熱中症とは?
熱中症とは蒸し暑い環境に長時間いることで体の中の水分が奪われ、体温の調整がうまくできず、体に熱がこもってしまう状態のことです。屋外だけでなく室内でも起こる場合もあります。
ときには頭痛やけいれんなどのさまざまな症状を引き起こし、適切な治療ができていないと、最悪の場合死に至ることもあります。
人は体を動かすと体温が上がり、汗をかきます。通常は、汗をかくことで体の中の熱を外に逃がし、体温を調整しています。
しかし、高い気温の中で激しく運動すると、体の中で作られた熱をうまく外に逃がせません。熱が体の中にこもり、体温が上がったままになるのが熱中症です。
熱中症について正しく理解し、自分の体調の変化にもいち早く気づき、対処できるようにしましょう。
熱中症のおもな原因3つ
熱中症を引き起こす原因には、場所・体・行動の3つが関係しています。
3つの原因を理解し、注意できるようになると熱中症になるリスクがぐんと下げられるでしょう。[1]それぞれの原因について解説します。
熱中症になりやすい場面
熱中症になる一番の原因として炎天下に長時間いることを想像するかもしれません。
実際には炎天下に長時間いることだけでなく、冷房の効いていない室内や、体がまだ暑さに慣れていない時期にもかかりやすいとされています。
具体的には、以下のような環境があげられます。
-
気温、湿度が高い
-
風がなく、直射日光を直に浴びている
-
急に暑くなった日
-
閉め切った室内
-
エアコンのない部屋
熱中症は室内でも起こりえるため、気温ばかりに気を取られないように注意しましょう。実は気温が低くても、湿度が高いと熱中症のリスクは高くなります。
また、室内でも風通しが悪いと室温や湿度が上がり、気づいたときには、熱中症にかかっている方が多くいます。
暑くなりはじめの時期や急に暑くなった日などは、熱中症のリスクが上がるため注意が必要です。
熱中症になりやすい人
熱中症になりやすいかどうかは、年齢や身体的な特徴も関係しています。
具体的に、熱中症になりやすい人には以下のような特徴があります。
-
高齢者
-
子ども
-
肥満者
-
必要以上に衣服を着ている人
-
普段から運動をしておらず、暑さに慣れていない人
-
低栄養状態
-
体調が悪い人(二日酔いや寝不足など)
-
下痢やインフルエンザなどにより脱水状態にある人
高齢者や小さな子どもは体温を調整する機能の衰えや未熟さから、体の中に熱がこもりやすく重症化しやすい傾向にあります。
熱中症には体調や健康状態も大きく影響します。子どもや高齢者でなくても、体調が悪いときに炎天下に何時間もいると、熱中症になるリスクは高まるでしょう。
そのため、場所や時期に気をつけていても、熱中症にかかる方は多くいます。
ほかにも、心臓の病気や高血圧、精神疾患などのさまざまな持病により体温調整の機能が乱れることもあるため、注意する必要があります。
熱中症になりやすい人の特徴について知っていると、熱中症になるリスクを減らすことができます。[2]
熱中症になりやすい行動
場所やなりやすい人の特徴以外で、知っておいてほしいことは、熱中症になりやすい行動です。
具体的には、以下のような行動があります。
-
激しい運動、慣れない運動
-
長時間の運動、作業
-
こまめに水分補給をしていない
上記のような行動を続けると、体から熱をうまく逃がせず、熱中症になりやすくなります。
スポーツをしている人や外での作業が多い建築業や運送業の方は、より注意が必要です。[1]
【重症度レベル別】熱中症の症状について
熱中症は早めに症状に気づき、対応することで、重症化を防げます。
早い段階で熱中症に気づけるように、症状の重症度を理解していきましょう。
熱中症の症状は大きく分けて3つの段階に分けられています。
すべての人が同じように段階通り症状があらわれるわけではありません。症状のレベル別に紹介しているため、どのような症状があるか確認しておきましょう。
レベル1:軽症
軽症は、熱中症を起こしたその場所で応急処置が可能です。
-
立ちくらみ、めまい
-
筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)
-
大量の発汗
-
手足のしびれ
筋肉の痛みや突っ張るような症状は、大量の汗をかくことで体の中の塩分が不足して起こります。
熱中症であっても、初期の段階で体調の異変に気づく人が多いでしょう。
軽症であっても症状の改善がみられない場合は、医療機関を受診しましょう。[3]
