熱中症とは?特徴・症状と治療法、予防策について解説【医師監修】

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/02/05
近年、夏の暑さが厳しく「熱中症アラート」が出される日が続いています。 このような暑さのなかでは、熱中症という病気と向き合わざるをえません。 熱中症とは、暑さによって体温が上昇し、体の調節機能が追いつかなくなってしまう状態のことを指します。 これは誰にでも起こり得る症状であり、軽度なものから命にも関わる重症まで様々です。 本記事では、熱中症の予防法や初期症状の見分け方、そして熱中症になった際の対応方法について詳しく解説します。 これからの季節、暑さで体調を崩さないために、是非ともこの記事を参考にしてください。

熱中症とは?

まずは、熱中症の危険性と起こりやすい状況について解説します。

熱中症の定義と症状

熱中症は、「高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態」です。

「暑くてふらっとする」というような軽いイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、重篤になると多臓器不全(体中の臓器がうまく機能しなくなる状態)になり、命を落とすこともあります。

熱中症で命を落とす方も非常に多く、2020年は1600人にもなりました。

症状として、以下のようなものがあります。

  1. めまい、立ちくらみ
  2. 手足が痺れる
  3. 手足がつる、筋肉痛のような症状がある
  4. 体がだるい、力が入らない
  5. 頭痛、吐き気を感じる
  6. 異常に汗が出る、全く汗が出ない
  7. 体温が上がる、皮膚が赤く乾いた状態になる
  8. まっすぐ歩けない、体が痙攣する
  9. 意識がない、呼びかけに反応しない

1〜3程度の症状だけであれば軽症に該当し、病院での処置がなくても回復できる可能性があります。

4〜6のような症状が出ているときは、水分は自力でとれるかもしれませんが、病院の受診をした方がよい状態です。

7〜9のような症状があれば重症に該当し、入院が必要になることが多いので、一刻も早く受診する必要があります。

熱中症を起こす条件

熱中症は、外にいるときだけ生じるものではありません。

実際、高齢者は50%以上が自宅内で熱中症を発症していて、毎年のように屋内で熱中症になり、死亡するという例が報告されています。

7〜18歳の年代は運動中の熱中症発症が多いので、十分に注意するか、暑いときには運動を控える必要があるでしょう。

熱中症の発症には、「環境」「体の状態」「行動」の3種類の要因が関与します。

「環境」は、高い気温や湿度、強い日差し、風がないなどの天候に関連したものです。

夏に限らず、たとえば5月で急に30℃近くまで暑くなった日などもリスクが高いといえます。

「体の状態」は、年齢や体調、持病など一人ひとりのその時の状態のことです。

体調が悪い日は、元気な日に比べて熱中症になりやすいので、外出を控えるなど対策をとる必要があります。

「行動」も熱中症の発症に関わります。

激しい運動はとくにリスクが高いです。運動で体に熱が生じるだけでなく、汗をかいて脱水も起こします。

軽い運動だとしても、ふだん運動をあまりしない方は危険性が高いです。

仕事やレジャーなどで屋外に長時間いること、水分を摂取しないことも熱中症のリスクを高めます。

熱中症になりやすい人は?

熱中症は、老若男女どなたでもなることがありますが、以下に該当する方はとくに注意を払いましょう。

小さな子ども

子どもは、暑い・体調が悪いなどの訴えが難しかったり、大人に比べて体温調節が苦手だったりする影響で、気がついたときには倒れるほど熱中症が悪化していることがあります。

高齢

高齢者は、若い人に比べて汗をかきにくいこと、暑さや喉の渇きを自覚しにくいことから、熱中症になりやすいです。

暑いと感じておらず、夏なのに長袖のカーディガンを羽織ったりしている方を見たことがあるかもしれません。

高齢の方は、自覚症状を感じる前に行動をとらなくてはなりません。

脱水状態

下痢や嘔吐など、脱水状態にあるときも熱中症になりやすいです。

また、アルコールは水分補給になりません。

アルコールの分解に水が必要なため、アルコールは飲めば飲むだけ脱水になります。

屋外のイベントでアルコールを飲んでいると、熱中症になる可能性が高くなることに注意してください。

熱中症の予防策

では、熱中症にならないために、どのような対策を取ればよいでしょうか?

