副鼻腔炎で発熱する?大人の症状、子どもの注意点を解説

公開日: 2024/12/03 更新日: 2024/12/03
「副鼻腔炎って熱も出るの?」 「副鼻腔炎と診断されてからなかなか熱が下がらない。もう1回受診するべき?」 「子どもが副鼻腔炎かも。大人と同じ症状なのかな?」 副鼻腔炎は、風邪やインフルエンザなどを引き金に発症することが多い病気です。 鼻水や鼻づまりを中心とした鼻症状にくわえて、発熱をともなうこともあります。 しかしなぜ副鼻腔炎になるのか、放っておいたらどうなるのかを知る方は少ないでしょう。 本記事では、副鼻腔炎の原因やメカニズム、治療法、受診の目安まで詳しく解説します。 最後までお読みいただくと、今起きている症状で医療機関を受診すべきなのかが判断できます。 正しい知識を得て、症状の悪化を防ぎましょう。
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副鼻腔炎で発熱はするの?

副鼻腔炎を発症すると、発熱することがあります。

ウイルスや細菌などの病原体が副鼻腔内で炎症を起こし、からだが病原体と戦うために免疫反応を起こして熱を上昇させるためです。

しかし突然起こる「急性副鼻腔炎」では風邪やインフルエンザに続いて生じることが多いため、発熱が副鼻腔炎によって起きているのか判断が難しいケースもあります。

次で解説する発熱のポイントをおさえ、医療機関の受診を判断しましょう。

副鼻腔炎の発熱は何日くらい続く?

副鼻腔炎による発熱は、原因や症状の進行度によって数日から1週間程度と持続期間が異なります。

体温

疑われる副鼻腔炎の種類

発熱の特徴

37℃前後(微熱)

慢性副鼻腔炎

数週間から数か月持続する可能性がある

37.5℃~38℃

急性副鼻腔炎(初期)

3~5日程度で下がることが多い

38℃以上

急性副鼻腔炎

1週間程度持続することもある

39℃以上

重症の急性副鼻腔炎

数日間持続し、抗生物質による治療が必要な場合もある

体温の数値や持続期間はあくまでも目安で、発熱しなかったり、急性副鼻腔炎の初期でも39℃以上の熱が出たりする場合があります。

判断に困る場合は放置せずに、早めに医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが大切です。

副鼻腔炎で熱が上がったり下がったりすることはある?

弛張熱(しちょうねつ)とよばれる熱タイプの場合、副鼻腔炎で熱が上がったり下がったりします。

弛張熱の特徴は、以下のとおりです。

最低体温

37℃台

1日の体温変動

37℃台~39℃台

1日の体温の高低差

1℃以上

弛張熱が出たら、感染症や炎症が持続しているサインです。

ただし、熱の上がり下がりだけで副鼻腔炎の症状の進行度は把握できません。1週間前後続いていたら医療機関の受診を検討しましょう。

副鼻腔炎のメカニズム

副鼻腔炎は、鼻の奥にある空洞に炎症が生じる病気です。空洞は以下の4つで、まとめて副鼻腔とよびます。[1]

  • 上顎洞(じょうがくどう)

  • 前頭洞(ぜんとうどう)

  • 篩骨洞(しこつどう)

  • 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)

とくに上顎洞がもっとも発症しやすく、副鼻腔炎の患者の約 2/3 から細菌が検出されると報告した研究もあるのです。[2]

副鼻腔炎は急性と慢性に分類され、それぞれの原因や治療法は異なります。[1]

副鼻腔炎の特徴を知り、自分の症状がどちらにあてはまるか確認できると、医療機関を受診すべきか判断できるでしょう。

急性副鼻腔炎

急性副鼻腔炎とは、風邪やインフルエンザなどの原因となる病原体が、副鼻腔のなかで炎症を引き起こしている状態です。

急性副鼻腔炎の原因や症状は、以下のとおりです。[1]

原因

風邪やインフルエンザなどのウイルスや細菌が副鼻腔内で炎症を引き起こすこと

症状があらわれる期間

1か月以内で症状が消失

症状

  • 鼻水

  • 鼻づまり

  • 後鼻漏(こうびろう:のどに鼻水が流れる)

  • 咳(せき)

  • 頭痛

  • ほほの痛み

  • 顔面の圧迫感

  • 発熱

副鼻腔炎にともなう咳は後鼻漏が原因のことが多く、咳の症状で受診したら副鼻腔炎だったというケースもあります。

また頬の痛みを歯の痛みだと勘違いして歯科を受診してしまい、副鼻腔炎と発覚するのに時間がかかることもめずらしくありません。[1]

副鼻腔炎を放置すると、慢性副鼻腔炎に移行する可能性が高まります。

1か月以上、症状が改善しない場合は医療機関に相談しましょう。

慢性副鼻腔炎

慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎が慢性化することで発症します。

原因や症状は以下のとおりです。[1]

原因

急性副鼻腔炎の慢性化が一般的だが、さまざまな要因が混合

  • 患者の鼻の構造

  • 栄養状態

  • 生活環境

  • 遺伝

  • 免疫異常

  • 真菌感染

症状があらわれる期間

3か月以上

症状

  • 鼻づまり

  • 黄色の鼻汁

  • 臭いがしない(嗅覚の低下)

  • 鼻内の異臭

  • 頭重感(頭がずーんと重い感覚)