レベル2:中等症
中等症ではレベル1の軽症より症状が悪化し、医療機関での治療が必要となる状態です。
-
頭ががんがんする(頭痛)
-
吐き気がする、吐く
-
体がだるい(倦怠感)
-
ぐったりする、意識がなんとなくおかしい
中等症では、上記のような症状のように全身状態が悪化します。
レベル1の軽症であっても症状が改善しない場合や、上記のような症状がみられるときは、すぐに医療機関を受診しましょう。[4]
レベル3:重症
熱中症の重症では、医療機関へ入院して治療する必要がある状態です。
-
意識がない、呼びかけに応じない
-
呼びかけても返事がおかしい
-
からだがひきつる(けいれん)
-
まっすぐ歩けない、走れない
レベル3の重症では、上記の症状に加えて高体温になるため、体をさわると熱く感じます。
このような状態のときには命の危険があるため、迷わず救急車を呼んでください。救急車が到着するまで、積極的にからだを冷やすようにしましょう。[4]
普段の生活でできる熱中症対策
熱中症は、普段の生活で意識をしていれば予防が可能です。
毎日少しずつ気をつけるだけで、熱中症のリスクを下げられます。この章では、普段の生活の中でできる熱中症対策を紹介します。できることから試してみてください。
こまめに水分を補給する
熱中症対策には、のどが渇いていなくても普段からこまめに水分をとることが大切です。
私たちが気づかないうちに、からだの中の水分は失われています。また汗をかくと水分だけでなく、体の中の塩分も失われます。
汗をかいているときは、水やお茶よりもスポーツドリンクのような塩分や糖分が含まれている飲料水がよいでしょう。
汗で奪われた水分だけでなく、塩分や糖分も一緒に補給できるためです。
糖分は水分や塩分の吸収が良くなるだけでなく、エネルギー補給として疲労回復にもつながります。
状況にあわせて飲料を選ぶようにしましょう。 [5]
暑さから身をまもる服装を選ぶ
衣服の調整は、暑さから少しでも身をまもるために大切です。
暑い日には、熱を吸収しやすい黒色系の服を避けるとよいでしょう。白色系〜淡色系の色合いの衣服は、熱がこもりにくいためおすすめです。
また衣服の風通しをよくするために、下着を吸水性のよいものにしたり、えり元を解放したりなどの工夫もできます。
日差しが強いときには必ず帽子かぶり、直射日光を避けるようにしましょう。[4]
涼しい環境で過ごす
熱中症の予防のためには屋外・室内に関わらず、涼しい環境で過ごすことが大切です。室内では扇風機やエアコンをつけ、風通しをよくして室温を適度に下げましょう。
節約のためにエアコンをつけない方が多くいますが、我慢することで室内の温度が上がり、熱中症のリスクが非常に高くなります。
自分は大丈夫、と思わず我慢しすぎないように注意が必要です。[4]
屋外の場合は、可能であればなるべく日陰を歩くようにしましょう。
屋外ばかりにならないよう、こまめにエアコンの効いた涼しい室内で過ごす機会を作れると良いですね。
また、そもそも暑い日には、無理な外出を避けることも検討しましょう。
こまめに休憩をとる
長時間の運動や屋外での作業は、熱中症のリスクを高めるため、こまめに休憩をとるようにしましょう。
休憩する時間を決めておくことで、体の中の熱を逃がす時間を定期的に作れます。
また休憩はなるべく涼しい場所でとり、体を冷やすようにしましょう。休憩時には水分と塩分の補給ができると良いですね。
集団活動の場では、個人の体力や体調に合わせてペースを守らせ、無理をさせないことも大切です。[3][4]
熱中症になった場合の対処法
熱中症の疑いがある場合は、次のような対応をしましょう。
涼しい場所への移動 |
|
衣服の調整 |
|
水分摂取と塩分補給 |
|
上記の対処法で症状が改善しない場合や、自分で水分を取れない場合は、医療機関を受診してください。
熱中症を疑う症状があり、レベル3の重篤な状態(意識がない、呼びかけへの反応が悪い)では、迷わず救急車を呼びましょう。
意識がしっかりしていないときに、水分を無理に飲ませようとすると、むせてしまう危険性があるため無理は禁物です。
救急車を待っている間は、涼しい場所へ移動し衣服を緩め、身体を冷やす対応をしてください。
熱中症に関するよくある質問
熱中症について少し理解できても、まだ疑問を持っている方も多いでしょう。
よくある質問について以下にまとめています。
熱中症ってどういうふうになるの?
