脊椎カリエスの原因と特徴的な症状・治療までを解説

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/06/24
脊椎カリエスは、あまり聞きなれない病名ではないでしょうか? 結核に起因する病気で、結核感染者が多かった昭和40年代には患者数の多い病気でした。 結核患者の減少に伴い、脊椎カリエス患者も少なくなっているのが現状です。 しかし、2022年現在でも結核感染者は1万人を超えており、今後も早期発見・予防が必要です。 この記事では、脊椎カリエスの原因や特徴的な症状、治療法についてお伝えします。
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目次

脊椎カリエスの原因となる菌と感染経路

脊椎カリエスは結核性カリエスとも言われ、その名の通り結核菌に感染したことからおこる病気です。

感染経路は、肺結核や腎結核に感染した後に結核菌が血管内に入り、血液中に入った結核菌を脊椎に運ぶことで脊椎内が結核菌に感染します。

(血行感染)

脊椎カリエスの好発部位は、胸椎(背部)・腰椎(腰部)に多く発症し、頸椎(首)はまれです。

脊椎カリエスの初期症状から特徴的な症状を解説

脊椎に結核菌が感染することにより、どのような症状があるのでしょうか。

気になる初期症状から、脊椎カリエスの特徴的ともいえる亀背についても詳しく説明します。

初期症状:微熱・倦怠感と食欲不振

全身性の初期症状として微熱があります。

脊椎内に結核菌が感染すると、脊椎内が化膿し、炎症が起き微熱を発症します。

倦怠感や食欲不振は、微熱が続くと現れる症状の1つです。

脊椎カリエスの主な症状

脊椎カリエスの主な症状は、背部・腰部の痛みです。比較的ゆっくり進行していきます。

脊椎内に結核菌が感染し、炎症を起こし痛みが発生します。

病巣部位(感染している部分)の脊椎を叩くと、局所的に痛みが出る叩打痛(こうだつう)があり、脊椎カリエスの特徴的な症状です。

病状が進行すると、脊椎がもろくなりつぶれてくるので、背中を動かすだけで痛みを感じるようになります。

結核菌に感染した部分が化膿して、膿瘍ができることがあり、膿瘍が脊髄を圧迫すると、神経症状(排泄障害・下肢不全麻痺など)が出現します。

痛みに対して鎮痛剤は有効です。

しかし、病状が進行するにつれ、痛みが強くなり鎮痛剤の効きは悪くなってくるでしょう。

特徴的な症状、亀背とは?

亀背(きはい)とは、背中が突出して変形した状態です。

結核菌に感染し、徐々に病巣部で広がっていくと脊椎の椎体(背骨)がもろくなります。

背骨がもろく、つぶれることで変形を引き起こすことを亀背と言います。

進行すると出現する脊髄麻痺とはどんな症状?

なぜ脊髄麻痺が起こるの?

脊髄とは脊椎のなかにあるもので、脳から伸びる神経の束です。

神経が何らかの損傷を受けると手足にしびれや麻痺が生じます。

脊椎カリエスでは、椎体(背骨)がもろくなり骨がつぶれることや、椎体の周囲にできた膿瘍が神経を圧迫し、麻痺がおこります。

脊髄麻痺の症状

脊椎は頸椎・胸椎・腰椎・仙骨・尾骨からなり、頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎は5個、仙骨1個でできています。

どの部分の神経に障害があるかで、どこに症状が出るかが決まります。

病状が進行すると、脊椎内にある脊髄(神経の束)が圧迫されることが、麻痺などの症状が出現する原因です。

脊椎カリエスの好発部位である胸髄と腰髄の麻痺の出現部位について

損傷部位

詳細

麻痺出現部位

胸髄

第2~4

胸から下の感覚がなくなり、汗が出ない・足と体幹の麻痺

 

第5~8

肋骨から下の感覚がなくなる・足と体幹の下の方が麻痺

 

第9~11

へそより下の感覚がなくなる・足の麻痺

 

第12~腰椎第1

足の付け根から下の感覚がなくなる・足の麻痺

腰髄

第2~5

足のしびれと力が弱まる・排尿障害、排便障害(個別差あり)

神経障害の程度によって、「完全麻痺」から「運動機能が残っている」までの麻痺の程度が決定します。

脊椎カリエスと化膿性脊椎炎の違いについて

脊椎カリエスと化膿性脊椎炎は、どちらも脊椎が細菌に感染する病気ですが違いがあります。

以下の表に違いをまとめています。

 

脊椎カリエス

化膿性脊椎炎

原因菌

結核菌

黄色ブドウ球菌・緑膿菌など

感染経路

血行感染

血行感染

起因する病気

肺結核・腎結核

咽頭炎・慢性副鼻腔炎

好発部位

1.胸椎 2.腰椎

1.腰椎 2.胸椎

症状

微熱・背部、腰部痛・亀背・脊髄麻痺

高熱・腰部、背部の激痛・脊髄麻痺

治療

抗結核薬投与

手術適応例もあり

抗菌薬投与

手術適応例もあり

 

