腹痛と吐き気が起きる原因は?対処法や受診の必要性について解説

公開日: 2025/02/08
「急にお腹が痛くて吐き気もする…どの位悪化したら受診するべき?」 「今すぐ腹痛と吐き気を和らげたい!」 「腹痛と吐き気が続いているのはストレスが原因?それとも病気のサイン?」 突然の腹痛と吐き気におそわれ、早く落ち着かせたいと焦りや不安を感じていませんか? 原因がわからないまま冷や汗まで出てくると「このまま様子みてよいものか」と心配になりますよね。 腹痛や吐き気の原因にはストレスや食べ過ぎ、胃腸炎などが考えられます。胃腸の大きな病気の可能性もあるため、適切に受診を判断することが大切です。 本記事では、腹痛と吐き気が起こる原因や考えられる病気、受診の目安について詳しく解説します。 うずくまるほど強い腹痛や嘔吐、水分がとれない場合はすみやかに医療機関を受診しましょう。 ホームケアについてもお伝えしますので、つらい腹痛と吐き気を少しでも早く改善したい方は、ぜひ参考にしてください。
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【腹痛と吐き気の原因について】

腹痛と吐き気の原因には、おもに以下が挙げられます。

  • 緊張・ストレス

  • 暴飲暴食

  • 冷え

  • 食中毒

  • 胃腸炎

急激に腹痛と吐き気が悪化した場合、もっとも考えられるのは胃や腸など消化器官の炎症です。胃腸炎や食中毒、暴飲暴食が原因となり生じます。

緊張やストレスなど、精神的な負担が症状としてあらわれることもあります。

緊張・ストレス

緊張やストレスを感じると自律神経のバランスが崩れ、胃酸が過剰に分泌されることで、胃の痛みや吐き気が生じます。また腸が収縮することで腹痛が起こり、下痢や便秘をともなう場合もあります。

会議や試験前など緊張やストレスの原因がはっきりとしている場合は、原因が解消されれば症状は落ち着くでしょう。

しかし長い期間にわたり腹痛や吐き気が続き、下痢や便秘も繰り返す場合は「過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)」の可能性があります。

過敏性腸症候群とは、腸に異常がみられないのに腹痛や便秘、下痢を繰り返す病気です。痛みは下腹部に生じ、排便すると軽減される特徴があります。

おもにストレスや食生活の乱れが原因とされており、一時的に症状が落ち着いてもストレスがかかると再び悪化します。

20〜40歳の人に多くみられ、人口の約10〜15%がかかっているとの報告もあります。[1]

ストレスをためないように規則正しい生活を意識し、十分な休息と睡眠をとりましょう。カフェインや夜間の飲食は症状を悪化させるため控えてください。

生活を見直しても腹痛や吐き気が3か月以上続くケースは、過敏性腸症候群の可能性も考えられます。

薬を使用しながら症状をコントロールする場合もあるため、医療機関を受診し医師に相談しましょう。

暴飲暴食

大量の食べ物や飲み物が胃に入ると、胃酸が過剰に分泌されるため、胃の壁が荒れて痛みが生じます。

また消化不良によって腸の動きが乱れることで、吐き気も引き起こされます。

とくに揚げ物やからいもの、アルコールなど刺激の強い飲食は、症状を悪化させる原因です。

よくかんで食べない習慣もあると、食べ物を十分に消化できず、吐き気をもよおす可能性が高まります。

回復するまでは胃腸を休ませることが大切です。お粥やスープのような消化のよい食べ物を選んでください。

暴飲暴食が原因で胃腸の病気を引き起こさないためには、普段から腹八分目を心がけましょう。消化不良を防ぐため、よくかんで食べる意識も大切です。

冷え

体が冷えると血流が悪くなり、胃の働きが弱まります。消化が遅れ、腸の動きも乱れることで、腹痛や吐き気があらわれます。

冷えは冬だけの問題ではありません。夏であっても冷房の効いた環境で過ごすと、血行が悪くなり胃腸の働きが低下します。また冷たい食べ物や飲み物は、胃腸を直接冷やす原因です。

