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りんご病の初期症状と経過
りんご病の初期症状は、微熱やだるさ、咳など風邪に似た症状です。[1]
初期症状は子どもと大人に共通していますが、その後の経過は子どもと大人で違いがあります。
子どもの場合は風邪と似た初期症状が出たあと、両頬に蝶の羽のような赤い発疹があらわれます。
続いて手足や体に網目状やレース状、環状の発疹が出現する傾向があります。全身に発疹が出ると驚くかもしれませんが、約1週間で消失します。
大人の場合も、子どもと同様の初期症状があらわれます。その後、発疹にくわえて関節の痛みや炎症が起こるケースが多いのが特徴です。
発疹は比較的軽度で全く出ないこともあります。なかには1〜2日程度歩けなくなるほど強い痛みがあらわれる人もいます。通常、関節痛が消失するまでの期間は約3週間程度です。
りんご病は「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」という感染症で「ヒトパルボウイルスB19」というウイルスが原因です。
ヒトパルボウイルスB19は子どもに感染することが多いものの、大人への感染も珍しくありません。4〜20日の潜伏期間を経て、初期症状を引き起こします。[1]
りんご病の感染力は、初期症状があらわれている段階がもっとも強く、頬に赤い発疹が出る頃には弱まっています。
感染しても症状があらわれない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」も多く、知らないうちに感染を広げてしまうことにも気をつけなければなりません。
「自分を感染から守る」だけでなく「周囲へ感染を広げない」ためにも、初期症状への理解は重要です。
子どものりんご病の初期症状と経過
子どものりんご病の初期症状は、一般的な風邪と似ているため見分けるのが困難です。多くの場合、頬に発疹があらわれてからりんご病の感染に気づきます。
子どものりんご病の初期症状は、以下のような風邪と似た症状です。[2]
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微熱(37℃台)
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だるさ
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咳・鼻水
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喉(のど)の痛み
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頭痛
初期症状が出ている期間はウイルスが体から多く排出されるため、ほかの人にうつす可能性がもっとも高い時期です。
初期症状から7〜10日後、次のような特徴的な発疹があらわれます。[3]
発疹があらわれる場所 |
発疹の特徴 |
両頬 |
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手足、体(胸、お腹、背中) |
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発疹は両頬からはじまり、手足や胸、お腹、背中にも出現します。
通常1週間ほどで消えますが、人によっては3週間程度長引いたり、一度消えた発疹が再びあらわれたりする場合もあります。
日光や入浴、運動による体温上昇でぶり返しやすい傾向がありますが、再発ではないため心配はいりません。
発疹があらわれる頃には、ウイルスの感染力は低下しています。特別な治療の必要はなく、自然に回復することがほとんどです。発疹が落ち着くまで経過を見守りましょう。
大人のりんご病の初期症状と経過
大人のりんご病の初期症状も一般的な風邪と似ていますが、そのあとは子どもと異なる経過をたどります。
大人の初期症状は、以下のような風邪症状です。[2]
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微熱(37℃台)
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だるさ
-
咳・鼻水
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喉(のど)の痛み
-
頭痛
初期症状から7〜10日後、大人では以下のような症状がみられます。
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手足の発疹
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関節痛や関節炎
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むくみ
大人の場合、発疹はおもに手足にあらわれます。頬にあらわれにくい点が、子どもとの違いです。大人の発疹の特徴は以下のとおりです。
発疹のあらわれる場所 |
発疹の特徴 |
おもに手足(子どもと異なり、頬にあらわれることは少ない) |
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大人は関節痛や関節炎、むくみをともなうことが多い点も、子どもと異なる特徴です。
感染者の中で関節に痛みを感じる人は、子どもでは8%とまれですが、大人では約60%にのぼると報告されています。 [4]
関節痛や関節炎、むくみの特徴は以下のとおりです。
