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VDT症候群とは?
VDT症候群とは、パソコンなどのVDT機器を使用した作業を長時間行うことによって生じる心身の不調です。
テレワークが普及し、パソコンやスマートフォン、タブレットなどのディスプレイを見ながら行うVDT(Visual Display Terminals)作業を行う人が増加しました。
多様な働き方ができるのは大きなメリットですが、長時間のVDT作業により眼の疲れや頭痛、睡眠障害などさまざまな症状に悩まされる人が増えています。
厚生労働省「平成20 技術革新と労働に関する実態調査」によると、仕事でVDT作業を行う人のうち、精神的疲労やストレスを感じている人の割合は34.6%と報告されています。
また、身体的疲労や症状を感じている人の割合は68.6%にものぼり、6割以上の労働者がVDT作業によって何らかの症状を抱えている状況です。[1]
家庭においてもパソコンやスマートフォン、タブレットなどの普及は高まっており、今後さらにVDT症候群を訴える人が増加すると考えられます。
VDT症候群の原因は?
VDT症候群は、パソコンやタブレットを長時間使用することで身体的・精神的に疲労し、さまざまな症状が現れます。
ここでは、VDT症候群を発症する原因についてくわしく解説します。
眼を酷使するため
眼には血管と筋肉が豊富な「毛様体」という組織があり、人がものを見るときのピント調節に重要な働きをしています。
遠くを見るときは毛様体の筋肉を緩ませ、レンズの役割をする水晶体を薄くしてピントを合わせます。
反対に、近くのものを見るときは毛様体の筋肉が縮んで毛様体を膨らませ、ピントを合わせる仕組みです。
VDTのディスプレイを近距離で見続けると、毛様体筋が長時間縮んで筋肉が過度に緊張し「眼精疲労」につながります。
眼精疲労が眼だけでなく、身体や精神に悪影響を及ぼす状態がVDT症候群です。[2]
長時間同じ姿勢でいるため
長時間同じ姿勢を続けることで血液の循環不全や筋肉の緊張を引き起こし、首・肩のコリや痛み、足腰のだるさといった症状が現れます。
また、悪い姿勢で長時間VDT作業を行うと筋・骨格系に負担がかかり、さまざまな症状が現れるため注意が必要です。
たとえば、肘をついたり背中が丸まった姿勢で作業をすると首・肩のコリや痛みなどの症状が現れます。
また、足を組んだり背もたれに寄りかかって作業すると腰痛の原因になります。[3]
人との関わりが少ないため
VDT作業は人とコミュニケーションを取りながら行う作業ではありません。
孤独な作業で人との関わりが減少することが精神的な負担となり、気分の落ち込みなどにつながるケースがあります。
また、VDT作業による眼や身体の症状がストレスとなって精神症状を引き起こすケースもあります。[4]
VDT症候群の症状をチェック!頭痛や吐き気、めまいは?
厚生労働省「平成20 技術革新と労働に関する実態調査」によると、VDT作業によって身体的疲労や症状を抱えている人の内容では、「目の疲れ・痛み」が90.8%と最も多い割合になっています。
次いで「首、肩のこり・痛み」が74.8%、「腰の疲れ・痛み」が26.9%という割合です。[5]
このように、VDT症候群は主に眼の症状と筋・骨格系の症状が現れるのが特徴です。
これらの症状が長期間続くことがストレスとなり、イライラや抑うつなどの精神症状が現れる場合もあります。
VDT症候群の症状を眼、筋・骨格系、精神症状に分けてそれぞれについてくわしく解説します。
眼の症状
VDT作業で眼を酷使したり、まばたきの回数が減少して眼に負担がかかると、眼にさまざまな症状が現れます。
眼に現れる症状は以下の通りです。
-
眼の疲れ
-
眼がかすむ
-
眼の乾き(ドライアイ)
-
眼の痛み
-
充血
-
視力の低下
筋・骨格系の症状
同じ姿勢で長時間作業を続けると筋肉や骨格に影響を及ぼします。
VDT症候群の筋骨格系に現れる症状は以下の通りです。
-
首や肩のこり
-
首や肩、腕の痛み
-
足や腰のだるさ
-
背中の痛み
-
手指のしびれ
精神症状
眼や身体の不調がストレスにつながり、精神・神経にも症状が現れます。
人との交流がない孤独な作業により、気分が落ち込む「抑うつ」状態になるケースもあります。
VDT症候群の精神・神経に現れる症状は以下の通りです。
-
頭痛
-
めまい
-
吐き気
-
イライラ
-
食欲不振
-
不安感
-
抑うつ
-
睡眠障害
VDT症候群は命に関わる病気ではありませんが、このような症状は別の病気に罹患している場合にも現れるため注意が必要です。
気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診して医師の診察を受けましょう。
VDT症候群を発症したら治らない?検査と治療法を解説!
