化膿性脊椎炎はどんな病気?特徴や症状、治療方法について解説

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/06/24
化膿性脊椎炎といった病気をご存知でしょうか?一般的には聞き馴染みのない病気だと思います。 化膿性脊椎炎は整形外科領域では有名な脊椎(背骨)の感染症です。 他部位からの感染を原因に発症し、発症すると治療に長期間かかってしまい、背中や腰の痛みにより自分で動くことが困難になります。 さらには感染状態が悪化して敗血症性ショックなどになると、最悪の場合、命を落とす危険性もある病気です。 一方、早期より適切な診断・治療を行えば悪化を防げる疾患でもあります。 今回は化膿性脊椎炎の症状・原因・治療などについて詳しく解説します。ぜひ最後まで一読いただき、参考にしてください。 化膿性脊椎炎に対する正しい知識を身につけて、適切な治療をしましょう。
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化膿性脊椎炎はどのような病気?

化膿性脊椎炎は他の部位の感染巣から細菌が何らかの原因によって、脊椎(背骨)を構成している椎体・椎間板に感染が広がる病気です。

好発年齢は40〜50歳代といわれています。

糖尿病や透析を必要とする方の増加の影響もあり、中高年に多い傾向にあります。さらに、日本の高齢化に伴い、高齢で化膿性脊椎炎を発症する方も増加傾向です。

高齢になると尿道カテーテルを導入する機会が増えたり、免疫力が低下したりするなど、感染リスクの増加が一因です。

化膿性脊椎炎は臨床所見から3つのタイプに分類されます。

  • 急性タイプ

  • 亜急性タイプ

  • 慢性タイプ

亜急性・慢性タイプともに症状の出現までに時間がかかるため、診断が遅れることが多いです。

それぞれのタイプについて詳しく解説していきます。

急性タイプ

急性タイプは38℃以上の高熱・腰背部の激痛などがあり、急な発症が特徴です。

発症前は問題なく生活ができますが、発症直後より高熱や腰部痛によって動けなくなり、仕事や家事などの日常生活が難しくなります。

そのため医療機関を受診し、診断を受けて早めに治療を受けることが大切です。

亜急性タイプ

亜急性タイプは37℃台の微熱・腰背部の痛みが特徴です。

原因不明、もしくは直近に患っていた病気が完治しているのに微熱が続いている方などは注意しましょう。

他の部位で発症した原因菌が脊椎で感染を引き起こした可能性があります。状態を悪化させないためにも、適切な治療を行いましょう。

また炎症が広がって化膿性脊椎炎を悪化させないように注意が必要です。

亜急性タイプでは急性期の不適切な抗生剤の投与などにより、急性期症状が隠されて診断が遅れる場合もあります。

慢性タイプ

慢性タイプは基本的に発熱を認めません。

また腰背部の軽微な痛みでの発症が特徴になります。腰背部痛が慢性的に続き、原因不明で検査により明らかになることがほとんどです。

化膿性脊椎炎が判明した場合、基本的に入院による加療が必要になります。医師の指示に従い治療を進めましょう。

亜急性タイプ同様に急性期の不適切な治療により、診断が遅れる可能性があります。

化膿性脊椎炎は感染が原因

化膿性脊椎炎は血液からの血行感染が多いです。

疾患としては尿路感染症などの尿生殖器感染・感染性心内膜炎・虫歯・腹部の術後感染など、さまざまな病気が原因になるため注意が必要です。

中には腰のブロック注射により、外部から原因になる菌が侵入する場合もあります。

炎症を引き起こす原因菌としては、黄色ブドウ球菌が多いです。

早期より原因となる菌に対して、抗菌薬の投与が大切です。

また高齢の方や糖尿病の方は免疫が低下している可能性があるため、感染しやすい傾向にあります。

感染しないために手洗い・うがいなど基本的な感染対策にも注意を払いましょう。

化膿性脊椎炎の罹患部位としては、腰椎・胸椎・頸椎の順番で多くなっています。

化膿性脊椎炎はどんな症状が出るの?

