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BA.5株の流行で、味覚・嗅覚障害を訴える患者が増えている?
コロナ流行が始まった2020年初頭、コロナに感染すると高い確率で味覚障害・嗅覚障害が発生するといわれていました。
また、他の症状がない場合でも急に、匂いの異常(嗅覚障害) や味の異常(味覚障害)を自覚することがあるともいわれています。
コロナによる嗅覚・味覚障害は従来の嗅覚・味覚障害とは特徴が異なります。
そこで、米国疾病予防管理センター(CDC)は、「急性に発症する嗅覚・味覚障害はCOVID-19を疑わせる症状であり注意が必要である」と警鐘を鳴らしました。
その後、変異株の出現とともに嗅覚・味覚障害の発生頻度や症状の特徴は変貌します。
例えば、2022年のオミクロン株流行時は嗅覚・味覚障害の発生率が減少したといわれました。
しかし、2022年8月現在、日本で流行しているオミクロン株の亜種「BA.5株」においては状況が異なるようです。
フランス公衆衛生局がまとめた情報によると、BA.1株と比べると味覚・嗅覚異常の症状を訴えている人の割合が多いといわれています。
つまり、BA.5株の流行によって、コロナ感染による味覚・嗅覚障害についての理解が再び必要となっているのです。
コロナに感染すると、なぜ味覚・嗅覚障害になるの?
コロナ感染によって味覚・嗅覚障害が生じるメカニズムは、まだ十分に解明されていません。
現時点では、コロナウイルスが原因で舌の味覚をつかさどる味蕾(みらい)や神経に障害が発生すると考えられています。
加えて、嗅覚障害が発生すると食品の匂いがわからなくなるため、食品の風味を感じられない障害が起こると想定されているのです。
新型コロナウイルスには神経親和性があるといわれており、ウイルスが直接、味覚・嗅覚神経に障害を引き起こす可能性が考えられています。
また、通常のウイルス性感冒(かぜ)と同様に、鼻粘膜の浮腫や鼻汁といった鼻炎症状が起きて匂いを感知する嗅細胞まで匂い物質が到達できなくなることから「風味」の障害が起こるのです。
また、鼻や口から入った新型コロナウイルスが嗅粘膜から嗅球を介して大脳の中に入り込むことにより嗅覚障害が発生する可能性も想定されています。
一方、新型コロナウイルスによる嗅覚障害の原因は嗅粘膜そのものが炎症を起こすことによる機能障害であって、ウイルスは脳の中まで入り込んではいないという説もあります。
エネルギー不足や栄養不足を招いたり、健康に悪影響を及ぼしたりする可能性があるため、注意が必要です。
人は食べることでエネルギーや栄養を得ますが、味がわからなくなると食欲が落ちます。
また、味覚障害によって味が薄く感じる症状が出ると、味を濃くしようとして塩分や糖分を多く摂りすぎてしまいがちです。
コロナでどんな味覚・嗅覚障害が現れた?
ここでは、新型コロナウイルス感染者に発生することがある味覚・嗅覚障害の症状例をご紹介します。
ただし、症状や感じ方は人によりさまざまなので、あくまで参考としてください。
味覚障害の症状例
味覚障害の主な症状は以下の通りです。
- 食べ物の味がわからない
- 食べ物の旨みを感じず、味の感覚が弱い
- 食事のおいしさを感じられない
- 食品の味がいつもと違うと感じる
- 口の中に何もないときにも苦味や甘みを感じる
具体的には、以下のような症状を訴えた患者がいました。
- 甘いはずのミカンが苦い
- 食べ物の味がしないため咀嚼(そしゃく)が苦痛
- あたたかい汁物の味を汚水の味のように感じる
- チョコレートの味を腐った魚の味のように感じる
- 梅干しを食べても酸味をまったく感じず、塩味しかしない
- 舌が敏感になり、辛いものや酸味の強いものが食べられない
嗅覚障害の症状例
嗅覚障害の主な症状は以下の通りです。
- 匂いがわからない
- 匂いの感覚が弱い
- いつもと匂いが違うように感じる
- 何を嗅いでも同じ匂いに感じる
具体的な例としては、以下のような症状を訴えた患者がいました。
- ボディーソープやシャンプーや芳香剤を嗅ぐと全部同じ匂いのように感じる
- いつも焦げ臭い匂いがする
- 体の中から匂いがするように感じる
- おしっこが臭い
- 何を嗅いでもマニキュアの匂いのように感じる
- 嫌いなタバコの匂いを、実際に喫煙している人がいないときに感じる
中には匂い物質がない環境下でも突然匂いを感じたり、常に鼻や頭の中に匂いを感じる症状は自発性異嗅症と呼ばれます。
異嗅症は若い世代や女性に多い傾向があるといわれています。