手足が冷たく感じる場合や、すでに体全体が冷えている場合は、温かい食事や飲み物、入浴で体を内側から温めてください。カイロや腹巻きで腹部を温めるのも効果的です。

血流をよくするためには、体を冷やさないよう適度に運動することも大切です。ウォーキングやストレッチなど、体を動かす習慣を意識しましょう。

食中毒

食中毒は、はげしい腹痛と吐き気、嘔吐が特徴です。発熱や下痢をともなう場合もあり、状態によってはすみやかに治療する必要があります。

細菌やウイルスが含まれた食べ物をとることで、胃腸に炎症が起こり、腹痛や吐き気が生じます。

以下に、食中毒の原因となる菌・ウイルスと特徴をまとめました。[2][3][4][5][6]

菌・ウイルス

発症する時期

症状

おもな食品の例

サルモネラ菌

食後6~72時間

(多くは12~36時間)

吐き気、下痢、腹痛、発熱、頭痛

加熱が不十分な生卵、鶏肉

黄色ブドウ球菌

食後30分~6時間

吐き気、腹痛

おにぎり、寿司、弁当、調理パン、ハムなど加工食品

腸炎ビブリオ

食後8~24時間

(短い場合2~3時間)

腹痛、下痢、発熱、吐き気

さしみ、寿司など生の魚介類

カンピロバクター

食後2~7日

下痢、吐き気、腹痛、発熱、筋肉痛

加熱が不十分な鶏肉(焼き鳥など)、野菜

腸管出血性大腸菌

(ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきん)

食後3~8日

はげしい腹痛、下痢、血便

加熱が不十分な牛肉、生レバー、野菜

ノロウイルス

食後1~2日

はげしい下痢、腹痛

加熱が不十分なカキ、アサリ、シジミ

菌の種類によって発症するまでの期間が異なります。黄色ぶどう球菌のように食後すぐに症状が起こる場合もあれば、カンピロバクターのように数日後に発症することもあります。

食べたものをふり返りつつ、強い腹痛や嘔吐、水下痢や血便をともなう場合は、すみやかに医療機関を受診してください。

脱水の危険もあるため、水や経口補水液をこまめにとりましょう。水分が十分にとれない場合は、早急に受診が必要です。

下痢止め薬は、菌やウイルスを体外に排出する働きをさまたげるため、自己判断での服用は避けてください。

胃腸炎

胃腸炎は、胃や腸に炎症が生じる病気で、感染性と非感染性に分類されます。

  • 感染性胃腸炎:ウイルスや細菌による感染が原因

  • 非感染性胃腸炎:ストレスや暴飲暴食、解熱鎮痛剤など薬の副作用が原因

感染性胃腸炎では、ノロウイルスやロタウイルスによるウイルス感染がもっとも多く、冬に流行しやすい病気です。腸炎ビブリオやサルモネラ菌、カンピロバクターなどの細菌感染は、おもに夏にみられます。[7]

感染経路は以下のとおりです。

  • 経口感染:菌やウイルスが付着したものを食べることで感染

  • 接触感染:感染者の便や嘔吐物に触れた手を介して感染

潜伏期間は菌やウイルスによって異なり、ノロウイルスでは24〜48時間、ロタウイルスでは2〜4日程度です。腹痛や吐き気、下痢などの症状があらわれ、発熱や倦怠感をともなうこともあります。[8][9]

ウイルス性の感染性胃腸炎では特効薬がありません。必要に応じて、発熱や吐き気を和らげるための対症療法がおこなわれます。

回復には、免疫を高めるため安静に過ごすことが大切です。脱水症状に気をつけながらこまめな水分補給と、十分な休息をとりましょう。

細菌性の胃腸炎では抗菌薬が必要な場合もあるため、症状がひどければすみやかに医療機関へ受診してください。

感染力が強いため、周りの人へうつさないように手洗いと消毒をこまめにおこないましょう。

非感染性胃腸炎の場合、原因を解消する必要があります。

解熱鎮痛剤は胃を荒らすおそれがあるため、必要最低限の服用にとどめ、自己判断による長期の服用は避けてください。

ストレスや暴飲暴食が胃腸炎を引き起こさないように、普段から規則正しい生活とバランスのよい食事を心がけましょう。

腹痛・吐き気が原因となる病気

強い腹痛や吐き気が生じたり、長い間続いたりしている場合は、以下の病気の可能性が考えられます。

  • 逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)