主な症状は以下の通りです。

  • 腰背部痛

  • 発熱

  • 運動麻痺

  • 感覚障害

  • 排尿

  • 排便障害

  • 脊椎の変形

急性期では高熱や罹患部位に激しい痛みがあります。

また、安静時にも痛みがあり、一人で動けなくなるでしょう。

急性期が過ぎた場合も微熱が続いたり、慢性的な腰背部痛が残ったりするケースもあります。

脊髄を覆っている脊柱管の内部まで膿腫が広がった場合は運動麻痺や感覚障害、排尿・排便障害などの神経症状や脊椎の変形などが出現する可能性もあります。

また化膿性脊椎炎は腰椎での発症頻度が高いため、神経症状が出現した場合は足の運動麻痺や感覚障害が出やすいでしょう。

化膿性脊椎炎の診断にはどんな検査が必要?

化膿性脊椎炎は以下の検査を実施して診断します。

  • レントゲン

  • MRI

  • CT

  • 採血

  • 血液培養

レントゲンにおける早期診断は難しいです。

一方でMRI・CTでは早期からの診断に優れています。

採血・血液培養では炎症状態や全身状態を確認し、原因になっている菌の特定が大切です。

それぞれ詳しく解説します。

レントゲン

レントゲンは発症早期の診断に使用することが難しいです。

化膿性脊椎炎は病期の進行により椎間板の狭小化・椎体破壊を認めるため、早期のレントゲンではわかりません 一方でレントゲンにて椎間板の狭小化や椎体破壊を認めた場合は、発症から時間が経過しているケースです。