暑いところに滞在しない

暑いところに滞在しないことが一番大切です。暑いところにいれば、どんなに対策をしても熱中症のリスクは減らせません。

体は、タンパク質でできています。

タンパク質は、一定以上の温度に達すると変性(性質が変わること)し、機能が失われてしまいます。

たとえば、生卵を加熱すると固くなり、もう生卵には戻らないことはお分かりですね。

人の体でも、タンパク質からなる臓器が熱で変性してしまえば、正常な働きができなくなります。

熱中症予防のためには、まずは暑いところを避けて涼しい環境で過ごすことです。

基本的に、気温が35℃を超えるときには運動をしてはいけません。

30℃を超える場合でも、最低20分おきに休憩をとり、水分摂取も必要です。

暑さに弱い方は、運動をしない方がよいとされます。

気温・室温・湿度で判断する

自分が暑いと思うかどうかで判断してはいけません。

気温や室温・湿度をみて冷房を調節しましょう。

「体内に熱がこもること」が熱中症につながるため、自覚症状ではなく環境をみて調整する必要があります。

寒がりなら熱中症になりにくいわけではないのです。

喉が渇く前に水分をとる

「喉が渇いたな」と思ったときにはもう遅いと思って水分をとりましょう。喉の渇きは、脱水が始まっているサインです。

家の中にいるときなどは水・お茶で問題ありませんが、屋外に長くいるときやスポーツなどで汗をたくさんかくときは、スポーツドリンクなどの塩分・糖分が含まれたものがおすすめです。

飲みたいと思ったときにではなく、30分に1回など、時間を決めてこまめに水分をとってください。

とくに、子どもは遊びに夢中になって水分をとるのを忘れてしまいがちです。ぜひ保護者の方から水分摂取を促しましょう。

体を冷やす

体をしっかり冷やすグッズなどを使いましょう。保冷剤を入れて首に巻くスカーフ、水に濡らすと冷たくなる素材のタオルなどがおすすめです。

ただし、冷却シートなどの冷たく「感じる」だけで体温を下げる効果のないものは、熱中症対策にはなりません。

使うこと自体は問題ありませんが、他の対策と併用するようにしてください。

ハンディファンなども、屋外であれば熱風を浴びるだけになってしまうので、熱中症対策にはなりません。

日傘や帽子を使って、直射日光を浴びないようにすることも大切です。

熱中症で体調不良になったら

体調が悪く「熱中症かもしれない」と思ったら、次のような対応をしてください。

1.涼しいところへ移動させる

風通しのよい木陰や、冷房の効いた店内などへ移動させます。

2.衣服を脱ぐ、ゆるめる

衣服を着ていると、体にこもった熱をスムーズに発散できないことがあるため、脱いだり、ボタンを外したりして肌を露出させるようにします。

3.体を冷やす

脇の下や足の付け根、首元に冷たいものを当てて、体を冷やします。

冷却剤や氷枕、冷たい缶など、実際に温度が冷たいものを当ててください。

体に水をかけて、うちわなどで風を送ることでも体温を下げることができます。

4.水分をとる

水分を取れる状態であれば、スポーツドリンクなどの塩分・糖分が含まれたものを少しずつ飲ませます。

少し休んで回復しなければ、病院へいくか救急要請をしましょう。

体温が高い、汗をかいていない、吐き気があるときは、すでに病院での処置が必要な状態です。

水分もとれない、意識がない場合は、迷わず救急要請をしてください。

迷ったときには「#7119」で相談することも可能です。

まとめ

今回は、「熱中症」について、症状や対策をご紹介しました。

熱中症は夏の病気とされがちですが、体が適切に冷却されない状況下ではいつでも起こり得ます。

熱中症は体温調節機能が追いつかない状態で、その結果、重症化すると命を脅かすこともあります。

本記事で説明したように、熱中症の予防には十分な水分補給、適度な休息、適切な服装、そして体調管理が重要です。

また、早期発見が重要で、異常な疲労や頭痛、めまいなどの症状が出たらすぐに涼しい場所で休息をとり、必要であれば医療機関に相談してください。

熱中症は予防可能な症状です。この記事が皆さんの健康を守る手助けとなることを願っています。夏を安全に楽しみましょう。

参考

熱中症ゼロへ

https://www.wbgt.env.go.jp/

記事監修
  • 名倉 義人
    救急科専門医

    ・平成21年 名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事 ・平成23年 東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得 ・平成27年 東戸塚記念病院で整形外科として勤務 ・令和元年 新宿ホームクリニック開院

    日本救急医学会、日本整形外科学会

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