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50代の血圧の正常値は?高血圧の合併症や予防・改善ポイントも解説

男女ともに50代を超えると更年期を迎え、ホルモンバランスが崩れやすくなります。

年齢を重ねるとともに、健康に気を遣う場面が多く「血圧が高くなってきた」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか?

厚生労働省の調査によると成人の二人に一人は高血圧を患っているとされています。血圧が高いとさまざまな合併症を引き起こしたり、寿命に影響を与えたりするため注意が必要です。

今回の記事では、50代の血圧の正常値や高血圧による合併症や予防方法・改善すべきポイントについて解説します。

最後まで一読いただき、高血圧に対する知識を身につけて予防や改善に取り組みましょう。

記事監修

名倉 義人 医師

○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院

○資格
救急科専門医

○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会

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50代の血圧の正常値はどれくらい?年齢や男女の違いも解説

50代の血圧について「いくつが正常値?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか?目安とすべき血圧も年齢とともに変わってきます。

また血圧には男女差があり、高血圧を発症するリスクも違うため注意が必要です。次の項目では以下について解説します。

それぞれについて詳しく解説します。

50代の血圧の正常値

50代でも若年者でも血圧の正常値に違いはありません。正常値と高血圧の基準について知っておくことで予防・改善に努められるでしょう。

正常値の基準は以下の通りです。

血圧の正常値
診察室血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)120mmHg未満
拡張期血圧(低い方の血圧)80mmHg未満
家庭血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)115mmHg未満
拡張期血圧(低い方の血圧)75mmHg未満

参考文献:高血圧治療ガイドライン2019

一方で、高血圧の基準は以下の通りです。

高血圧の基準
診察室血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)140mmHg以上
拡張期血圧(低い方の血圧)90mmHg以上
家庭血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)135mmHg以上
拡張期血圧(低い方の血圧)85mmHg以上

参考文献:高血圧治療ガイドライン2019

白衣高血圧のように、診察時に血圧が高く表示される方もいるため、正常値・高血圧ともに診察室と家庭での基準に差が設けられています。

正常値血圧については、後述する脳や心臓血管に関わる合併症のリスクが低くなる数値を目安として、設定されています。合併症予防のために基準値以下を保ちましょう。

年齢による血圧の正常値に違いはありませんが、高血圧の治療目安は年齢によって変わってきます。また血圧には多少の男女差も存在するため注意が必要です。

次の項目では以下について解説します。

血圧の目安や男女差について知識を身につけましょう。

年齢による血圧の目安

先述の通り、年齢における血圧の正常値に違いはありません。

しかし加齢とともに血管の弾力性は低下し、硬くなっていきます。そのため若年者に比べると高血圧のリスクは高くなるでしょう。

また高血圧の治療の目安については若年・中年・前期高齢者(65〜74歳)と後期高齢者(75歳以上)で数値に違いがあります。 以下に治療目安について記載します。

若年・中年・前期高齢者
収縮期血圧(高い方の血圧)125mmHg未満
拡張期血圧(低い方の血圧)75mmHg未満
後期高齢者
収縮期血圧(高い方の血圧)135mmHg未満
拡張期血圧(低い方の血圧)85mmHg未満

参考文献:高血圧治療ガイドライン2019

年齢により治療の目安は変わってきます。血圧が高い方は、上記の数値を目標に改善に取り組みましょう。

女性と男性における血圧の違い

男性は女性に比べると塩分過多になりやすく、血管の弾力が低下して高血圧を発症するリスクが高いです。

一方で女性は更年期までは男性よりも血圧は低く、高血圧を発症する割合も低い傾向にあります。

しかし女性は更年期以降(特に閉経後)に、ホルモンバランスが崩れる関係で高血圧を発症するリスクが高くなりやすいです。

血圧が高いと寿命にも影響が出る

血圧が高いと寿命にも影響が出てきます。血圧が高い状態が続くと「高血圧」になり、合併症を発症するリスクが高くなるでしょう。

発症する合併症の中には命に関わったり、後遺症が残ったりする病気があるため注意が必要です。 日頃から血圧には注意を払い、予防に努めることが大切です。

高血圧による合併症5選

先述したように血圧が高くなり、高血圧の状態が持続すると合併症を引き起こすリスクが増加します。

代表的な合併症は以下の通りです。

それぞれの合併症について解説します。

閉塞性動脈硬化症

動脈硬化により、手足の先の血管が詰まり、閉塞性動脈硬化症が起こります。

本来、血管は心臓からの血液の送り出しに耐えるため、ゴムのような弾力性を持っています。しかし、動脈硬化では血管に高い圧が持続的にかかり、血管の弾力性が失われている状態です。

