ケンタウロス株の特徴|名前の由来は「これまでと違う2つの性質」から
ケンタウロス株(BA.2.75株)は、
- 感染力が強い
- ワクチンが効きにくい
という2つの性質があることが示唆されています。
ケンタウロス株の名前の由来
ケンタウロス株は、オミクロン株のBA2系統の中でもかなり特殊な変異株であると言われています。
その特異な性質から、上半身が人間で下半身が馬の伝説上の生き物であるケンタウロスという通称で呼ばれるようになりました。
なお、こちらの名称はWHOが正式に命名したものではなく、研究者たちの間やSNS等で使用されるうちに普及した名称になります。
日本だけでなく世界的にこの通称(Centaurus:ケンタウロス)で呼ばれていますが、名付け親は不明です。
余談ですが、メディアではケンタウロス株、ケンタウルス株のどちらも呼ばれることがあり、ギリシャ語かラテン語かの違いになります。
(ケンタウロスがギリシャ語、ケンタウルスがラテン語)
どちらも違いはないのですが、国立感染研究所によればコロナの名前自体がギリシャ語の王冠(corona)に由来すると記載されていますので、ギリシャ語のケンタウロスで統一するのが良いのかもしれません。
発生源は6月のインド
ケンタウロス株は、6月2日にインドで初めて観測されました。
参考:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株BA.2.75系統について|国立感染症研究所
その後、アメリカ、イギリス、オーストラリア、韓国など世界各国でも感染が確認され、日本でも感染者が確認されています。
ケンタウロス株の感染力について
現在、日本を含め、世界でも主流となっている変異株はBA.5です。
これまでの流れを見ると、2022年1月〜7月までの間に、BA2株からBA5株への置き換えが進んできました。
ケンタウロス株(BA.2.75)の感染力に注目が集まっているのは、インドで感染拡大が見られたためです。
もともとBA.5の割合が上昇しつつあったインドですが、6月以降でBA.2.75の割合が急激に上昇しました。
このことから、「BA.2.75には、BA.5に対する優位性があるのではないか?」と示唆されるようになり、今後はBA.2.75の波が来ると予想する人もいます。
しかし、現状ではこのようなBA.2.75割合の増加が観察されているのは、インドとなっています。
アメリカやイギリスでもBA.2.75の感染が確認されていますが、現状ではBA.2.75株の急激な割合の増加は見られていません。
「感染力がBA5の3倍」と言われる理由
メディア等で「ケンタウロス株の感染力はBA.5株の3倍になる可能性がある」といった報道を多く見かけます。
「3倍の感染力」の根拠としているのは、おそらくアメリカ・アーカンソー州立大学のラジ・ラジナラヤナン博士のこちらのTweetだと思われます。
たしかに、インドの感染事例から、BA.5株に比べて感染力が強い可能性があります。
しかし、「感染力が3倍」というのはまだまだ少ないサンプルから予想した数字のため、正確な実験を行った結果ではありません。
引き続き油断はできませんが、ケンタウロス株の危険性については、より正しいデータから認識すべきだと思います。
ケンタウロス株の潜伏期間
ケンタウロス株の潜伏期間については、まだ詳細な日数がわかっていません。
ただ、ケンタウロス株の元々の系統であるオミクロン株は、
- 潜伏期間が2〜3日
- 曝露から7日以内に発症する人がほとんど
という結果が出ています。
今後も情報収集が必要ですが、ケンタウロス株もこの範囲から大きく変わらない潜伏期間になるのではないかと予想されます。
ケンタウロス株の症状や毒性、重症化について
ケンタウロス株の症状や毒性については、まだ未知の部分が多いです。
先日神戸市でケンタウロス株の感染が確認された女性は、「せきや発熱」があったと報告されています。
また、東京都で確認された感染者については、いずれも「軽症」と報告されています。
参考:亜系統「BA.2.75系統」を確認(3408報)|東京都
日本で感染が拡大しているBA4やBA5では、これまでのコロナウィルスの症状に加えて「倦怠感」を訴える人が多くなっています。
しかし、ケンタウロス株の感染者はまだ少ないため、症状の特徴が掴めていません。
参考:ワクチンが効きにくい?BA5株の特徴や症状、潜伏期間について
毒性については今のところ不明
毒性に関しても今のところ不明ですが、ケンタウロス株は変異数が極めて多いため、進化のスピードも非常に早くなっています。
日本ではコロナウィルスをインフルエンザと同じ分類にする動き進んでいますが、今後出現する変異株の毒性については、引き続き注視が必要です。
重症化リスクは高くない見通し
ケンタウロス株の重症化リスクですが、こちらもまだ不明となっています。
