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高血圧の治療法について解説|原因・治療目安・合併症もお伝えします

令和元年の厚生労働省の調査によると、20歳以上の二人に一人は高血圧を患っています。 身近な病気である高血圧は、血圧が高いことが原因でさまざまな合併症を引き起こします。

合併症を予防するためにも、しっかりと治療を進めることは非常に大切です。 治療法は血圧を下げる降圧薬を内服する薬物療法、生活習慣の改善などの非薬物療法の2つがあります。 

今回は高血圧の治療法だけでなく、原因・治療の目安・合併症についても解説します。 身近な高血圧に対して知識を身につけ、治療に取り組みましょう。

記事監修

名倉 義人 医師

○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院

○資格
救急科専門医

○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会

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高血圧には2種類ある

高血圧には2種類あります。

一般的にいわれている高血圧は「本態性高血圧」であることが多いです。上記2種類の違いについて詳しく解説します。

本態性高血圧

本態性高血圧は、食生活の乱れ・肥満・飲酒・運動不足などの生活習慣が原因で発症する高血圧のことを指します。 日本人の場合、食塩の取り過ぎが原因で高血圧を発症する方が多いです。

また生活習慣の乱れなどで発症するケースも増加傾向です。 日本人の高血圧者の90%程度は「本態性高血圧」といわれています。

二次性高血圧

二次性高血圧は、体内の甲状腺や副腎などの病気が原因で発症する高血圧のことを指します。 原因がはっきりしており、生活習慣などは関係なく発症します。 

本態性高血圧が90%程度を占めるのに対し、二次性高血圧は10%の発症率と症例数が少ないです。

薬物療法と非薬物療法が高血圧治療の中心

高血圧は2つの治療方法があります。主に以下の通りです。 

薬物療法・非薬物療法どちらの治療法も非常に大切です。

どちらか一方でなく、並行して治療を進めることで改善に近づきます。 それぞれについて解説します。

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薬物療法

薬物療法は主に「降圧薬」の内服により血圧を下げる目的で治療が進められます。 主な降圧薬について成分別で記載します。 

CCB・ARB・利尿薬・ACE阻害薬などから禁忌や他の薬の飲み合わせなどを考慮して選択されます。

例えばARBやACE阻害薬は胎児などに影響を与えるリスクがあるため、妊婦には禁忌となっています。 

降圧薬は収縮機血圧(高い方の血圧)を10mmHg以上低下させて、後述する合併症のリスクを軽減させる効果があります。処方に関しては必ず医師や薬剤師の指示に従いましょう。

また血圧が低下してきたと思い自己判断で降圧薬を中止しないことも、合併症予防や高血圧治療には大切です。

非薬物療法

非薬物療法は降圧薬の内服以外の方法で血圧を下げる治療法です。特に生活習慣の改善は高血圧の予防や血圧の低下に重要とされています。

後述する高血圧ガイドラインには、生活習慣の改善ポイントとして以下の項目が挙げられています。

減塩に関しては1日の塩分は6g未満に設定しましょう。日本人は塩分の取り過ぎによる高血圧者が多いため、特に注意が必要です。多価不飽和脂肪酸はサバ・サンマなどの青魚に多く含まれています。

適切体重はBMIが25未満が望ましいです。 運動に関しては低負荷の有酸素運動(ウォーキング)などを毎日30分以上行うことが推奨されています。

それぞれのポイントに注意しながら、生活習慣を改善しましょう。上記の1点のみを改善するのではなく、複合的な改善はより効果的です。

注意すべき点は、薬物療法・非薬物療法どちらか一方の治療を進めれば良いわけではありません。どちらの治療も血圧を下げるためには非常に大切です。

高血圧の基準

高血圧の基準は日本高血圧学会によると診察室血圧・家庭血圧に分けて基準が設けられています。 診察室高血圧は以下の基準です。

診察時高血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)140mmHg以上
拡張期血圧(低い方の血圧)90mmHg以上
家庭血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)135mmHg以上
拡張期血圧(低い方の血圧)85mmHg以上

参考文献:高血圧治療ガイドライン2019

診察時血圧・家庭血圧ともに収縮期血圧と拡張期血圧の2点を満たした場合、高血圧と診断されます。白衣高血圧のように診察時に血圧が高く表示される方もいるため、診察時と家庭での高血圧の基準に差が設けられています。

