現在コロナの症状があって、味覚が鈍くなっていると感じていませんか?
味覚障害は放置すると長引く危険性があります。
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新型コロナウイルス感染で味覚障害になるのはなぜか
味覚障害とは、味を感じなくなったり、口のなかに何もないのに特定の味がするなどの状態です。
新型コロナウイルス感染症による味覚障害の原因は、嗅覚(きゅうかく)障害を伴うものや味覚の受容器の障害、唾液の変化、神経障害が関与していると考えられています。
嗅覚障害を伴う味覚障害
新型コロナウイルスによる味覚障害の原因の一つに、嗅覚(きゅうかく)障害があります。
嗅覚(きゅうかく)障害とは、においがなくなったり、においの感じ方が異常になった状態です。[13]
新型コロナウイルス感染症に関連する味覚障害の多くは、嗅覚障害を伴うと考えられています。
味覚障害には、味覚の異常だけを訴える人もいれば、味覚と嗅覚の異常を両方訴える人もいます。
「甘み」や「塩味」などの基本の味はわかるが、カレーやコーヒーなどの風味や素材の味わいがわからない風味障害を伴う場合、味覚ではなく嗅覚障害の可能性が高いと言われています。
食べ物の味は、舌で感じる「味」だけでなく、鼻で感じる「におい」も大切な要素です。においの成分は脳に伝わり、味覚といっしょに味わいを豊かにしてくれます。
嗅覚と味覚は、脳の中でつながっているため、嗅覚障害は味覚の異常と認識されやすいのです。
においと味の障害に関する海外の研究では、“嗅覚低下586人中433人が味覚低下を訴えたが、実際味覚が低下していたのは4%未満であった”と報告があります。[2]
そもそも、味覚異常を訴える患者の多くが嗅覚の異常であり、実際に味覚障害を起こしている人は少ないのです。
新型コロナウイルス感染症に関連する味覚障害では、嗅覚障害に関する検査をしている例が少ないため、断言はできません。
しかし、実際に味覚障害である数は少なく、ほとんどの方が嗅覚障害であると考えられています。[2]
味覚の受容器障害
味覚異常の原因は、味蕾(みらい)という味覚の受容器障害とも考えられています。味蕾は、舌や口腔粘膜に存在する味覚の受容器です。
味蕾には味を感じるだけでなく、味を感じる細胞が正常に働けるようサポートする細胞が含まれています。
この味覚の受容器が、新型コロナウイルス感染症により障害をおこすのです。
※味蕾(みらい)とは、舌やのどの表面、軟口蓋(なんこうがい)と言われる鼻より奥の柔らかい部分に数多くある細胞の集まりです。
甘みや苦みなど、味を感じる細胞だけでなく、味を感じる細胞が正常に働けるようにサポートする細胞など、様々な細胞がります。[3]
2007年のWangらによって発表された研究では、サイトカインであるインターフェロン(IFN)をマウスに投与すると、味蕾細胞のアポトーシス(プログラムされた細胞死)が起こり、味覚障害が引き起こされることが報告されました。
つまり、ウイルスの感染によってインターフェロンという抗ウイルス作用があるたんぱく質が産生されると、味蕾細胞が死んでしまい、味覚障害が起こるとされています。
味蕾細胞が死んでしまうと味蕾細胞の入れ替わりが異常になります。入れ替わり直後の、新しい味蕾細胞は、味を感じることができません。
よって、味覚異常を感じると考えられています。
また、2013年に、マウスを使った研究ではアンジオテンシンⅡが味覚器に影響を与えることが報告されました。
※アンギオテンシンⅡとは、血圧上昇作用があるホルモンです。
味覚器に対して嗜好性および甘味や塩味の感受性に影響を及ぼすといわれています。味覚障害の機序は、嗅覚障害と同様です。
アンギオテンシンⅡの作用を弱める酵素や、コロナウイルスの細胞侵入を助ける酵素n等が関わっていると考えられています。
これらの酵素は、舌背(ぜつはい)と呼ばれる舌の表面や口腔内に多く存在していることからもわかるように、味覚受容器の障害により味覚障害を起こすと考えられています。[2][4][5]
唾液の変化
唾液の変化も、味覚障害をおこす説の1つです。
舌の表面には、たくさんの細菌が住んでいます。これらの細菌は、唾液に含まれる成分と似たような成分を産生しているのです。
唾液には、はがれ落ちた上皮細胞と一緒に味細胞も含まれ、こうした唾液の成分変化が味覚障害に関連していると考えられています。
唾液は味物質をとかし、味蕾(みらい)に運ぶ役割を担っています。
唾液によって溶けた味物質は、味蕾の味覚受容体と結合し、私たちは味覚を感じるのです。
しかし、新型コロナウイルス感染症の患者の唾液には新型コロナウイルスが存在し、唾液の変化が起きています。
こうした唾液の変化が、味覚障害の原因の1つと考えられています。[2]
神経への障害
当初、新型コロナウイルス感染症による味覚障害は、神経障害が原因と考えられていました。
しかし、味覚の伝達経路やつながり方は、嗅覚(きゅうかく)のように単純な仕組みではありません。
味覚は、嗅覚よりも複雑な仕組みで働いています。したがってウイルスによって、味覚障害がおこるとは考えにくいと言われています。
以下の表は、嗅覚と味覚の伝わり方や繋がり方の違いです。
嗅覚(きゅうかく)と味覚の伝達経路とつながり方の違い
嗅覚(きゅうかく) |
味覚 | |
伝達経路 |
脳から直接伸びている12神経 のうちの1つのみ |
の3つに分かれる |
つながり方 |
嗅覚(きゅうかく)受容体と嗅神経細胞が 直接つながっている |
味細胞と末梢神経が シナプスを介してつながっている |
嗅覚は、脳から直接伸びている12本の神経のうちの1本です。
しかし、味覚は舌の前2/3と舌のうしろ1/3、軟口蓋(なんこうがい)の3つに神経が分かれます。