しかし、既にケンタウロス株の感染が拡大しているインドでは、死者数の急激な増加は見られていません。
現地での医療体制など考慮すべき点はありますが、今のところケンタウロス株の重症化リスクが高いとする根拠はありません。
しかし、小さなお子様やご高齢の方など、症状が急変した場合はすぐにかかりつけの病院に相談してください。
夜間や休日など、急な対応が必要な場合はファストドクターをご利用ください。
他のオミクロン株との違いや分類
ケンタウロス株は、BA.2.75株というオミクロン株の一種です。
BA2系統で、75番目の変異(亜種)の株になります。
WHOの分類はBA4/5と同じVOC-LUM
ケンタウロス株は、WHOの分類はBA4/5と同じVOC-LUMに属しています。
VOC-LUMとは、懸念される変異株(VOC)の中でも特に注視すべき変異株(Lineages Under Monitoring)というカテゴリです。
BA4株やBA5株と同じく、大きな影響を及ぼす可能性がある変異株として注視されています。
ケンタウロス株の構造の特徴
BA.2.75系統は、BA.2系統と比較して、K147E、W152R、F157L、I210V、G257S、G339H、G446S、N460Kのスパイク変異を持っています。
本来はBA2系統として語られる変異株ですが、他のBA2系統の変異株と比べてかなり変わった性質があるので、ケンタウロス株だけ別枠で語られることが多くなっています。
国内・海外の感染状況
国内の感染状況
日付 | 場所 | 人数 |
---|---|---|
7月8日 | 神戸市 | 1人 |
7月19日 | 大阪府 | 2人 |
7月21日 | 東京都 | 2人 |
7月26日 | 愛知県 | 1人 |
参考:亜系統「BA.2.75系統」を確認(3408報)|東京都
BA5の感染拡大によって第7波が来ている日本ですが、ここからさらにケンタウロス株が広がると、感染者数が下がりきらないうちにまた大きな波が来る可能性があります。
海外・インドでの感染状況
世界全体
世界のBA2.75の感染状況(7日間平均)
7月17日あたりから爆発的に増加しています。
インド
インドのBA2.75株の感染割合(7日間平均)です。
現在のデータでは7月11日あたりからピークアウトしているように見えます。
ワクチンや再感染リスクについて
ケンタウロス株に関する情報は少ないため、ワクチンの有効性や再感染リスクについてはまだ明らかになっていません。
しかし、東京大学の佐藤佳准教授らの研究によると、BA2.75(ケンタウロス株)に有効な抗体があったことが報告されています。
参考:Neutralization sensitivity of Omicron BA.2.75 to therapeutic monoclonal antibodies
実験では、BA.2やBA.4/5には抗ウィルス効果を示さなかった抗体が、BA.2.75には機能したとのこと。
もしこの結果が正しければ、これらの抗体がBA.2.75の治療および予防に役立つことが期待されます。
また、全般的に免疫回避能力があるとされるオミクロン株ですが、ケンタウロス株(BA2.75)はBA5よりも免疫回避を示さなかったという報告もあります。
参考:Evasion of neutralizing antibodies by Omicron sublineage BA.2.75
このように、「ケンタウロス株はBA5よりも感染力が高い」とする説とは矛盾する結果もあるので、引き続き情報の精査が必要です。
まとめ
- ケンタウロス株は、これまでのBA2系統と異質であるという意味がこめられてつけられた名称
- インドで初めて観測され、世界的に感染が広がっている
- 感染力が強いとされているが、まだ十分な根拠はない
- 毒性や症状の特徴ついてはまだ不明
- 重症化リスクが高いとする報告は今のところない
ケンタウロス株はまだ情報が少なく、危険視する声が大きいですが、決してネガティブな報告ばかりではありません。
軽視することはできませんが、必要以上に恐れすぎない、適切な警戒が必要だと思います。
これから8月のお盆期間に入り、夏休みの帰省で大人数での会食や高齢者と接する場合も増えてくるかと思います。
夏の暑さもピークとなり、部屋を閉め切りたくなる季節となりましたが、人が多い時はこまめに換気をするなどして、引き続き基本的な感染対策を行いましょう。
4回目のワクチン接種も始まっていますので、重症化リスクの高い人は積極的にワクチン接種を受けるようにしてください。
ファストドクターでは無料の医療相談を行なっています。
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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。