VDT症候群が疑われる場合、まずは検査へ行って別の疾患でないことを確認してから治療を行います。
VDT症候群の検査
VDT症候群と診断するためには、既往歴や自覚症状についての問診や視力検査、握力検査など、筋骨格系の検査を行います。
眼科検査
VDT作業によって身体的疲労や症状を抱えている人のうち、9割の方が眼の症状を訴えます。
眼の異常をくわしく調べるために以下のような検査を行います。[1]
検査 |
内容 |
5m 視力検査 |
遠くを見るときの視力を調べる |
近見視力の検査 |
近くを見るときの視力を調べる |
眼位検査 |
眼位のずれ(斜視)を調べる |
屈折検査 |
近視、遠視、乱視などの屈折の異常を調べる |
調節機能検査 |
くっきり見える範囲を測定する |
筋・骨格系の検査
主に問診や触診で筋骨格系の異常を調べます。
指・手・腕の運動機能の異常や痛みの有無を確認したり、首や背中・腰などを押さえて痛みの有無や程度を診察します。[6]
VDT症候群の治療法
VDT症候群の治療は症状に応じて行います。
治療法は以下の通りです。
-
点眼薬
眼の症状が現れているケースでは、眼の疲れを緩和したり、乾燥を防いだりする点眼薬で治療を行います。
-
視力矯正
視力に問題があると眼精疲労につながります。
メガネやコンタクトレンズを処方し、視力を適切に矯正する場合もあります。
-
内服薬
首や肩、腰の痛みなど筋肉の症状に対しては、筋肉の緊張を緩和する内服薬が処方されるケースもあります。
ただし、これらの治療は症状を緩和するために行う対症療法です。
VDT症候群の原因を取り除かない限り、症状が改善しなかったり、改善しても再発したりする可能性が高くなります。
VDT症候群を根本的に治療するためには、原因となる生活習慣を改善するための指導が非常に重要です。
指導内容は以下の通りです。[2]
-
作業時の姿勢
-
作業環境の改善
-
作業の合間の休息
-
ストレッチ
-
マッサージ
-
筋肉をほぐす運動
VDT症候群の対策は?
VDT 作業による症状を訴える人の増加を受け、厚生労働省は平成14年に「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定しました。
企業に対し、VDT作業に従事する労働者の健康管理を行うよう推奨しています。
VDT作業をする人の心身の負担を軽減し、VDT症候群を予防するために作業時間や作業環境、健康管理に関してさまざまな基準を定めています。
厚生労働省がガイドラインで定めている主な対策は以下の通りです。[6]
作業時間の管理
-
1時間以上連続して作業を行わないようにする
-
連続作業時間内に1〜2回程度の小休止をはさむ
-
連続作業が続く場合は、合間に10~15分の休止時間を設ける
作業環境の管理
-
ディスプレイ画面の明るさと周辺の明るさの差をなるべく小さくし、まぶしくないように調整する
-
窓から太陽光が入る場合は、ブラインドやカーテンを設置する
-
反射防止型ディスプレイを用いる
-
ディスプレイの位置や前後の傾き、左右の向きなどを調整してグレア(映り込み)を防止する
-
VDT機器や周辺機器から騒音が発生する場合は、騒音の低減措置を講じる
作業姿勢
-
椅子に深く腰かけて背もたれに背を当て、足裏全体が床に接した姿勢で作業を行う
-
眼とディスプレイの距離は40cm以上確保できるようにする
-
ディスプレイは面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さに調節する
-
就業の前後または就業中に、体操やストレッチ、リラクゼーション、軽い運動を行う
VDT症候群のQ&A
VDT症候群に関する質問にお答えします。
VDT症候群とは?
VDT症候群とはパソコンやタブレットなどのVDT機器を使用し、長時間作業を行うことによって生じる眼や身体、精神の不調です。
IT化にともないVDT機器を使用する労働者が増え、眼の疲れや頭痛、首や肩の痛み、気分の落ち込みなどの症状を訴える人が増加しています。
VDT症候群は慢性化するとさまざまな疾患につながる可能性があるため、予防が重要視されています。
VDT症候群の症状は?