病期の進行に注意が必要になります。

また高齢の方では、加齢に伴う椎間板の狭小化や既往歴に椎体の圧迫骨折などを発症している可能性があるため、化膿性脊椎炎との鑑別が大切です。

CT・MRI

CT・MRIは早期より椎体や椎間板の変化を確認できます。

CTでは椎体破壊像を早期より確認できるでしょう。

特にMRIは化膿性脊椎炎を診断するにあたって感度・特異度ともに優れた検査です。

早期より椎体や椎間板の変化を確認でき、早期診断・病期の評価・治療効果の判定に優れています。

主に炎症の広がりや膿腫の広がりを確認できます。

採血・血液培養

採血では炎症の拡大とともに、白血球の増加やCRPが高くなります。

CRPは炎症の値を示した数値です。

CRPが高いと炎症を起こしている指標の一つになります。

さらにCT・MRIなどの画像所見と炎症の状態や全身状態を確認して複合的に判断した上で、診断がつきます。

血液培養により原因になっている菌の同定が大切です。

そのため菌に対する薬を投与する前に、病巣部の穿刺培養や血液培養を行います。

後述しますが、原因菌に対して適切な抗菌薬の投与が治療の第一選択です。

化膿性脊椎炎の治療方法3選

化膿性脊椎炎は初期から適切な治療ができれば、治療がスムーズに進むでしょう。

一方、初期の対応の遅れによる全身状態の悪化などにより、治療が上手くいかない場合もあります。

そのためMRI・CT・採血などで診断が確定した後は早期から適切な治療の選択が大切です。

状況に応じて手術が検討されたり、自宅退院に向けてリハビリを開始したりします。

  • 点滴投与

  • 手術

  • リハビリ

3つの治療方法について詳しく解説します。

点滴投与

主な治療方法は、抗菌薬の投与による点滴治療です。

血液培養により原因となる菌を特定した上で、適切な種類の抗菌薬が投与されます。抗菌薬は約6〜8週間の投与が多いです。

適宜MRI・採血により椎体周囲の炎症状況の確認・白血球の減少・CRPの低値など全身状態を確認した上で、抗菌薬の継続などを検討します。

主な抗菌薬の種類はセフェム系・スルバクタム・バンコマイシンなどが挙げられます。

発症初期の急性期では、炎症が広がり椎体の破壊などを防ぐために、安静が大切です。

痛みが激しいときは、痛みどめを使用する場合もあります。

また糖尿病など感染しやすい方は、同時に血糖コントロールなどの併存疾患の治療も行い、感染リスクを減らします。

手術療法

化膿性脊椎炎は早期より診断がついて、原因菌に対する治療を行えば、成績良好なケースが多いです。

一方で手術を考慮するケースは以下の通りです。

  • 運動麻痺や感覚障害による神経症状

  • 椎体破壊による脊椎の不安定性が残存

膿腫による神経症状が出現した場合や、椎体の破壊が進行して脊椎の不安定性を認める場合は手術を検討します。

手術の種類として、神経を圧迫する膿腫の排出や不安定な脊椎に対しての固定術など、症状や状態に応じて選択します。

リハビリ

化膿性脊椎炎はリハビリが介入するケースが多いです。化膿性脊椎炎は時期によってリハビリの内容が変わります。

リハビリに関しては理学療法士・作業療法士が医師の指示に従い、訓練を進めます。

急性期では炎症拡大による椎体破壊のリスクがあるため安静が基本です。廃用症候群といわれる二次的合併症のリスクが高くなります。

そのため廃用症候群の予防が大切です。

主に床ずれ・拘縮(手足が硬くなる)・筋力低下の予防のためベッド上で手足の関節運動や、クッションを使用して安楽姿勢の提供などを行います。

急性期が過ぎて、医師から離床(ベッドから離れる)の許可が出た段階で車椅子に乗る・歩くなど段階的に訓練を進めます。

リハビリ終盤では自宅に向けて、入浴・階段・床上動作など自宅を想定した実践的な訓練が行われるでしょう。

コルセットの着用も検討します。身体を固定することで脊椎への負担を減らします。

一方、コルセットは長期間使用すると、体幹の筋肉を使用しないで姿勢を保持するため、体幹の筋力が低下するため注意が必要です。

医師の指示に従い、着用時期についてはしっかりと検討しましょう。

痛みは本人しかわからない主観的な部分のため、痛みが強いときは無理しないで安静に過ごしてください。

痛みについての不安が強いときは、理学療法士・作業療法士や医師と相談しましょう。

化膿性脊椎炎の入院期間

入院期間は抗菌薬の投与する期間に準じて入院期間が決定します。

抗菌薬は約6〜8週間投与が多いです。そのため、抗菌薬を投与する期間が入院期間の目安になります。

抗菌薬の投与後、治療がスムーズに進めば退院まで問題ありません。

しかし長期間の安静期間を必要とするため長期臥床(長くベッド上で過ごす)を余儀なくされるでしょう。

先述した廃用症候群により、身体機能が低下してしまうと自宅退院が困難となり、入院期間も長期化する可能性があります。

医師の指示に従い、理学療法士・作業療法士とともに自宅退院に向けたリハビリを進めていきましょう。

化膿性脊椎炎では安静が必須な理由は?

化膿性脊椎炎は椎体や椎間板への負荷を軽減するために安静が必須です。

急性期より活動して椎体や椎間板に負荷をかけてしまうと、炎症の拡大や椎体の破壊など症状が悪化します。

また椎体破壊にさらに負担がかかると病的骨折のように椎体が潰れる骨折が起こるため、安静が大切です。

しかし、 廃用症候群による二次的合併症にも注意が必要です。

医師の指示に従い、理学療法士・作業療法士とともに、できる範囲での予防的な運動は継続しましょう。

化膿性脊椎炎のガイドライン

化膿性脊椎炎は米国感染症学会(IDSA)によるガイドラインがあり、2015年のガイドラインで化膿性脊椎炎の抗菌薬の投与期間については、合計6週間の投与が推奨されています。

化膿性脊椎炎は抗菌薬の投与が短い場合などは再発するリスクもあるため、抗菌薬を長期間投与する必要があります。

先述した通り、MRI・採血などにより全身状態を確認した上で抗菌薬の投与継続などの検討が大切です。

化膿性脊椎炎の予後は良いの?