血圧は環境や時間帯によって変動するため注意が必要です。家庭で血圧測定する場合は時間・場所を決めて測定すると普段の目安になる血圧がわかるでしょう。

また家事の直後や入浴の直後など動いたりした後は、時間を空けてからの測定が大切です。

高血圧の原因5選

本態性高血圧の主な原因は以下の通りです。

高血圧を発症する原因はさまざまです。 それぞれの原因について解説します。

食塩の過剰摂取

塩分の過剰摂取により、体内の塩分濃度が上昇します。 高くなった塩分濃度を低下させるため、全身の水分量は多くなります。 

相対的に全身の血液量が増えることが血圧を上昇させる原因です。

肥満

肥満の方は過食となり、塩分過多になりやすいです。塩分が多くなると、体内にナトリウムが多く貯留されます。

ナトリウムを薄めるために、全身の血液量が増えてしまい、相対的に血圧上昇に繋がります。

飲酒

飲酒は一時的に血管を拡張させて降圧効果がありますが、継続することで血圧が上昇します。

また、飲酒とともに塩分の多いつまみやお菓子を同時に摂取する機会が増えると、塩分過多になり血圧上昇を加速させます。

運動不足

運動不足により血圧は上昇しやすくなります。運動には、余分な塩分を排泄する効果があります。

運動不足になると塩分を体内に溜め込み、血圧が上昇しやすくなるため注意しましょう。 また肥満にも繋がり、間接的に血圧を高めます。

生活習慣の改善で先述した通り、適度な運動は血圧を下げるために大切です。

ストレス

ストレスを感じることにより交感神経の活動が有意になり、血圧が高くなります。持続的なストレスでは常に血圧が高くなりやすくなるため注意が必要です。

趣味や自宅でのリラックス方法などを見つけて、適度にストレスを発散させましょう。

高血圧の治療目安

年齢・既往歴・合併症により高血圧の治療目安が決まります。

若年・中年・前期高齢者
収縮期血圧(高い方の血圧)125mmHg未満
拡張期血圧(低い方の血圧)75mmHg未満
後期高齢者
収縮期血圧(高い方の血圧)135mmHg未満
拡張期血圧(低い方の血圧)85mmHg未満
糖尿病・慢性腎不全・脳血管や冠動脈疾患
収縮期血圧(高い方の血圧)125mmHg未満
拡張期血圧(低い方の血圧)75mmHg未満

参考文献:高血圧治療ガイドライン2019

上記の表は、家庭血圧における降圧目標を記載しました。基準値より下がったからといって自己判断で降圧薬の内服をやめると、再度血圧が上昇し合併症を引き起こすリスクが高いです。

自己判断で内服を止めるのではなく、必ず医師の指示に従いましょう。

高血圧による合併症

高血圧は合併症を引き起こすリスクを増加させ、寿命に影響が出る可能性があります。

主な合併症は以下の通りです。

それぞれの合併症について解説します。

閉塞性動脈硬化症

動脈硬化により、手足の先の血管が詰まり、閉塞性動脈硬化症が起こります。

本来、血管は心臓からの血液の送り出しに耐えるため、ゴムのような弾力性を持っています。しかし動脈硬化では、血管に高い圧が持続的にかかり、血管の弾力性が失われている状態です。

動脈硬化は、後述する合併症の原因になることが多いため、注意が必要です。

閉塞性動脈硬化症では、手足が痺れたり冷たくなったりして、手足を切断する危険性もあります。

狭心症・心筋梗塞

狭心症や心筋梗塞も、高血圧による動脈硬化が原因で発症します。

動脈硬化により心臓の冠動脈(心臓近くの血管)が細くなったり、弾力が失われたりすると、一過性に詰まる状態の狭心症や心臓の血管が完全に詰まる心筋梗塞を発症します。

心筋梗塞は命にも関わるため早期に対応が必要です。 高血圧があって急な胸や背中の痛みなどが起きた場合は、狭心症などの可能性があります。医療機関を受診して医師に相談しましょう。

心不全

高血圧を発症している場合、心臓は常に力強く血液を送り出す必要があります。心臓が常に力強く働いていると、心臓の筋肉が厚くなり心肥大を引き起こします。

心肥大に伴い、血液を送り出す心臓のポンプ機能が低下し、心不全を発症するリスクが高まるでしょう。高血圧が原因で発症する心不全を高血圧性心不全といいます。

脳梗塞・脳出血

脳の血管で高血圧による動脈硬化が起きると、脳梗塞・脳出血を発症します。 動脈硬化の持続により、血管内にプラークと呼ばれるコブのようなものが発生します。

プラークは脳の血管が詰まって「脳梗塞」を発症する原因です。一方、動脈硬化により血管の弾力性が失われ血管に高い圧がかかると、出血するリスクがあります。

高い圧で脳の血管が破裂し、出血すると「脳出血」を発症します。 脳梗塞・脳出血とともに運動麻痺などの後遺症が出現する可能性もあるため注意が必要です。

また一過性脳虚血発作(以下TIA)という一時的に脳の血管が詰まり、手足の痺れ・動かしにくさなどが現れる病気もあります。

一過性の名前の通り、一時的に症状が現れてすぐに元に戻ります。しかし、TIAは脳梗塞の前兆ともいわれているため、上記の症状が現れた際には必ず医療機関を受診しましょう。