  • 胃潰瘍(いかいよう)

  • 腸閉塞(ちょうへいそく)

  • 急性虫垂炎(きゅうせいちゅうすいえん)

  • 便秘

それぞれの病気で、痛みの強さや場所、症状が異なります。

我慢できないほど痛みが強い場合は、腸閉塞や急性虫垂炎など大きな病気が考えられます。入院治療が必要なケースもあるため、放置せずすみやかに医療機関を受診しましょう。

逆流性食道炎

逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)とは、胃酸など胃の中のものが食道に逆流し、食道が荒れる病気です。食道に炎症が生じることで、吐き気や腹痛が引き起こされます。

逆流性食道炎のおもな症状は、以下のとおりです。

  • みぞおちの鈍い痛み

  • 胃の中央に焼けるような痛み

  • 胸やけ

  • 吐き気・胃の不快感

  • お腹の張り

  • 酸っぱい感じ

  • 胸の痛み

加齢により胃と食道の境目の筋肉がおとろえると、胃酸の逆流が起こりやすくなります。

また以下の生活習慣のある人は、胃酸の逆流が促され、逆流性食道炎を発症しやすい傾向です。

  • 食べ過ぎる

  • 早食い

  • 脂肪分の多い食事習慣がある

  • 飲酒習慣がある

  • 食後すぐに横になる

日本では食生活の変化により、逆流性食道炎の発症率が増加しています。日本人の約10%が発症しているとされ、決して珍しい病気ではありません。[10]

暴飲暴食を避け、食後すぐに横にならないなど生活習慣を改善しましょう。

逆流性食道炎では、胃酸分泌をおさえる飲み薬で治療が必要です。食生活を見直しても症状が続く場合は、逆流性食道炎の疑いもあります。早めに内科や消化器内科を受診し検査を受けてください。

胃潰瘍

胃潰瘍(いかいよう)とは、胃酸によって胃の粘膜が傷つき炎症や潰瘍が生じる病気です。適切な治療を受けないと、胃がんなど深刻な病気に進行する可能性があります。

胃潰瘍の症状には以下が挙げられます。

  • みぞおち付近の痛み

  • 食後に痛みが悪化する

  • 吐き気・嘔吐

  • 胸やけ・げっぷ

  • 食欲がわかない

  • 黒い便、血便

胃潰瘍が発生するおもな原因は以下のとおりです。

  • ピロリ菌の感染

  • 解熱鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)などの長期使用

  • 精神的ストレス、過労

  • 喫煙、飲酒

  • 不規則な食生活

胃潰瘍の原因としてもっとも多いのは、ピロリ菌感染です。胃潰瘍の70%がピロリ菌感染に関連しているとのデータもあります。[11]

ピロリ菌は胃の内壁に炎症を起こし、胃がんのリスクを10倍高めるとされています。[12]

解熱鎮痛剤も注意が必要です。ロキソプロフェンやイブプロフェンなど非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を長い期間服用すると、胃潰瘍を引き起こす可能性があります。

NSAIDsを服用してから発症するまでの期間はさまざまで、1年以上経って発症するケースもあれば、たった1か月で生じるケースもあります。[13]