VDT機器の長時間使用により眼や身体にさまざまな症状が現れます。
また、眼や身体の不調がストレスとなり、精神面にも影響を及ぼします。
眼の症状
VDT作業で長時間ディスプレイを眼を見続けると、まばたきの回数が減少して眼に負担がかかり、以下のような症状が現れます。
-
目の乾き(ドライアイ)
-
目の痛み
-
充血
-
視力の低下
筋・骨格系の症状
長時間同じ姿勢で作業を続けると、血液が停滞して以下のような症状が現れます。
-
首や肩のこり
-
首や肩、腕の痛み
-
足や腰のだるさ
-
背中の痛み
-
手指のしびれ
精神症状
眼や身体の不調がストレスとなり、精神・神経にも以下のような症状が現れます。
-
頭痛
-
めまい
-
イライラ
-
食欲不振
-
不安感
-
抑うつ
-
睡眠障害
VDT症候群を改善するにはどうしたらいい?
VDT 症候群を改善するには作業を行う時間や環境、姿勢などの見直しが必要です。
運動やストレッチなどの簡単にできるセルフケアも効果的です。[6]
VDT症候群を改善するための対策は以下の通りです。
連続作業の合間に眼を休ませる
VDT機器の長時間の連続使用は、目の疲れや乾き、痛み、視力の低下といったVDT症候群の症状を引き起こす原因のひとつです。
作業中はこまめに休憩をとり、眼を休めましょう。
厚生労働省のガイドラインでは、VDT作業を1時間以上連続して行わないようにし、連続作業時間内に1〜2回程度の小休止をはさみ、連続作業が続く場合は、合間に10〜15分の休止時間を設けることを推奨しています。
作業環境を調整する
VDT作業を行う際はディスプレイ画面の明るさを調節したり、窓にブラインドやカーテンを設置したりするなどの対策を行い、眼の負担を減らすことが大切です。
ディスプレイの位置・傾きの調整や、反射防止型ディスプレイの使用によりグレア(映り込み)を防止するのも効果的です。
また、VDT機器・周辺機器から生じる騒音もストレスの原因になるため、騒音の低減措置を講じます。
VDT作業中の姿勢に気をつける
VDT作業は、無理のない自然な姿勢で行うことが大切です。
いすに深く腰を掛けて背もたれに背を当て、足裏全体が床につくようにしましょう。
また、眼からディスプレイとの距離は40cm以上離し、画面を眼の高さより下に設置すると眼に負担をかけずに作業を行えます。
ただし、正しい姿勢でも長時間同じ姿勢をとると血流が停滞し、筋肉が緊張します。
作業中に姿勢を変えたり、背伸びや軽い運動、ストレッチを行ったりすると良いでしょう。
また、極端な前傾姿勢やねじれ姿勢のような無理な姿勢にならないように、機器の位置を調整するのも大切です。
VDT症候群のチェック方法は?
このような症状があったらVDT症候群の可能性があります。
ご自身でチェックしてみてください。[7]
-
眼が疲れる
-
眼が痛い
-
眼がかすんで見えにくい
-
眼が乾きやすく、ゴロゴロする
-
視力が低下している
-
頭痛、めまいがある
-
首や肩のこり
-
足・腰のだるさ
-
背中の痛み
-
手指のしびれ
-
イライラする
-
食欲がない
-
不安感がある
-
気分が落ち込む
-
眠れない
これらはVDT症候群の症状ですが、他の疾患に罹患している場合にもみられます。
気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し、医師の診察を受けましょう。
まとめ
VDT症候群は、パソコンやタブレット、スマートフォンなどVDT機器の長時間使用によって生じる心身の不調です。
スマートフォンやタブレットなどが普及し、眼の疲れや頭痛、首・肩の痛み、気分の落ち込みなどの症状を訴える人が増加しています。
VDT症候群の治療には点眼などの薬物療法が行われますが、あくまでも症状を和らげるための対症療法です。
根本的に改善するためには、原因となっている生活習慣の改善が重要になります。
VDT症候群の予防・改善には作業を行う時間や環境、姿勢などの見直しが必要です。
また、作業の合間の運動やストレッチなどの簡単にできるセルフケアも効果的です。
VDT症候群は命に関わる疾患ではありません。
しかし、改善しないまま放置するとさまざまな疾患を引き起こす可能性があります。
気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診して医師の診察を受けましょう。
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
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参考文献
[2]徳島大学|VDT(visual display terminals)と眼精疲労
[4]慶應大学|【在宅勤務における健康管理】VDT症候群の予防
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。