共通点として、高齢者や糖尿病を患っているなど抵抗力の弱い方に発症しやすいことです。

背部や腰部に痛みが出た場合は、早めの受診をおすすめします。

脊椎カリエスの検査とは

脊椎カリエスの検査方法は主に以下の4つです。

それぞれ詳しく説明します。

  • 画像診断

  • 血液検査

  • 培養検査

  • 喀痰検査

画像診断

  • レントゲン・CT・MRI検査

背部・腰部の画像診断を行います。

骨の状態や膿瘍の有無を検査しますが、MRIでは神経と骨の位置関係まで詳しく検査が可能です。

肺結核の有無を診断するために、胸部のレントゲンも撮影します。

血液検査

  • 炎症反応(CRP・白血球)

CRPは軽度の上昇がみられ、白血球は上昇しないことが多いです。

培養検査

  • 結核菌の有無

病変のある組織を採り、結核菌が存在しているか検査します。

喀痰検査

  • 結核菌の有無

肺結核が既往にある場合、もしくは胸部レントゲン上で肺結核を疑うような所見がある場合には、喀痰を採り検査します。

以上の検査結果から、診断を行います。

脊椎カリエスの治療方法と期間

脊椎カリエスと診断されるとどのような治療が行われるのか、治療期間はどれくらいの期間か詳しく説明していきます。

保存的治療の治療法と治療薬は?

保存的治療とは、直接原因となる病変を取り除くのではなく、症状を改善させる治療です。

脊椎カリエスは基本的に保存的療法を行います。

薬物治療

脊椎カリエスは、結核菌に起因する病気です。

治療薬には抗結核薬を投与します。

よく用いられる抗結核薬は主に以下の通りです。

  • リファンピシン

  • イソジアニド

  • エタンブトール

  • ストレプトマイシン

点滴や内服薬で、3〜4種類の多剤併用で投与されます。

安静と装具装着

体動時は背部・腰部の痛みがあるため、まずは安静が必要です。

患部にはコルセットを装着し、痛みの軽減や固定・変形の矯正を行います。

外科的治療(手術療法)が必要な症例とは?

基本的に保存的療法が行われる脊椎カリエスですが、手術が行われる場合もあります。

外科的治療が行われる主な症例は以下の通りです。

  • 骨の損傷が著しい場合

  • 変形が進んでいると診断

  • 脊髄麻痺が出現している

外科的治療として、骨移植や脊椎の固定術が行われます。

手術の後は、機能訓練を開始し回復をはかります。

脊椎カリエスの治療期間はどれくらい?

個人差はありますが治療期間は、約6〜9か月間です。

薬物治療は抗結核薬を内服しますが、初めの2か月は4種類、その後4か月は2種類を内服します。

外科的治療を行う際には、まず薬物療法を3か月間行い、病巣が縮小するのを待って手術を行うのが一般的です。

肺結核を発症している場合、手術計画は肺結核が落ち着いてから行います。

Q&A

脊椎カリエスはうつるの?

肺結核が活動性だった場合や膿瘍がある場合、皮膚の外に化膿している液体が出ている場合は感染する可能性があります。

脊椎カリエスを発症している半数以上の人が、肺結核に感染している、または以前肺結核に感染したことがある人です。

胸部レントゲンと喀痰培養検査を行い、周囲に感染させる可能性がある状態なのかを確認する必要があります。

脊椎カリエスの後遺症はある?

治療が遅れて病状が進行したとき、椎体がもろくなって骨が変形し背骨が曲がった状態になるなどの後遺症が残ることがあります。

まとめ

脊椎カリエスに起因する結核患者は昭和30年代に患者数はピークとなり、以降患者は減少傾向です。

しかし、いまだ高齢者には新規結核感染者もいることから油断できない状況にあります。

下記にこの記事の内容をまとめました。

  • 脊椎カリエスは、結核に起因する病気で、脊椎が結核菌に感染したことで起きる病気である

  • 特徴的な症状は、感染部分の叩打痛(叩くと局所てきな痛みが出る)がある

  • 結核菌に感染した脊椎の骨がもろくなり、つぶれることがあり、脊髄麻痺がでることがある

  • 治療は、基本的に保存的治療が選択され、内服か点滴で抗結核薬の投与がおこなわれる

  • 病巣部の骨が著しく損傷している場合などには、外科的治療が選択される

脊椎カリエスは、早期発見・早期治療で進行を防ぐことができる病気です。

背部や腰部に痛みがある場合には、早めに医療機関の受診をおすすめします。

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