化膿性脊椎炎は早期より適切な治療を行なった場合、完治が可能な病気です。

発症後は治療期間も長いため、不安も強いと思います。

一方で発症に気づくのが遅くて進行していたり、抗菌薬の抵抗性を示したりする場合では治療が長引くケースもあります。

化膿性脊椎炎の予後については以下のリスクに注意が必要です。

  • 再発のリスク

  • 後遺症のリスク

  • 寝たきりのリスク

早い時期から適切な治療を受けてリスクに備えましょう。

再発のリスク

化膿性脊椎炎は抗菌薬の治療が不十分な場合、再発する可能性があります。

先述したように治療には抗菌薬を約6〜8週間投与します。

その過程でMRI・採血などの検査で炎症が消失しているか、白血球・CRPの値は正常値に戻っているかなどを確認した上で、抗菌薬の終了時期を検討することが大切です。

抗菌薬を4週間以内で終了したケースでは25%が再発したという報告もあります。

原因菌が残っている状態で抗菌薬を終了すると、原因菌が耐性菌として治療に対しての抵抗性を示し、治療が上手く進まない場合もあります。

抗菌薬の適切な期間の投与が再発予防にとって大切です。

後遺症のリスク

化膿性脊椎炎で発生した膿腫などが脊髄を圧迫すると後遺症が出現する可能性があります。

後遺症としては運動麻痺・感覚障害など神経症状の出現が多いです。

圧迫を受ける部位によっては排尿・排便の障害が出てくるでしょう。

神経症状が出現した場合は手術が検討されますが、手術を施行したとしても神経症状が完全に良くなるとは限りません。

脊髄は繊細な神経なため、膿腫による圧迫がなくなったとしても神経症状が残る可能性もあります。

中には完全に軽快する方もいます。不安な点は医師と相談して納得した上で治療を選択しましょう。

寝たきりのリスク

化膿性脊椎炎では寝たきりになる可能性もあります。

先述したように膿腫の圧迫により運動麻痺や感覚障害が出現する場合があるからです。

神経症状が重度の場合は「思ったように足が動かせない」「足がどこにあるかわからない」など自分ではコントロールできず、一人での起き上がりが困難になる可能性もあるため注意が必要です。

そのためベッドから起き上がるのに、介助が必要になる可能性もあります。

化膿性脊椎炎の完治にかかる期間は最低6週間

化膿性脊椎炎は先述したように抗菌薬の投与は6週間以上がガイドラインでも推奨されています。

そのため、完治にかかる期間は最低でも6週間はかかると覚えておきましょう。

また発症初期の急性期にはベッド上での安静を余儀なくされるため、廃用症候群による体力や筋力の低下に注意する必要があります。

体力や筋力が落ちてしまうと日常生活の制限や社会復帰の妨げになる可能性があるため、抗菌薬が終了しても、その後のリハビリに時間がかかる場合も多いでしょう。

中高年は元々の基礎体力があり、入院から退院までスムーズに進むため入院が延長するケースは少ないです。

しかし、高齢者では元の体力が低下している場合も多いため入院が長期化しやすい傾向にあります。

化膿性脊椎炎は指定難病ではない

化膿性脊椎炎に似た病名に指定難病である強直性脊椎炎があります。そのため化膿性脊椎炎も指定難病と混同されやすいです。

しかし、化膿性脊椎炎は指定難病ではありません。指定難病とは発病の機序が明確でなく、治療方法が確立されていない疾病を指します。

化膿性脊椎炎は原因・治療方法ともに確立されています。適切な治療を実施すれば完治できる病気です。

Q&A

化膿性脊椎炎に関するQ &Aについて回答します。疑問や不安については主治医ともしっかりと相談しましょう。

医師との良好なコミュニケーションは治療を円滑に進めるためにも非常に大切です。

化膿性脊椎炎は治りますか?

化膿性脊椎炎は早期より適切な治療の実施で完治できる病気です。

早期診断、抗菌薬の投与が大切です。

一方、治療が遅れると上手く進まない場合や、手術が必要になる場合もあるため注意しましょう。

「発熱が続いている」「腰がずっと痛い」などの典型的な症状がある場合、早期に医療機関を受診して医師の指示を仰ぎましょう。

化膿性脊椎炎の致死率は?

化膿性脊椎炎の致死率は5〜10%程度といわれています。特に急性期では敗血症を併発している可能性があるため注意が必要です。

敗血症は感染をきっかけに全身に細菌が回ってしまう状態をいいます。さらに全身状態が悪化して敗血症性ショックに陥ると死亡するリスクがあります。

敗血症性ショックは循環動態や代謝の異常により死亡率が高い状態です。

ショック状態では意識障害・血圧低下などが起こり、最終的には多臓器不全を引き起こして全身に致死的ダメージを与えます。

まとめ

今回は化膿性脊椎炎について解説しました。

化膿性脊椎炎は感染を原因に発症して、さまざまな症状を引き起こす病気です。

発症後は抗菌薬の投与による治療期間が長く、安静も必要になるため運動機能が低下するリスクもあります。

医師の指示のもと理学療法士・作業療法士と自宅生活に向けたリハビリを進めましょう。

また重症化すると、後遺症が残るリスクや、最悪の場合は死亡する可能性もあるため注意が必要です。

一方で急性期より適切な診断・治療を実施すれば良好な経過をたどり、完治が可能な場合も多いです。

早期から受診して適切な治療を受けることが「化膿性脊椎炎」を治療する上で大切なポイントになります。

「腰の痛み」「発熱」などの症状が続いている場合、我慢をしないで医療機関を受診し、主治医の指示を仰ぎましょう。

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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。

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