熱中症は、はじめは軽い体の脱力感やめまい、筋肉痛のような症状がみられ、重症化すれば命にかかわる危険性があります。
暑い中で長時間運動を続けると体温が上がり、体の中で作られている熱をうまく外に逃がせず、水分や塩分のバランスが崩れることで発生します。
具体的な症状や進行度合いは3段階にわかれており、それぞれで症状や対応法が変わってきます。
熱中症の体温は何度以上ですか?
熱中症には「体温が何度以上」などの基準はありません。
ただし、40℃を超える高熱がみられた場合「重症度レベル3」の重篤な状態です。
呼びかけに応じなかったり、まっすぐ歩けなかったりする症状がみられた場合は、 すぐに救急車を呼んでください。[2]
熱中症はどのくらいで治りますか?
症状や進行度合いにより違いますが症状レベルが1〜2の自分で対処できる軽い熱中症の場合、適切な対応法を行うことで、少なくとも24時間程度で回復していきます。
翌日になっても症状が改善しない場合や、自分で対応ができない場合は、速やかに医療機関へ受診しましょう。[7]
暑いと気持ち悪くなるのはなぜ?
暑いと気持ちが悪くなるおもな理由として以下の4つがあげられます。
-
脱水状態で大量の汗をかく
-
熱中症により、体温が異常に上がってしまう
-
血圧の変動により、全身への血液の流れが悪くなる
-
急激な体温調整を行うことで、エネルギーを多く消費してしまう
上記のような状態により、頭痛やめまいといった症状があらわれ、気分の悪さや体のだるさを感じることがあります。
まとめ:正しい知識を身につけて、熱中症を予防しよう
熱中症とは体の中に熱がたまり、体温が上がって発症する状態のことです。
症状は3段階にわかれており、症状の度合いにより対処方法も変わります。
軽症の場合はその場で対処もできますが、中等症以上では医療機関での治療が必要です。
また熱中症は、普段の生活の中でも熱中症予防のための対策ができます。
体の中に熱をためないように、服装を工夫したり適度に休息をとったりしましょう。
長時間の運動や屋外での作業を避け、エアコンが効いた涼しい場所でこまめな水分摂取を心がけてください。
もし熱中症になった場合でも、正しい対処法をすることで重症化を防げます。
熱中症について正しく理解し、暑さに負けない体を作り、熱中症を予防していきましょう。
熱中症は、気付いた時にはかなり脱水症状が進行していたり、判断が遅れて重症化するケースがあります。
ファストドクターのオンライン診療では、熱中症が疑われる症状への対応が可能です。
緊急性の判断などにもご利用いただけます。
もしものときに備えてアプリをインストールし、情報登録までしておくと安心です。
参考文献
[1]環境省熱中症予防情報サイト 熱中症の予防方法と対処方法
[2]熱中症のメカニズム | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進
[4]熱中症の予防・対策 | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進
[5]熱中症対策のポイントは、水分補給だけでなく塩分補給! | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。