痛みや吐き気が続く場合は、医療機関を受診し検査を受けましょう。ピロリ菌に感染している場合、除菌薬による治療が必要です。

解熱鎮痛剤は、数回の使用であれば胃潰瘍を引き起こす心配はありません。ただし自己判断で長期間服用するのは避けましょう。

黒い便や血便が出たときは、胃から出血している可能性があるため、すみやかに医療機関を受診してください。

腸閉塞

腸閉塞(ちょうへいそく)とは、腸内の食べ物やガスが肛門へ流れなくなる状態です。腸がねじれたり、固くなった便や食べ物が腸につまったりすることで発生します。

腸閉塞は腹部の手術を受けた人に多くみられます。手術後、腸周辺の臓器がくっついてしまう場合があるためです。

しかし手術を受けていない人でも、便秘や早食いなどの生活習慣が影響し、腸閉塞を引き起こすことがあります。

腸閉塞ではおもに以下の症状があらわれます。

症状

特徴

腹痛

  • へそ周りやお腹全体の痛み

  • 強弱を繰り返す痛みが、持続的な痛みに変わる

  • 腸がねじれている場合、耐えられないほどの痛み

吐き気・嘔吐

  • 食べ物や水分が腸を通過できないため、逆流する

  • ほかの症状から数時間後に起こる

お腹が張る

  • 腸内のガスや内容物がたまり、膨満感が生じる

おならが出ない

  • 腸のガスが通過できなくなる

強い便秘

  • 排便が完全に止まる

腹痛は波のように強まったり弱まったりする特徴があり、その後持続的な痛みへと変化します。腸がねじれている場合は、耐えられないほどの痛みが生じます。

腸閉塞では脱水も懸念されるため、早期治療が必要です。通常は入院し点滴で栄養を補いながら、絶食する治療がおこなわれます。

強い腹痛が続き、便やおならがまったく出ない状態は腸閉塞が疑われます。すぐに医療機関を受診してください。

便秘がちな人や、食事習慣が乱れている人は腸閉塞を起こしやすいため、普段から適度な運動やバランスのよい食事を心がけましょう。

急性虫垂炎

急性虫垂炎(きゅうせいちゅうすいえん)とは、腸の一部である虫垂に炎症が起きる病気です。

急性虫垂炎のおもな原因は虫垂の細菌感染です。虫垂内に食物や便がつまることで細菌が増殖し、炎症が引き起こされます。食物や便のつまりの原因には、暴飲暴食や運動不足、ストレスなどが挙げられます。

急性虫垂炎のおもな症状は以下のとおりです。[14]

症状

特徴

腹痛

  • みぞおちやへその周りの痛みから始まる

  • 痛みがしだいに右下腹部へと移動する
    (12~24時間かけて進行する)

  • 歩きづらいほど痛みが強まる

  • 押したときに痛みの場所がわかる

  • 押した手を離すとするどい痛みが生じる

吐き気・嘔吐

  • 炎症の影響で消化管の働きが乱れる

食欲不振

便秘または下痢

発熱

  • 約40%に発熱がみられる

急性虫垂炎の初期症状は、みぞおちの痛みです。痛みは右下腹部へと移動し、耐えがたい痛みに変化します。また炎症が広がることで、発熱や吐き気、食欲不振もみられる傾向です。

急性虫垂炎の症状は、発症から数時間以内に急激に悪化します。放置すると虫垂が破裂して腹膜炎を引き起こし、命にかかわる危険があります。

発症から36時間で約2%の人が虫垂破裂を生じるとの報告もあるため、早急な受診判断が必要です。[14]

  • みぞおちの痛みが右下腹部に移動した

  • 腹部に我慢できない激痛がある

  • 数時間経過しても腹痛が治まらない

  • 血圧が急激に低下した

  • 意識がもうろうとする

上記のような症状は緊急を要するため、ただちに医療機関を受診してください。

便秘

便秘が発生すると、長時間とどまる便が腸の神経を刺激し、腹痛を引き起こします。腸内にたまった便は胃や小腸を圧迫するため、吐き気が生じる場合もあります。

便秘の定義は、医療機関や学会によってさまざまです。一般的な指標として以下のような状態を便秘と定義しています。[15]

  • 便が硬く出にくい(ころころしている)

  • 排便回数が減少した(週3回未満)

  • お腹がすっきりしない

  • 過度のいきみが必要

  • 残便感がある

つまり排便回数に関係なく、便の質や排便のスムーズさも便秘の判断基準となるのです。排便状況が日常生活に支障をきたす場合は、便秘症と診断され治療が必要なケースもあります。

便秘は生活習慣や食事内容、運動不足などさまざまな要因により引き起こされます。

便秘が原因で腹痛や吐き気が生じている場合、まずは以下の対策を実践しましょう。

  • 食物繊維をとる:野菜やきのこ類を積極的にとる

  • こまめに水分をとる:便を柔らかくする

  • 適度に運動する:ウォーキングやストレッチにより、胃腸の運動を促す

便秘を放置すると、腸閉塞を引き起こす原因にもなります。食事や運動を意識しても便秘が解消されない場合は、薬を使用しながら排便をコントロールする必要があるかもしれません。