  • 後鼻漏

副鼻腔炎は、悪化する前に適切な処置をすれば治る病気です。

しかし炎症が長引いて慢性化してしまうと、その分治療にも時間を要すようになります。

そのため、急性の時点でいかに早く対処できるかが、慢性化を防ぐポイントと言えるでしょう。

子どもの場合

副鼻腔炎を発症したのが子どもだとしても、基本的に大人と同じ症状があらわれ、原因も変わりありません。

ただし子どもは自分で症状を訴えられないことも多く、大人が症状の変化に敏感になる必要があります。[2]

また子どもは鼻をかむことが苦手であるため、副鼻腔内の膿(うみ)や分泌物が外に排出されず、病原体が増えて慢性副鼻腔炎に移行しやすいです。

鼻かみを嫌がる・苦手である子どもには、大人の手助けで悪化を防げます。

家庭用の鼻水吸引器を1台準備しておくと、手軽にケアできます。

ケアを続けても症状が改善しなかったり悪化したりする場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。

副鼻腔炎による発熱はコロナが原因?

副鼻腔炎のひとつである急性副鼻腔炎は、風邪やインフルエンザを引き起こす「ウイルス感染」がきっかけとなることが多く、新型コロナウイルスが原因となりえます。[2]

したがって、副鼻腔炎の発熱が新型コロナウイルス感染症に関連している可能性は否定できません。

新型コロナウイルス感染症の特徴的な症状に嗅覚障害がありますが、副鼻腔炎による嗅覚障害は鼻づまりが原因で生じる点が異なります。

ただし嗅覚障害の症状だけでは、新型コロナウイルス感染症によるものかを判断するのは難しいです。

発熱や嗅覚障害がある場合には、自己判断せずに医療機関を受診し、必要に応じてPCR検査や抗原検査などを受けることが大切です。早期の診断が適切な治療への第一歩となるため、不安を感じたら医療機関に相談しましょう。

難治性副鼻腔炎の場合も

治療を継続しても鼻水や鼻づまりがなかなか治らない場合、難治性副鼻腔炎の可能性も考えられます。

難治性副鼻腔炎とは、医療機関の治療を受けているにもかかわらず、症状の改善をみとめない慢性副鼻腔炎のことです。好酸球性副鼻腔炎ともよばれます。[3]

原因や症状は以下のとおりです。[3][4]

原因

不明

おもな症状

  • 鼻づまり

  • 嗅覚障害

  • 感染性ではないため、膿(うみ)がたまることはほぼなし

治療

  • 経口ステロイドが唯一有効

  • 手術をしても50%は再発する経口

難治性副鼻腔炎は適切な治療を受けないと、重症化する傾向にあります。

すでに治療を受けているのになかなか治らないと、不安になりますよね。

かかりつけの医師に相談し、今後の方針を検討していきましょう。

副鼻腔炎の治療法

副鼻腔炎の治療法は、急性と慢性で異なります。[1]

急性副鼻腔炎

  • 自然に治ることが多い

  • 細菌が原因の場合、抗菌薬を使用することもある

慢性副鼻腔炎

  • ネブライザーや内服薬で鼻水の排出を促す

  • 通常の抗菌薬では効果を示さないためマクロライド療法がおこなわれる

  • 手術をする場合もある

症状が続いている間は二次感染が起きやすいため、手洗いやうがい、マスクの装着などの基本的な感染対策も同時におこないましょう。

副鼻腔炎で発熱したときの対処法

副鼻腔炎で発熱した場合、以下の対処法をとりましょう。

  • 解熱剤の使用

  • 十分な水分補給と休息

  • 少ない量でも栄養補給できる補助食品を摂取

熱が上がるのは免疫反応が正常に働いている証拠であるため、熱は下げないほうがよいとも言われます。しかし発熱によってからだがつらい場合は、その限りではありません。

休息を優先させることも免疫の働きを助けるため、我慢せず解熱剤を服用しましょう。

また副鼻腔炎では、鼻水の症状によってからだの水分が失われやすいです。からだが脱水状態になると免疫システムが十分に働けなくなるため、水分補給を忘れないようにしてください。

からだが病原体と戦っている間は、エネルギー消費も多くなります。無理のない範囲で、少しの量で栄養補給できるものの摂取をおすすめします。

発熱が何日続いたら医療機関に行くべき?

副鼻腔炎による発熱は、4日以上続く場合に医療機関を受診しましょう。

4日以上続く発熱は、ウイルスによって発症した副鼻腔炎が細菌感染に移行している可能性があるためです。

ただし、つぎの場合は別の感染症や合併症が隠れている恐れがあります。

  • 39℃前後の高熱が続く

  • 目の下や額の痛みが強くなる

  • 鼻水が10日以上続いている

  • 症状が治りかけたのに悪化する

症状が1つでもあてはまったら、早めに医療機関を受診してください。発熱が長引く場合は、適切な治療が必要です。

まとめ

副鼻腔炎では、風邪やインフルエンザに続いて発熱が生じることがあり、体温の上昇はからだが病原体と戦う免疫反応の一環です。

急性の場合は数日から1週間程度で熱が下がりますが、慢性化したり難治性に移行したりすると長い期間37℃台の微熱が続くこともあります。

発熱が長引いているときは、医療機関の受診が望ましいです。

副鼻腔炎による発熱を正しく理解し、適切な対応で症状の悪化を防ぎましょう。

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参考文献

[1]副鼻腔炎の診断と治療|近藤健二

[2]急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン 

[3]慢性副鼻腔炎の病態分類|高林哲司

[4]306 好酸球性副鼻腔炎|厚生労働省

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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