運転を避けましょう。
運転に気を取られ子どもの体調変化を見落としてしまったり、普段より慌ててしまい、事故につながるリスクもあります。
こうした事態を防ぐためにも、体調不良時に備えてタクシーの連絡先を確認しておきましょう。
緊急連絡先を確認しておく
勤務先や学校、幼稚園など緊急時の連絡先を確認しておきましょう。
受診に必要な物の場所を決めておく
保険証や診察券、お薬手帳、医療証、母子手帳などの置き場所を決めておき、すぐに持ち出せるよう備えましょう。
「対処法を調べる」監修医師

こうだたかゆき
神田貴行医師
日本小児科学会専門医/博士(医学)
島根大学医学部臨床教授
コンサータ登録医
鳥取大学医学部卒業後、小児科医として16年間病院勤務、11年間発達障害児対応クリニック院長を務めた。現在は小児科を中心にオンライン診療等を行うフリーランス医師としても活動中。
この記事は医師監修のもと、ファストドクター株式会社が制作しています。