便秘が長期間続く場合は、医療機関を受診し医師に相談しましょう。

腹痛・吐き気があるときの受診の目安

腹痛や吐き気があるとき、受診の目安は以下のポイントで判断しましょう。[16]

  • 腹痛・吐き気の強さ

  • 腹痛・吐き気の継続時間

  • ともなう症状はあるか

  • 血便や吐血はあるか

  • 水分摂取が可能か

《受診の判断ポイントと目安》

判断ポイント

受診目安

腹痛の程度

  • 体を丸めるほど我慢できない

  • 痛みが6時間以上続いている

  • お腹が張り、おならが出ない

ただちに受診

  • 我慢できるが、数日続いている

  • 食後に痛みが増す

  • 横になると痛みが起こる

  • お腹を押すと痛い

なるべく早めに受診

(当日~数日以内)

吐き気の程度

  • 嘔吐している

  • 吐いたものに血がまじる

  • 強い吐き気が繰り返し起こる

  • 水分がとれない

ただちに受診

  • 我慢できるが、数日続いている

  • 嘔吐してはいないが、吐き気がある

なるべく早めに受診

(当日~数日以内)

ともなう症状の有無

  • 高熱(38℃以上)をともなう

  • 胸の痛みがある

  • はげしい下痢をともなう

  • 血便や黒い便がある

  • はげしい頭痛をともなう

  • 倦怠感、脱力感をともなう

  • 意識がもうろうとする

ただちに受診

腹痛や吐き気が我慢できないほど強く、嘔吐している場合はすぐに受診してください。

とくに血便や吐血している場合や水分がとれない場合は、ただちに処置を受ける必要があります。

様子を見る場合でも、症状が続くようなら受診をおすすめします。症状が悪化する場合は、迷わず診察を受けましょう。

病気によっては早急な治療が求められます。適切に受診を判断してください。

痛みの種類・場所

腹痛の特徴と痛みの場所によって、考えられる病気を推測できます。

以下に、痛みの場所から推測されるおもな病気と特徴をまとめました。[16][17]

痛みの場所

おもな病気

痛みの特徴

みぞおち

胃炎、胃潰瘍

  • 鈍い痛みや焼けるような感じ

  • 食事中や食後に痛みが悪化する

十二指腸潰瘍

(じゅうにしちょうかいよう)

  • 空腹時に痛みが起こる

急性膵炎

  • みぞおちから背中にかけてはげしい痛み

へその周り

急性虫垂炎(初期)

  • 鈍い痛みから始まる

  • 右下腹部に移動する

右上の腹部

胆石症

  • 突然のはげしい痛み

  • 痛みは右上腹部から背中に広がる

胆のう炎

  • するどい痛み

  • 食後に悪化することが多い

左上の腹部

膵炎

  • するどい痛み

  • 背中に広がる痛み

胃潰瘍

  • 鈍い痛みや焼けるような感じ

  • 食事中や食後に痛みが悪化

右下の腹部

急性虫垂炎(進行)

  • するどい痛み

  • 振動や深呼吸で強まる

大腸炎

  • 下痢、発熱をともなうことがある

左下の腹部

便秘

  • お腹の張り、不快感もともなう

大腸炎

  • 下痢、発熱をともなうことがある

憩室炎(けいしつえん)

  • 持続的な痛み

  • 発熱をともなうことが多い

腹部全体

腸閉塞

  • 痛みに波がある

  • しだいに持続的な痛みに変化する

  • お腹の張り、吐き気や嘔吐をともなう

過敏性腸症候群

  • 下痢や便秘を繰り返す

  • 腹部に不快感がる

腹痛と背中の痛み

尿路結石

  • 脇腹から背中にかけてはげしい痛み

  • 排尿時に痛みがある

痛みの感じ方や場所は個人差があるため、症状がひどい場合はすみやかに医療機関を受診してください。

適切な診断と治療を受けるため、受診時には以下の点を医師に伝えましょう。

  • 痛みが始まった時期(いつから発生したか)