痛みの特徴 |
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痛みの部位 |
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痛みやむくみによっておこる症状 |
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一度りんご病に感染すると、二度と感染しない「終生免疫(しゅうせいめんえき)」を獲得できます。
しかし感染経験がない場合、大人も感染する可能性があり、子どもに比べて重くつらい傾向にあります。
「りんご病は子どもの病気」と思いがちですが、感染経験がない大人も油断は禁物です。
大人の場合、不顕性感染も多くみられます。
知らないうちにほかの人にうつしてしまう可能性を理解し、子どもや周囲に感染者がいる場合は、自覚症状がなくても周囲への配慮を心がけましょう。
りんご病の感染の強さと期間
りんご病の感染力は、発疹が出る前の「風邪のような初期症状があらわれている時期」にもっとも強まります。
体内でウイルスが活発に増殖し、体外へ排出される量も多くなるためです。
りんご病の感染力のピークは、以下の時期です。
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感染から約7日後[5]
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発疹があらわれる7〜10日前
初期症状はおよそ1週間続きますが、りんご病特有の発疹が出ていないため、自分も周囲も感染したことに気づきにくい点が問題です。
頬が赤くなり「もしかしてりんご病かもしれない」と気づいた頃には、すでに体内のウイルス量は減少し感染力はありません。
りんご病の感染を防ぐためには「発疹があらわれている人」ではなく「風邪症状のある人」との接触に気をつけるべきなのです。
りんご病を疑うときの受診の目安
りんご病の原因ウイルスを直接抑える薬はないため、必ずしも受診する必要はありません。
熱や痛みが強い場合は症状を和らげる「対症療法」をおこなうこともありますが、通常は自然に治るため、症状が軽ければ家庭で様子をみてもよいでしょう。
りんご病は、風邪のような初期症状がおさまった後、発疹があらわれるという二峰性(にほうせい)の経過をたどり、時期によって受診の目安が異なります。
初期症状が出ているとき、微熱程度で生活に支障がなければ受診は不要です。高熱や痛みなどつらい症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
発疹が出ているときは、すでに感染力が弱まっているため受診する必要はありません。ただし症状が悪化したり長引く場合は、受診し医師の診察を受けてください。
初期症状が出ているとき
初期症状として風邪のような症状が出ていても、軽度であれば必ずしも受診する必要はありません。ただし高熱や強い痛み、倦怠感がある場合は受診がすすめられます。
以下の表を目安に、受診を判断しましょう。
必ずしも受診を必要としないケース |
受診が推奨されるケース |
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症状が「生活に支障をきたしているかどうか」で判断するとよいでしょう。熱や痛みが強いときは解熱鎮痛剤で症状を和らげることもあります。
りんご病かどうかを自分で判断するのは難しく、症状が重いケースでは ほかの感染症も考えられます。高熱が続く場合や水分がとれない場合は、早めに医療機関で診察を受けましょう。
以下に該当する人は、症状が軽度であっても受診してください。
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妊娠中の人
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慢性疾患がある人(糖尿病など)
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高齢者
妊娠中にりんご病にかかると、お腹の赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。症状が軽度であっても、赤ちゃんに異常がないか診察してもらいましょう。
慢性疾患がある人や高齢者は、免疫力が弱く重症化することがあるため、受診が推奨されます。
受診する際は、周囲での流行状況を医療機関へ伝えましょう。感染拡大を防ぐために、診察時間や場所を指定していることがあります。医療機関の指示に従って対応してください。
初期症状が出ているときは、周囲に感染を広げてしまう可能性がもっとも高いです。マスクや咳エチケットなど感染対策をしっかりおこないましょう。
周りに妊婦さんや高齢者がいる人は、うつさないためにも受診を検討すると安心です。
発疹が出ているとき(後期)
発疹があらわれる時期は、ウイルスの感染力がすでに低下しているため、基本的に受診する必要はありません。
全身に発疹が出てくると驚き心配するかもしれませんが、通常は自然に回復します。発疹が消えていくのを待ちましょう。
ただし、次のような場合は受診してください。
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発疹が悪化する、広がる
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皮膚がただれる