腎障害・腎不全

高血圧により腎臓の血管が動脈硬化すると、腎臓の機能が低下します。腎臓は本来、豊富な血液をろ過し、尿とともに不必要な物質を体外へ排出する機能があります。

動脈硬化によりろ過する機能の低下が「腎不全」を発症する原因です。また腎不全を発症すると不要な水分などを尿とともに排出できなくなるため、相対的に体の水分量が多くなり、血圧が高くなります。

高血圧の治療ガイドライン

高血圧には日本高血圧学会が出している「高血圧治療ガイドライン」があります。

2019年に改訂されており、医師を中心として疫学・臨床評価・管理や治療の基本方針・生活習慣の修正・降圧治療などについて記載されています。 日本における高血圧治療の指針です。

Q&A

高血圧に関するQ &Aについて回答します。 高血圧は動脈硬化が原因で、生命予後に関わる合併症を引き起こす危険があります。

疑問や不安については主治医にしっかりと相談しましょう。医師との良好なコミュニケーションは治療を円滑に進めるためにも非常に大切です。

高血圧はどんな症状がありますか?

高血圧は自覚症状がほとんどありません。中には血圧が高すぎると頭痛やめまいなどが起こることがあります。

先述した合併症の狭心症による胸や背中の痛みや、一過性脳虚血発作による手足の痺れ・動かしにくさの症状が出現した場合は、早急に医療機関を受診しましょう。

高血圧を治すにはどうしたらいいですか?

高血圧は先述した薬物療法・非薬物療法が治療の2本柱になります。どちらか一方でなく、どちらも非常に大切な治療方法のため実践してください。

また血圧が下がったからといって、薬の内服を自己判断で中止することはないように注意が必要です。中止した途端に血圧が上昇して合併症を引き起こす危険性があります。

血圧が高いときにやってはいけないことは?

血圧が高いときは強い負荷がかかる動作は避けるようにしましょう。日常生活における一例を以下に挙げます。

息を止める動作は血圧を上げてしまうため注意が必要です。

またヒートショックと呼ばれるように、寒暖差が激しい場所に移動して血圧が上下するケースがあります。ヒートショックは血管に負担がかかり出血や梗塞を引き起こすリスクが高くなります。

血圧が高いときは落ち着くまで待つ、もしくは自宅内の寒暖差をなるべく少なくして入浴を行うなど環境を調整しましょう。

高血圧で入院することはあるの?

高血圧のみで入院することはほとんどありません。しかし高血圧が原因で閉塞性動脈硬化症・心筋梗塞・脳梗塞などの合併症を引き起こすと治療のために入院が必要になります。

また脳梗塞などの後遺症が出現する合併症もあるため注意が必要です。合併症を引き起こさないためにも、予防・治療が非常に大切です。

血圧160はやばいですか?

先述した高血圧の基準の中にもさらにⅠ〜Ⅲ度に分類された高血圧の重症度分類があります。

Ⅰ度高血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)140〜159mmHg
拡張期血圧(低い方の血圧)90〜99mmHg
Ⅱ度高血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)160〜179mmHg
拡張期血圧(低い方の血圧)100〜109mmHg
Ⅲ度高血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)180mmHg以上
拡張期血圧(低い方の血圧)110mmHg以上

参考文献:高血圧治療ガイドライン2019

血圧160mmHgの場合は高血圧の中でもⅡ度高血圧に分類されます。 血圧が高い状態が続いていると血管に常に負担がかかっている状態のため、合併症を引き起こすリスクは高くなります。

医療機関を受診して医師の指示に従い治療を進める必要があるでしょう。

まとめ

高血圧はさまざまな合併症を引き起こすリスクが高く、寿命にも影響を与える危険性があります。そのため主治医の指示に従って、適切な治療を進める必要があります。

治療に関しては、薬物療法と非薬物療法の2本柱で取り組み、血圧を下げるように働きかけましょう。

また発症後の治療だけでなく、予防の観点からの取り組みも非常に大切です。

高血圧は自覚症状がほとんどなく、自分では気づかないことも多いです。そのため毎年、健康診断を受けて、予防を心がけていきましょう。