  • 痛みの変化(強さや頻度に変化があるか)

  • 痛みの場所と移動の有無(痛みの場所が移動したか)

  • 痛みの特徴(するどい、鈍い、断続的など)

腹痛・吐き気があるときの対処法

緊急性がなく、セルフケアで様子をみる場合は、以下の3つのポイントを意識して療養しましょう。

  • 水分補給をしっかりする

  • 胃腸を休ませる

  • リラックスして安静に過ごす

嘔吐している場合は脱水症状が懸念されます。水分を少量ずつこまめにとりましょう。

弱った胃腸を回復させるため、消化のよい食事と十分な休息も心がけてください。

水分補給をしっかりする

脱水を防ぐために、水分補給を意識しましょう。

胃腸炎が原因の場合、下痢や嘔吐によって体内の水分が失われます。食事や水分がとれない状態が続くと、脱水症状を起こすおそれがあります。

一度に大量の水分を飲む必要はありません。少量を数回にわけて、こまめにとりましょう。

水が飲みにくい場合は、経口補水液やスポーツドリンクも有効です。ただし、カフェインが多く含まれる緑茶やコーヒーは控えてください。ルイボスティーはノンカフェインでおすすめです。

胃腸を休ませる

胃腸炎や暴飲暴食では胃腸が弱った状態です。回復するまでは消化がよく、刺激の少ない飲食を心がけてください。

以下の飲食は、刺激となり胃腸に負担をかけるため避けましょう。[18]

避けるもの

食品例

からいもの、スパイスの効いたもの

カレー、唐辛子、キムチ

酸っぱいもの

トマト、酢、オレンジ、漬物

脂肪分の多いもの

揚げ物、アイスクリーム、ファーストフード

食物繊維の多い野菜

ごぼう、さつまいも、キャベツ、きのこ類

刺激のある飲み物

アルコール、カフェイン、冷たい飲み物、炭酸飲料

以下に胃腸にやさしい食べ物をまとめました。体調に合わせて食べやすいものを選んでください。[19]

胃腸にやさしい食べ物

食品例

やわらかいもの

消化のよいもの

おかゆ、うどん、スープ、茶碗蒸し、プリン、バナナ、りんご

脂質の少ないもの

鶏むね肉、ささみ、白身魚、豆腐、ひきわり納豆、半熟卵

繊維質の少ないもの

大根、白菜、にんじん、ほうれん草

刺激のない飲み物

白湯、ルイボスティー、経口補水液

リラックスし安静に過ごす

十分に休息と睡眠をとり、安静にして過ごしましょう。

ウイルス性の感染性胃腸炎に対しては特効薬がありません。免疫力を高め、体力を回復させることが大切です。

ストレスが原因の場合も、リラックスを心がけると自律神経のバランスが整い、症状が軽減されやすくなります。

たとえば、以下のようなリラックス方法をとり入れてみてください。

  • 40℃前後のぬるま湯で入浴する:体を温めることで血流を促す

  • 深呼吸や軽いストレッチ:自律神経を整え、胃腸の働きを助ける

  • 好きな音楽を聴く:穏やかな音楽で心を落ち着かせる

ただし症状が長引く場合や悪化する場合は、無理せず早めに医療機関を受診しましょう。

よくある質問

腹痛や吐き気が起こると、早く落ち着かせたいと焦る人もいるでしょう。ほかの不調もともなうと、何が原因なのかと不安になりますよね。

以下では、腹痛と吐き気に関連する質問内容に対し、理由とともに解説します。

腹痛・吐き気がするときに梅干しを食べるといいのは本当ですか?

梅干しには以下の効果があるため、吐き気を軽減できる可能性があります。

  • 消化を促進する

  • 胃腸の働きを活発にする

梅干しに含まれるクエン酸には、消化酵素の働きを助け、胃腸の動きを促す作用があります。食物の消化がスムーズになり、消化不良を防ぐ効果が期待できます。

夏バテで食欲がないときや、妊婦さんでつわりがひどいときは、おすすめの食品のひとつです。また一部の研究によると、梅干しには以下の効果も期待できると考えられています。[20]

  • 食中毒の原因菌をおさえる

研究では、梅干しには大腸菌や黄色ブドウ球菌の増殖をおさえる効果があり、食中毒の予防や改善に役立つ可能性が示されていました。

ただし梅干しの効果はまだ十分に解明されていません。個人差があり、即効性を期待するのは難しい場合もあります。

梅干しは塩分が多く酸味が強いため、かえって胃を刺激する可能性もあります。あくまでも補助的な手段として考え、過剰摂取に気をつけましょう。

腹痛で吐き気がきた時に冷や汗が止まらず、視界が暗くなって見えなくなって耳が聞こえなくなる時があるのはどうしてですか?