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関節痛が激しい、関節が腫れている
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倦怠感が強まる
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高熱が続く
とくに大人の場合、関節の痛みが強く出る傾向があります。関節の痛みは通常3週間程度で治まりますが、まれに数か月から数年以上続くケースも報告されています。
痛み止めで症状を和らげながら様子をみることもあるため、医師に相談してください。
高熱や痛みが続いたり、皮膚がただれる場合はほかの病気の可能性もあるため、早めに受診し適切な診断を受けましょう。
りんご病と登園/登校の目安
りんご病の発疹があっても、痛みや熱など風邪症状がなければ登園・登校できます。発疹が出る頃にはすでにウイルスの感染力は弱まり、周囲に感染を広げる恐れがないためです。
ただし風邪症状があらわれているときは、ウイルスの感染力が強い時期です。感染拡大防止の観点から登園・登校を控えるのが望ましいでしょう。
登園・登校の目安は以下の表を参考にしてください。
目安 |
登園・登校を控える時期 |
登園・登校が可能な時期 |
感染の段階 |
風邪症状が出ている初期段階 (感染力が強い) |
風邪症状はなく発疹が出ている段階 (感染力は低下している) |
具体的な状態 |
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りんご病では、インフルエンザのように明確な出席停止期間は定められていません。
学校保健安全法では「発疹期には感染力はほとんど消失しているので、発疹のみで全身状態のよい者は登校 (園)可能である」とされています。
日本小児科学会の「学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説」(2024年5月改訂版)も同様の指針です。[6]
ただし学校保健安全法では「病状により医師が感染を広げるおそれがないと認めるまで出席停止の措置が必要」とも記載があり[2]、子どもの体調や流行状況によっては、出席を控えるように医師が判断する場合もあるため、指示に従い対応してください。
学校や保育施設ごとに、独自のルールを設けていることもあります。「登園・登校届」を必要とする地域もあるため、感染が発覚したときは速やかに学校や保育施設に相談しましょう。[7]
りんご病の予防法
りんご病を予防するためには、以下の2つのポイントを意識しましょう。
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普段から基本的な感染対策を徹底する
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免疫を高める生活を意識する
りんご病は感染力が強い時期に風邪との区別が難しく、特別な予防策がとりにくい病気です。しかしヒトパルボウイルスB19は一般的な感染症と同じ経路で広がるため、日頃の感染対策が予防につながります。
ヒトパルボウイルスB19のおもな感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」です。感染経路とその予防法を以下にまとめました。
感染経路 |
詳細 |
予防法 |
飛沫感染 |
感染者の咳やくしゃみから飛び散るウイルスを吸い込むことで感染 |
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接触感染 |
ウイルスがついた手で目や口、鼻をさわることで感染 |
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手洗いは石けんと流水でしっかりと洗ってください。ヒトパルボウイルスB19はアルコール消毒が効きにくいため、よく泡立てた石けんで15秒から30秒かけて洗い、水で十分に洗い流すことがポイントです。[9]
ウイルスに負けない体をつくるために、免疫を高める生活も大切です。以下の生活習慣を意識しましょう。
免疫を高める生活のポイント | 具体的な方法 |
栄養バランスのよい食事をとる |
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質のよい睡眠をとる | |
適度に運動する |
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規則正しい生活をする |
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子どもは学校や保育施設で集団生活を送り、感染しやすい環境にいます。学校や保育施設で働く人も、子どもたちと一緒に過ごすため、感染リスクが高いとされています。 [12]
感染経路に基づいた対策を徹底するとともに、体の抵抗力を強くする生活習慣を身につけましょう。
大人の場合は子どもから感染するケースが多くみられます。食器やタオルの共用は控えるなど、家庭内での感染予防を意識しましょう。
日頃の対策が、突然のりんご病流行への備えとなります。感染に気づきにくい病気だからこそ、普段からの予防が大切です。ぜひ家族皆で感染対策と免疫を高める生活を心がけてくださいね。
よくある質問
頬が赤くなり「りんご病かもしれない」と思っても、長引いたりひどい症状だとほかの病気も心配になりますよね。
妊娠中の方は「自分が感染したら、お腹の赤ちゃんに影響しないだろうか…」と不安になるでしょう。