動脈硬化は、後述する合併症の原因になることが多いため、注意が必要です。閉塞性動脈硬化症では、手足が痺れたり冷たくなったりし、手足を切断する危険性もあります。

狭心症・心筋梗塞

狭心症や心筋梗塞も、高血圧による動脈硬化が原因で発症します。

動脈硬化により心臓の冠動脈(心臓近くの血管)が細くなったり、弾力が失われたりすると、一過性に詰まる状態の狭心症や、心臓の血管が完全に詰まる心筋梗塞を発症します。

心筋梗塞は命にも関わるため早期に対応が必要です。 高血圧があって急な胸や背中の痛みなどが起きた場合は、狭心症などの可能性があります。医療機関を受診して医師に相談しましょう。

心不全

高血圧を発症している場合、心臓は常に力強く血液を送り出す必要があります。心臓が常に力強く働いていると、心臓の筋肉が厚くなり心肥大を引き起こします。

心肥大に伴い、血液を送り出す心臓のポンプ機能が低下し、心不全を発症するリスクが高まるでしょう。高血圧が原因で発症する心不全を高血圧性心不全といいます。

脳梗塞・脳出血

脳の血管で高血圧による動脈硬化が起きると、脳梗塞・脳出血を発症します。 動脈硬化の持続により、血管内にプラークと呼ばれるコブのようなものが発生します。

プラークは脳の血管が詰まって「脳梗塞」を発症する原因です。一方、動脈硬化により血管の弾力性が失われ、血管に高い圧がかかると出血するリスクがあります。

高い圧で脳の血管が破裂し、出血すると「脳出血」を発症します。 脳梗塞・脳出血とともに運動麻痺などの後遺症が出現する可能性もあるため注意が必要です。

また一過性脳虚血発作(以下TIA)という一時的に脳の血管が詰まり、手足の痺れ・動かしにくさなどが現れる病気もあります。

 一過性の名前の通り、一時的に症状が現れてすぐに元に戻ります。しかし、TIAは脳梗塞の前兆ともいわれているため、上記の症状が現れた際には必ず医療機関を受診しましょう。

腎不全

高血圧により腎臓の血管が動脈硬化すると、腎臓の機能が低下します。腎臓は本来、豊富な血液をろ過し、尿とともに不必要な物質を体外へ排出する機能があります。

動脈硬化によりろ過する機能の低下が「腎不全」を発症する原因です。

また腎不全を発症すると、不要な水分などを尿とともに排出できなくなるため、相対的に体の水分量が多くなり、血圧が高くなります。

低血圧による症状

高血圧だけでなく、低血圧にも注意が必要です。低血圧は男性に比べ女性に出現しやすい症状になります。。薬による影響や自律神経による影響など、原因はさまざまです。

以下の代表的な症状が出現します。

一番出現しやすい症状は「めまい」「立ちくらみ」です。急に血圧が下がり過ぎてしまうと、失神するケースもあります。

「めまい」「立ちくらみ」が起きたときは医療機関を受診しましょう。

高血圧予防・改善のために取り組めむべき7つの改善点

高血圧の予防や改善のために取り組むべきポイントを以下に記載します。

上記ポイントについてはどれか1つを実践すればいいわけなく、複合的に改善することで予防効果や改善がみられます。できる範囲で、取り組めそうなポイントから取り組みましょう。

減塩

塩分の過剰摂取により、体内の塩分濃度が上昇します。高くなった塩分濃度を低下させるため、全身の水分量は多くなります。

相対的に全身の血液量が増えることが、血圧を上昇させる原因です。減塩に関しては1日の塩分は6g未満に設定しましょう。

日本人は塩分の取り過ぎによる高血圧者が多いため、特に注意が必要です。

日本人が塩分を摂りすぎる原因の大半は、調味料です。日本特有の「みそ」「しょうゆ」 は塩分が多く含まれています。できるだけ薄味を心がけましょう。

野菜・果物の積極的摂取

野菜・果物を積極的に摂取すると血圧を下げる効果があります。後述しますが、ナトリウムが体内に多くなると血圧が高くなりやすいです。

野菜・果物にはカリウムが多く含まれており、カリウムは体内のナトリウムを体の外に出す効果があります。

余分なナトリウムが体の外に出るため、血圧が下がります。野菜や果物を摂取し、高血圧予防に取り組みましょう。

飽和脂肪酸・コレステロールを控えて多価不飽和脂肪酸の積極的摂取

多価不飽和脂肪酸は、血圧を下げる効果が期待できます。ブリ・イワシ・サバ・サンマなどの青魚に多く含まれています。

多価不飽和脂肪酸を摂取すると、コレステロールの吸収を抑制する効果があるため、積極的に摂取しましょう。

適正体重の維持

肥満の方は過食となり、塩分過多になりやすいです。塩分が多くなると、体内にナトリウムが多く貯留されます。

ナトリウムを薄めるために、全身の血液量が増えてしまい、相対的に血圧上昇に繋がります。適切体重はBMI25未満が望ましいです。

継続した運動

運動不足により血圧は上昇しやすくなります。運動には、余分な塩分を排泄する効果があります。 運動不足になると塩分を体内に溜め込み、血圧が上昇しやすくなるため注意しましょう。