加えて味覚は、シナプスという器官を介して味細胞と末梢神経がつながっているため、ウイルスが直接侵入しても神経障害が起こりにくいのです。
また、舌全体の味覚が突然失われるには、延髄(えんずい)の孤束核(こそくかく)が損傷される必要があります。
しかし、延髄の孤束核が損傷されるのは大変珍しく、味覚障害との関連性は低いと考えられています。
また、ウイルスが直接脳の味覚中枢に侵入して味覚障害を引き起こす可能性も低いです。
味覚を感じるための神経は複雑な構造をしています。味覚だけが障害されるということは考えにくいです。
むしろ味覚障害を伴って、他のさまざまな症状が現れる可能性が高いと考えられています。
新型コロナウイルスの予防接種後に、味覚障害が発症した例もありましたが、検査結果や効果のあった治療からその原因は、新型コロナウイルス感染症のストレスや不安などの精神的な反応によるものと考えられています。[2][6]
味覚障害はいつ治るのか
新型コロナウイルス感染症による味覚障害は、数週間で改善すると考えられています。
『厚生労働科学特別研究事業・美輪班』の調査では「新型コロナウイルス感染症による味覚障害は、数日で改善がみられ、1か月後には84%が改善した」と報告されています。[7]
この結果は、海外の調査とほぼ同様です。
多くの味覚障害は、新型コロナウイルス感染症が治るのと同時に味覚障害も改善すると考えられています。
その後の調査では、「発症6か月後に味覚障害を認めた例は6%、1年後に味覚障害が残っている例は4%」でした。
多くの場合、新型コロナウイルス感染症が治ると同時に味覚障害は改善するといわれています。
しかし、味覚障害が続き食事がとれなくて困っている場合や、味を感じられず生活に困っている場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。[2][8][9][10]
味覚障害の治療
一般的な味覚障害の治療は、亜鉛やステロイドを使用します。味覚障害の治療について以下に詳しく解説します。
味覚障害の治療
ここで紹介する治療は、新型コロナウイルス感染症に特化した味覚障害の治療ではなく一般的な治療をもとに考えられた治療です。
味覚障害の治療は、味覚や嗅覚(きゅうかく)に関する検査結果や味覚障害以外の症状も考慮して行われます。
味覚障害の治療の一例
その他の症状や検査結果 |
治療法 |
鼻副鼻腔炎が 存在する場合 |
ステロイドの全身あるいは局所投与で改善する場合がある |
鼻副鼻腔に異常を 認めない場合 |
当帰芍薬散(漢方薬)や嗅覚(きゅうかく)刺激療法が有効な可能性がある |
味覚障害患者で 血清亜鉛が低値を示す場合 |
亜鉛製剤投与の適応がある |
上記は、一般的な味覚障害に対する治療法を参考にしたものです。
新型コロナウイルス感染症による、味覚障害に特化した治療法ではありません。
新型コロナウイルス感染症に関連する味覚障害は、多くの場合、自然に治ると考えられてるため治療は必須ではありません。
味覚障害だからと言って、絶対に治療が必要なわけではありませんので、注意しましょう。
治療を行わなくても良いことが多い
新型コロナウイルス感染症による味覚障害の治療を、急いで受ける必要はありません。
味覚障害の患者のうち8割以上の方が、1か月後には味覚障害が改善したと報告があるように、ほとんどの方が味覚・嗅覚(きゅうかく)障害ともに自然に消失しています。
また、新型コロナウイルス感染症が治ると同時に味覚・嗅覚障害ともに消失しているという報告もあります。
味覚障害が続いている場合、不安になると思いますが、焦って味覚障害の治療を受ける必要はありません。
まずは、味覚障害と嗅覚障害の検査が必要になります。
ただし、味覚障害により、食事の量が減り生活や仕事に支障をきたしている場合は、耳鼻咽喉科の医師に相談しましょう。[2][7]
まとめ
新型コロナウイルス感染症による味覚障害の原因は、嗅覚(きゅうかく)障害を伴うものや味覚の受容器の障害、唾液の変化などいくつかの説があります。
なかでも嗅覚障害に伴う味覚障害が多いと考えられています。
これは、風味の異常を味覚障害と混同しているためであり、実際に味覚障害をおこしている人は、少ないと考えられているからです。
味覚障害の回復時期については、新型コロナウイルス感染症が治ると同時期といわれています。
実際に発症後1か月で、8割以上の方の味覚障害が改善したという報告があります。
味覚障害があるからと言って、急いで治療する必要はありません。[2][7]
ただし、味覚障害や嗅覚障害により、食事が取れず大幅に体重減少を起こしている場合や、味覚障害により生活に不調をきたしている場合は医療機関の受診を検討しましょう。
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参考文献
[3]味覚を守る(味蕾(みらい)の構造と機能を一定に保つしくみの解明)
[4]「アンジオテンシンII」が塩味感覚を変化させてNa+摂取量を制御する-九大
[5]デルタ株の爆発的な広がりを可能にした変異|Natureダイジェスト
[7]新型コロナウイルス感染症による嗅覚、味覚障害の機序と疫学、予後の解明に資する研究
[8]新型コロナウイルス感染症罹患後症状のマネジメント-COVID-19
[9]新型コロナウイルス感染症による嗅覚、味覚障害の機序と疫学
[10]新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント第2.0版
[11]新型コロナウイルス感染症による嗅覚・味覚障害について一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。