症状が1カ月以上も長期化する嗅覚障害の場合、今までと匂いが違って感じてしまうといった異嗅症を起こすケースがほとんどです。
また、味覚障害の多くは嗅覚障害に伴って発生しており、後遺症として味覚障害だけが発生する頻度は低いといわれています。
味覚・嗅覚障害は、ほかの原因や病気でも現れる
味覚・嗅覚障害を起こす原因や病気は新型コロナウィルス感染症だけではありません。嗅覚障害を引き起こす他の原因は以下の7つです。
亜鉛不足
亜鉛不足が原因の味覚障害は少なくありません。亜鉛は舌表面を覆っている味蕾の働きに必要な酵素を活性化します。味蕾は味を感じ取るセンサーの役割を担う組織です。
亜鉛不足の原因としては、食事からの摂取量が少ない、あるいは、服用薬や糖尿病、肝臓病などの影響で吸収が妨げられたり、排出されやすくなったりすることが挙げられます。
亜鉛不足が原因の味覚障害には、数カ月単位で亜鉛を補充する治療が必要です。なお、市販のサプリメントなどからは十分な量の亜鉛を補うことはできません。
風邪やインフルエンザ
感冒(風邪やインフルエンザなど)にかかった後にも味覚・嗅覚障害を発症することがあります。
感冒のウイルスが味覚・嗅覚を奪うメカニズムはコロナで起きる味覚・嗅覚障害と同じであり、以下の2種類です。
- ウイルスが直接、味覚・嗅覚の神経細胞に障害を及ぼす
- ウイルス感染により免疫機能が炎症を起こし、嗅覚・味覚に障害を及ぼす
鼻づまりやアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎
鼻づまりやアレルギー性鼻炎鼻によって嗅覚が低下し、匂いや味が感じられなくなることがあります。嗅覚障害の原因として多いのは慢性副鼻腔炎(蓄膿症)です。
慢性副鼻腔炎とは、副鼻腔の慢性炎症などの症状が8〜12週間以上が続くものを慢性副鼻腔炎といいます。
その原因は細菌感染や鼻・副鼻腔の形態や機能の異常など、複合的な要因です。
内視鏡やCTなどの検査で慢性副鼻腔炎と診断された場合は、まず、内服治療と鼻処置・ネブライザーなどの局所療法を行います。
それでも改善しない場合は手術治療を検討します。
中枢性嗅覚障害
脳の病気が原因で匂いがしない中枢性嗅覚障害とは脳の病気が原因で匂いがしない症状です。嗅覚路(匂いの伝わる神経回路)の障害により生じる嗅覚障害が生じます。
中枢性嗅覚障害の原因は頭部外傷による脳挫傷や脳腫瘍、脳出血、脳梗塞などです。
また、パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患に嗅覚障害が合併することもあります。
特に、これらの疾患の主症状が発症する前に嗅覚障害が発症するとされており、疑われる場合には頭部MRIを行います。
加齢
舌の表面の味蕾内にある味細胞が加齢によって機能低下したり再生されなくなったりすることでも味覚障害が起きます。
味蕾の総数は若い人ほど多く、高齢者では新生児期の半分から3分の1になるといわれています。
口腔疾患
口のなかが乾燥する口腔疾患の発症も味覚障害の原因の1つです。
高齢者は唾液腺機能障害や代謝性疾患、自律神経障害、全身疾患などを起こしやすいため、口腔乾燥症になりやすく、それが味覚障害の原因となります。
心因性
近年、増加しているのが心因性の味覚障害です。ストレスを感じる環境で食事をすると味が感じられないなど、味覚は精神状態に大きく影響を受けます。
心因性の場合は心療内科や精神科での治療が必要です。
心因性味覚障害はストレス因子をなくさない限り治療が難しいといわれているため、ストレスの原因を突き止めて、じっくりと治療することが重要です。
コロナウイルスで嗅覚・味覚障害で医療機関を受診する目安
新型コロナウイルス感染症による嗅覚・味覚障害は、自然に治るケースがほとんどです。患者の60〜80%は2週間以内に改善するといった報告が多数あります。
ですから、まずは何も薬を使わないで様子を見てください。匂いや味の異常だけが症状であれば、不要不急の外出を控えるほうが大切です。
味覚・嗅覚障害はすぐに生命の危機に直結するものではありませんが、QOLに深刻な低下をもたらします。
「COVID-19診療の手引き・別冊罹患後症状のマネジメント」では、「発症から2週間以上経過しているにもかかわらず、改善しない嗅覚・味覚障害については、耳鼻咽喉科専門医の受診」を推奨しているので、目安にするとよいでしょう。
ただし、味覚障害は、発症から半年を過ぎると治りにくくなるといわれています。味覚障害の発症から2週間以上過ぎた場合は、早めに受診してください。
何科を受診すればいい?