ここではりんご病について、よくある質問にお答えします。
ほっぺが赤くなるりんご病以外の病気
頬が赤くなる病気は、りんご病だけではありません。
りんご病以外に考えられる病気と特徴を以下にまとめました。
病名 |
発疹の特徴 |
おもな症状 |
風しん[13] |
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A群溶血性レンサ球菌(溶連菌(ようれんきん))咽頭炎[14] |
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じんましん[15] |
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全身性エリテマトーデス[16] |
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酒さ[17] |
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それぞれの病気で、発疹の特徴が異なります。ただし個人差もあり、どの病気に該当するかを自分で正確に判断することは困難です。
高熱や倦怠感、強い痛みをともなう場合や長引く場合は、りんご病以外の病気も考えられます。早めに受診し適切な診断を受けましょう。
りんご病と妊娠の関係
妊婦さんがりんご病にかかると、お腹の赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があります。
赤ちゃんが感染すると、胎児貧血(たいじひんけつ)や胎児水腫(たいじすいしゅ)とよばれるむくみが起こり、流産や死産の危険性もあります。妊娠28週まではリスクが高いため、とくに注意が必要です。
ウイルスは血液に入ったあと胎盤(たいばん)を通過し、約20%の確率で赤ちゃんに感染します。
感染した赤ちゃんのうち、流産や死産のリスクは約6%、胎児貧血や胎児水腫が起きる確率は約4%と報告されています。[18]
妊婦さんはりんご病の感染を防ぐために、次の対策を心がけましょう。
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こまめに手洗いをする
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外出時はマスクを着用する
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できるだけ人の多く集まる場所にはいかない
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風邪の症状がある人との接触を避ける
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子どもと食器や箸、タオルの共用はしない
妊娠中にりんご病の症状が出た場合は、速やかに産婦人科を受診してください。適切な検査や治療を受け、赤ちゃんに異常がないかを確認する必要があります。
子どもがいる家庭では、家庭内の感染対策をしっかりとおこないましょう。
家族や職場、友人など近くに妊婦さんがいる方は、妊婦さんを感染から守るよう十分に配慮してくださいね。
りんご病の初期症状を知り、感染を広げないように対策しよう
りんご病は初期症状があらわれた段階が、もっとも感染力の強い状態です。頬に赤い発疹が出る頃には、すでに感染力が低下しています。
周囲への感染を防ぐためには、初期症状をしっかり把握し適切に感染対策することが重要です。
りんご病の初期症状は、以下のような風邪と似た症状です。
-
微熱(37℃台)
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だるさ
-
咳・鼻水
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喉の痛み
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頭痛
初期症状の7〜10日後、子どもは頬や体に発疹があらわれます。大人の場合は、頬の発疹が出ることは少なく、関節痛やむくみなどの症状が出やすい点が特徴です。
症状が軽度であれば、必ずしも受診する必要はありません。高熱や強い痛みがある場合は、ほかの病気も考え早めに受診してください。
感染防止のため、風邪のような症状が続いている期間は登校や登園を控えましょう。発疹があっても、全身の状態がよければ出席可能です。ただし医師や学校・保育施設の指示を仰ぎ対応してください。
りんご病は多くの場合、自然に回復する病気です。しかし妊婦さんが感染すると赤ちゃんへの影響が懸念されるため、うつさないように周囲の気配りが大切です。
ぜひこの記事を参考に、日頃から感染予防に努め、りんご病の流行に備えてくださいね。
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
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参考文献
[1]伝染性紅斑 Erythema infectiosum | 東京都感染症情報センター
[6]「学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説」
[9]正しい手洗い(手指衛生)の方法 | 国立成育医療研究センター
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。