また肥満にも繋がり、間接的に血圧を高めます。 生活習慣の改善で先述した通り、適度な運動は血圧を下げるために大切です。

運動に関しては、低負荷の有酸素運動(ウォーキング)などを毎日30分以上行うことが推奨されています。

飲酒を控える 

飲酒は一時的に血管を拡張させて降圧効果がありますが、継続することで血圧が上昇します。

また、飲酒とともに塩分の多いつまみやお菓子を同時に食べる機会が増えると、塩分過多になり血圧上昇を加速させます。

禁煙

喫煙は血圧を高くします。タバコに含まれているニコチンは、動脈硬化を促進するため注意が必要です。

またタバコ1本で収縮期血圧(高い方)20mmHg、拡張期血圧(低い方)10mmHg増加するといわれています。高血圧の予防・改善には、禁煙に取り組むことが非常に大切です。

高血圧には治療ガイドラインがある

高血圧には日本高血圧学会が出している「高血圧治療ガイドライン」があります。 

2019年に改訂されており、医師を中心として疫学・臨床評価・管理や治療の基本方針・生活習慣の修正・降圧治療などについて記載されています。

現在の日本の医療現場における高血圧治療の指針が、高血圧治療ガイドラインです。

Q&A

高血圧に関するQ&Aについて回答します。 高血圧は動脈硬化が原因で、寿命に関わる合併症を引き起こす危険があります。

疑問や不安については主治医にしっかりと相談しましょう。医師との良好なコミュニケーションは治療を円滑に進めるためにも非常に大切です。

1日のうちで血圧が高くなるのはいつ?

血圧は夜にかけて低下しやすく、日中の活動時間帯に高くなりやすいでしょう。そのため血圧測定する際は注意が必要です。

血圧測定時のポイントは以下の通りです。 

上記に注意して、血圧を測定した値を記録しておきましょう。普段の血圧の値がわかるようになります。

また医療機関を受診する際に記録した値を持っていくと、医師の診断の助けになります。

女性の正常血圧はいくつですか?

先述した通り血圧の正常値については、男女や年齢による差は認めません。血圧の正常値は「診察室血圧」と「家庭血圧」で差があります。

血圧は毎日定期的に測定することでご自身の平均的な血圧がみえてきます。先述した「血圧測定時のポイント」に注意して測定しましょう。

血圧がいくつになったら病院に行く?

高血圧になる前に医療機関を受診するといいでしょう。「高値血圧」といわれる高血圧の一歩手前の値は以下の通りです。

診察室血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)130〜139mmHg
拡張期血圧(低い方の血圧)80〜89mmHg
家庭血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)125〜134mmHg
拡張期血圧(低い方の血圧)75〜84mmHg

参考文献:高血圧治療ガイドライン2019

「高値血圧」の値が続くようであれば、医療機関を受診しましょう。治療を進めるかどうか、医師との相談をおすすめします。

血圧がどのくらい高くなったら危ない?

高血圧は寿命にも影響する合併症を引き起こすリスクが高くなるため、注意が必要です。

さらに高血圧の中でもⅠ度〜Ⅲ度まで分類があります。それぞれの分類については以下の通りです。

Ⅰ度高血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)140〜159mmHg
拡張期血圧(低い方の血圧)90〜99mmHg
Ⅱ度高血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)160〜179mmHg
拡張期血圧(低い方の血圧)100〜109mmHg
Ⅲ度高血圧
収縮期血圧(高い方の血圧)180mmHg以上
拡張期血圧(低い方の血圧)110mmHg以上

参考文献:高血圧治療ガイドライン2019

血圧が高い状態が続いていると血管に常に負担がかかっている状態のため、医療機関を受診して治療を進めましょう。

まとめ

50代の血圧の正常値をキーワードに合併症や予防・改善方法について解説してきました。 血圧の正常値は、年齢に関係なく基準が設けられています。

しかし加齢とともに血管は硬くなり、高血圧のリスクは高くなるため注意は必要です。 血圧の正常値を保つためには、減塩を中心とした食事の改善や継続的な運動などが効果的です。

血圧は高くても自覚症状が乏しいため、定期的に健康診断を受け、早めに予防に取り組む必要があるでしょう。

50代になると「血圧が高くなってきた」と不安になる方も多いと思います。しかし、生活習慣の改善に取り組めば、血圧を下げることは可能です。

健康のために、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。