味覚障害については、まず、本当に味覚障害なのか、それとも、嗅覚障害に伴う風味障害なのかを見極めなければなりません。
そのためには口腔・咽頭の詳細な診察が重要なため、耳鼻咽喉科専門医の診察を受けてください。
ただし、内科の医師が味覚障害を診察することもあるので、かかりつけ医がある場合は先にそちらへ相談してもよいでしょう。
新型コロナウィルス感染症の隔離期間中は耳鼻咽喉科などの受診ができません。問い合わせなども隔離解除後にしてください。
発症してから10日以内の受診を希望する場合はオンライン診療を利用しましょう。
検査はどのように行われる?
医療機関では味覚障害を訴える患者に次のような検査を行います。
- 問診:医師が患者に味覚障害の期間や病気の有無、服薬歴などを質問する
- 視診:医師が患者の口内や舌の状態を視診する
- 検査:血液検査や尿検査を行い、肝臓・腎臓の様子や亜鉛が不足していないかを確認する
上記の一般的な検査をしてから味覚検査を行います。
味覚検査には、舌に電極を当て電気刺激によって味覚を調査する「電気味覚検査」と、味の付いたろ紙を舌に乗せて正常に味をかじられるかを調査する「ろ紙ディスク法」があります。
その他、嗅覚検査や画像検査(CT・MRIなど)も行います。
コロナによる味覚・嗅覚障害は、治療できるの?
後遺症として現れる嗅覚・味覚障害に対して確立された治療方法はありません。
ただし、新型コロナウイルス感染症に関連する味覚・嗅覚障害が疑われ、かつ2週間以上改善しない場合は、感冒後嗅覚障害に準じた治療を検討するのが妥当とされています。
その治療例は以下の通りです。
1.嗅覚刺激療法
4種類の香り(バラ・ユー カリ・レモン・クローブ)を1日2回、朝晩10秒程度、12週間嗅ぐという方法です。
感冒後嗅覚障害(Hummel T et al., 2009)と外傷性嗅覚障害(Konstantinidis I et al., 2013)において有効性が報告されています。
埼玉県医師会が2022年に発表した「新型コロナ後遺症(罹患後症状) 診療の指針のための症例集 (第2版)」では、海外で論文報告された嗅覚トレーニングアロマ 4 種類は日本人になじみがないものもあるとしています。
埼玉医科大学病院耳鼻咽喉科は例として、国内で推奨される嗅覚トレーニング方法とアロマの種類を以下のように作成しています。
・方法:1日2回(朝と晩)4種類のアロマを10秒ずつ嗅ぐ方法です。
匂いの種類を確認し、目を閉じて「あの匂いだ」とイメージしながら嗅ぐようにします。
匂いに対応する絵や写真があるとベターです。
・アロマ(日本方式):湿布・ココナッツ・パイナップル・バニラ
・アロマ(欧州方式):ユーカリ・レモン・クローブ・バラ
他に好きなアロマがある場合は変更も可能です。
嗅覚トレーニングには上記のように使用するアロマが決められていますが、保険が適応されないため自費購入となります。
このため、他の好きなアロマや日常の 匂いなどを積極的に毎日かぐといった方法をとってもかまいません。
異嗅症が生じない香り、好きな香りを選んでトレーニングに使うことができます。
「日常の匂いアンケート」を活用して、身近な匂いの中から好きなものを探すのも有効です。
2.漢方薬
感冒後嗅覚障害に対して有効性が報告されています。
有害事象の報告はないとはいえ、多くの場合は長期間の内服が必要です。
患者に合わせて当帰芍薬散などが処方されています。
3.ステロイド点鼻
嗅裂の閉塞所見がある場合、嗅覚刺激療法や漢方薬にステロイド点鼻を組み合わせた治療をすることもあります。
味覚・嗅覚障害になったときの食事について
味覚が鈍くなっている人にとっては、いつも通りの食事が苦痛になるケースが多いため、食事の形態や量、調味料などを工夫すると食べやすくなります。
- 形態:食材を1cm角に刻んで咀嚼の苦痛を減らします。
また、味や香りのはっきりしたスパイス、とろみをつけた調味料やうまみ調味料などで味付けやコーティングをするなど味を感じやすくする工夫も有効です。
- 量:味覚が弱いときに多くの量を一度に食べるのは苦痛なものです。
少量で高カロリーを摂れるゼリーをメニューに取り入れたり、間食の回数を増やしてカロリーを摂取するとよいでしょう。
- 調味料:味覚障害により苦手になった調味料があれば使用を避け、そのときの味覚に合う調味料を使用して調理します。
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本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。