自律神経が体を守るために過剰に反応することで、冷や汗、視界の暗さ、耳の聞こえにくさが引き起こされると考えられます。[21]

自律神経のバランスが崩れると、消化管運動の乱れだけでなく、血圧が低下し、脳や耳への血流が減少します。このため以下の症状が引き起こされると考えられます。

  • 冷や汗:体が急激な血圧低下を改善しようと働くため

  • 視界が暗くなる:脳への血流が減少するため

  • 耳が聞こえなくなる:耳への血流が減少するため

自律神経の乱れは、ストレスや疲労、睡眠不足、胃腸炎などによって起こります。脳や耳への血流が一時的に不足するため、突然不調を感じる傾向にあります。

安静にすると回復するため、無理せず休息をとりましょう。頻繁に起こる場合や症状が重い場合は、ほかの病気の可能性もあるため、早めに医師に相談してください。

まとめ

腹痛や吐き気の原因は、ストレスや暴飲暴食、冷え、胃腸炎、食中毒などが考えられます。逆流性食道炎や胃潰瘍、腸閉塞、急性虫垂炎などの病気が隠れている場合もあります。

症状の強さや継続時間、ともなう症状の有無によって、適切に受診を判断しましょう。とくに以下の症状がある場合は、早急に医療機関を受診してください。

  • 体を丸めるほどのはげしい腹痛

  • 血便や吐血している

  • 水分摂取ができない

  • 高熱がある

  • 嘔吐や下痢が繰り返し起こり、脱水が懸念される

緊急性がない場合、以下のセルフケアを意識して体調を整えましょう。

  • 水分補給をしっかりおこなう:経口補水液やノンカフェインの飲み物こまめにとる

  • 胃腸を休ませる:消化によいものを選び、刺激物は避ける

  • リラックスし安静に過ごす:十分な睡眠や休息をとる

腹痛や吐き気が続く場合、我慢せず早めに医療機関を受診してください。適切な治療を受けるために、痛みの場所や経過、特徴を医師に詳しく伝えることが大切です。

日頃のストレスや食習慣が大きな病気につながらないよう、普段から規則正しい生活やバランスのよい食事を意識しましょう。

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参考文献

[1]機能性消化管疾患の基礎と臨床各論|過敏性腸症候群(IBS)

[2]食中毒|厚生労働省

[3]食中毒予防の原則と6つのポイント|政府広報オンライン

[4]食中毒の原因と種類:農林水産省

[5]ブドウ球菌食中毒 (Staphylococcal foodborne poisoning)

[6]腸炎ビブリオ|「食品衛生の窓」東京都保健医療局

[7]感染性胃腸炎とは

[8]ノロウイルスに要注意!感染経路と予防方法は?| 政府広報オンライン

[9]ロタウイルスに関するQ&A|厚生労働省

[10]今月のテーマ 胃食道逆流症(GERD)診療の進歩

[11]ヘリコバクター・ピロリ陽性患者の消化性潰瘍疾患に対する除菌治療 - Ford, AC

[12]リスクに応じた胃がん検診の考え方

[13]重篤副作用疾患別対応マニュアル

[14]虫垂炎 National Library of Medicine

[15]便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症

[16]1.腹痛の原因となる病気は?|急にお腹が痛くなったら…

[17]Abdominal Pain - Clinical Methods - NCBI Bookshelf

[18]Bland Diet - StatPearls - NCBI Bookshelf

[19]病気の時の食事 西東京市Web

[20]梅の機能的効能研究―伝承の実験的証明に端を発して

[21]消化管自律神経機能障害の評価:現状と将来の展望

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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